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映画 ケヴィン・クライン、へイデン・クリステンセン「海辺の家(01)」

2005-11-29 13:13:15 | 映画
 人の生きざまを支配する運命は予測しがたい。古いタイプの建築士ジョージ・モンロー(ケヴィン・クライン)もその一人だ。

 CGで簡単に素早く提示出来るのに、家の模型を作り続けていて会社から解雇された日の帰途、路上で倒れる。結果、がんで余命3~4ヶ月の宣告。ジョージの息子サム(ヘイデン・クリステンセン)は、ジョージの元妻ロビン(クリスティン・スコット・トーマス)と同居、義理の父親を毛嫌いしている。しかも生活が乱れ誰とも口を利きたくない様子。ピアスをぶら下げアイシャドウ、口紅を塗りたくっていて、親はどうしていいか分からない。

 残された時間を悔いの無いようにしたいと思うジョージは、断崖の上に建つボロ屋の再建を決意、無理やりサムを引き込む。10代のサムも人生の迷子になっている状態で悩んでいる。ガレージで寝起きを共にしながら、親子が理解しあえるだろうか。まあ、理解しあえたのだろう。ジョージが亡くなったあと、サムやロビンの家族、隣人たちがハッピーになったということは…。

 私の映画ベスト10には残念ながら入らない。今ひとつ力強さが足りないしやや安直な表現が気になる。ロビンとジョージが別れた訳も明かされず、ロビンが家を建てるのを手伝いながら、よりを戻す風情を見せるあたり観客は戸惑うのではないだろうか。それにサムが時給10ドルとはいいながら素直な若者に簡単に再生するのもご都合主義が垣間見える気がする。ケチをつければきりがないが…。

 細かいことを気にしなければ、家族愛をテーマに一定の水準にあって、それなりの余韻を残す。監督はコール・ポーターの半生を描いた「五線譜のラブレター」のアーウィン・ウィンクラー。キャストはその映画でコール・ポーターに扮したケヴィン・クライン、1947年10月ミズリー州セントルイス生まれ。

 「ニュースの天才」で初めて見て関心を持ったヘイデン・クリステンセン、1981年4月カナダ、ヴァンクーヴァー生まれ。この映画でゴールデン・グローブ賞にノミネートされている。端正なマスクと確かな演技で、ハリウッドの次代を担う若手と期待は大きい。それにしてもヘイデン・クリステンセンは美形だ。私はゲイの趣味はないが、その傾向の人には映画のクリステンセンを見たら、どうしても手に入れたくなるかもしれない。

 ロビンを演じたクリスティン・スコット・トーマス1960年5月イギリス生まれ。美人ではないが、何か心に残る印象を受けるのは私だけだろうか。
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映画 「ジャスティス(02)」

2005-11-25 13:01:19 | 映画
 第二次大戦中の1944年ドイツ アウグスブルク捕虜収容所6-A。ここは連合軍の捕虜を収容している。トーマス・ハート中尉(コリン・ファレル)もその一員となった。

 ここに来るまで過酷な尋問にさらされ、家畜用の貨車に揺られ、貨車の屋根に書かれているPOW(Prisoners of War=捕虜)の文字が、降り積もる雪にかき消されているため、味方戦闘機の銃撃で貨車が破壊され、厳寒の草原を徒歩によらざるを得なかった。

 たどり着いた収容所には、米軍の階級制度が厳然と存在し、統率しているのはマクナマラ大佐(ブルース・ウィリス)だった。そこへ黒人航空兵スコット中尉(テレンス・ハワード)とアーチャー中尉の捕虜が加わる。収容所内は俄然人種偏見の渦が充満し始める。アーチャー中尉はあらぬ疑いでドイツ兵に射殺され、それから間もなく軍曹のベッドフォード(コール・ハウザー)が殺される事件が発生する。ベッドフォードは人種差別主義者で黒人を毛嫌いしていてスコット中尉に嫌がらせをしていた。そんな背景もあって、容疑がスコット中尉に向けられる。

