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木の枠

2014-05-22 23:13:10 | 進行中プロジェクト

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埼玉県川口市で建設中の住宅も、大工さんの工事が佳境をむかえています。
家の内部の造作もひとつひとつ出来上がってきました。
窓回りには、部分的にタモの無垢材を使って造作を施しています。幅広の枠材の木目を見るだけで、なんとも嬉しい気分になるのは、職業の性でしょうか(笑)

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これから据え付けられようとしているタモの造作材も、どっしりと存在感があります。上の写真は、メインの庭に面した大きなFIXガラスを納めるための枠材です。丸く削り出して、無垢の木の持つ風合いを引き出そうと考えました。

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上の写真は、和室の入口に至る路地の風景。細長く天井の高い空間で、東に面した高窓からは気持ちよく自然光が入り、印象的に外の緑を切り取ります。
様々なプロポーションの空間が散りばめられ、なかを歩き回るのが楽しい家になりそうです。

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片倉の家

2014-03-13 23:22:23 | 進行中プロジェクト

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横浜市で建設中の「片倉の家」は、大工さんの工事が佳境にはいっています。

敷地の形状と、周囲環境をよく読みこみながら、部屋の配置と窓の大きさを検討しました。家の中心となるリビングは平屋になっているので、屋根の形がそのまま天井にあらわされています。ぎゅっと低めに抑えられた壁の端から、すうっと天井が高くなっていく。その空間のなかにいると、親密で、守られたような、包まれたような、不思議な感覚があります。

一見シンプルな造形ですが、屋根面すべての角度が異なり、大工さんの作業は精緻を極めています。ご苦労をおかけした分、きりっとひきしまった雰囲気になりました。

床板には幅が広めのブラックチェリーのフローリングを選びました。床から何かたくさん飛び出ているのは、紙片です。冬は木が乾燥しやせているので、床に貼っていく際に、紙をはさみながら作業をします。こうすることで、夏場に木が湿気で膨張しても、それを吸収するだけのスキマをあらかじめ見込んでおくというわけです。

工事作業中の照明が、天井をふうわりと照らしあげ、品のある落ち着いた雰囲気の空間になりそうなことを予感させてくれました。

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大きな屋根のある家

2014-02-17 11:01:35 | 進行中プロジェクト

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木造住宅の魅力のひとつとして、屋根を美しく掛ける、ということがあると思います。モダン和風の住宅設計の名手だった吉田五十八は、「100坪の屋根の掛け方をうまくまとめられないようじゃ、1人前の建築家とはいえないよ」と話していたそうですが、それだけ、大きな屋根の掛け方には難しさも伴う、ということでしょう。

埼玉県川口市で建設がすすんでいるこの住宅は、100坪の屋根、とまではいいませんが、しかしそれに近い大きな屋根のかかる住宅です。真四角の間取りではなく、数寄屋のように出っ張ったり引っ込んだり、複雑な間取りをしています。そこに、単純な切妻型の屋根を掛けました。屋根の形はシンプルだけれども、その下にある間取りと構造材との関係を整理して設計するのは、とても苦労をしましたし、それ以上に、構造設計者にも工事関係者にもご苦労をおかけしました。

頑張った痕跡が見えなくなることは、寂しくもありますが、その分、できあがった姿が凛とした雰囲気を宿してくれることを期待してもいます。

屋根は壁面から大きく張出し、下にはゆったりとした軒下の空間が生まれています。屋根の魅力は、屋根面そのものよりも、軒下の空間にあるようにも思います。その魅力を損なわないよう、軒先の処理や換気口の付け方などにも、工夫が必要になります。

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大切なのは、そうした大きな屋根に守られた室内が、いかに居心地よくあるかということです。いつもの設計のように、部屋の内と外のつながり方にしっとりとした奥行きが感じられるように、窓の作り方に工夫をしています。和室の窓からは、既存のモチの木がよく見えます。

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敷地内に、かつて大きなケヤキの木がありました。そのケヤキを使って、室内の主要な家具を作ります。既存の木を活かすことや、ケヤキの家具を作ること。それらを出発点として家のデザインや材料も決まっていきました。全体が先にあって、後から部分を考えるのではなく、部分から始まって全体が決まっていくというプロセスには、独特の面白さがあります。

