写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

有言実行

2017年02月09日 | 生活・ニュース

 9時半に予約していた歯医者に出かけた。帰ってきてコーヒーを飲みながら一息ついている時、インターホンが鳴った。部屋の中から応答すると「○○ですが」と男の声がするが、はっきりと聞き取れないまま玄関に出た。

 現役時代、同じ職場で仕事をしたことはついぞなかったが、よく顔を知っているKさんが笑顔で立っていいる。「やあ、お久しぶり。どうぞどうぞ」と言いながら部屋に通した。片手に下げているポリ袋に手土産を入れて持ってきてくれた。「今、大野浦まで行ってカキを買って来たので、ほんの少しですが」と言い、新鮮な殻付きのカキをおみやげにもらう。

 退職後、数年前に広島のデパートでばったりと出会ったことがあった。「こんど我が家でゆっくりお話ししましょう」と言いながら別れたままになっていた。こうして座って話をするのは、考えてみると20年ぶりくらいである。

 最近の体調のこと、現役時代にお世話になった頃の話、当時の仲間の消息、最近の暇つぶしの話などを、コーヒーを飲みながら話し合う。5歳若いK さんは地域のボランティア活動や、いろいろな仲間のグループを作っていて、そのお付き合いに忙しそうな話であった。

 遠方に住んでいる人や、同じ市内に住んでいても余り親しくしていない人に出す年賀状に「いつかお茶でも飲みながらお話ししたいものですね」というようなことを書いているが、訪ねてきてくれる人はまずいない。ところがこのKさんは、本当に来てくれた。

 帰って行った後、今年のKさんの年賀状を取り出して読んで見ると、「今年はお会いしたいですね」と書いてある。昔から有言実行の人らしく、年初の言葉通り早々に実行してくれた。お蔭で、現役時代の活力を少し取り戻したような快い気持ちになって、お土産を焼きガキにして「ホッ、ホッ」と息を吐きながらおいしくいただいた。