「疲労により沈思できず」「耐え難い寒風」「病気のためすべて夢の如し」
いずれも藤原定家あらわした「熊野御幸記」からの描写だ。
定家は、後鳥羽上皇の熊野三山参詣に随行してこれをあらわしたというが、まさに旅は当時の人にとって命がけだったのだろう、それは信仰のなせるわざかー。
これは昭和42年国宝になっているが、国宝がもうひとつ出品されている。
「一遍聖絵」だ、全部で12巻とかいてあったが、踊念仏のところしか展示されていない。
三井記念美術館は「旅」の展覧会、チケットはとっくにもらってあるのに今頃になっていく。
展示は前半はこの美術館の所蔵する小物、後半が借り物で中心になる。
カタログも前半の展示には触れていない。
さて「伊勢参詣曼荼羅」もある。遠くに富士山を拝むが伊勢から富士山が見えるものかちょっと考えた。
「西行物語絵巻」もある。実は「西行物語絵巻」には三種類あるそうだ、今回出品は国立博物館のもの。
若冲もある、白黒反転させた「拓版画」とよばれるものだそうだ。
しかしこの展覧会の一番の驚きは長さ26mに達する金屏風「大日本五道中図屏風」ではなかろうか。
江戸から長崎までを一挙に描いたものだが、江戸から大津あたりまでと、大阪から長崎までと二つの箱に分蔵されて伝わったという。
これをもっているのがこの美術館だからやはり三井はたいしたものだ。
日本画の宿命として展示替えが頻繁なので好みの方は何回か通われることだろう。