2月17日 朝、-5度。雪が降っている。外にも出られないし、こんな時は、ストーヴの傍で、寝てすごすしかない。
しかしだからといって、そう悪い日だというわけでもない。居間のほうから流れてくる、飼い主の聞くFM放送の音楽を、ワタシも聞いてみたりする。なんでも”フルートとハープのための協奏曲”とか言う名前で、あの動物たちにもやさしいモォーツァルトが作った曲らしい。
そして、物思いにふけったり、うつらうつらと眠ったり、ふと聞こえた物音に、マイケルのことを思ったり。
そんなワタシの様子を見ていた飼い主が、ニヤニヤと笑いながら言う。
「おい、ミャオ。オレは初めてマイケルの顔をちゃんと見たけれど、とてもキムタクっていうツラじゃなかったぜ。片方の目はケンカかなんかで傷ついていたし、毛並みも汚れていて、その上、若くはない。
あれはどう見ても、弱気な蟹江敬三といった感じだったなあ。実は思い出したんだけど、まだオマエには話したことがないと思うけれど、昔、家では他のネコを飼っていたことがある、というより、そのネコが家に住み着いていたと言ったほうがいいけれど。
まだオマエが生まれる前のことだが、そのネコは、オマエの元の飼い主の、あの酒飲みおばさんちのグループ・ネコの一匹で、オマエと同じように、他のネコと一緒にいるのがいやになって家に来たんだろうが、ともかくオフクロ(オマエの知ってるおばあさんだ)が、そのトラシマ紋様を気に入って、エサをやりはじめ、そのネコが住みつくようになったということだ。
そのころ流行っていた漫画のネコの名前にちなんで、マイケルと名づけられた。ところがこのネコは、漫画の主人公のキャラとは大違いで、いつもムッツリしていて、たとえばオマエが喜んで遊ぶネコジャラシなんかにも見向きもしないし、それで当時、サスペンス・ドラマを良く見ていたオフクロが、このマイケルを、時々、蟹江敬三とか、敬三とか呼んでいたんだ。(蟹江敬三さんすみません)。
ところがこの敬三、いやマイケルが半年ほどでいなくなってしまったのだ。どこへ行ったのか・・・。もしかしたら、このネコ社会の中で起きた事件の犯人を追って、下の町まで行ったのか、そこの安酒場のやり手のママネコにたぶらかされてしまったのか。その消息は不明のままだ。
しかしこのマイケル、ちゃんとやるべきことはやっていたのだ。その後、あのグループ・ネコの中に、マイケルそっくりの二匹の子ネコがいたのだ。つまりあの無口で、どこか陰のあるマイケルは、実は夜の顔としてスケコマシのマイコォ(マイケルのアメリカ発音)としての、渋い二枚目の役を演じていたのではないか。
そして、そのうちの一匹が、オマエと一緒に家にエサを求めてやって来て、始めのうちはマイケル2世だと喜んでいたオフクロも、例のオッシコかけ事件でその子ネコは追い払われ、オマエだけが家の飼い猫になったわけだ。
それから、その子ネコが、1キロほど離れた所にあるあの家で、飼われることになったのだろう。つまり今、オマエに会いに来ているネコは、あのマイケル2世(ジュニア)に間違いない。堂々と家の窓辺に来て、オレにも怖がらない様子は、この家の事を知っていたからだ。もちろんオマエは、そんなこと、とっくに知っていたのだろうが。
今までいろんなネコが、オマエに会いにやって来た。ペルシャ風の立派なおネコさまから、アメリカン・ショートヘア風なネコ、そして同じグループ・ネコのいかにもノラネコ風な色が交じり合ったものまで。そして今年だけでなく、その中に確かにマイケルの姿を見たこともある。
つまりオマエたちは、同じグループの仲間同士の、熟年の恋というわけだな。マイケルは、今ではちゃんとした飼いネコだし、年恰好もオマエにふさわしいと思うよ。
いのーち、みじーかーしー、こいせよーミャオ。」
また、その歌かい。言われなくとも分かっています。
一日、雪が降ったり止んだりの空もようやく、夕方になって晴れてきました。白い雪の山が、夕映えに輝いています。明日へと続く日なのです。
