毎年のことではあるが、11月の半ばから喪中欠礼のはがきが届くようになる。つい先日、新入社員のころから私的にも付き合いのあった後輩の奥さんが、1年半の闘病のあと、今年亡くなったことを知った。返す言葉に迷った。
そんなはがきの届く中、趣旨の異なるはがきが1枚送られてきた。「年賀状出状を遠慮させていただくとともに貴方からの年賀状も辞退させていただく」と印刷されたはがきであった。その理由としては「思うところあって」としか記されていない。年は私より1つ年下のTさんである。スポーツマンのいい男だった。
「思うところ」が何なのかは知るべくもないが、Tさんの思っていることは分からないでもない。私は定年となり、仕事上儀礼的に出していたものを取りやめた後でも、毎年200枚ほどの年賀状を書いている。その中には、まだ儀礼的というか、それほど親しくはないのに、途中でやめることも出来ないまま惰性で書いているものが、かなりの枚数確かにある。
今年もらった年賀状にも「この年賀状をもって、以後年賀状を出すのを止める」ということを書いたものが1枚あった。かなりの年配者で、書くことが体力的に負担になったことが理由であった。私もいい年になった。年賀状を全く出さないというつもりはないが、惰性で書いているものについては、そろそろ「出さない宣言」をしてもいいのかな、などと考え始めている。相手もころ合いを測っているように思うがどうだろう。
「年に1度の年賀状くらい出した方がいいよ」という意見もあるだろう。しかし、気持ちのこもらない年賀状を出してみても、かえって迷惑になるかもしれない。毎年この時季「今年はどうしよう」と悩み、出さなかった人から年賀状が届き、正月早々に何十枚もの賀状を慌てて出すことを繰り返している。Tさんのような割り切りが出来ないまま今年も年賀状を書くかどうか、結論はまだ出ていない。相撲の立ち会いのように、両者が阿吽の呼吸で同時に出さない、というような良い方策はないものか。年末恒例のちょっとした悩みである。