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大きな出窓の家

2013-12-18 18:15:58 | 進行中プロジェクト

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富士に建てている住宅が、もうすぐ完成を迎えます。行政の検査や、設計のチェックのために訪れました。

寒いけれどもとてもよく晴れた午後。現場に着くと、いつものように傍らを流れる疎水の水音がちょろちょろと聞こえます。なんともいえず落ち着いた気分になるこの音。そしてその向こう側に広がる緑地。

とても静かなこの雰囲気に寄り添うように、家の設計を考えてつくりました。窓の少ない、土色の壁の脇をまわりこんで、家にはいります。新しい家というよりも、古くて慎ましい礼拝堂にはいるような気分を、家の佇まいに求めていました。

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この家には、道から見てわかりやすい玄関というものがありません。庭に続く土間の出入口が、いわば玄関がわり。ですから、木で窓枠をつくりガラスをはめ込んで、土間の中からも外の緑が気持ちよく感じられるようにしたいと思いました。屋根と壁に囲まれた、少し陰りのある雰囲気が心地よく感じます。

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土間から家のなかにはいると、リビングには大きな出窓がひとつ。

外の緑や木漏れ日が居心地良く感じられるように、窓の位置や大きさに注意を払いました。腰かけるのに十分な奥行をもった出窓には、初冬の日差しを受けて、木漏れ日が印象的に映り込んでいました。

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出窓の外には庇がついて、その軒裏が見えるとどこか安心感があります。

な~んにも無いのだけれど、居心地がよい。そんな空間ができたように思います。ゆるゆると午後の時間が過ぎていきました。

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片倉の家

2013-12-07 23:54:05 | 進行中プロジェクト

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横浜・片倉の家が上棟しました。旧家に遺された茶道具などを収蔵し、一部は再利用して建て替える計画です。茶庭のつくばいや紅葉も残しました。昔からあるそれらの茶道具や庭木が、しっくりと馴染む家にすること。おのずと、新しい家の設計は、和風の趣のあるものになりました。炉のきられた和室も備わります。

昔は家のまわりは林だったんですよ、今はもう家が立ち並んでしまったけれど。お施主さんからそのような話を聞きました。そういえば、最寄の地下鉄駅から階段をあがってくると、最初に見える光景は、地山の紅葉した眺め。風に葉が散り、そんな光景を眺めながら街道沿いの坂道をしばらくあがっていきます。現場の思い出は案外、こういう行き帰りのシーンがよく思い浮かぶものです。現場に着くまでの間、黙々と歩きながら、そんなふうにして家に辿り着く時間も、家の一部なんだな、と思うことがあります。

少し前、コンクリートの基礎ができあがった時のことでした。現場に来てチェックをしていると、思わぬ光景に思わずニンマリとしてしまいました。

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これは猫か!?それにしては大きい気もするけど、きっと猫だな。3歩だけ足跡をくっつけて、どこかに行ってしまった。コンクリートを打ち終わって、職人さんが帰るのを待ってたな、そんな風に思うと可笑しさがこみあげてきました。

上棟式の折、あった、ありましたね、見ましたよ足跡! という話でお施主さんとも盛り上がったのですが、なんか足跡ちょっと大きかったですよね、と切り出したところ、タヌキかもしれないね、とお施主さん。え、タヌキ・・・?いるんですか? と聞くと、ええ、いますよタヌキ、歩いてます、と、近所に住んでいる監督さん。

タヌキが職人さんに見つからないようにこっそりと、隙をうかがっていたのでしょうか。かつてに比べるとうんと生息範囲も狭くなってしまったのでしょうけれど、まだタヌキが健在な街。そんな風土を感じながら家をつくることができるのは、妙な楽しみがあるように思います。

タヌキの足跡も、木の骨組みの下にそっと隠れて。

かつて林があった頃の風情と、旧家での思い出も、家の佇まいのなかに宿して。

じんわりと味わい深い家になるといいなあと思います。

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