ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

竹中平蔵氏の出演した、動画2件

2013-04-20 09:40:27 | 徒然の記

 You Tubeで、氏の出演する動画を、二つ見た。

 一つは石原都知事 ( 当時 )との対談で、今ひとつは田原総一朗氏との放談だ。小泉内閣で金融担当大臣、総務大臣、郵政民営化担当大臣を勤めていた氏は、当時は毎日のようにマスコミに登場していた。

 数字に明るく話の筋道が立ち、何を聞かれてもよどみなく語る。優秀な官僚たちが相手でも、議論に負けること無く、どこまでも主張を貫くしたたかさを持つ。政策というものは、難しくて、プロフェッショナルなものだから、専門家でない素人が、訳知り顔で話をするのは間違っていると、一刀両断に切り捨てる。

 彼が主に批判しているのは、テレビのワイドショーで、無責任に政策を批判するタレントや、不勉強な政治家たちだ。愚かしいマスコミが、間違った情報を社会に溢れさせるから国民が駄目になると憤るが、これには私も同感だった。

 何でもかんでも政府に求めるのでなく、一番大切なことは、国民一人一人が「自助・自立」することであるという。これについても同意せざるを得ないが、「経済成長がすべての問題を解決する」という、チャーチルの言葉を引用し始めた頃から、気持ちが離れて行った。

 相変わらず、彼が信奉するのは「経済のグローバル化」と、「規制の撤廃」であり、経済的弱者は、国内から消えて行くべしという主張だ。彼が例としてあげたのが、JAL、デパート、農業等で、こうした弱い会社や、業種を残そうとするから、経済全体が弱くなると断定する。

 巧みな語り口にひきこまれるが、ふと立ち止まって思い返すと、要するに彼が言っているのは、弱肉強食の世界の是認と肯定である。政治家は、果たしてそれで良いのかと、首を傾げずにおれなくなる。

 力のある日本企業は、どんどん外国で事業を展開し、大きく成長すれば良いと力説する。それでは、国内での雇用や物作りが、全部無くなるのでないかと言う田原氏に対し、本社機能と研究機関、それと特殊な品物の製造が残りますから、全く無くなると言うことではありません、と明快に応える。

 グローバル企業の行き着くところは、多国籍でなく無国籍であると、私は認識している。所属する国を無くした巨大企業は、国を越え政府を超越し、誰にも制約されず拡大して行く。

 自社の利益のみを追求し、役員たちが信じられないほどの多額な報酬を手にし、貧富の格差が、世界にどれほど広がろうと、人間が飢えようと死のうと、気にもかけない。氏の理論の行き着く先は、殺伐として弱肉強食の世界だ。そんな国になるのなら、国民をないがしろにする独裁と専制の社会主義国と、どこが違うというのか。

 果たしてこのような状況を、私たちは、理想社会と思えるのだろうか。

 都政へのアイデアを聞きたいと、石原都知事が尋ねると、氏は即座に答えた。

 「3つあります。1つは法人税の引き下げ。日本の法人税は高すぎるのです。」「2つ目はハブ空港の建設。これが整備されないと東京の発展は、諸外国に負けます。」

「最後は、東京大学の民営化です。寄付の自由化をして、寄付金で経営できるようにすべきです。オックスフォードだって、ハーバードだって、外国の一流校は全て私学なんです。」

 法人税の引き下げや東大の民営化には、ひっかかるものがあるが、門外漢なので、私はこれらに反論する材料が無い。氏が自ら述べるところによれば、彼は現在、インドの財閥経営者のアドバイザーをしているとのことだ。経営者は年に2回、世界の一流学者を高額で招き、終日世界の政治経済情勢に関し、討議をさせるのだという。井の中の蛙みたいな日本の経営者は、こうしたグローバルな企業家に負けてしまうと言う持論だ。

 言外に、自分が世界の一流学者であると言う、自己顕示が見えるけれど、私が理解したもっと肝心なことは、

 「氏は確かに素晴らしい学者だが、無国籍者であり無定見である」という事実だった。

 合理主義者である氏は、認めようとしないが、私のように一般庶民でも、曖昧なものや、社会の無駄と見えるものでも、そうそう無下にできない効用がある、と知っている。

 消えてなくなって良いと、氏が述べる農業にしてもそんなことはあるはずが無い。日本の国から農業がなくなり、水田も田畑も消えてしまったら、どれほど人心が荒廃することだろう。

 右翼サイドの人びとから、激しい攻撃を受けているのも当然の話だと納得した。

 氏は、左翼の人間たちも蔑んでいるが、経済一点張りで、アメリカのグローバル企業の代理人みたいな口調で喋り、日本の国を、歴史や風土や文化面から見ようとしない。彼は魂のない優秀な学者であり、政治家でもある。こういう危険人物を、安倍総理が政府の顧問にしたという話だが、信じられない思いがする。

 朝日新聞の若宮氏も厄介だったが、竹中氏も劣らず食えない人物だ。

 十人十色で多様な意見があり、それが社会だと理屈では知っていたものの、いざ目の前で氏のような人物を見ると、私のような小心者には、とても住めない政治の世界だと実感する。

 こんな学者に言いくるめられないよう、安倍総理の健闘を祈るのみだ。

コメント
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