写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

消火器

2005年07月04日 | 生活・ニュース
 地区の集会所で、消防署員による災害時の防災活動の説明会があった。その中で、消火器の日常点検の話があった。

 中身を入れ替えなくても8年間は有効だという。それを超えていても、中の粉が固まっておらず流動状態であれば問題はないという。

 その日夕食を済ませ、テレビを見ていたとき、台所に置いてある消火器が目に入った。

 説明会で聞き覚えた、消火器の点検をしてみようと思い厨房に入った。町でよく見る大きさのものを1本置いている。

 中の粉がさらさら状態かどうかを調べるために、左手で消火器の底を、右手でレバーを持って逆さまにしてみた。

 その時であった。「ぱんっ」と鉄砲を撃ったような大きく乾いた音がしたと思ったら、足元に白い粉が勢いよく噴出し始めた。

 出るは出るは。出てくるのをとめる手段はない。顔を背けて抱えているしかない。1分くらいの長い時間が経ったと思った。が、お昼に聞いた話では僅か15秒間だという。

 噴出は止まった。部屋の中は、摩周湖のように真っ白い霧に覆われた。床全面は、季節外れの津軽海峡雪景色になっている。

 安全ピンを抜いてもいないのに作動した。分からない。噴出の音に驚き、奥さんとハートリーは私を置いて外に飛び出した。

 風呂上りの私も真っ白になっている。一段落してやっと理屈が判明した。数ヶ月前に、何かの拍子で安全ピンが抜けていたのを、奥さんがそのままにしていたという。

 それを知らずに、私がレバーを無意識に握った結果であった。ゆったりとした団欒の夕べのはずが、とんだ大掃除に変わった。

 3kgの粉は、掃除をしてみると思っている以上に大量である。あれなら少々の火は消えそうだ。

 しかし、責任のなすり合いで、夫婦喧嘩に火がつきかけたが、粉を被っていたせいか、すぐに消えた。火のないところに大量の白煙が立った一幕であった。
   (写真は、仕事を終えた大騒動の「消火器」)