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読書「三つの秘文字Sacrifice」S・J・ボルトン

2012-11-28 11:23:03 | 読書

                
 イギリス本土から百キロほど北にあるシェトランド諸島。産婦人科医のトーラ・ガスリーは、死んだ愛馬を埋葬するために自宅の庭を重機で掘っていた。そして掘り当てたのは女の死体だった。しかも心臓が抉り取られていた。その死体に三つのヴァイキングのルーン文字が刻まれていた。 

 この謎を追ううち、怪しげな宗教としか思われない伝承に絡む事件に巻き込まれていく。こういうテーマは私の苦手とするところで、事件よりも風景とか、会話とか、食事に何を食べるのかとか、どんな服装か、それにユーモアがあるかが関心事になった。細やかな描写には嬉しかった。

 食べることについては、こんな場面がある。”ヘレン(ダンディ署警部)が海に向けて置かれたベンチを指差すのを見て、そこに腰をおろした。ヘレンの手にはコーヒーの入った大きな紙コップと、白い紙ナプキンと、油の染みがついた紙袋を持っている。
「ロブスター・ロール」ヘレンはすまし顔で言った。「今朝とれたロブスターのサンドイッチよ」素晴らしい朝食だった。濃い目の苦いストレート・コーヒーには、薬のような効果があったし、焼きたてのやわらかな白パンには、塩気のきいた温かなバターが滴るほど塗ってあった。それを頬張る私の唇は、上等のタルカム・パウダーをはたいたように小麦粉だらけになっているに違いない。身がしまったロブスターは甘く、その一口だけでもご馳走と言うに充分だった”

 このブログを書いている午前11時過ぎにこういう文章に出会うと、高価な和牛のステーキよりもコーヒーとバターの匂いと白いパンの味が現実味を帯びる。そう言えば、スリランカで食べたロブスターはそれほど甘くなかった。

 それに適度のユーモアも交えてあってホット一息つける文章になっている。ただ、このユーモアも緊張した場面にも現れるのが欠点かな。

 ついでにもう一つ、“へレン が戸口に立っていた。男物仕立ての黒のパンツスーツにルビー色のブラウス。すてきだった”

 女性の服装は、女性が描写するのが一番ぴったりくる。残念ながら「凶弾」の逢坂剛の女性の服装とは雲泥の差がある。ストーリーのほうは謎解きで読み飽きることはなかった。
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読書「凶弾」逢坂剛

2012-11-25 10:30:25 | 読書

                
 警察の裏金問題が一時話題をさらったことがある。それが今回のテーマ。銃撃戦で斃れた一匹狼の刑事禿富鷹秋ことハゲタカの裏帳簿を白日にさらすというやり残した仕事を、神宮署の刑事といやに紳士的な渋六興行というやくざが協力して、裏帳簿を闇に閉じ込めたい同じ署の化け物女刑事それに警察庁の警視正。それに加わるハゲタカの美人妻が演じるノン・ストップ・エンタテイメントだ。

 それなりに読ませてくれるが、裏金問題で人が殺され自殺者もでるというが、このテーマでは迫力に欠ける。もう少しスケールの大きなテーマであったほうが良かった。

 それに、「肩をすくめる」という表現が何度もでてくる。”出口へ向かおうとして、嵯峨はふと顔を振り向けた。
「こんな重要な役を私に降るのは、私を信頼しているということですか」
「もちろんです。何だと思ったんですか」聞き返すと、嵯峨は肩をすくめた。
「何をするにしても、昼間は署から出るわけにいかないし、この件に時間を割くとすれば夜か休みの日、ということになる。あまり、あてにしないでください」
御子柴も、肩をすくめてみせる。

 この肩をすくめる所作は、日本人にはあまり馴染みのないものでちょっと違和感を覚える。別の言葉で言い換えたほうがいいかもしれない。それに顎を引くというのもいやというほど出てきた。

 女性のファッションも逢坂好みなのか、私にはちょっと鬱陶しい感じがする。新聞記者の大沼早苗の服装は、紺のパンツスーツに、水色のブラウス、水玉のスカーフ。シックな装い……という出で立ち。私はこういう細かいところが気になる性質で困ったものではある。
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映画「幸せの教室Larry Crowne’11」劇場公開2012年5月

