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ミステリー ジョー・R・ランズデール「サンセット・ヒート」

2005-11-09 14:38:50 | 読書
 この人の作品はいままで「ボトムズ」「アイスマン」「ダークライン」「テキサス・ナイトランナーズ」等を、老境に入った男の心理や騙される男のせつなさ、爆発する若いエネルギーを独特の比喩やユーモアに絡めての描出が心地よく、読んで楽しいものだった。

 今回の作品は以前と文体ががらりと変わり、雰囲気もウェスタン調でテキサスの匂いを漂わせている。サンセット・ジョーンズは、酔った治安官の夫から殴打されていた。そして性交へ、むしろレイプといった方がいい。最近ますますひどくなる。サンセットは手を伸ばして彼の三十八口径のリボルバーをホルスターから抜き、悟られないうちに彼の頭に銃口を押し当てて、こめかみに一発撃ち込んだ。一言も発せず昇天した。

 したがって治安官が欠員となって誰かを任命しなくてはならない。それがこともあろうに夫の母、義母のマリリンの支持により、その後をサンセットが継ぐことになる。サンセットは赤毛で夕日の赤を連想させるので「サンセット」と呼ばれている。赤毛の女は気が強いが男に弱いところがある。助手のヒルビリーにぞっこんで、大汗をかいても泥の海に転がっていたとしても、さわやかで端正な顔立ちには彼女の股間が理性を失う。おまけに娘のカレンも篭絡されてしまう。母娘ともどももてあそばれたわけだ。

 いろんな事があって最後には、悪いやつらに復讐の攻撃に出る。この銃撃シーンを文章で表現するのも難しいことだろうと思う。少なくとも私は。私が書くとすれば、映画のシーンを思い出すしか手がない。銃を撃ったことといえば、空気銃ですずめを撃ち落したくらいだ。この本でも全く西部劇調だ。そして意外な結末が待っている。

 最近読んだミステリーは意外な結末が多い。こねくり回した文章表現にふれてみると、例えば“蟻を踏みつぶすような歩き方で車に戻り”とか“灰色だった空が黒くなり、まるで絞り出し袋を使ってクリームでケーキを飾っていくように夜空に次々と星が宿るなか、サンセットは泣いていた”あるいは“何片か浮かんでいる雲は、空いっぱいに広げた青いマットレスの裂け目から飛び出した綿のようだった”

 こんな表現は思いつきもしない。とにかく他者との違いをなんとか表そうと苦労しているのだろう。先に書いた様な表現が随所に出てくるし、会話も面白味があって退屈しないで読んだ。
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