しかしだからといって、そう悪い日だというわけでもない。居間のほうから流れてくる、飼い主の聞くFM放送の音楽を、ワタシも聞いてみたりする。なんでも”フルートとハープのための協奏曲”とか言う名前で、あの動物たちにもやさしいモォーツァルトが作った曲らしい。
そして、物思いにふけったり、うつらうつらと眠ったり、ふと聞こえた物音に、マイケルのことを思ったり。
そんなワタシの様子を見ていた飼い主が、ニヤニヤと笑いながら言う。
「おい、ミャオ。オレは初めてマイケルの顔をちゃんと見たけれど、とてもキムタクっていうツラじゃなかったぜ。片方の目はケンカかなんかで傷ついていたし、毛並みも汚れていて、その上、若くはない。
あれはどう見ても、弱気な蟹江敬三といった感じだったなあ。実は思い出したんだけど、まだオマエには話したことがないと思うけれど、昔、家では他のネコを飼っていたことがある、というより、そのネコが家に住み着いていたと言ったほうがいいけれど。
まだオマエが生まれる前のことだが、そのネコは、オマエの元の飼い主の、あの酒飲みおばさんちのグループ・ネコの一匹で、オマエと同じように、他のネコと一緒にいるのがいやになって家に来たんだろうが、ともかくオフクロ(オマエの知ってるおばあさんだ)が、そのトラシマ紋様を気に入って、エサをやりはじめ、そのネコが住みつくようになったということだ。
そのころ流行っていた漫画のネコの名前にちなんで、マイケルと名づけられた。ところがこのネコは、漫画の主人公のキャラとは大違いで、いつもムッツリしていて、たとえばオマエが喜んで遊ぶネコジャラシなんかにも見向きもしないし、それで当時、サスペンス・ドラマを良く見ていたオフクロが、このマイケルを、時々、蟹江敬三とか、敬三とか呼んでいたんだ。(蟹江敬三さんすみません)。
ところがこの敬三、いやマイケルが半年ほどでいなくなってしまったのだ。どこへ行ったのか・・・。もしかしたら、このネコ社会の中で起きた事件の犯人を追って、下の町まで行ったのか、そこの安酒場のやり手のママネコにたぶらかされてしまったのか。その消息は不明のままだ。
しかしこのマイケル、ちゃんとやるべきことはやっていたのだ。その後、あのグループ・ネコの中に、マイケルそっくりの二匹の子ネコがいたのだ。つまりあの無口で、どこか陰のあるマイケルは、実は夜の顔としてスケコマシのマイコォ(マイケルのアメリカ発音)としての、渋い二枚目の役を演じていたのではないか。
そして、そのうちの一匹が、オマエと一緒に家にエサを求めてやって来て、始めのうちはマイケル2世だと喜んでいたオフクロも、例のオッシコかけ事件でその子ネコは追い払われ、オマエだけが家の飼い猫になったわけだ。
それから、その子ネコが、1キロほど離れた所にあるあの家で、飼われることになったのだろう。つまり今、オマエに会いに来ているネコは、あのマイケル2世(ジュニア)に間違いない。堂々と家の窓辺に来て、オレにも怖がらない様子は、この家の事を知っていたからだ。もちろんオマエは、そんなこと、とっくに知っていたのだろうが。
今までいろんなネコが、オマエに会いにやって来た。ペルシャ風の立派なおネコさまから、アメリカン・ショートヘア風なネコ、そして同じグループ・ネコのいかにもノラネコ風な色が交じり合ったものまで。そして今年だけでなく、その中に確かにマイケルの姿を見たこともある。
つまりオマエたちは、同じグループの仲間同士の、熟年の恋というわけだな。マイケルは、今ではちゃんとした飼いネコだし、年恰好もオマエにふさわしいと思うよ。
いのーち、みじーかーしー、こいせよーミャオ。」
また、その歌かい。言われなくとも分かっています。
一日、雪が降ったり止んだりの空もようやく、夕方になって晴れてきました。白い雪の山が、夕映えに輝いています。明日へと続く日なのです。