2012-11-22 11:18:23 | 映画

                
 トム・ハンクスが監督して演じるこの映画、郊外のスーパー・マーケットで働くラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、大卒でないがゆえに出世の見込みがないからと言われクビになる。別れた妻のローンも引き受け、家の価値はローンの残高以下という。そんな中年男はどうすればいいのか。

 就職活動もどうやら学歴が壁になってるようだ。そこでコミュニティ・カレッジに行くことにする。大学のロビーでパンフレットを眺めていると、学長だという男が話しかけてきた。学長が勧める教科が、「スピーチ217」と他に経済などという。

 この「スピーチ217」の講座を担当しているのがテイノー(ジュリア・ロバーツ)。生徒が10人以下だと休講するという我がまま女。夫がいるが売れない小説家でいつもパソコンでポルノを眺めている。
 本人は否定するがテイノーは良く知っている。しかも「俺が巨乳好きは知ってるはずだよね。お前のはペチャパイだ」と言ったのが決定的。もう、映画の道筋は見えた。

 トム・ハンクスがメイキングで言ってるのが「恋は探すのではなく、落ちるものなんだ」それでジュリア・ロバーツが酔っ払ってトム・ハンクスに送ってもらったとき、家の玄関で「キスしたい?」とテイノー。勿論キスをする。まあ、大人だからいいとは思うが、作品の制作意図がロマンティック・コメディらしいから、もう少しロマンティックでも良かった気がする。恋愛ってある程度緊張感も伴うわけだから、そういうプロセスが欠けているように思う。

 それにしてもトム・ハンクスもジュリア・ロバーツも中年の恋を演じる年齢になったんだ。お互い老けましたなあ!
            
            
            
            
            
            
            
監督
トム・ハンクス1956年7月カリフォルニア州コンコード生まれ。

キャスト
トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ1967年10月ジョージア州生まれ。
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読書「平蔵の首」逢坂剛&「鬼平犯科帳」池波正太郎

2012-11-19 14:05:33 | 読書


「平蔵の首」
 江戸時代の火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の長、長谷川平蔵が主人公。火付盗賊改方というのは重罪である放火、強盗、賭博を取り締まるのを仕事としていて、その長谷川平蔵といえば池波正太郎の「鬼平犯科帳」が人気で、アマゾンのブックレビューにもこの本は池波正太郎に届かないし内容も乏しいという批判も書かれていた。

 ただ、この本は逢坂剛版の平蔵でトリックや罠を仕掛けてあり、海外版のミステリーという趣きだ。これはこれで結構楽しんだ。ただ、色っぽい濡れ場はないからそのつもりで。

 この長谷川平蔵という実在した人物が面白い。子供の頃まあ思春期かな。不良少年だった。不良少年というよりも無頼漢に近い。それが親父の跡をついで出世していったというが、敵も多かったみたいで火付盗賊改方を8年も務めたという。通常は2年ぐらいで役を変わっていくらしいから。人間関係というのはいつの世も複雑で悩ましいものに違いない。

「鬼平犯科帳」
 逢坂剛の「平蔵の首」もそうであるように、長谷川平蔵の捕方と盗賊たち、その盗賊の中に見込みのある罪人を捕方の犬として使役させるというパターンは同じ。
 ただ、強いて言えば逢坂はドライ、池波はウェットを感じる。印象的なのを一つあげるとすれば「老盗の夢」だろう。

 蓑火(みのひ)の喜之助というかつて夜盗の頭目だった67歳の男。今は堅気になり京都へ昔の女の墓参りにやってきた。その帰り道、肉感的な女が前を通ったとき、どきっとして足を踏み外して転んだ。この女が生きていた昔の女の体つきに良く似ていたからだった。

 この女は、近くの店の茶汲み女だった。何度か通い、酒を酌み交わしじゃれあっているうちに「あっ……?」意外にも勃然として兆しが見え、盛り上がった乳房がまぶしく老体に若い血しぶきが駆け巡るのを感じた。

 五年ぶりの歓喜に震えた。女と出来たのがこよなく嬉しく自分の歳を忘れた。この女を江戸に呼んで一緒に暮らしたいと、最後の夜盗の計画を練り始める。

 ここに長生きの秘訣があるのではないだろうか。つまり恋をするということだが、男70歳にもなるとあらゆる点で自信がなくなりめっきり老け込む。この喜之助のような巡り合わせはなかなかないだろうが、諦めずに積極的に行動したほうがいいような気がする。
 お洒落に気を使いスポーツに親しみ今以上に教養を身につけるという努力は欠かせないだろう。神様はちゃんと見ているはず。いずれ幸運が訪れることは間違いない。
 なお、解説に植草甚一[1908年(明治41年)8月8日~1979年(昭和54年)12月2日 欧米文学、ジャズ、映画評論家]が書いていてやはり心に留めたのがこの「老盗の夢」だという。「それは僕が年をとったので身につまされたせいかもしれない」と書き添えてあった。ちなみに植草甚一60歳のときだった。
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映画「コネクション マフィアたちの法廷 Find me guilty ’06」劇場公開2012年5月

