一体、この主人公は何歳だろうか。二の腕の内側がシミだらけになっている。風呂から上がると、体にタオルをあてて水を吸わせる。今は油分がほとんどないから水を吸わせる。と書いてある。
そうかなあ。現実に私はそうではない。朝、顔に油分が浮いている。かつてのように、ぬるぬるとはしていないがかさかさでもない。シミも多くない。手の甲に二つほどだ。
パソコンがだめだと言う。キーをぱちぱちと叩けない。私はまだぱちぱちと叩けるなあ。オフィスレディが公園のベンチに座っているのを友人と見ている。股が少し開いていて、下着も見える。二人は熱心に見る。立ち去るオフィスレディを目で追いながら、「女のよ。あすこどうなっているか覚えているか?」「いや忘れた」と友人が言った。主人公も忘れたと言う。したがって、童貞と同じだと言う。となると、14歳の中学生か。
この主人公はせいぜい70歳から75歳といったところだろう。それにしても爺くさい。そういう人もいるかもしれないが、どうも著者は老人を意識しすぎているようだ。
この歳でも、ときめきたいという心情を代弁しているのは評価したい。ときめきの結果、熱海のストリップ小屋の若いロシア人ストリッパーの尻の穴を舐めているというのは、ちょっとね──やはり、それなりの年齢の人が鮮烈に表現しないといけないのかもしれない。
というのも著者は、1977年東京五反田生まれの33歳だ。劇団「五反田団」を旗揚げし作・演出を手がけ自らも出演するという。NHKドラマ「お買い物」は、ギャラクシー賞と放送基金文化賞を受賞したとある。この本にも「お買い物」の台本が収録してある。わたしは読まなかったが。
いずれにしても歳を取ると言うことは、普段まだ四十代の初めだと思っていても、テレビや新聞で例えば2050年にはこれこれを達成とか完成の予定とかの報道に、素早く計算して「ああ、俺はもう生きていないなあ」と思って一気に無関心になってしまうと言うことだ。そして、不思議なことに中年までの女性が妖しいほどキレイに見えることだ。