写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

応急同級生

2012年02月09日 | 生活・ニュース

 「君は、身体がどこか悪いんか?」。新幹線に乗り、向かい合って座っているとき、N君が心配そうな顔をして私に訊いた。「うんまあ、年なりに色々あるが……」と、言葉を濁して答えておいた。久しぶりに会う友から見ると、元気がなさそうに見えたのかななどと、少し気になっていた。

 年に数回、小中学時代の仲間が声をかけ合って昼食会をやっている。昨年、「2月に日帰りで下関にフグを食べに行こう」ということが決まっていた。世話役は現役時代に駅長をやっていたU君。人集めから切符・食事するホテル、空き時間のつぶし方など綿密な計画を立ててくれた。

 年が明けて、U君が手作りのパンフレットを作って話に来た。参加する同級生は17名しかいないという。女性はわずか3人。しかもその内のひとりは、病気の後遺症でやや歩行に難がある友の奥さんだ。荷物を持ったり階段を登ったりするとき、ほんの少し手助けがいるので一緒に参加するという。大歓迎である。

 「JRの格安キップでいくためには最低20名くらい集めたいんだが……」という。「心当たりの同級生に、私も声をかけてみよう。奥さんでも誰でもいいから参加したい人がいたら一緒に行ったらいいのになあ」と答えておいた。

 2週間後、再びU君がパンフレットの改訂版を持ってやってきた。「最終的に参加者は18人になったよ」。U君が帰った後、もらったパンフレット裏面の参加者リストを見て驚いた。参加するとも言っていないのに、うちの奥さんの名前が載っている。すぐに奥さんに確認すると、まんざらでもない。この瞬間、一緒に参加することが決まった。

 かくして中学の同級生の日帰り旅行に、奥さん帯同者が2組となった。1組は言ってみれば主人のお世話係で付いていかざるを得ない奥さん。うちの奥さんはというと、人数合わせというか、知らぬ間に参加者になっていた。とにかく同級生でないことは明らかである。

 そうしてみるとあの時、N君が私の体調を気遣ってくれた理由は、私が体調不良で介護をしてもらうために奥さんを連れて来たと勘違いしたからではないかと、今気が付いて苦笑している。おかげで当日、介護ならぬ監視されながら、旧友と楽しい1日を過ごすことが出来た。友に感謝である。
   ( 壇ノ浦御裳川公園にある平氏総大将知盛像)