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不揃いの石

2022-03-26 23:04:57 | アート・デザイン・建築


フローリングの木の話の次は、石の話。
上の写真は、フィレンツェで訪れた修道院の床の舗石。
何百年も風雨に晒されていますから、この風合いは新築の住宅で真似しようはないのですが・・・
それにしてもいい味です。

風化した石の表情のさることながら、石の切り出し方にも技芸がありますね。
敷き並べたピースの間からはコケらしき緑が見えて。これも良い雰囲気です。

メーカーから出されている製品は、どれも寸法がきちんとできているから、良い意味での不揃いな感じは出にくいもの。
そこで、もともと寸法の不揃いのモルタル製の下地材を並べてできあがったのが下の写真。
間からはコケも生えてよい雰囲気になりました。
こちらはできあがって10年ぐらいの写真ですが、フィレンツェの何百年の大先輩になんとか追いつこうとした労作!?です。


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住宅と寸法

2022-02-10 22:23:40 | アート・デザイン・建築


エクスナレッジよりムック本が発刊されました。
住宅の寸法について特集された専門家向けの書籍で、ぼくの設計した事例からもいくつか寄稿しています。

設計とはつまるところ、材料を選び寸法指定をすることに尽きますので、「寸法」は究極のテーマといえるかもしれません。
ぼくの師匠の建築家 村田靖夫は、それはそれは寸法にキビシイ先生でした。
一見何気なく見える空間が、ピリッとした緊張感をもつ。それは緻密な寸法設計によって成り立つことを、修行時代には叩きこまれました。

村田さんのもとで設計をし始めてまだ間もない頃のことです。
「室内の高さは15センチ刻みでしっかりイメージできるようにしろ」と言われました。
和室の基本寸法である180センチを基準として、そこから15センチ刻みに、195センチ、210センチ、225センチ、240センチ。
窓や天井の高さを示すそれらの寸法を自在に操ることによって、そのスペースに最もふさわしく心地よい高さ関係を生み出すというわけ。

それらの高さ寸法を熟知していた村田さんは、平面図(間取り図)を見ただけで、その空間のプロポーションの良し悪しを一目で見抜いていました。
村田さんが特に好んだ天井高さは225センチでした。窓の高さを天井いっぱいまで開けると、屋外や庭に向けて空間が伸びやかに続いているのが感じられるのです。
それよりも天井が高いと間延びをしてしまう。そんな流儀がありました。

一般的によいとされているよりも、ひとつ抑制の効いたキリリとした寸法体系が生み出す空間性。
そうした流儀に触れる時期があったのは、ありがたいことだったのだと思います。
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平家納経

2022-02-05 22:56:34 | アート・デザイン・建築


夜中にやっているTVアニメ「平家物語」に惹かれています。
「鬼滅の刃」のアニメーションも圧巻なのだけれど、この「平家物語」の静かな映像の美しさに見入ってしまいます。
正面性のある構図で背景が描かれ、輪郭線は描かず色彩のグラデーションだけで事物の姿かたちと奥行き感を表現し、幽玄なのです。

ちょうど大河ドラマでも同時代が舞台になっていますね。(しかも鎌倉にちょうど設計の仕事があるという幸せ。通うぞ~ 笑)
平家について思いを馳せると、ぼくにとって外せないのが「平家納経」絵巻です。
隆盛を極める平家一門が厳島神社に奉納した「平家物語」絵巻は、一流の絵師や作家によってつくられています。

美の極み。
最初にその存在を知ったのは、画家・有元利夫がエッセイのなかで、平家納経を「汲めども尽きぬ源泉」と評したことを読んだのがきっかけでした。
有元はピエロ・デッラ・フランチェスカなどのルネサンスの古画に影響を受けた画風で有名ですが、その簡素古朴な画風と、平家納経の画風は、どこかで響き合うところがあるのでしょうか。

学生時代にぼくが建築学を通して学んだのは、ひたすら幾何学を出発点とした造形だったように思います。
幾何学から遠く離れた「平家納経」の画風をどのように理解したらよいのかわからないけれど、心の奥底で明滅し続ける存在です。

