「ロサンジェルスを知りたければ、サンセット大通りを始まりからビーチまで車で通ればいいと言われている。それは旅行者がLAのすべてを知ることになるルートだった………その文化や栄光だけでなく、その数多くの亀裂と欠点を。30年前に、組合運動と市民権運動の指導者を記念して、いくつかのブロックがセザール・E・チャベス・アヴェニューという名に改められたダウンタウンから始まり、ルートは旅行者たちを、チャイナ・タウン、エコパーク、シルヴァーレイク、ロス・フェリズへ運び、そこから西に曲がって、ハリウッドとビヴァリー・ヒルズ、ブレントウッド、パリセーズを横切り、最終的に太平洋にぶつかる。その過程で四車線道路は、貧困地区と富裕な地区を通り抜ける。ホームレスのキャンプがあり、大邸宅があり、エンターテイメントと教育、カルト・フード、カルト宗教のイコン的な施設を通過する。百の都市でありながらも一つの都市である通りだ」
マイクル・コナリーは、作品の中で架空の都市や町、レストランや場所などを挿入する作家ではない。現存するそれらを描く作家なのだ。従ってロサンジェルス案内もその通りに辿ってみても悪くない気がする。しかし、ホームレスのキャンプとなると逡巡する。東京の日比谷通りの歩道にテントを張って居住するホームレスを想像すると。とてもじゃないが歩く気にならない。
YouTubeでLAのテント村を見ることができるが、市庁舎の前にテントを張ったりしていてアメリカ有数の大都会の風格も品格も見ることはできない。そんな大都会のコロナ禍の中、ダーク・アワーズつまりロス市警ハリウッド分署夜間勤務専門の刑事レネイ・バラードを中心とした警察ミステリーと言える。
レネイ・バラードは女性、趣味はサーフィン、人種は???? 同僚の刑事に「インディアンの血が?」という軽い問いかけに違うと言っている。でも風貌がそれに近いのかもしれない。警察内部の人種的、性的な目に見えないバリアに悩まされながら、強い性格がダークアワー勤務へと押し出した。それはロス市警の数多くの害悪の一つ、セクハラに抵抗したことへの処罰としてもたらされた。バラードは強盗殺人課でボスとの内部抗争に敗れ、ハリウッドの夜勤に追放されたのだ。
この部署の難点は、例えば殺人事件なら初動捜査のポイントを殺人課刑事に引き継がなければならないという点。刑事の勤務評価が事件解決能力とすれば、事件そのものを持てないバラードには内勤巡査の評価基準しかない。それに満足するバラードではない。ならばどのように法と秩序の隙間を縫って成果を出すのか。ロス市警の伝説の刑事と言わていて引退したハリー・ボッシュの助力を得ながら、無謀とも思える身代わり戦術で犯人射殺というバイオレンスを演じた。
気分は最高で最近手に入れた愛犬ピントとともにサーフィンに出かける前にワイアレス・イヤフォンでマーヴィン・ゲイの「What's going on」を聴きながら散歩に出かけた。
マーヴィン・ゲイの活動期間は、1958年から1984年で、この曲は1971年に発表された。本人は、1984年4月1日両親の喧嘩を仲裁していたとき、父親の逆鱗に触れ射殺された。父親から撃たれた銃は、かつて息子ゲイから贈られたものだったという皮肉がはらんでいる。享年44歳。