 マクナマラ大佐は、ドイツ軍収容所長ビッサー大佐(マーセル・ユーレス)に、軍法会議開廷を主張しロー・スクール学生ハート中尉に被告の弁護を命じる。法廷場面に入ると俄然緊張感が漂い、糸の絡まりを解きほぐすように真相に迫っていくかに見えたが、密かに進める脱走計画の発覚をおそれて、ハート中尉の主張の欠陥を埋めることが出来ない。人種差別を大きな柱に、上院議員を父に持つハート中尉がその威光で後方勤務の幸運を謳歌していたが、捕虜になり収容所での葛藤を通して人間的に大きく成長する様を描き、誇りや勇気、任務、犠牲といった人間の尊厳を明示していて、説明不足もあるが観て損のない映画だ。

 説明不足といえば、脱走計画が爆薬庫の爆破だとわかるが、なぜ脱走までしてやらなければならないのか。製作者のデヴィッド・フォスターの解説では、ドイツ軍は賢明で収容所に隣接して爆薬庫を設置しておけば、米軍は誤って収容所に爆弾を投下する危険が付きまとい結果的に攻撃を避けることが出来るという巧妙な作戦を展開していた。捕虜ではあるがいくらかでも敵戦力の弱体化を狙い脱走を企てる。これも軍人の性なのかもしれない。

 この映画は、ブルース・ウィリスが表看板のようだけど、中味はコリン・ファレルが主役を演じている。コリン・ファレルは「ホーン・ブース」を観て注目した俳優だ。一般には「タイガーランド」で耳目を集めたようだが。

 この映画を監督したグレゴリー・ホブリットや製作者のデヴィッド・フォスターはコリン・ファレルを絶賛している。デヴィッド・フォスターなどは大スターに必ずなると断言しているくらいだ。それからつくづく思うのは、実力のある俳優がどんどん出てきているということだ。この映画でもスコット中尉を演じたテレンス・ハワードも輝いていた。

 音楽も重厚で暗い雰囲気に合っていてよかったと思う。音楽を担当したのは、1996年「エマ」でアカデミー音楽賞を受賞したレイチェル・ポートマン。「モナリザ・スマイル(03)」「クライシス・オブ・アメリカ(04)」も担当している。

 それから余談になるが、味方戦闘機に機銃掃射を浴びせられるが、その戦闘機はP-51といってノースアメリカン製造の単発単座のマスタングで、実物の機を飛ばして撮影したそうだ。この撮影ほど楽しいものはなかったという。私は思う、男はいつまでも子供だなあーということ。そうでないと映画なんて作れるものじゃないよ!
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映画 「炎のメモリアル(04)」

2005-11-21 12:59:01 | 映画
 消防士の友情や家族愛そして消火活動は勿論のこと、さらに身を挺して人命救助に当たる彼等は偉大なヒーローとして称えられる。象徴的な出来事は、多くの消防士が犠牲になった9.11の忌まわしい事件だろう。

 ルーキー消防士ジャック・モリソン(ホアキン・フェニックス)がボルチモアの消防署に、はしご隊として配属される。署長はマイク・ケネディ(ジョン・トラヴォルタ)。ジャックが消防活動に習熟し、家族にも恵まれるが運命は過酷だった。倉庫火災で住民を救出中、床が崩落、ジャックは落下して閉じ込められる。火は生易しくはない。ジャックを二度と家族の元に戻さなかった。

 本来ならば感動と余情で記憶に残る映画になってもおかしくない。私にとっては今ひとつ物足りない。では何故だろうか。細部に手抜きがあるからだろうと思う。例えば、ジャックが落下するが骨折や打撲の様子がない。しかもその場所から壁を壊すことになるが、小さな鉄の棒で出来るのだろうか。その代わり火についてはうまく出していた。火をどうするかということに最大の関心が向けられたように思われてならない。この映画はアメリカ人には大いに受けるだろう。

 主演のホアキン・フェニックスは、「スタンド・バイ・ミー」のリヴァー・フェニックスの弟だそうだ。エンディングの葬送の場面で流れる“Shine your light”はネイティヴ・アメリカンのロビー・ロバートソンの作曲。日本では馴染みがないが、アメリカでは実績があるそうだ。
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T・ジェファーソン・パーカー「ブルー・アワー」