2012-11-16 16:41:43 | 映画

                
 シドニー・ルメットの最初の映画1957年「十二人の怒れる男」は、あまりにも有名で名作だ。私の子供が中学生の頃、テレビでこれを観て感動したと言っているくらいだから。陪審員控え室だけのドラマに緊迫感を盛り上げるのは容易ではない。そのシドニー・ルメットが82歳のときに制作したのがこの映画だ。

 「十二人の怒れる男」ほどの出来栄えではないが、特異なキャラクター、ニュージャージーでは名の売れたルッケーゼ・ファミリーの一員ジャコモ“ジャッキー・ディー”・ディノーシオ(ヴィン・ディーゼル)が自ら弁護をすると言う異色の法廷になった。これは実話に基づいたもので、法廷でのやり取りは実際のものだという字幕が入る。

 このジャッキーという男、どこか憎めないところがあって、判事にたしなめられるが程好い下ネタも交えて陪審員の心に食い込み始めていた。検察側も陪審員の様子を見て危機感を抱く。検察は、明確な証拠を示さないといけないが、弁護側はそれに対して合理的な疑いを明らかにすればいい。

 検察は、潜入捜査官やFBI、マフィアから寝返った男を証人に立てた。しかし、ジャッキーや顧問弁護士のベン(ピーター・ディンクレイジ)のユーモアを交えた追求に形勢はあやしくなる。評決はどうなるんだろうか? 長期の裁判が終わろうとしていた。

 この映画のオープニングでは、ジャッキーがベッドで縁戚の男に撃たれる場面がある。そのバックに流れるのが、Louis Primaの「When you're smiling」で、これは洒落のつもりなんだろうか。殺されても微笑みなさい、なんてね。
 普通は荘重なオーケストラのBGMだろうけど、このスィングするジャズ・ヴォーカルも画面に合っているような気がする。ともかく眠くならなかった映画ではある。
            
            
            

その「When you're smiling」をどうぞ!
Louis Prima - WHEN YOU'RE SMILING

監督
シドニー・ルメット1924年6月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。2011年4月没。

キャスト
ヴィン・ディーゼル1967年7月ニューヨーク生まれ。
ピーター・ディンクレイジ1969年6月ニュージャージー州モリスタウン生まれ。
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読書「春日局(かすが の つぼね」早乙女貢

2012-11-13 18:12:39 | 読書

                 
 明智光秀は生きていた。織田信長を本能寺で討ち、驚異的なスピードで戻ってきた秀吉に捕らえられ打ち首の上さらし首にされた筈だが。その光秀は、天海と名乗る僧正だった。

 その天海と徳川家康とを再会させたのが、春日局ことお福だった。お福の父は、明智光秀の重臣斉藤利三で母は光秀の妹である。そのお福の多難の前半生と乳母になってから好機を掴み大奥で絶大な権力を掴むまでを、早乙女貢らしい筆致で描かれる。

 早乙女貢らしいというのは、人間の根源をベースにした創作を感じる。つまり、食欲、性欲、出世欲が渾然一体になっている。特に性欲は、「淀君」もかなり濃厚な描写であったが、この作品もやや抑え気味ながら具体的だ。

 三代将軍・徳川家光(幼名竹千代)の乳母として、竹千代を育てる過程において身をもって性教育もした。幼少の頃は、竹千代の小さな男根をいじり、十代はじめにはそれを口に含んだり、竹千代が男色一辺倒になったとき自らの体を与えて女体への興味を沸き立たそうとしたりした。はっきりしないが、家康とも関係したらしいとも言われる。

 そう考えると、いつの世も女は自分の体を武器にして巧妙に世の中を渡っていく。この本にも面白い表現がある。「美女ほど般若面になる。般若面の基本は細面ての美女である。これに比べて、おかめ面は、福々しくて、人の善さ、母性があらわれている。気の強さ、逞しさは、お福も劣らないが、何せ、生まれつきのお多福面だから、その悪い面が隠されている」

