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映画 フィリップ・シーモア・ホフマン「カポーティ(‘05)」

2007-03-30 12:58:11 | 映画

 カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、ニューヨーク・タイムズが報じる1959年11月15日カンザス州で起きた一家惨殺事件を、かつて隣人で「アラバマ物語」の著者ネル・ハーバー・リーを助手兼ボディガードとして取材に赴く。リーをボディガードというのは冗談だろうが。
              
 映画は導入部から暫らくは、カポーティという人間を描いていく。列車のポーターに金をやりお世辞を言わせるとか、パーティでの、饒舌な売れっ子作家振りや、また刑事部屋で、自分のマフラーを指差し高級マフラーだと言ったりする奇癖の持ち主に描かれる。もっとも、これがのちに生きてくるが。
              
 一つ疑問が出てくる。カポーティは、なぜこの事件に興味を持ち取材し作品にしたのか?
 答えがあった。「ティファニーで朝食を」とは違った道を切り開きたい。“ノンフィクション小説”という全く新しいジャンルだ。というセリフがある。

 そして二人の犯人のうちペリー・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)に事件の核心、惨劇の夜の事実を聞くために接近する。
 二人は再三の死刑延期の末、執行される。この死刑執行前のカポーティが二人と会う場面が強烈な印象を残す。カポーティは、涙を流しそれこそ慟哭というにふさわしい。
 このときのホフマンの演技が、演技だろうと思うが顔は真っ赤になり、額には血管が三本浮き出ている。カメラは一瞬も場面転換はない。俳優が渾身の力で演技したのだろう。こんな場面を見たことがない。
 その涙は一体何のためだったのか。死に行くスミスを憐れんでいるのか。あるいは、スミスが心から信じてくれたが、自分は欺瞞で糊塗して人間の心をもてあそんだことに対してか。おそらくそれらが交錯したのだろう。
              
 冬枯れの冷たい荒涼としたカンザスの風景、刑務所の暗い壁と鉄格子、絞首刑のショッキングな場面、静かで単調なピアノの旋律に久しぶりの映画の感動を味わった。
 主演のフィリップ・シーモア・ホフマンもさることながら、ネル・ハーバー・リー役のキャサリン・キーナーも決して美人ではないが、抑えた雰囲気で時に輝くような表情は忘れられない。
              
              キャサリン・キーナー
それと、死刑囚ペリー・スミス役の、クリフトン・コリンズ・Jrも、目の覚めるようなハンサムではないが、こちらも印象に残る。
              
              立っているのが、クリフトン・コリンズ・Jr
刑事役のクリス・クーパーは、そつなく目の演技が光る。
              クリス・クーパー
 なお、トルーマン・カポーティは、この取材から「冷血」を書いたが、その後は目立ったものは書いていないらしい。死刑囚との交流が何らかの作用をしたのだろうか。暗示する場面もあったが。

 監督 ベネット・ミラー1966年12月ニューヨーク生れ。ドキュメンタリー作品「The Cruise」で、ベルリン映画祭はじめいくつかの映画祭で賞を受賞。二作目の本作ではNY批評家協会新人監督賞を受賞。アカデミー賞では監督賞にノミネートされ、一躍期待の監督として瞠目されている。
 キャスト フィリップ・シーモア・ホフマン1967年7月ニューヨーク生れ。脇役での出演が多く私の観た「パンチドランク・ラブ」や「コールド・マウンテン」にも出ていたようだが記憶にない。その彼がこの作品でアカデミー主演男優賞をはじめ全米批評家協会賞、LA批評家協会賞、ゴールデングローブなどで主演男優賞を総ナメにしている。ただ、彼の風貌から見て、役柄は制約されるだろう。
 キャサリン・キーナー1960年3月マイアミ生れ。キャリアは結構長く、本作でもアカデミー助演女優賞にノミネートされるほどの演技派。
 クリス・クーパー1951年7月ミズーリ州カンザスシティー生れ。個性的脇役として群を抜く。
 クリフトン・コリンズ・Jr1970年6月ロスアンジェルス生れ。
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小説 人生の最終章(2)

