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読書 前田司郎「逆に14歳」

2010-04-26 12:59:52 | 読書

         
 一体、この主人公は何歳だろうか。二の腕の内側がシミだらけになっている。風呂から上がると、体にタオルをあてて水を吸わせる。今は油分がほとんどないから水を吸わせる。と書いてある。
 そうかなあ。現実に私はそうではない。朝、顔に油分が浮いている。かつてのように、ぬるぬるとはしていないがかさかさでもない。シミも多くない。手の甲に二つほどだ。
 パソコンがだめだと言う。キーをぱちぱちと叩けない。私はまだぱちぱちと叩けるなあ。オフィスレディが公園のベンチに座っているのを友人と見ている。股が少し開いていて、下着も見える。二人は熱心に見る。立ち去るオフィスレディを目で追いながら、「女のよ。あすこどうなっているか覚えているか?」「いや忘れた」と友人が言った。主人公も忘れたと言う。したがって、童貞と同じだと言う。となると、14歳の中学生か。
 この主人公はせいぜい70歳から75歳といったところだろう。それにしても爺くさい。そういう人もいるかもしれないが、どうも著者は老人を意識しすぎているようだ。
 この歳でも、ときめきたいという心情を代弁しているのは評価したい。ときめきの結果、熱海のストリップ小屋の若いロシア人ストリッパーの尻の穴を舐めているというのは、ちょっとね──やはり、それなりの年齢の人が鮮烈に表現しないといけないのかもしれない。
 というのも著者は、1977年東京五反田生まれの33歳だ。劇団「五反田団」を旗揚げし作・演出を手がけ自らも出演するという。NHKドラマ「お買い物」は、ギャラクシー賞と放送基金文化賞を受賞したとある。この本にも「お買い物」の台本が収録してある。わたしは読まなかったが。
 いずれにしても歳を取ると言うことは、普段まだ四十代の初めだと思っていても、テレビや新聞で例えば2050年にはこれこれを達成とか完成の予定とかの報道に、素早く計算して「ああ、俺はもう生きていないなあ」と思って一気に無関心になってしまうと言うことだ。そして、不思議なことに中年までの女性が妖しいほどキレイに見えることだ。
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読書 桜井裕子「性教育の暴走」

