テレビで、朝食が「世界一」だと評判の「神戸北野ホテル」のことをやっていた。総支配人・総料理長の山口浩が、フランス人の師から贈られたヨーロピアンスタイルだという。
朝食のメニューは、天然酵母を使用した焼きたてのクロワッサン、バターの香りで食欲を誘う焼き菓子のフィナンシェ、そして国産栗の花のハチミツやハム、リンゴやラズベリーなど果物そのままの食感と味を提供する手作りのジャム。極め付きの「飲むサラダ」という別名があるジュースには、季節の果物や野菜を数種類ずつ低速のミキサーで抽出している。
さすがに世界一の朝食とあって、見た目も美しく飾ってあり、いかにも朝から食欲がわいてきそうである。この朝食がどれほどおいしいかは、食べたことがないので評価は下せないが、ただ一つ、今まで見たことがなく、私が目を丸くした小道具が置いてある。
殻が付いたままの半熟の玉子をエッグホルダーに乗せる。その上に直径が4㎝のスチール製のカップをかぶせる。カップには長さが25cmの細い棒がついていて、その棒には直径2.5㎝の鋼球が貫通してつけられている。
この道具は「エッグシェルブレーカー」、日本語で言うと「玉子割り器」というものである。まずカップを半熟玉子に被せて、鋼球を上から落とす。その瞬間、衝撃振動で玉子にカップと同じ径のきれいな割れ目が付く。殻を取り除くと、ちょうどスプーンが入るほどの穴が開き、半熟玉子をすくって食べることができる。
今まで半熟玉子を食べる時には、手で殻を破り、皿に乗せて箸を使って食べていた。これを使えば、玉子の殻を皿の代わりにして、スプーンで食べることができる。これは便利で面白い物を見つけた。
早速ネットで調べてみると販売されている。1組発注したものが届いた。直ぐに半熟玉子を作ってやってみた。思った通りの穴を簡単に開けて食べることができた。何だか「神戸北野ホテル」でヨーロッパの薫り高い朝食をとっているような錯覚に陥った。
たかが半熟玉子の食べ方というなかれ。こんな道具を使った食べ方がヨーロッパでは昔から行われていたなんて……。今日から我が家の朝食は、半熟玉子の割り方だけはヨーロッパ貴族風と相成っている。