2007-03-29 14:36:42 | 小説
 


 始まりは冬、その年の一番寒い日で、眼科の待合室だった。うつむき加減で読んでいた本の向こうに影がよぎった。その影は、斜め向かいの椅子に腰を下ろした。この病院の眼科待合室は、受付を挟んで左右に四人掛けの椅子が広がっている。壁に沿って長椅子が所々置いてあり、その一つに香田は座っていた。
 白い壁には絵もなくポスターもないただの平面が広がっているだけだった。彼女を見たのは、今日で二度目だ。二週間前に見かけて以来である。男物のような白のブラウスの襟を立て加減にして、黒のふんわりとした光沢のある布地と裾にグレーのレースを飾りつけたスカートを細身の体にまとい、黒のブーツで決めていた。
 歳は、五十になったかならないかというところ。少し長めの髪をゆるくカールさせ斜めに前髪を流し、知性と女らしさが卵形の顔によく似合っている。黒目の部分が多い瞳と薄めの唇へと流れる頬は気品に溢れている。もうこれは中年女性の色香というほかない。
 若い女性でも、これほど人の目を惹きつける人を見かけた記憶がないほどだ。彼女は単に美人というのでなく、内面からにじみ出る何かが魅力的にしているのだろう。それは、教養であり生い立ちであり人生経験やその人の考え方が、ほのかに立ち昇る爽やかな香りのように、周りの人たちを幸せな気分にさせている。それは良質の音楽や絵画、それに映画、小説に出会う喜びにも似ている。
 香田は本を読んでいる振りをしながら、上目使いで彼女を観察していた。すると不意にこちらを向くことがある。予期せぬ動きだからどぎまぎする。右隣に座っていた人が呼ばれて立ち上がって診察室に向かった。顔を上げると彼女と目が合った。考える暇もなく頬を緩めてうなずいていた。彼女も笑顔で応じてくれた。何かきっかけが出来たようで、安堵感が広がっていった。しかし、どう言葉をかけるのかと思うと早くも暗礁に乗り上げた気分になった。
 そんなことを気にかけても仕方がない、なるようにしかならない。本に目を落とす。しかし、心が乱されて集中できない。まるでニキビ面の若者にでもなった気分だ。考えてみると、こういう気持ちになったのは数十年無かったことだ。いったい俺はどうしたのだろう。
 「香田順一さん、二番からお入りください」と名前を呼ばれている。「ハイ」と返事をしても相手はスピーカーからの声で応答はない。二番のドアを開けて暗い診察室に入った。すぐに診察が始まるわけではない。一番から五番まで、カーテンで仕切られた個室があり、それぞれの担当医がそこで診察をしている。担当医からの呼び出しを待つ人が、明かりが乏しく暗い部屋に十人ほど腰を下ろしているのが見える。
「お変わりないですか?」「どうしました?」「しばらくこのまま様子を見ましょう」などという担当医の言葉が漏れてくる。患者は高齢者が圧倒的に多く、白内障や緑内障手術後の診察が多くを占めている。
 しばらくそんなやり取りを聞くともなく聞いていると名前を呼ばれた。担当医は若い女の先生で、いつもの儀式に取り掛かった。眼球の中を覗く機械にあごを乗せて、瞼を一杯に見開く。瞼をいっぱいに開いているつもりが歳のせいで十分ではないようだ。先生の手が伸びてきて、瞼を押し開けて機械のレンズを当てる。どうやら問題はなさそうだ。次が眼圧の測定。二種類の薬を目に落としレンズを覗き込む。左目十七、右目二十一。右目がいつも高い。手術をしたがなかなか正常範囲に収まらない。いつものように二ヶ月先の予約と同じ薬の処方で終わる。
お礼を言って辞去すべく引き戸のドアを開けかけたとき、なにやらドアが軽く感じられて引き開けると、彼女が入ろうとドアに手をかけていた。とっさに言葉にならずただ笑いながら「今からですか?」が精一杯だった。彼女は笑みを浮かべ軽く会釈して部屋に入った。
 会計で費用を支払い、病院の前にある薬局で目薬を受け取って駐車場に向かった。病院の建物はかなり古く白っぽいコンクリート造りで潤いのない建物だ。今日のように気温の低い日は特に。ここで大腸がんを内視鏡で摘出、緑内障の手術をしたことを思い出していた。
 駐車場にも何かもの足りなさがある。木々は大きく枝を伸ばしているが、その下はアスファルトで固めてある。目に映る風景に潤いがないのは、その辺が原因なのだろうかなどと思いつつ車の鍵のボタンを押した。ほとんど同時にうしろから声がした。
「病院は時間がかかりますね」振り返ると笑顔と白い息を伴って彼女が立っていた。吐く白い息が妙に色っぽい。今まで並んで立つ機会がなかったので気づかなかったが、香田の背丈より少し低い程度だった。彼女は百六十五センチほどだろう。道理ですらりとしていると思った。
「本当にそうですね。いつも午前中がつぶれますよ。まあ、一日つぶれたとしても、何の問題もないし。それに二ヶ月に一回ですから」あと何か付け加えたいと頭を回転させていると彼女が
「私は一週間毎なんですの」と言う。早く何か言わなくっちゃ、こんなチャンスは早々ないぞ!
「いずれ二週間毎から二ヶ月毎になって、病院に来なくていいようになりますよ。私なんか今度来るのは、四月ですから」
彼女は皮の手袋をした手でコートの襟をかき寄せた。かなり寒い。
「今日は本当に冷えますね。雪になるかも」と彼女は曇り空を見上げながら、独り言のように言った。寒さで赤く染まった頬を眺めながら、なんて美しい人だろうと魅入られていた。そして、この人に恋をするだろうと確信を抱いていた。
その彼女は、顔を香田に向けもせず唐突に
「それじゃ、また」と言ってモノレール駅のほうへ歩みだした。
「ええ、お大事に!」と香田は、彼女の背中に言葉をかけてしばらく見送っていた。
やがて彼女は裏門に着き、振り返り右手を上げてサヨナラの挨拶を送ってきた。なんと若々しく親しげな、それでいて好ましい振る舞いだろう。香田もとっさに軍隊式敬礼で応えた。
香田は軍隊の経験はないが、太平洋戦争中の中学生の軍事教練で教えられた。間もなく彼女は建物の影に消えた。寒風が追い討ちをかけた。香田の口元に自然に笑みがこぼれ出る。今冬一番といわれる寒さなのにあまり感じない。アドレナリンが放出される興奮状態なのだろう。身も心も若者に返ったようだ。車に乗り込みキーを捻ると、この寒さにめげず元気よく息を吹き返した。病院の門から出てデッキのスイッチを押すと、ジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」の穏やかな曲が流れてきて、それはまさに香田の気分にぴったりだった。
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小説 人生の最終章(1)