2010-04-22 10:56:57 | 読書

         
 セックス奨励教育の実像という副題のついた性教育を厳しく批判するノンフィクションである。身辺に幼児や小・中・高生のいない私にはまったくの初耳に属する。なんともマンマンデーの日々を送ってきたことか。
 小学一・二年段階からの性教育。この本の例によれば、「せっくすのえほん」がある。
<おとうさんの からだには おちんちんが ついていて おとこ。おかあさんの からだには あかちゃんが でてくるあながあって おんな>という書き出しの解説がついている。しかも、性交の図もお母さんが下で、お父さんが上になって性器の挿入までリアルに描いてあり、二人がキスまでしている。著者のコメントには、まだ、読み書きも十分に出来ないような子供たち、自分の身の回りのことさえ出来ないような六・七歳の子供たちに、果たしてセックスや性器を教える必要があるのだろうか。これが「発達段階に応じた性教育」と言えるのだろうか。
 さらに、吹田市教育委員会の中学校性教育副読本「きらめく青春─思春期を迎えて─」にはつぎの記述があると言う。
 <性交は愛を交し合うことで、二人にとってとても暖かく、親しい気持ちになる、ステキな営みです。男の人と女の人がキスをする時などに、優しく触れ合うと、とでも嬉しく、心地よさが次第に高まり、お互いにもっともっと近づきたくなります。
 そういう気持ちは体の中で性的な興奮となり、体にいろいろな変化をもたらします。男の人のペニスは勃起し、女の人もワギナから分泌液が分泌されます。ペニスをワギナにインサート(挿入)し、男性の性的な興奮が最高に高まると、精液がペニスからワギナの中へ放出されます(射精)。
 そして、お互いリラックスした、暖かく親密な気持ちになります。性交は二人にとって、とても大切な、とっておきのコミュニケーションなのです。「性交」は、性器の結合だけに限らないで、手などでお互いの体に触れ合うことも同じようにとらえて、広い意味で「性的ふれあい」であると考えられています>
 著者の言う「性交のすすめ」としか受け取れない。こういう書き方でいいのか。もっと端的に書けるはずだ。書いた人が男か女か知らないが、若い肉体を思い浮かべてスケベな気分で書いたとしか思われない。
 これを読んだ中学生が無視するとは想像できない。女子を捕まえてキスしようと迫り、おっぱい触らせて! 俺のも触っていいよ。なんてふざけあっても文句は言えまい。
 上記の文章を少し崩せば、大人の濡れ場になる。こんな言い方よりも、この本の著者と元桑名市民病院副院長中山尚夫の一問一答がなによりも意味があるように思われる。
 この中で女性の膣の働き、感染症の恐さ、コンドームの不確実性など、こちらの方こそ教えるべき題材に思える。
 膣の持つ機能のすばらしさは、性交によって膣には精液というたんぱくが入る。これは女性の体にとっては、異物、異種たんぱくで免疫機能に対して少なからぬ負担になる。それに、ペニスは消毒もしていない。そんなペニスを受け入れても病気にならずにいられるのは、膣にいるデーデルライン桿菌(かんきん)という善玉菌によって膣内を強い酸性環境に保ち雑菌の侵入を防いでいるからだという。
 そのほかにも激しい動きやお産の時の猛烈な伸展にも破れない構造、精液や細菌、ウィルスなどからも免疫機能で守られている。神様がくれた宝物だそうだ。これを知ると女性、とりわけ母性に敬意を表したくなるはずだ。これらを生徒に教えれば、お互いを尊重しあうのではないか。
 ある統計によれば、女子高校生の半分ぐらいは、卒業までに処女を捨てているという。どうも今時の性教育の悪い面が現れているような気がする。私の娘が早々とセックスに耽っていれば、強烈に怒り狂うのは確実だ。
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鳩山総理の感性の乏しさを改めて知る

2010-04-17 10:14:20 | 時事

 今日4月17日朝日新聞朝刊の「記者有論」でこんなくだりがある。「4月はじめ、首相官邸の執務室。こんな場面があったという。ワシントンで開かれる核保安サミットを控えて、米政府から「オバマ大統領と鳩山由紀夫首相との公式会談は行わない」という連絡が来ていた。「なぜだろう」とつぶやいた鳩山首相に、官邸スタッフの一人が反応した。「普天間問題で対日不信が強いからです。日米同盟がいかに大切か、考えていただきたい」

 本当だろうか? 瞬時に信じられなかったが、去年オバマ大統領に「トラスト・ミー」といって反故にした感覚がこれで理解できた。これ以上ないほどの、皮膚感覚の欠如した男が総理になったものだ。
 これでは「国民のため」という言葉も「しっかり」(民主党の連中はこのしっかりを連発する)という言葉も、漂うかすみのように頼りない。

 普天間問題を5月に決着するというのも、おそらく先送りになる公算が強い。そのときも、しっかりやってきたが5月に決着という法律に書いていないから、これからもしっかりとやっていく。と言う。
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猫の味覚

