写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

手渡し型詐欺

2012年02月22日 | 生活・ニュース

 ここ数年、高齢者を狙い、電話を使っての「振り込め詐欺」が横行していることは、テレビや新聞、市の広報誌やパンフレットなどを通してよく知らされている。それでもこの犯罪は止まることなく発生し、昨年は6,255件、被害総額は111億円だと報じている。

 判断力の衰えて来た高齢者に対して言葉巧みな電話攻勢で、多額な金をいとも簡単に振り込ませるという手口は、言い方は適切ではないが「敵ながらあっぱれ」ではある。この犯罪の特徴は、直接顔を合わせることなく金を巻き上げるところにある。事後となっては何一つ証拠が残っていないため、完全犯罪となることが多い。

 今夕のニュースによれば、この「振り込め詐欺」に似た新種の「手渡し型」の
詐欺というものが出てきたという。犯人が直接受け取りに来るという大胆なものだ。まず①風邪をひいたという声で息子が電話をしてくる。「ケータイを落として電話番号が変わった」旨を告げる。 ②翌朝、「会社の金を借りてやった株で失敗した。横領で捕まることになるが、夕方、監査があるまでに返せば許してもらえる。家に取りに行くから用意してくれ」と頼む。 ③数時間後、また電話して「用意できた? 逃げてはいけないので俺は会社に残れと上司からいわれた。代わりの者に取りに行かせるから」という。 ④何ら疑うことなく、老親は取りに来た者に高額の金を渡す。

 過去にいろいろな犯罪があるが、高額な金を狙った誘拐犯罪では、犯人は必ず金の受け渡しの現場に出てこなければ金は手に入らない。しかしこの「手渡し型」の詐欺は、まさに白昼堂々と被害者宅で金を受け取るという大胆な犯罪である。高齢者とあっては犯人の特徴を的確に記憶してモニター絵を描いて犯人逮捕とまではいかないだろう。

 警察や金融機関窓口の厳しい監視のもとで実行が困難になってきた「振り込め詐欺」に代わり、さらに巧妙な「手渡し型」詐欺というものである。警戒していても「息子の一大事」ということで、たちまちパニックに陥る老親の弱点に付け込んだ卑劣な犯罪ではある。

 犯人たちも、こんなことにうつつを抜かすことなく、この「小説よりも奇」な発想力と知恵を、もっとましなことに使ってみてはどうだろう。演技力や話術もありそうだ。今すぐにでも考え直して、いい事業を起こすなり、いい仕事を見つける努力をしてほしい。振り込め詐欺もあたかも宅配便の集荷のように、わざわざ郵便局まで振り込みに行かなくても、家にいて手渡しできるように便利?になったということか。