2007-03-27 12:52:08 | 小説

恥ずかしげもなく、また小説をアップします。
前回、アクション物の殺し屋とレズの女性を登場させましたが、今回は男と女の永遠のテーマ愛と性を書いてみました。それも高齢者のです。おじん臭く書きたくなかったのですが、さてどうでしょう。誰でも理想の女性や男性を夢見ていると思います。私が思う女性を描いてみました。エマ・トンプソンとダイアン・キートンをミックスした感じをイメージしました。

 


 本に集中していて気づかなかったが、「なんの本を読んでらっしゃるの?」という声に顔を上げた香田の目に映ったのは、相変わらず爽やかで魅力的な笑顔の美しい浅見けいだった。
 「やあ、おはよう」周囲を見回して、少し離れたところに席が並んで空いているのを見つけてそちらに移動する。
 並んで腰掛けながら、本の表紙を見せて「ミステリー、女性警官が主人公の短編なんです」このプラスチック製の椅子は狭く、並んで座ると彼女の腿と接触していて、なんとか隙間を作ろうともじもじするが結果は変わらない。彼女を横目で見ると口元に薄っすらと笑みが浮き、なんだかこの状態を楽しんでいるように見える。 今日は最初に会ったときと同じような白いブラウスにぴったりとした黒のパンツの肢体から、体温が厭でも感じられる。窓の外は、葉を落としていた木々が、近づく五月の大気で緑の衣装をまとい始めていた。このあと、今日は昼食を共にすることになっていて、いやでも期待が高まる。
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読書 ガブリエル・ガルシア=マルケス「わが悲しき娼婦たちの思い出」