2010-04-16 12:45:28 | 雑記

 我が家にはメスの黒猫が一匹いる。勿論雑種である。名前は「フラ」という。フラダンスのフラでもあるけれど、手のひらに乗るような小さな体をフラフラさせていたのでフラと娘が名づけた。私はもともと犬や猫があまり好きではなかった。犬や猫を飼うことを考えても見なかったが、寒い春の夜捨てられていた子猫が可愛そうだといって娘が友人からもらい受けたものだ。
 この猫も我が家にやってきてすでに四年経つ。一緒に住んでみて猫の可愛らしさも分かった。今では頭を指先でトントンと軽く叩いても、目をつぶっておとなしくしている。あまりトントンが長いと、左手で引っかいてくる。フラの頭の上で手をぐるぐると回すと、飛び上がって遊んでくる。
 そして、猫も美味しいものはよく分かるようで、百貨店で有頭えびを買ってきてエビフライにした。そのエビフライの衣を取り除いて食べさせると、尻尾まできれいに食べてしまった。スーパーで買うエビと違って、いい匂いがしていて味も良かった。猫はよく知っているとあらためて知った次第。したがって、ペットショップのまずい缶詰の餌には見向きもしない。
 猫がいて不便なのは、旅行にいけないことだ。ペットOKのホテルや旅館もあるようだが、調べてみるとかなり制約がありそうだ。というわけで我が家では、キャンプによく行く。これも長いドライブでは、車内で鳴きっ放しなので困ってしまう。とはいっても、ペットには癒しの効果もあるのは確かだ。
          

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救急車初呼び体験

2010-04-15 12:36:01 | 健康

 生まれて始めて救急車を呼ぶことになった。おととい(4月13日)夕方午後六時ごろ、息子が急に胸が苦しいと言い出して近所の医院を巡ったが、六時を過ぎていたので診療終了で受け付けてもらえなかった。六時半ごろ救急車を呼んだ。
 ところが救急隊員が近くの病院を探したが、受け入れ先が見つからない。30分ほど携帯電話でやり取りがあってようやく搬送先が見つかった。勿論、救急隊員は患者の容態を連絡していたが、病院側は緊急性を認めなかったのだろう。病院側にいろんな事情があると思うが、救急救命医療について抜本的な改革が必要ではないかと考えさせられた。
 例えば各地区の拠点に24時間受入救急専門医療センターを国費で設立する。(現実には救急センターは存在する。しかし、採算面を考慮するので思い切ったことが出来ないようだ)採算面は度外視してすべて税金で賄う。医師や看護婦の待遇もよくしておく。
 救急車で搬送された患者や地区の医療機関(医院や診療所)から紹介された患者などを一旦無条件で受け入れ、検査結果によってかかりつけ病院があればそちらに、なければ患者の便益に配慮した病院に治療を任せる。
 当然カルテの電子化で病院が共有するという前提が必要だろう。何度も同じ検査という無駄を省くためにも必要なことだろう。軽い病気でもタクシー代わりに救急車を利用するということをよく聞くので、有料化も検討してもいいのではないか。この場合、体の不自由な人や高齢者への配慮は欠かせないだろう。
 きのう、またま私の定期通院日で、先生と上記の話をして、おおむね意見の一致を見た。医療機関と国民との信頼関係が損なわれているのが現状のように思えてならない。
 ちなみに、息子の検査結果は、救急治療の段階では異常がないということだった。血圧が少し高めや中性脂肪の数値に問題があるので精密な検査を受けたほうがいいというアドヴァイスもあった。
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読書 ジェイムズ・N・パウエル「エロスと精気(エネルギー)」