2005-11-17 11:32:04 | 読書
 肺がんで放射線治療を受けている70歳に近い元警部補ティム・へス、かつて大波に挑むサーファーでもあった。
変質者による女性殺人事件の手がかりが薄く、保安官チャック・ブライトンがこの事件捜査のため友人であるヘスに復職を依頼する。そしてコンビを組むのは34歳のマーシ・レイボーン殺人課巡査部長女性刑事。マーシは野心家で実力はあるが男性警官との折り合いに難点があり、ブライトンにとっても頭の痛い問題。そこでかなりの年長者のヘスを当てる。マーシは捜査が進むにつれ、ヘスの鋭い指摘や洞察に敬意を持ち始めやがてそれが愛に変わる。

 この本で性犯罪者の個人情報をどうするかという点や性欲を抑制する薬物による去勢の記述もある。日本でも問題になっているが、性犯罪者の住んでいる付近の住民に情報を公表するべきかどうか。薬物による虚勢は?といった問題にわが法務省は「その根拠や人権に及ぼす影響など種々の問題があり慎重に対応」としている。ヨーロッパあたりでは、実現しようという国もあるようだ。当面自己防衛と地域住民の監視・協力が欠かせないのかもしれない。

 この本に出てくる犯罪者の吐きたくなるような殺戮は、「被害女性の内臓を取り出した挙句、逆さずりにして体中の血液を抜き取る。その後、防腐液を注入すると血色を取り戻し生き返ったようになる。彼の欲望は頂点に達し、彼女と最良のひと時を過ごす」というもの。好みからすると、こんな猟奇殺人ミステリーは敬遠したくなる。物語は、へスとマーシにも危機が迫る。1999年の作品。
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ミステリー T・ジェファーソン・パーカー「コールド・ロード」

2005-11-13 12:54:03 | 読書
 トム・マクマイケル、サンディエゴ市警殺人課刑事38歳。現在独身、別れた妻との間に7歳の息子ジョニーがいる。この街にはトムの父ガブリエル、妹のリーガンも住んでいる。

 冬の寒い夜、1970年マグロ漁船の船長から始め、フォードとリンカーンのディーラーや市長を務め、港湾委員で市の後援者でもあるピート・プラガが殺された。頭蓋骨を何度も殴打され、その肉体は血の海に溺れているかのようだった。

 捜査を買って出たマクマイケルにとってピート・プラガは特別な人物だった。プラガにマグロ漁船の上で祖父のフランクリンが射殺された。これは正当防衛ということで不起訴になった。プラガの息子ヴィクターを襲い脳に障害を与えたといわれているのが父ガブリエル。それに加えマクマイケルが10代の頃、プラガの孫娘パトリシアと恋仲になるが、その仲を引き裂いたのもプラガ。因縁の両家の影が明かされるとともに、マクマイケルと父、マクマイケルと息子のジョニー。一世代を隔てた父子の関係を情感豊かに描いていく。

 人間にはチョットした隙間に思いがけないものが入り込んでくる。マクマイケルはこともあろうに被疑者サリー・レインウォーターと愛し合い、肉体関係を持ってしまう。もっともマクマイケルから見ればあらゆる点でサリーは白だったが。事件が意外な方向に展開していく。情動や余情もたっぷりと盛り付けられていて読後感は良好だった。これは2003年の作品。
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ミステリー ジョー・R・ランズデール「サンセット・ヒート」

2005-11-09 14:38:50 | 読書
 この人の作品はいままで「ボトムズ」「アイスマン」「ダークライン」「テキサス・ナイトランナーズ」等を、老境に入った男の心理や騙される男のせつなさ、爆発する若いエネルギーを独特の比喩やユーモアに絡めての描出が心地よく、読んで楽しいものだった。

 今回の作品は以前と文体ががらりと変わり、雰囲気もウェスタン調でテキサスの匂いを漂わせている。サンセット・ジョーンズは、酔った治安官の夫から殴打されていた。そして性交へ、むしろレイプといった方がいい。最近ますますひどくなる。サンセットは手を伸ばして彼の三十八口径のリボルバーをホルスターから抜き、悟られないうちに彼の頭に銃口を押し当てて、こめかみに一発撃ち込んだ。一言も発せず昇天した。

