写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

到る処 酒盛りあり

2012年02月11日 | 生活・ニュース

 先日、小中学時代の同級生18人が団体で、下関に出かけてフグ料理を楽しんだ。料理もさることながら、朝9時に新岩国駅に集合し、夕方戻ってくるまでの8時間、久しぶりに会った仲間と楽しい時間を過ごすことが出来た。

 この仲間と、このような小旅行をするとき、いつも決まった光景が展開される。集合した時に、すでに2、3人の吐息から酒の臭いがする。持っているポリ袋の中には缶ビールの空き缶がすでに入っている。旅に出かける雰囲気を出発前から漂わせている。

 間もなく、やってきた新幹線に乗りこんだ。すぐには発車せず、のぞみに追い越されるのを待っている間に、早くも大吟醸が紙コップに注がれて回ってきた。ガラ空きの車内で酒盛りが始まった。飲み終わったと思ったら、今度はウイスキーの水割りが回ってくる。酒に弱い私は発車前から顔は真っ赤になっている。

 あたかも修学旅行の列車の中のようにワイワイ騒いでいると、いつの間にか下関に着いた。待望のフグ料理をいただくときには、もちろんフグのヒレ酒を頼む。満腹のお腹をなでながら、帰りの新下関駅に向かった。発車まで30分の待ち時間があった。がらんとした待合室に大きな半円状のソファーがおいてある。座って休んでいると、誰かが紙袋からウイスキーのボトルを取り出して、ハイボールを作って配リ始めた。また小さな酒盛りが始まった。

 中学時代の同級生が集まっての、久しぶりの小旅行は、暇さえあれば酒盛りが始まる。頭が薄くなった者、髪が白くなった者、眉まで白くなった者、外見は随分変わってきてはいるが、笑った顔の中には、55年前の見覚えのある表情が残っている。

 帰りの新幹線車内、貸し切り状態だったのでよかったものの、大きな声が飛び交った。無事新岩国駅に到着しての別れぎわは「じゃーな」と、お互いが片手を上げただけの簡単なあいさつ。今度はいつ会うかも分からない中、いとも簡単な別れ方である。久しぶりに会った時も別れる時も、これが幼馴染の別れの流儀。「同級生 到る処 酒盛りあり」。いつも時空を超えた再会である。