2010-04-12 09:33:43 | 読書

           
 現代人のセックスの性急さにスローセックスを勧めているように思われる。挿入と射精がすべてで、性器のオーガズムのみを求めていると言う。アマゾンでのこの本のレビューを読むと、ほとんどの人が性愛指南に共鳴している。
 そして本の内容は、紙面の多くは中国のタオイズム(道家思想・道教)やインドの性愛から西欧の性意識を学術的な考察で占められている。それらをもとに、現代人に指南している性愛術はかなり効果があるようだ。前述のレビューにも認めている人がいた。
さて、その性愛術を引用してみる。(本書のP164)
 基本的な考え
(1)男女が互いの存在を存分に意識していることが、二人の間の生体電子の流れを促進する。(二人の間に愛の存在が不可欠)
(2)一度刺激を受けた生体電子の流れは、二人の間を伝導して一つの場に融合するのに最低二十七分を要する。
(3)キスや愛撫で刺激された流れは、二人の間を行きかいながら唇、乳首、胸、腕、脚を流れ、完全なくつろぎと充実の状態をもたらす──その際、挿入や通常の意味でのオーガズムは必要ではない。
(4)生体電子の流れはペニスとヴァギナに流れる傾向があり、二つの性器を交接して少なくとも二十七分間動かさずにおけば、二人の流れが融合することになる。
(5)通常の動きをともなった挿入でも、たとえ男性が早漏気味の射精をしても、ペニスを少なくとも二十七分ヴァギナから抜かずにおくと、生体電子の流れが融合して、男女とも  完全なくつろぎを得ることが出来る。(6)生体電子の流れが融合して一つの場になると、挿入をもう一度という欲求は五日間程度は生じない。
(7)性急な性交,生理、排卵によって女性の体の生体電子は昂進する。これが緩和されないと、通常の細胞活動が阻害され、病気を引き起こすこともある。
(8)愛情、脅え、怒りといった心理的要素は生体電子の力と影響を与え合う。愛があれば、流れは闊達になるが、脅え、怒りなど否定的で後ろ向きの感情は流れを阻む。
  
 この中の生体電子については気にしないでよいが、事前のトレーニングが前提のようだ。 そのトレーニングと言うのは、鹿の運動といって括約筋を鍛えることだ。

 女性の場合、膣口周辺の恥骨尾骨(PC)筋を刺激する。このPC筋は、ヴァギナの性感を高め、オーガズムの性感も高めるのだという。このPC筋の場所は、放尿を止めるときに引き締まる筋肉である。放尿を止める訓練を何度かしてみれば、PC筋がどんな感覚の部分か知れるはずだ。そこで、体を楽にして仰向きに寝て、指をヴァギナに挿入し、PC筋を縮めてみる。筋肉で指を締める感覚になってみる。このときはそれほど強く締められないだろうが、少なくても六週間この鹿運動を続ければ、この筋肉はかなり強くなるはずだ。

 男性の場合、放尿時に一度止め再び放尿が始まるとまた止めるときの筋肉ですぐ分かる。放尿していない時にそこを締める訓練をするのである。その筋肉を締めている時、ペニスと陰嚢が体の中のほうに引き上げられる感じがするはずである。
 この鹿運動は、男女とも一度に十回連続して締めと緩めるを行うが、それを一日三度行う。速度は速くとゆっくりとあるが、両方を習得する場所はどこでも出来る。寝てても電車の中でも。

具体的なテクニックを引用しながら補足してみよう。
 まず、結合した二人のエネルギーが自由に流れるようにする。二人で一緒にシャワーでも浴びて体を清潔にする。このとき間違っても性交はしない。この沐浴は、生体エネルギーの交換効率がよくなる。緊張を解き体を楽にする。
 私が思うに部屋の照明を暗くして二人の裸体が光の影で揺れ動くのがいいと思う。今流行のLEDのローソクの炎のように揺らめくのが効果的か。お互いが体をさすりあう。優しくソフトに。体にローションを塗ったりアルコールやドラッグはいけない。同じようにたっぷりとした食事もいけない。軽い食事の数時間後がいいだろう。
 この性的合一は数時間続くので邪魔が入らない環境を整える必要がある。同居人が多いと頭を悩ますことになる。電話機をはずして置き子供は学校なり映画に行っているのがいいが。夫婦で旅行するしかない場合もあるだろう。子供たちが巣立った高齢者で二人暮らしなら理想的だろう。私は高齢者のセックスにぴったりな気がする。