 したがって治安官が欠員となって誰かを任命しなくてはならない。それがこともあろうに夫の母、義母のマリリンの支持により、その後をサンセットが継ぐことになる。サンセットは赤毛で夕日の赤を連想させるので「サンセット」と呼ばれている。赤毛の女は気が強いが男に弱いところがある。助手のヒルビリーにぞっこんで、大汗をかいても泥の海に転がっていたとしても、さわやかで端正な顔立ちには彼女の股間が理性を失う。おまけに娘のカレンも篭絡されてしまう。母娘ともどももてあそばれたわけだ。

 いろんな事があって最後には、悪いやつらに復讐の攻撃に出る。この銃撃シーンを文章で表現するのも難しいことだろうと思う。少なくとも私は。私が書くとすれば、映画のシーンを思い出すしか手がない。銃を撃ったことといえば、空気銃ですずめを撃ち落したくらいだ。この本でも全く西部劇調だ。そして意外な結末が待っている。

 最近読んだミステリーは意外な結末が多い。こねくり回した文章表現にふれてみると、例えば“蟻を踏みつぶすような歩き方で車に戻り”とか“灰色だった空が黒くなり、まるで絞り出し袋を使ってクリームでケーキを飾っていくように夜空に次々と星が宿るなか、サンセットは泣いていた”あるいは“何片か浮かんでいる雲は、空いっぱいに広げた青いマットレスの裂け目から飛び出した綿のようだった”

 こんな表現は思いつきもしない。とにかく他者との違いをなんとか表そうと苦労しているのだろう。先に書いた様な表現が随所に出てくるし、会話も面白味があって退屈しないで読んだ。
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映画 デンゼル・ワシントン「クライシス・オブ・アメリカ(04)」

2005-11-04 20:59:21 | 映画
 1991年クウェート、偵察小隊が敵と遭遇し隊長のマルコ少佐(デンゼル・ワシントン)が意識不明の中、レイモンド・ショー(リーヴ・シュレバー)の指揮で敵兵を殲滅、部隊を救う。戦死者2名。

 帰国後マルコは悪夢に悩まされ、ある日戦友の一人からも夢の悩みを聞かされる。マルコは背中に埋め込まれたチップを発見し疑問を持ち始める。一方レイモンド・ショーは、母エレノア上院議員(メリル・ストリープ)の強い希望に沿って、次期大統領選の副大統領候補に推されようとしていた。

 エレノアの政界における実力は並外れていた。それが溺愛する息子レイモンドを大統領へという野望が、リッチな企業を通じて脳にチップを埋め込み洗脳して自在に操るという非人道的科学に金を出し、ホワイトハウスを支配下におこうとする陰謀をめぐらす。

 それを嗅ぎつけたマルコの奮闘が始まる。そして劇的な幕切れを迎える。一言で言えばあまり緊張感も無く見終わったという印象である。アカデミー受賞俳優を揃えた割に今ひとつの感は否めない。デンゼル・ワシントンもメリル・ストリープももう50代だ。二人とも若くみえる。メリル・ストリープは少し太ったようで、豊満さが増しセクシーになった。

 このDVDにも監督のジョナサン・デミと脚本のダニエル・ペインの解説が入っていて、出演俳優をべた褒めするし、俳優は監督を褒めちぎる。観る映画を選択するとき監督で選ぶ人は少なくほとんどの人は俳優で選ぶだろう。監督が自作に出た俳優をけなすわけがない。当然だろうけどだまされてはいけない。この作品もベテラン俳優なら当然の演技であって特筆すべきものでもない。つまるところ、評価は観客にゆだねられている。

 レイモンド・ショーを演じたリーヴ・シュレイバーは、この作品で主要な位置を占めているが果たして今後飛躍するかどうか微妙な気がする。特別印象に残ることもない。

 製作に加わっているティナ・シナトラは“父 フランク・シナトラと映画会社が共同所有の原作の映画化権を私がすべて買ったの。父たちが製作したのは「影なき狙撃者」 主演はフランク・シナトラ、ローレンス・ハーヴェイ、監督ジョン・フランケンハイマー。作品の題材がいいと演技も生きるから父はリチャード・コンドンの原作の映画化権を手に入れた。リメイクしたいといったら、父に反対されたわ”という。そんないきさつがあって実現したリメイク版。オリジナルの「影なき狙撃者」は、1963年の製作である。
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