2007-03-25 10:00:17 | 読書

              
 マルケスは、1982年にノーベル文学賞を受賞した。この本は、川端康成の「眠れる美女」に想を得て、77歳のときの創作という。
 「眠れる美女」は、67歳の老人だし、この本はもっと高齢で90歳の誕生祝に処女と戯れたいと願う。共通しているのは老人の性にまつわるもので、裸の年若い女が眠っているベッドで横臥(おうが)しながらその精気を求める。
 どちらの作品の主人公も、女性関係は旺盛だった。ただ役立たずになったとき、一体どう対処するか。「眠れる美女」は、失った青春の哀切や死の恐怖におののき、寂寞としたものがこみ上げてくるが、こちらの方は体中にキスをしたり汗を拭ってやったりするが、怒り狂って部屋をめちゃめちゃにしてしまう。勿論曲解の上で。
 この恋する美女に、自分の財産を残すことを決め、おまけに100歳を迎えるため希望の人生が始まり、いつの日かこの上ない愛に恵まれて幸せな死を迎えることになるだろうと言い放つ。マルケス本人は、新聞報道によると今年80歳になり、祝福の行事が行はれたが称賛への感想を聞かれ「望んでいない。身を隠すよ」の一言だったそうだ。キューバのカストロ議長とも親交が深いという。
              
              ガブリエル・ガルシア=マルケス

 そして、この本の中の音楽は、バッハ「チェロの独奏のための六つの組曲」、ワグナー「クラリネットと弦楽のためのアダージョ」、ドビュッシー「サキソフォンのための狂詩曲」、ブルックナー「弦楽五重奏」、ブラームス「バイオリンとピアノのソナタ第一番」などが出てくるが、私のクラシック・コレクションには無かった。

 この本に面白い記述やユニークな視点もあって楽しませてくれた。誕生日のお祝品の中にぞくぞくさせられるのもある。日本女性もこんなユーモアがあればいいなあと思う。
 “秘書たちはキス・マークの入った絹のトランクスを贈り物にくれて、添えられたカードを見ると、脱がせてあげます、と書いてあった。それを見て、若い女友達が、われわれ老人をもはや現役ではないだろうと高をくくって、きわどいいたずらを仕掛けてくるが、これも老いの楽しみの一つだと考えた”このキス・マークの一杯ついたトランクスを穿いて寝ると元気が出るのだろうか。

 私事で恐縮ながら、まだ完全に衰えていないことが分かった。先日、脂肪腫が気になって皮膚科に行った。診察室は女の先生で、左腕にかなり大きな膨らみがあるので見せた。
「ほかにもありますか?」
「ええ、右腕や太ももの付け根付近にもあります」
「じゃあ、見せてください」
 ズボンを下ろしたが、パンツはつけてウロウロしているとベッドを指差しここに横になってと言い始めた。全部脱ぐわけにいかないし、どうしたものかと考えていてチョットきわどいが、パンツを半分ほどズリ下ろした。
 そこの小さな脂肪腫を触診してきた。そのとき私は、チョットもやもやとした変な気分になりかけた。不必要なところが膨らんできたら困ったことになる。
 幸い触診はそこで終わった。頭の中では、まだまだ捨てたものではないと呟いていた。ちなみに、左腕の脂肪腫は摘出して、検査の結果は悪性ではなかった。
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CD ロッド・スチュワート「ザ・グレイト・アメリカン・ソングブックVol2」

