写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

老兵は消え去るのみ

2014年12月08日 | 岩国検定

 民間有志10人で立ち上げた岩国検定実行委員会の活動は、この11月30日に実施した第3回検定試験をもって休止することにした。会員も、最後は7人に減ってはいたが、その分、1人1人のパワーは倍増していたように感じている。

 5年前、ご当地検定である「岩国検定」を実施するなんて思ってもいなかった。2009年の年の暮れ、お隣の周南市で「周南歴史検定」とやらが実施されたことを新聞で知った。「検定ってなに?」。直ぐにネットで調べてみると、日本全国、歴史や観光資源のある100余りの名立たる町は、観光や商業の振興、街おこしを目的として「ご当地検定」というものを実施していた。

 「錦帯橋を世界遺産に」とのキャッチフレーズで動いている岩国が、ご当地検定をやっていないことを知った。何故だろうと思い、公的機関など心当たりの関係各所を当たってみたが、そんな動きはどこにもみられない。それなら我々民間有志で「岩国を愛し、岩国に誇りを持とう」という目的で、ひとつやってみようではないかと立ち上がったのが「岩国検定実行委員会」であった。

 決して若くはない男女があつまり、「ああでもない、こうでもない。こうした方がいいのでは」などと言いながら岩国のご当地検定を作り上げてきた。3度にわたる50問の問題作り、好評だったテキストブック「いわくに通になろう」の出版、そしてそのCD版の発行。苦しいことや、困難なことは色々あったが、振り返ってみるとそれ以上に楽しいことの方が多かった。

 こんなことを始めて、岩国に関しての知識に疎かった自分が、一番勉強になったことは大きな成果であった。岩国で育ったにしては、岩国のことを何一つ学ぶことなく大人になっていることが恥ずかしくさえ思われた。私と同じような人のためにも、テキストブックは絶好の冊子といえるだろう。こんな冊子を出版出来たことは、心底誇らしく思っている。

 素人の民間有志として本当によくやったと会員と共に自画自賛しているが、残念ながら実行委員会をいつまでも継続していく力がない。岩国の皆さんに一石を投じた積りであったが、その波紋は期待したほど大きく広がることはなかった。それは偏にリーダーの頑なまでも、公的機関への働きかけのなさであった。

 そのことははっきりと認識していたが、、敢えてそれを貫き通した。よその町と同じように、公的機関のどこかが自らの意思で民間有志の手から取り上げてくれるのを期待していたが、残念ながらそんな様子は今もってない。かくなる上は、岩国のこれからを担う若い人たちが、岩国の現状に自ら気がつき立ち上がってほしいと願うだけである。そうでないと、老兵は死ぬこともできず、ましてや消え去ることもできない。