 話を続けよう。二人の体から緊張がとけてきたらキスと愛撫を非常にゆっくりと楽な気持ちで行っていく。女性が濡れてきたら挿入が絶対的ではないが、挿入したければゆっくりと入っていってじっとしている。男性の勃起力がなくなるような感じになったとき、あるいは女性に性感がなくなるとき動きが必要になる。オーガズムとして爆発させるのではなく心を穏やかにしてエネルギーの中に身を任せるのである。三十五分ほどこの抱擁を続ける。
 全身にオーガズムの感覚が押し寄せる。男性の場合射精をしないまま相手と一体になって全身がさざ波のように震える。震えが収まったら最低三十分は相手と楽な気持ちで抱き合っていることが大切な点である。
 
 セックスの場の方法を存分に経験してもらうために、おさらいをしておこう。前戯として最低三十分、欲得抜きのキスと愛撫をし合うことが必要である。それでエネルギーが目覚めて大きくなる。次いで、二人は一緒に横になって動かず、注意力は保ちながらも安らかにしておく。
 性器は挿入してもよし、体を密着し合うだけでもいい。この抱擁を何時間も続ける。二人の体が震えてきたら、そのままにまかせ、そののち少なくとも三十分は抱擁を続ける。
 はじめの二・三日、あるいは数ヶ月は、途中で通常のセックスを求める場合もあるだろう。それはそれで従来の習慣だから構わない。しかし、オーガズムののち少なくとも三十分は抱擁を続けるべきだ。慣れるまでかなり時間もかかるかもしれないが、必ずいい方向に向かうという。
 このタイプの密着はかなりの時間持続するから,これにもっともふさわしい体位は、男女はベッドでそれぞれ楽に感じる側に寝る。二人の上半身は離しておき、骨盤の部分はくっつけ合う。
 女性は仰向けになり、男性は体の右側をベッドにつけて身を起こす。足は互いの体にからませる。男性の左足は女性の足の間に割って入り、女性の左足は男性の腰の左に乗せる。その姿勢で二人は三十分以上、身動きせずに横になっている。
 そののち男性は挿入してもいい。ただし、さらに三十分は体位は同じままにしておかなくてはならない。その三十分の間に射精したらさらに最低三十分その体位を保つ。二人のエネルギー量が均等になるのにその時間がいるからだ。
 以上簡単な説明だが、かなり重労働の気がする。果たして実行できるのか不安が先走る。妻を説得できるのか、また我が家に猫がいてうろつくので気が散るかもしれない。 いずれにしても実行した人は、お互いの愛を確かめられて幸せだと言う。セックスレスの人が、 週末は部屋に閉じこもりっきりだとのろけていた。羨ましいことではある。
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読書 小池真理子ほか「with you」