2007-03-21 11:36:43 | 音楽

             
Vol3を聴けばVol2も聴きたくなるのは人情。ロッド・スチュワートは、1945年1月生まれというから、もう62歳になった。
 エルダー・マーケットというのがあるそうで、このアメリカン・ソングブック・シリーズは、そういう年配者の間でヒットしているという。勝手な解釈をすると、団塊の世代をいうのかなと思っている。
 年配者でなくても、いいものはいいのである。タイム・アフター・タイム(Time after time)、恋の気分で(I’m in the mood for love)、ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア(Don’t get around much anymore)、魅惑されて(Bewitch, Bothered and Bewildered)妖しい魅力のシェールとデュエット、ティル・ゼア・ワズ・ユー(Till there was you)、本当のことが分かるまで(Until the real thing comes along)、いつかどこかで(Where or when)、スマイル(Smile)、決めた心(My heart stood still)、やさしき伴侶(Someone to watch over me)、アズ・タイム・ゴーズ・バイ(As time goes by)クイーン・ラティファとデュエット、ハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマン共演の映画「カサブランカ」の挿入歌で、酒場で演奏される場面が印象的だった。瞳は君ゆえに(I only have eyes for you)、クレイジー・シー・コールズ・ミー(Crazy she calls me)、わが恋はここに(Our love is here to stay)、マイ・フェイヴァリット・シングス(My favorite things )が収められている。

 車の中でもいいし好きな女性(あるいは男性)との食事や夜一人追憶のひと時にもいい。
             
 好きな女性あるいは男性は、恋人に限らない。奥さんでもだんなでもいいのです。気分が乗らない? 勝手にしろ! 
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CD ロッド・スチュワート「ザ・グレイト・アメリカン・ソングブックVol3」

2007-03-18 14:14:21 | 音楽

             
 このCDにはEmbraceable You、For Sentimental Reasons、Blue Moon、What A Wonderful World 、Stardust、Manhattan、’S Wonderful、Isn’t It Romantic、I Can’t Get Started、But Not For Me、A Kiss To Build A Dream On、Baby, It’s Cold Outside、Night and Day、A Nightingale Sang In Berkeley Square、You Belong To Me、Smileが収められていて、「ブルー・ムーン」はエリック・クラプトンのギター、「この素晴らしき世界」では、スティヴィー・ワンダーのハーモニカの共演があり、また「マンハッタン」ではベット・ミドラー、「外は寒いよ」では巨大な胸を誇るドリー・パートンのデュエットになっている。

 耳に心地よい編曲で、ロッド・スチュワートの個性的な声にも合っているようだ。‘02年にVol1が出て以降’03Vol2、‘04Vol3、’05Vol4まで出ている。いずれも好評という。
 ではなぜジャズのスタンダードなのか? ちゃんと答えがあった。解説の中で「僕がロックン・ロールを歌えることを、もうこれ以上証明する必要はないと思う。音楽というものはすべてに共通してつながっているんだ。ブルースが存在しなければ、ジャズもなかったし伝統的なジャズなしではスウィング・ミュージックもありえなかった。
 スウィング・ミュージックがなければロックン・ロールも存在しなかったということさ。音楽はこうしてつながっているんだ。分かるだろ? もしもルイ・アームストロングが存在しなかったら、今の僕たちには何もなかった」とロッド・スチュワートは言う。過去の音楽家に対する敬意の表れだろう。
             
 もう一つ感じたのは、素人でも歌える編曲ということだ。さしずめ、カラオケ化にするフリーソフトを使ってNight and Dayを練習しようかとも考えている。
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映画 「プリティ・へレン(‘04)」

2007-03-13 10:13:05 | 映画

 三姉妹の末っ子のヘレン(ケイト・ハドソン)は、長姉(フェリシティ・ハフマン)の突然の交通事故死で残された三人の子供の面倒を見るハメになる。
            
 デザイン会社のエージェントとして辣腕を発揮するバリバリのキャリアウーマンが、しかも結婚暦のない独身で。アパートを移ろうとマンハッタンで探すが、セールスの言う月たった9千ドル(約100万円強)の家賃のアパートはあきらめ、クイーンズの月1200ドル(約14万円強)のアパートに引っ越す。さすがのキャリアウーマンも100万円の家賃には歯が立たない。
            
