2カ月ぶりに旧友が立ち寄ってくれた。眼鏡をかけている顔を見ると、少しだが瞼(まぶた)が腫れて見える。そんなことを尋ねる前に、本人が話し始めた。
「つい1週間前に、形成外科で瞼の手術をした。両眼とも上瞼が垂れ下がってきて、視野が狭くなったので手術をした」。そんな病気の名前を聞くと「眼瞼下垂症」だという。
瞼を引っ張り上げる筋肉が加齢によってたるみ、垂れ下がってきて見えにくくなる病気で、瞼の皮膚を切開して短縮し、まぶたを引き上げる手術をすれば治ると話す。
テレビを見ているとき、画面の上半分が暗くなって、見えなくなってきたので気がついたという。健常者でも、薄目をして景色を見ると、視野の上半分が暗くなって見えなくなるが、これと同じ状況が起きる。
昨年の暮れ、歌手の和田アキ子がこの病気で手術をして、まるで印象の違う顔になっていたことを思い出した。術後1カ月ばかりは瞼が腫れて、顔の印象が変わるというが、この旧友はごく自然に見える。
そういえば、いろいろな機会に集合写真を撮ってもらうことがある。出来上がった写真を見るたびに、高齢者の目がみんな小さく優しい表情で映っている。笑顔をしているせいだけではなく、若干は加齢による眼瞼下垂症の嫌いはあるのだろう。
眼瞼下垂症といえば病名になるが、年相応の優しい眼もとになっていると解釈すれば、瞼のたるみもこれまた一興かな、といえる。「人間万事 塞翁が馬」である。何ごとも良いように解釈したい。