ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『太平洋戦争 - 上』 - 5 ( 独ソ不可侵条約と日本 )

2021-11-24 21:18:43 | 徒然の記

 平沼内閣で「小田原評定」が続けられていた昭和14年の8月23日、突如「独ソ不可侵条約」の締結が発表され、国際政局に大波乱を呼びました。この報を受けると、さすがの陸軍も色を失い、政府も大いに狼狽します。

 「ドイツの行為は、日独防共協定違反であるから、」「これまでの三国同盟についての協議は打ち切る、と有田外相は早速大島大使に、抗議を命じた。」「ところがすっかりドイツびいきの大島は、これをすぐにドイツ政府に取り次がず、」「9月18日になり、やっとドイツに伝えた。」

 大島武官は外相の命令を無視し、とんでもないことをしていますが、彼の独断でなく、国内の親ナチ勢力の指示があったのではないかと思います。ネットでは、こんな情報があります。

 「防共を標榜し、ドイツと共に反ソを課題として討議していた平沼は、」「日本政府を無視し、容共姿勢に転じたドイツのやり方に呆れ、」「8月28日、〈欧州の天地は、複雑怪奇〉という声明と共に、総辞職した。」

 大島武官は、ドイツへの政府の抗議を、平沼内閣の総辞職後に伝えたということになります。大島氏がいくら有能だったとしても、政府の重大な命令を遅らせるなど、陸軍の後ろ盾なしでは考えられません。

 どのくらい著名な人物なのか知りませんが、氏がニューヨーク大学のスナイダー教授の談話も紹介しています。

 「驚いた !   まさか  !  信じられない  !  」「これは今世紀の、最も驚くべき突発事件である。」「ヒトラーは、ボルシェビズムを文明の敵として罵倒し、」「スターリンは、ナチスをファシストの怪獣と非難してきたのである。」

 「しかし突然、この戦いは中止されたのである。」「ナチとソビエトの独裁者は、互いの利益のため結合し、」「自らの利益になる間だけ、提携関係を維持しようとしている。」

 ドイツは直ちにポーランドへ攻め入り、ポーランドと同盟関係にあるイギリスとフランスが、戦争に巻き込まれます。平沼内閣の後を受けた阿部信之陸軍大将の内閣で、第二次世界大戦が始まりました。当時の朝日新聞の記事を、氏が紹介していますので、これも一部を転記します。

 「イギリスの宣戦布告と共に、事態は遂に、全欧の大戦と化した。」「全体主義が勝つか、民主主義が勝つかの、各国の運を賭する大戦たらんとする感がある。」「勝利か、しからずんば死かと、民族の運命を賭したヒトラー総統が、」「この惨劇の作者であり張本人であるが、翻って、」「総統を立たざるを得なくした、ベルサイユ条約の起草者が、」「この責任を負うべきであるか、それは将来の史家の断ずるところであろう。」

 現在の朝日新聞は、独裁者ヒトラーを極悪人として非難し、かっての安倍内閣を倒すため、「独裁者安倍の暴走を許すな。」と、ヒトラーと並べて連日酷評していました。戦前の朝日は、ヒトラーを立たせたのはベルサイユ条約にも責任があると、暖かい理解を示しています。

 日本政府を蔑ろにしたヒトラーの変節も、ひどいものですが、戦後にヒトラー批判一本槍に変節した、朝日新聞もひどい会社だと思います。

 「このようなドイツ軍の圧勝を見て、日本の枢軸派が黙っているはずがない。」「陸軍や参謀本部の急進派将校たちは、」「再び熱狂的な、ナチ崇拝のムードを生み出した。」

 ヒトラーと朝日新聞の変節もひどいのですが、説明を書いている氏の軽薄さにも、眉を顰めたくなるものがあります。大衆小説作家が読者を喜ばせるため、軽い文章を書きますが、教授らしくないトーンになっています。

 「すでに阿部内閣は退陣し、この時枢軸派にとって、」「最も好ましからざる人物、米内光政が首相になっていた。」

 頻繁に内閣が交代し説明が面倒なのか、話が飛びますので、前後のつながりが見えなくなります。当時の内閣をもう一度、一覧にしてみます。

 1. 近衛内閣  昭和12年6月から、14年1月まで

    2. 平沼内閣  昭和14年1月から、14年8月まで

    3. 阿部内閣  昭和14年8月から、15年1月まで

    4. 米内内閣  昭和15年1月から、15年7月まで

    5. 近衛内閣  昭和15年7月から、16年7月まで (・・第二次近衛内閣  ) 

 阿部首相は、三国同盟締結が米英との対立激化を招くとし、大戦への不介入方針を掲げたため、陸軍の反対を受け、およそ5ヶ月で退陣しています。

 「枢軸派は米内内閣を倒すため、行動を起こした。」「憲兵隊による外務省幹部の喚問、親英米派要人の暗殺計画など、一連の嫌がらせの後で、」「陸相畑俊六を、単独辞任させた。」「陸軍は後任推薦を拒否することによって、米内内閣を総辞職に追い込んだのである。」

 どうしてこういうことができるのかと言いますと、「天皇の大権」「軍務と政務の区分」「統帥権干犯」など、複雑な要因が絡みます。今後「憲法改正」をし、自衛隊が軍隊として再建されるときは、こうした軍の横暴が生じないよう工夫することが重要です。今は本題でありませんから、ここでは言及せず、次回も氏の著書に沿い歴史をたどります。

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