 子育ての難しさ特に思春期の子供は。そういうことで一時は子供たちをジェニーに引き渡したが、子供たちのいない生活もまた考えられないものになっていた。姉妹喧嘩の末、ジェニーに宛てた長姉の手紙をヘレンに見せる。そこにはヘレンに子供たちを託す理由とジェニーへの期待が込められていた。長姉の温かい心が伝わる文章だった。これは遺言だけれど、死を意識して書いたものではない。偶然用意周到さが役に立ったと言ったところ。

 “ジェニー 今ごろ 私はもういなくて子供たちの後見人はヘレン。さぞや驚いたでしょうね。確かに奇抜な選択だわ。だってあなたほどの母親はいないもの。
 この手紙は何事にも用意周到な夫のポールに説得されて書くことにしたの。分かるでしょうけど自分の子の親を選ぶなんてできっこないわ。ムリよ。だから自分に一番似ている人間を選ぶの。
 深く知り合う前にいなくなった本当のママと同じにおいの人、ヘレンと私はよく似てるわ。だからヘレンを選んだ。子供たちと喧嘩してもあの子なら仲直りできる。時々大きなヘマもやるけど必ず不死鳥のように甦る。
 ヘレンにチャンスをやって。あなたならきっと家族をまとめてくれる。そうよ、へレンが母親になるにはヘルプがいるわ。でもあなたがいる。最高の母親のあなたが。ヘレンを育てたのはあなただもの。靴のひも結びみたいに母親になる方法を教えて。あなた教えてたでしょ、ウサちゃんが木を回って巣穴に……って、ぎゅっとね”

 監督 ゲイリー・マーシャル1934年11月ニューヨーク生れ。
 キャスト ケイト・ハドソン1979年4月ロサンジェルス生れ。両親はゴールデン・ホーンと歌手のビル・ハドソン。‘02「あの頃ベニー・レインと」でゴールデン・グローブ助演女優賞受賞、アカデミー助演女優賞ノミネート。
 ジョン・コーベット1961年5月ウェストヴァージニア州生れ。
             
 ジョーン・キューザック1962年10月ニューヨーク生れ。弟はジョン・キューザック、父や姉、妹まで映画一家。
 フェリシティ・ハフマン「トランスアメリカ」の主演女優。
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映画 「トランスアメリカ(‘05)」

2007-03-10 11:51:43 | 映画

              
 性同一性障害者で性転換手術を目前に控えたブリー(フェリシティ・ハフマン)は、男娼で麻薬常習者の息子トビー(ケヴィン・ゼガーズ)が逮捕されニューヨーク市警に迎えにいくハメになる。
              
 トビーには教会からと言ってカリフォルニアへと横断の旅が始まる。ぎこちなさから徐々にほぐれてくるが、ある夜、女性と思い込んでいたブリーが実は男であることが分かる。そして立ち寄ったブリーの実家で、トビーがブリーに言い寄る。結婚してくれとまで言う。
 しかし、真実を告げられてトビーは飛び出していく。性転換手術も成功し完璧な女性を手に入れるが、トビーが飛び出したせいで気分が浮かない。そんなある日、トビーがやってくる。機嫌を直したわけではなく、手術がうまくいったか聞きたいだけという。父親は性同一性障害で女性になり、息子は同性愛者という家族の幸せは? 
“その汚いテニスシューズを、私の新しいテーブルから下ろしなさい”ブリーの一言に素直に従うトビー。そして親子は静かにビールを飲む。
               
 男が女になろうとしていて、胸はホルモン剤でふくらんでいるがまだペニスがくっついたままなので顔に男の残滓が求められる。その辺はよく出来ていて、男が演じているのではという錯覚をしたくらいだった。
 ブリーが男であることが分かる場面は、なかなかショッキングで、ブリーの立ちションでペニスが突き出ていた。この場面や性転換手術のあとブリーが浴槽で女を確かめる場面それにセリフにもきわどいのがありそのため映倫の15歳未満(中学生以下)の入場禁止R-15の指定になっている。

