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成城の家 引き渡し

2013-10-27 17:10:53 | 進行中プロジェクト

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東京・成城ですすめてきた2世帯住宅が完成し、引き渡しをしました。設計のご依頼を受け、案を練り始めてから2年間をかけて、打合せを重ね、じっくりと取り組んできた住宅です。

永らく住み慣れてきた土地での建て替えですから、それまでの生活スタイルも引き継ぎつつ、ゆったりとした土地の魅力を活かすような家にしたいと思いながら設計しました。

結果的に、大きな庭に面して、さまざまな雰囲気の窓辺を散りばめるようにして家をつくりました。それぞれの窓辺のスペースに腰を落ち着けると、同じ庭でも、異なる雰囲気に感じられるように工夫をしました。

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上の写真は、2階のリビングです。庭の緑がなるべく身近に感じられるように、ベンチを造りつけ、その上に大きな窓をつくりました。自然に庭を見下ろせるような窓辺になっています。

その手前には少し籠った感じの書斎コーナーがあり、デスクや棚が造りつけられています。小さな天窓からの光で照らされ、光と陰影の心地よい、趣のある雰囲気になりました。

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ダイニングに面してロッジアが造られています。ロッジアとは、屋根のある屋外テラスのことで、屋外でありながら壁で守られた落ち着いたスペースです。手摺りはあえて木で大きくつくり、包まれたような安心感のある雰囲気を大切にしたいと思いました。

家具がはいり、植栽が馴染んできた数年後、だんだんとこの家独自の居心地の良さが増してくることが楽しみです。そんな様子を、またこのブログで少しずつご紹介できたら、と思います。

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風景を切り取る

2013-08-17 20:31:57 | 進行中プロジェクト

前回に続き、富士の現場の話。

棟上げ後、順調に工事は進み、今日は構造のチェックの日でした。窓枠なども取りつき、それぞれの窓からどのように景色が見えるかが体感できます。

周囲環境に呼応するようにして建物を計画するのはとても楽しいもので、この敷地の前を流れる疎水と緑地を活かすように考えて設計してきました。

模型のイメージ写真は、実際にはこんな感じになります。

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静かで、落ち着いた雰囲気の空間をつくりたい。

ルイス・バラガンの建築のエッセンスを採り入れたような。

おおらかな空間に、ざっくりとした質感の材料。

そこに、選び抜くようにして開けた窓から、気持ちの良い景色が見える。

そんな家をつくりたいと思って設計をしてきました。

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上の写真の大きな窓からは、疎水越しの風景が印象的に望めます。この窓はベンチのような深い出窓になっていて、窓辺に腰かけることができるようになっています。そこで本や雑誌を読んだり、コーヒーを飲んだりする時間が心地よいものになるように。ただそれだけを考えて設計をしています。窓には大きな庇がかかっていて、今日のような強い日差しを遮り、帽子のツバのような雰囲気でどこか安心感をもたらしてくれます。

窓の手前に置かれた大工さんの作業台は、さながらダイニング・テーブルのよう。

現場でのチェックや打合せを終えたあと、少し涼しくなってきた風通しを感じながら、場所の雰囲気に身を浸すのを楽しみました。

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なげもち

2013-08-03 23:52:24 | 進行中プロジェクト

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静岡県富士市で着工した住宅が、上棟をむかえました。

敷地は小さな用水路に面していて、印象的な緑地が庭先に広がっています。静かで奥まった敷地の雰囲気を活かすことについて考えていると、シンプルな間取りのなかに、まわりの環境を印象的に切り取るような、額縁のような窓のあり方がイメージされてきました。そのことを単純にシンプルに形に置き換えたい、そんな風に思いながらこの住宅を設計してきました。

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いわゆる形式通りの玄関がない、シンプルな間取りです。玄関はないけれども、そのかわりに土間スペースがつくられています。小屋組みがあらわしになった、ざっくりとした雰囲気の空間。ガラス越しに、向かいの緑が気持ちよく眺められることを体感して、設計者としては悦に入る瞬間でした(笑)

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上棟にあたり、お施主さんの計らいで投げ餅が行われました。地域によって作法も様々なのだと思いますが、富士では、竹で弓をつくり棟にくくりつけて、「今日、投げ餅をやるよ~!」という合図にするのだそうです。竹弓をつくる職人さんたちも、上棟作業を終えてちょっとひと安心、という感じだったのでしょうか、和気あいあいとした雰囲気でした。