2010-04-08 21:17:56 | 読書

          
 12人の女性作家による性愛短編集。結論から言うと女性作家であろうが男性作家であろうが、性愛の場面の描き方はほとんど変わらない。変わらないと言うよりも、代わり映えがしない。
 考えてみれば性愛行為は、日常の食事や家事、仕事などと同じように誰でもが身をもって行っていることだ。したがって、作家の想像力で読者を説き伏せると言うことは至難のわざとも言える。性愛行為を赤裸々に描くだけでは不十分だ。
 この12人は、小池真理子、岩井志麻子、桜井亜美、坂東真砂子、島村洋子、甘糠りり子、桐生典子、真野朋子、黒沢美貴、春口裕子、斉藤綾子、江國香織である。この中で直木賞受賞者は、小池真理子、坂東真砂子、江國香織の三人である。他の人たちも何らかの受賞者ではあるが、読後感はかなり違ったものになった。直木賞受賞者以外は、あからさまな性行為の表現に終始しているせいかもしれない。
 小池真理子の描く女は、自宅で金で買った男とすばらしいセックスを堪能するが、男が帰るとき女は言う「私のほっぺたに、おやすみのキスをしてくれる? ついでにちょっとだけ抱きしめてくるたら、もっと嬉しい」
 男が女を買ったとき、「もう一度キスをして、抱きしめたい」なんて絶対言わない。では、さようなら、だけだ。この辺を考えると精子を差し入れる男と受け入れる女の違いなのかとも思う。女は買った男でも温もりが欲しいのだろうか。露骨な表現でなくむしろ余情の残る作品だった。
 坂東真砂子のは、農家の四十代を過ぎた年頃(歳を書いていないので推測)の後家さんが、近所の三人の子持ちで大家族の嫁に誘われて馬の種付け見物に行く。馬の交尾は圧倒的な迫力があると同時に後家さんの眠っていた情欲に火がついた。
 すると我慢できない尿意を催した。馬の種付けは、川原で行われていて離れた堤防の下に茅の茂みがあった。そこでしゃがんで用を足し終わったとき、種付け場所で目が合った百姓の男が現れた。
 日に焼けた太い首筋、野良仕事の大きな手それに股間の屹立した一物。そんな男は、無条件に欲しくなる後家さん。そこに手を伸ばした後家さんは、自身の股から出るものを拭き取る暇もなく男に突き上げられていた。
 終わったあと堤防に上がってみると、大家族の嫁が恐い顔をして立っていた。「いいつけちゃる。この村におれんようにしてやる」
 後家は怒って女の耳を噛み千切った。すさまじい女の情欲と嫉妬。この本を読んだ一つの理由として、女が男のように情欲を見境なく求めることもあるのだろうかと言うことだった。この作品でそれがはっきりとした。女も同じだということ。
 江國香織は、十代の頃から男に触りたい男の裸を見たいとしょっちゅう考えている女を描いている。変態、淫乱と思われ、付き合う男が怖気づいて離れていく。女の特異な性(さが)は、「男の人というものが、あんなにキレイじゃなければいいのにと思う。そうすれば、あたしの人生はもっとずっと整然とするだろう。十二のときに始まった孤独は、つき進んでもつき進んでも,つき抜けることが出来ない。つき進めばつき進むほど、寒く淋しく救われなくなっていく」
 ほとんどの男は、女に触りたい、見たいとしょっちゅう思っているはずだ。なのに、女が男にそう思い男に告げると変人扱いされ愛想尽かしをされる。これは一体何故なのだろう。男は積極的な女にひるむせいだろうか。例えば、どこかのバーなどで女から誘われて、すぐついていくというのは私にはできない。ちょっと危険な気もするからだ。
 それはともかく、この作品集にも解せない部分があった。原稿どおり編集してあるとすれば、オチン×ンを一部伏せ字にしてあるのに、オマ×コは、×印の部分がはっきりと「ン」が入っている。オチン×ンは、子供用の性教育絵本にもおちんちんと明示してあると言うのに解せないことではある。
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読書ジュリー・パウェルー「ジュリー&ジュリア」

2010-04-02 12:54:22 | 読書

          
 今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたメリル・ストリープ出演の映画「ジュリー&ジュリア」の原作。ジュリーというのは、現代の30歳の既婚の女性。ジュリアは、「フランス料理の達人」を著した料理研究家。このジュリアの本がテキサスの実家にあって、ニューヨークのアパートに持ち帰りそのレシピを一年間で作ろうと思い立ちその模様をブログに書く決心をするジュリー。
 てっきり「子牛肉の赤ワイン煮」なんてレシピが出てくるのかと思ったが間違っていた。勿論そのようなレシピはある。しかし、子牛肉○○グラム、ワイン××ccとかの表記はない。料理の本ではなかった。
 料理を作る悪戦苦闘の物語。しかもジョーク横溢、その上「ジョイ・オブ・セックス」に引っかけて「ジョイ・オブ・クッキング」とのたまう。料理にはお酒がつきもの。カクテルのギムレットの薀蓄まである。この本の映画化となると、脚本家の力量が試される気がする。果たして、映画はどのような出来栄えだろうか。楽しみではある。
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