 監督 ダンカン・タッカー本作でインデペンデント・スピリット賞‘05新人脚本賞受賞。
 キャスト フェリシティ・ハフマン1962年12月ニューヨークベッドフォード生れ。90年代からテレビ、映画の主に脇役で出演。テレビ人気シリーズ’04~‘05「デスパレートな妻たち」でエミー賞主演女優賞を受賞。本作でゴールデングローブ賞女優賞受賞、’05アカデミー主演女優にノミネートされる。
               
 ケヴィン・ゼガーズ1984年9月カナダオンタリオ州生れ。6歳から芸能界に入っている。
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読書 ジェフリー・ディーヴァー「ブラディ・リバー・ブルース」

2007-03-07 21:51:30 | 読書

               
 映画のロケーション・スカウト、ジョン・ペラムが遭遇するトラブル。ロケーション・スカウトとは、制作する作品にふさわしいロケ地を探す仕事のこと。
 ミズリー州のうらびれた町にふらりとビールを買いに出たのがその発端だった。それは紺色のリンカーンのそばを通りかかり不意に開いたドアに買ってきたばかりのビールが入った袋をぶつけられる。何本かが割れて白い泡を吹きあげた。
 この車に乗っていたのは、地元の不動産業者フィリップ・ロンブロと殺し屋のラルフ・ベイルズ。ビール壜を割られたペラムがリンカーンの窓を叩いたが、車はすばやく走り去った。

 その後、男と女が射殺されおまけに警官も撃たれる。実際はペラムが見ていないにも拘らず、重要目撃証人として警察と殺し屋から追い掛け回される。ペラムも逃げてばかりいるわけにも行かず手がかりを求めて苦闘する。すんなりとことは解決しないように出来ていて、チョットひねりを利かせて面白くしてある。
 
 ストーリーを追うのもいいけれど、私はむしろ映画制作現場の描写に興味を持った。アクション場面の銃撃シーンに。銃を撃つのは空薬莢というのは知っているし、着弾地点に土塵を上げるのもコンピューター制御の爆竹を使うのも想像できる。ただ爆竹を取り付けられないもの、窓や水の表面の衝撃効果を得るためにワックス弾を発砲するとは知らなかった。現在でもそうなのかは確かでない。これらは著者の映画制作経験が役に立っているそうだ。
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映画 トム・クルーズ「M:i:Ⅲ(’06)」

2007-03-02 13:44:21 | 映画

               
 トム・クルーズが製作主演のヒットシリーズ「ミッション・インポシブルⅢ」は、いいとか悪いとかあるいは演技がどうとかはまったく無縁の映画。
 人並みにセリフが喋れて運動神経があれば事足りる。アクションに次ぐアクションで、5.1チャンネルの音響であれば耳をつんざき、薄っぺらな壁の家では近所迷惑になる。
 かつてのテレビ映画の「スパイ大作戦」のテーマ音楽は、懐かしさを覚える。酔っ払って途中で寝込んでしまっても一向に構わない。ストーリーなんてあってないようなもの。気楽な観賞がベスト。たまにはこんなのもいい。
              
 監督 J・J・エイブラムス1966年6月ニューヨーク生れ。テレビ「LOST」シリーズのヒットでこの作品を監督する。
 キャスト トム・クルーズ1962年7月ニューヨーク州シラキューズ生れ。’86「トップガン」でブレイク。演技者としても成長し「7月4日に生れて」ではアカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされ、製作者としても「ミッション・インポシブル」シリーズを世界的にヒットさせている。ニコール・キッドマン、ミミ・ロジャース、ペネロペ・クルスなど相手役女優と結婚、破局の経歴を持つ。現在ケイティ・ホームズとの間に女の子が生れる。
 フィリップ・シーモア・ホフマン1967年7月ニューヨーク州フェアポート生れ。 ’90年から脇役の実績を積み‘05「カ-ポティ」でアカデミー主演男優賞を受賞して大きく飛躍した。
              
 ミッシェル・モナハン1976年3月アイオワ州ウィンスロップ生れ。’05年「スタンドアップ」‘06年「Mr &Mrsスミス」で重要な役どころから、この作品でヒロイン役に大抜擢される。
              
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