 お福の悪い面というのは、驚くなかれ夫正成の妊娠して腹の大きくなった妾を炭火を盛った火熨斗(ひのし、今で言うアイロン)を腹に押し当て焼き殺すことまでやってのけている。

 竹千代は、二代将軍・秀忠の次男で浅井三姉妹の末っ子江が母である。早乙女貢は、淀君も愚鈍な悪女に描き、この江もヒステリー女と断定している。どうやら浅井三姉妹は、名家を鼻にかけた傲慢ないやらしい女どもと思っているらしい。
 それに性描写が著者の好みなのか、クンニの場面が多い。いつの時代も性への関心は強いが、娯楽もあまりないこの時代なら、なおさらセックスに没頭するのもうなずける。そして、運命的な終焉を迎える。春日局が病床に伏した同じ頃天海僧正も病に犯された。天海108歳、春日局65歳。
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映画「ブラック&ホワイトThis means war ’12」劇場公開2012年4月

2012-11-09 13:00:08 | 映画

                
 ’05「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でアカデミー主演女優賞を受賞したリーズ・ウィザースプーンを起用しながら、このていたらくな映画は何だ。

 CIAの凄腕エージェントFDR(クリス・ペイン)とタック(トム・ハーディ)が、ローレンス(リース・ウィザースプーン)を取り合うというラブコメとアクションのごった混ぜ。ストーリーはすぐ忘れてしまうほど何の意味もない。

 それにしてもトリッシュ(チェルシー・ハンドラー)の猥雑で淫らなセリフには品のかけらもない。字幕翻訳者も悪乗りしているのか? と思ってしまう。何も考えずにボケッとしながら観るのもいいかもしれない。

 クリス・パインの青い目や男臭いトム・ハーディなんかは、日本人俳優には無い魅力もありそうだから、デパートで商品を買うような感覚で見るのも悪くないだろう。男が女優を品定めするように、女も目の保養にいいかもしれない。

監督
マックG 本名ジョセフ・マクギンティ・ニコルズ1968年8月ミシガン州カラマズー生まれ。’00「チャーリーズ・エンジェル」のほか、テレビドラマ「スーパーナチュラル」などがある。
             
             
             
             
             
             
キャスト
リース・ウィザースプーン1976年3月ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。’05「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でアカデミー主演女優賞を受賞。
クリス・パイン1980年8月ロサンジェルス生まれ。
トム・ハーディ1977年9月イギリス生まれ。
チェルシー・ハンドラー1975年2月ニュージャージー州リビングストン生まれ。
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読書「淀君」早乙女貢

2012-11-05 09:26:50 | 読書

                  
 先に読んだ著者の「千姫狂乱」で淀君を馬鹿呼ばわりしていたので、この本を読んでみたくなった。この本では一言で言えば、勝気で闘争心が強く気位の高い女で可愛げがない。性的に成熟する淀君をベースにして、秀吉の幼少の秀頼を思う気持ちから驚くべき残虐行為も平然と行うというお話。

 秀吉は十数人の側女を持ちながら、横恋慕した信長の妹お市の方に生き写しの淀君も手に入れた。好色では人後に落ちなかった秀吉は、最初の房事の折、淀君の肌を撫でながら感激を味わう。
 一方、淀君の男関係は、意外に地味なようだった。姫育ちで秀吉の庇護を受けると男との接触も少ない。好色な男も一杯いるが手が出せないし、淀君の気位の高さからも無理な話。

 淀君が最初に男を知ったのは、元の名お茶々のときだった。北ノ庄城落城のとき両親の柴田勝家とお市の方の自刃を知り、その悲しみの中、秀吉の庇護を求めて落ちる途中小用に立って草むらにしゃがんでいた時だった。
 筋肉質の屈強な男が現れ 裾がはだけたままの尻に指を入れられ、おまけに男の怒張したものを握らされた。そのときは、侍女の呼ぶ声で男は貫くことを断念した。

 しかし、男に貫かれる夜は意外に早くやってきた。秀吉の北国遠征からの帰還に合わせて、お茶々は侍女たちに念入りに体を洗われて柔らかい夜具に横たわった。
 そのとき謎の男が現れた。執拗な指や舌の愛撫を受けながら、遂にお茶々は痛みを伴って男のものを受け入れた。こういう数行の描写ではリアリティに欠けて実感が伴わないが、本の中ではかなり詳細に淫靡に表現してある。