写真は小松茂美著「平家納経」より。
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ホームページの更新

2021-12-10 21:53:36 | アート・デザイン・建築


近年に竣工した住宅のなかから、写真の準備ができた作品をオノ・デザインのホームページにアップしました。
合計7作品の更新となりました。

2005年の独立以来、16年にわたって活動してきた内容は、もちろんどれも異なるのだけれど、共通しているようでもあり・・・。
はじめは無意識でやっていたことが、だんだんと自覚的になってきたようにも思います。
それは、「モノ」のデザインではなく、「居場所」や「空気感」のデザインをやっていきたい、ということ。
新しくモノをかっこよくつくり上げるのではなくて、既に存在する身の回りのモノを受け入れて、その趣きを引き出すというようなこと。

話題性のある斬新な設計活動をしている建築家でも、住宅を設計している建築家でも、だいたい「建築」という言葉で話をするのだけれど、僕はあまり「建築」という言葉を使うことがありません。
それはやはり、建築家の設計作品に憧れてこの仕事に就いたのではなく、きっかけは、古びたロマネスクの教会とそのまわりに暮らす人々の写真集が深く心に残ったから、ということに繋がっていると思っています。
「建築」というよりは、「居場所」だとか「空気感」ということに関心があるのだろうと思います。
そんなわけで、雑誌やメディア向けの設計活動をしているわけではないけれど、僕のブログやホームページを見て、なにかいい感じ、というふうに思ってくださる方もいて、そんな方々と価値観を共有できるのは、とても嬉しいことです。
少しあらたまったかたちで思いを綴ったり表現できるブログやホームページという媒体は、やはり楽しくありがたいものだなと思います。

よろしければ 下記URLの更新したWORKSページも覗いてみてください。
http://www.ono-design.jp/works.php
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怖い空間とは。

2021-07-11 22:28:12 | アート・デザイン・建築
ぼくの子どもは小学校の特別支援学級に通っていて、日常的に子どもと一緒に登校しています。
そうすると子どもたちや先生方や近隣の方々とも少しずつ顔なじみになっていって、自然とあいさつをするようになって、とても気持ちがよいものです。
普段から学校にお世話になっている感謝も込めて、今年は思いきってPTAの役員をやってみています。

コロナ禍のなかでは低活動状態にならざるを得ないけれど、あいさつ運動や交通安全などに注力して実践すると、多くの方とあいさつもできて気持ちよいものです。
やって大変というより、やってみると気持ちよさと楽しさがあるもんだなあと思います。

ほとんどのイベントが中止になるなか、「夜の学校探検」という企画のリーダーを任されました。
つまりは、真っ暗な学校での肝だめし大会ですね。
ぼくが仕事で設計事務所をやっていることがなんとなく知られているのか、なにかおもしろいアイデアを考えてみてくださ~い、と気軽にふられました。
空間づくりとあらば当然お引き受けするわけですが、さて、怖い空間、こわい空間・・・とは。ん?んん~?
心地よい空間、落ち着く空間、楽しい空間など、いろいろな雰囲気を求めてきたけれど、これまで怖い空間をつくることについては考えたことがなかったし、オーダーを受けたこともない。
まあ、当然ですよね(笑)

人数制限として、6年生だけの参加とのこと。なので、ちょっとだけ大人向け(?)の空間演出を考えました。
でも準備期間も限られているから、なるべく最小限の操作で、最大限の効果を。そんなことをもくろみながらシナリオを描き、皆さんとともに準備しました。

そうしたら! 
緊急事態宣言で、延期に・・・。
せっかく準備したから、延期してでもいつか実現できるといいなと思います。
それにしても、6年生の参加希望は脅威の95パーセント越え!とのこと。ほとんど全員参加じゃないですか。楽しみにしてれているんですね。



怖い空間とはすこし違うけれども、恐怖を喚起させる空間について。
以前に、ベルリンの「ユダヤ史博物館」を訪れたときに、ホロコーストについて記述するコーナーの一環で、必ず通らなければいけない空間がありました。
お化け屋敷みたいに暗かったり脅かされたりするわけではなく、むしろ明るい空間で、なにも変化は起きないのだけれども。



井戸の底のようなヴォイドで虚無な空間。足元に敷き詰められる人面の鉄片と、その上を歩く不安定さ。歩を進めるたびに鳴り響く不気味な音。
映画やバーチャルリアリティーなどの方が、直接的に何かを感じさせるものはつくりやすいでしょうし、現実の空間というのは不自由なものですが、それでも、身体を通してしか感得できないものもあるでしょう。
PTAのイベントで気軽にやるつもりが、意外にも?いろいろと考えさせられました。





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