投げ餅の定刻になり2階にあがって見ていると、今か今かと待ち構える子供たちをはじめ、多くの人たちが集まってきます。大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮なイベントなんですね。

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ぼくも餅やお菓子を投げるのに夢中になってしまい(笑)、餅が宙を舞う華やかなシーンの写真を取り損ねてしまいましたが(泣)、思い出深い一日となりました。家を建てるというのは、地域のなかにはいって人と人とがつながること。地域のみなさんへのご挨拶もかねて、このような行事が文化としてずっと残っていってほしいですね。

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成城の家 上棟

2013-05-28 23:46:27 | 進行中プロジェクト

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東京・成城で建てている2世帯住宅が、上棟をむかえました。

ゆったりとした敷地に、シンプルな切妻型の屋根をもつ、2階建ての木造住宅です。シンプルである分、屋根の勾配や高さの感じなどについて吟味を重ねてきました。上棟の時はそれが良かったかどうかが直感できるタイミングなだけに、少し緊張もします。

骨太の屋根たるきが等間隔に並び、空間全体として少し抑制の効いたプロポーションになっているのがとても心地よく感じられました。ソファの置かれるコーナーに身を置いてみると、ぐっと深く張り出した軒に包まれるような、守られるような感覚ができあがっていました。どうやら、うまくいきそうです。

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広々とした開放的な敷地だけれども、そのなかに落ち着く「奥」をつくりたいと思って設計をすすめてきました。

趣のある質感。光。陰影。

そんなことを大事にしながら詳細設計を詰めていきたいと思います。

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桜の樹の傍の教会

2013-04-06 16:44:04 | 進行中プロジェクト

進行中の現場への往復も、気持ちの良い季節になってきました。

南馬込の2世帯住宅では、棟上げを終え、アルミサッシは外壁の下地の設置も進みました。壁で囲まれた場所、外へ開かれた場所が徐々にはっきりとわかるようになり、現場での打合せやチェックと同時に、できあがりつつある空間に身を置く楽しみもでてきました。

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写真は3階のリビングダイニングに面したロッジアの空間。屋根のある屋外テラスになります。北側に位置するのですが、天窓がつけられているのでとても明るい空間になりました。周囲を宅地に囲まれた3階ですから、風景を眺めるためのスペースではないのですが、その分、テーブルとイスを置いて、ほっと息をつける場所になりそうです。

成城の2世帯住宅も地鎮祭を迎え、いよいよ工事が始まります。少し前の話になりますが、桜満開の地鎮祭の日、ある教会に立ち寄りました。

カトリック成城教会。この教会は今井兼次という建築家が設計し、昭和30年に完成しました。周りの建物がどんどんと変わっていく中で、この教会はほぼその姿を変えることなく、ずっとあり続けたことになります。

最初から植わっていたのか、後から植えられたのかはわかりませんが、この教会の傍に寄り添うようにして、あるいは教会が寄り添うようにして、なのか、大きな桜の樹があります。この日、桜は見事な満開でした。

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幾度となくこの教会を訪れましたが、いつ来ても、このままこうあり続けてほしいと思える何かが、この教会にはあるように思います。単純な切妻の三角の瓦屋根に、鐘楼が寄り添ったかたち。縦に細長く大きな窓。この窓は木でできていて、ペンキがとっぷりと塗り重ねられています。古いガラスは歪んで中は見えませんが、ぼんやりと映る照明の気配を見ていると、心の奥底にぽっと明かりが灯るような。

宗教的な含意の込められた小さな図像が散りばめられた、やさしい教会。こんな単純で当たりまえのかたちの教会は、もし現代に設計コンペになったら、決して選ばれることはないんだろうな、と思います。だからこそ逆に、妙に愛おしく思えます。そう、コンペだったら、この教会は絶対に生まれないだろうし、チームプレーでディスカッションを重ねても、このようなあり方には辿り着かないでしょう。今井兼次という一人の個性が、個性的な設計技術をひけらかそうというよりも、建物の主題と敷地に思いを馳せて、一生懸命考えてつくったからこそできあがった建物であり空間なのだろうと思います。

さして特別ではなく、当たりまえと言えば当たりまえ。でありながら、とても深遠。もしかしたら、今、もっとも重要なことなのではないでしょうか。

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