写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

捨てられないもの

2007年10月26日 | 生活・ニュース
 なかなか捨てられないというものがある。古い写真・古い年賀状など思い出に関連したものが多い。

 記憶を形に残しておきたい心理からだと思う。普段は決して見ないものばかりであるが、捨てるとなるとなかなか決心がつかない。

 文庫本も、その一つだ。昭和30年代、1時間に1本走る汽車に乗って通学していた。かばんの中には、いつも安くて小さな文庫本を入れていた。それらは今なお私の書棚にびっしりと並べて置いている。

 セロハンのように薄くすき通った紙のカバーが掛けられているが、朽ちて破れているものが多い。ことあるごとに妻からは「この汚い本は、もう捨てましょう」と言われる。

 確かに見栄えは悪く、場所は取り、ほこりっぽくもある。しかも最近は取り出して読むこともあまりない。しかし、いつまで経っても捨ててしまう決心は、なかなかつかない。どの本にも私の青春時代の思い出が閉じ込められているからだ。

 先日、久しぶりにその書棚の前に立ち、古い文庫本を開いてみた。ところどころに赤インキで線が引いてある。そこを立ち読みしていると、ふと青いレモンの香りがしてきたように感じた。
  (写真は、赤い線を引いてある「文庫本」)
   (2007.10.25 中国新聞「広場」掲載)

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こまちさん (ロードスター)
2007-10-29 08:34:09
俳句は音痴ですが、踏青さんのところにはよく立ち寄らせてもらっています。写真も素敵なブログですね。
よろしくお願いいたします。紀ノ川、いい響きのする名前です。
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ロードスターさん (こまち)
2007-10-28 18:29:28
我が家ではロードスターさん 踏青さんと話題に名前がでます。
実は俳句を少したしなみますので 踏青さんからのルートです。
こちらこそよろしくお願いいたします。
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レモンティーさん (ロードスター)
2007-10-28 06:48:05
中国新聞のブログを読みました。投稿も頑張ってください。
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こまちさん (ロードスター)
2007-10-28 06:46:31
ようこそおいでくださいました。
どんなルートからでしょうか。
「青いレモンの味」とは、昔の歌にありましたね。それを思い出したものです。
これからもよろしくお願いいたします。
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読みましたよ (レモンティー)
2007-10-27 21:54:40
わあすごいなあ、また出てる。
と、思いました。
青いレモンの香りってどんなんでしょうね。
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レモンの香り (こまち)
2007-10-27 13:24:28
ほんとうに本の処分はむつかしいです。
私も今ちょうど書棚の整理をしているところ。
秋の夜長 読書ではなく本の整理を。

智恵子抄 や一握の砂などでてくるとついつい時間を忘れて 青春の思いにひたってしまって・・・・

青いレモンの香り いい表現ですね。
蜜柑どころの紀州からのコメントでーす。
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