 しかし、秀吉が帰還するというのに図々しくも忍び込んでくるとは大胆な男だった。それもそのはず、秀吉が帰還途中どこからか矢が飛んできて馬の尻に突き刺さり馬が暴走した。秀吉は落馬。医者から安静を求められた。多分、下手人はこの謎の男なのだろう。

 秀吉は戦仕事で忙しい。お茶々を抱きたくても抱けない日が続く。お茶々のほうも謎の男の性の手ほどきで、体の疼きを溜め込んでいた。
 前田玄以の屋敷で閑居の慰めに「閨房秘事」とか「京景色十二月」というタイトルの枕絵を眺めていた。夢中になっていたのか背後の人物に気がつかなかった。背後の人物もその枕絵を覗いたのだろう、はっとした気配を感じたのか、お茶々は振り返った。乳母の倅、治長だった。
 爾後、治長はお茶々の犬となって、お茶々の秘所を舐める役割になる。お茶々は決して治長に体を許さなかったが、秀吉の死後治長は念願を遂げた。

 淀君はどんどん淫乱になって行くが、秀吉はこれまたどんどん年をとっていく。晩年の秀吉は悪魔になったみたいだ。秀頼の将来のためには養子の秀次が邪魔。淀君との寝物語にそそのかされたのか、秀次を切腹させ罪もない女子供三十八人を処刑した。子種がなかったといわれる秀吉に秀頼が生まれたのが不思議だという説もあるらしい。この本では、秀吉との房事のあと、例の謎の男が現れて種付けしていったように書いてある。スケベ男がスケベ女に翻弄されたという印象で、女は強いなあと思わざるを得ない。
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映画「ドライヴDrive ’11」劇場公開2012年3月

2012-11-02 11:37:15 | 映画

                
 自動車修理工場に勤めながら映画のスタントで派手なカーチェイスでパトカーを横転させることのほかに、強盗の逃走を助けることもする男ドライバー(ライアン・ゴズリング)。
 寡黙でどこか陰のある男だが、腕は超一流、どんなことがあっても5分は待つがそれ以上はどんなことがあっても待たない。それがこの男の逃走哲学だ。

 友人もいない一人暮らしのアパート。同じ階の子持ちの女性アイリーン(キャリー・マリガン)と知り合い、やがて彼女を愛するようになる。
 アイリーンには、刑務所に入っている夫がいる。その夫が出所してきた。路地で血を流しているその夫をみつけ事情を聞くと「刑務所で2,000ドル借金した。出て来ると4,000ドルにしやがった。返済を迫られ殴られた。そして、質屋を強盗しろと迫られてる」

 ドライバーは、手を貸すことにした。相手の罠にもはまり危機に直面する。映画はB級バイオレンスへと雪崩を打つ。この映画は、2011年カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、MTVムービー・アワードでは、「College and Electric Youth A Real Hero」が歌曲賞にノミネートされている。
 そのほかに英国アカデミー賞、インデペンデント・スピリット賞、放送映画批評家協会賞などにノミネートされている。

 が、不満がないわけでもない。第一にドライバーの男が何故強盗の逃走を助けるためにハンドルを握るのか。修理工場の仕事やスタントの仕事もあるのにである。修理工場での給料が他の人間の半額で雇われている事実もあるが。
 また、悪の道に埋没して抜け出せないでいるのか、その辺が明確でない。従ってニヒルでクールな男でありながらラスト・シーンからは余情が漂ってこない。
 それにこの男を演じるライアン・ゴズリングに哀愁といったものが感じられないこともある。こういう役柄は、俳優としては魅力あるものなのだろうが、かなり難しいことも事実だろう。そういう意味では、ミスキャストかな。

 アイリーンの夫がラテン系なのもバランスが悪い。アイリーンを演じたキャリー・マリガンが可愛いタイプの女優だから一層対比に違和感を覚える。
            
            
            
            
            
歌曲賞にノミネートされた「A Real Hero=College and Electric Youth」をどうぞ!
College & Electric Youth - A Real Hero (Drive Original Movie Soundtrack)

監督
ニコラス・ヴィンディング・レフン1970年9月デンマーク、コペンハーゲン生まれ。

キャスト
ライアン・ゴズリング1980年11月カナダ、オンタリオ州ロンドン生まれ。
キャリー・マリガン1985年5月イギリス生まれ。
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