写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ナメクジ

2005年07月05日 | 季節・自然・植物
 梅雨といえば雨、雨といえばアジサイ、アジサイといえばナメクジ。梅雨になると、庭といわず家の周りのいたる所にナメクジが出没する。

 ナメクジは分類学的にはカタツムリと同じ類らしいが、かわいらしさといい、見てくれといいカタツムリより遥かに劣っているように思う。

 カタツムリなら、手のひらに乗せて遊んでみる気にもなるが、ナメクジとなると、うちの奥さんなどは見つけた瞬間悲鳴を上げる。

 朝起きてみると、廊下のサッシの内側にナメクジが這っていることがある。どこから侵入してきたのかと思うが、こうらしい。

 ナメクジは一見胴が太く見えるが、体積一定のまま細く長く変身する。小さな頭が入る隙間さえあれば、チューブを絞るようにして入り込んで来るらしい。

 なるほど、これで分かった。いくらサッシといっても隅っこには小さな隙間くらいはある。やつは、ここから入って来たに違いない。

 ナメクジは、チルチルミチルのまねをする。這ってきた所に粘液を残し、乾燥するとそこが光って見える。

 夜間活発に活動した彼らは、朝方、光っている道をたどり、進入口に向かって帰っていく。

 帰り道を忘れたやつが、廊下でうろうろしているのだろう。酔っ払った時の私に似ていて、親近感がわく。

 ともあれ、背中にマイホームを抱えているかいないかだけで、カタツムリと違って、人間からの扱いは随分と変わる。

 我が息子たちも、長いローンでもいいから自分の家は持ったほうがいいのかなと、ナメクジを見ながら現実に戻ってふと思う。

 ヤドカリのように、身の丈に合わせながら、とっかえひっかえの、時の好みに合わせた借家住まいも捨てがたい。

 いましばらく、ナメクジとやどかりの動きを見てみよう。カタツムリも、ローンの荷が重すぎるのか、行革のように歩みは遅い。
ナメ過ぎて クジも外れた 公団の カタく誓った ツムリだが。
    (写真は、未だホームレスの「ナメクジ君」)