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「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」鴻上尚史(こうかみ しょうじ)著

2018-04-24 16:21:29 | 読書

 この特攻と玉砕という言葉が忌まわしい言葉として私の中に戦後ずうっと住みついている。この本でいくらかでも気持ちをなだめてくれればと思っていたが、逆にますます永住を決めたかのようになった。なぜ人間爆弾や人間魚雷と揶揄されるような作戦を発想し推し進めたのか理解できない。
 しかも、戦争末期になると十代の若者の多くが犠牲になった。上層部や士官学校出のエリートには無縁の実態があったようだ。

 特攻で出撃して帰還すれば「今度は死んでこい」と罵声を浴びせる。「気持ちをしっかり持って、勝つと思えば勝てるんだ」東条英機がいうこの精神論で戦争をするという考えられないこともある。

 そんな中にあって9回出撃して9回帰還した特攻兵がいた。もう故人となった北海道出身の佐々木友次という人。当時、彼は21歳。彼は特攻に反逆して帰還したわけでもない。ただ心の底では「何で死ななきゃならない」という気持ちはあった。
 それは日露戦争で金鵄勲章(きんしくんしょう)を貰った彼の父が「人間そんな容易に死ぬもんじゃない」と口癖のように言っていたのが頭の片隅に残っていたこともある。

 それに彼は空を飛ぶのが大好きで、特攻機を操って大空を飛んでいる時でも戦争を忘れる瞬間があって、気がつけば僚機が一機もいないこともあった。命を長らえたもう一つの理由として、死を命じられた男が「駆逐艦一隻撃沈しました」や「空母に爆弾を落としました」とか言って、のこのこと帰って来ても罵声を浴びせる以外に方法がないのもあったと思う。死刑宣告をしたのに、また死刑宣告もないだろう。

 さらに「死ななかった理由」も見過ごすことはできない。エンジン・トラブルなどの機体不調、悪天候、米機との戦闘で被弾や退避での不時着、片道燃料で敵艦を発見できなくて帰投不能になったり、死にたくない気持ちから故意の事故や不時着もあっただろう。実に悲しい作戦だ。

 上官の中にも「良い上官」と「悪い上官」がいるのも確かだ。悪い上官の例は、富永恭次陸軍中将だ。おおよそ人の上に立つ人物ではなかった。出撃命令と敵前逃亡の疑惑などで陸軍史上最悪の軍人ともいわれる。続々と特攻隊を出撃させたこと。

 出撃前の訓示では「諸君はすでに神である。君らだけを行かせはしない。最後の一機で本官も特攻する」と言う一方で機体の故障などで帰還した特攻隊員には容赦なく罵倒、62回にわたって約400機の特攻を命じ全員戦死させた。

 さらに腹黒いのは、戦況いちじるしく悪化の1945年1月6日富永はマニラ撤退を決めたが、指揮下の部隊への連絡もせず、機密書類の焼却もしないで放置したまま16日に視察と称して上級司令部に無断で台北に逃れたというからまさに敵前逃亡だ。「君たちの後に続く」は戯言にすぎなかった。死んだ兵士は浮かばれない。

 良い上官は、特攻を拒否した美濃部正海軍少佐。1945年2月下旬、連合軍が硫黄島まで迫ったことを受け、第三航空艦隊司令部のある千葉県の木更津基地で所属の9個航空隊の幹部を招集して沖縄戦の研究会が開かれた。ここで決められたのは、93式中間練習機別名赤トンボを特攻に使用することだった。

 これに異を唱えたのが美濃部正少佐。美濃部少佐は、芙蓉部隊という夜間攻撃専門の部隊長だった。厳しい訓練で知られ「これが出来なければ特攻に出すぞ」と叱咤したという。しかし、徹底して特攻を拒否、部下を特攻に出さなかった。その代わり夜間攻撃の訓練を積み、戦果を挙げていた。

 「劣速の練習機まで狩りだしても十重二十重のグラマン(戦闘機)の防御陣を突破することは不可能です。特攻のかけ声ばかりでは勝てるとは思いません」
「必死尽忠の士が空をおおって進撃するとき、何者がこれをさえぎるか!」とある参謀が怒鳴る。
 これにひるむことなく「私は箱根の上空でゼロ戦一機で待っています。ここにおられる方のうち、50人が赤トンボに乗って来てください。私が一人で全部叩き落として見せましょう」

 誰も何も言わない。さらに「ここに居合わす方々は指揮官、幕僚であって自ら突入する人がいません。必死尽忠と言葉は勇ましいことをおっしゃるが、敵の弾幕をどれだけくぐったというのです? 失礼ながら私は、回数だけでも皆さんの誰よりも多く突入してきました。今の戦局にあなた方指揮官自らが死を賭しておいでなのか」水を打ったように静か。返す言葉がない。

 美濃部少佐は、部下思いの論理的な作戦をたてられる立派な将校に違いない。 が、なぜ上官を侮辱したような言葉が許されたのか。推測だが、軍人ならもう敗戦は間近だと観念していてもおかしくない。今更、議論を戦わせても意味がないと思っていたのかもしれない。論理的に説明できないから、精神論で逃げたのだ。

 一種のエリートの無様な様子は、今に引き継がれ昨今の新聞紙上を賑わせている。「高学歴の非常識」と言われる所以だ。今こそ公務員改革をするべき時期だろう。エスカレーターで次官まででなく、途中採用してでも主なポストを民間人の採用で緊張感を高める必要がある。官僚機構に風穴を開けろ! この本を読みながら、これはつくずく思う。
  

  


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「BOSCH/ボッシュ シーズン4」アマゾン・オリジナル2018年4月13日から配信

2018-04-21 16:02:38 | 映画

            
 33度の急勾配を1分で昇り降りする片道1ドルのロサンゼルスにあるエンジェルズ・フライト・ケーブルカーの中で射殺事件が発生する。殺されたのは人権派弁護士ハワード・エライアス(クラーク・ジョンソン)だった。

 検事出身のエライアスは、警察による暴力事件を専門としていて「ロサンゼルスの殺人課刑事は無実の人を拷問した」と言ってはばからない。警官たちの敵意が見える。白人の子供を誘拐したとして逮捕したハリス(キーストン・ジョン)を刑事たちは拷問にかけたが、子供の遺体が発見され犯人は父親と判明。ハリスは無罪放免となったが損害賠償をめぐっての裁判が、エライアスの弁護で行われようとしていた。その矢先の殺人事件。

 連絡を受けて現場に到着したハリウッド署のボッシュ刑事(タイタス・ウェリヴァー)に、本部長のアーヴィン・アーヴィン(ランス・レディック)から「この事件の特捜班を設ける。君に指揮をとってもらいたい。ロバートソン刑事(ポール・カルデロン)、ピアス刑事(ダジュアン・ジョンソン)、それに監査課の女性刑事二人、スナイダー(ウインター・アヴェ・ゾーリ)とリンカーン(タンべリア・ペリー)をつける」

 ボッシュは、スナイダーと聞き顔を曇らせる。過去にスナイダーの監査で意地悪な質問を思い出したからだ。スナイダーとリンカーンがボッシュに挨拶したが、ボシュは無愛想だった。

 ボッシュの幼少期は、恵まれた家庭環境ではなかった。キレイな母親は娼婦だった。母親が殺されたためボッシュは施設で育った。母親を殺した犯人は見つかっていない。その犯人逮捕も生涯の仕事と考えている。 が、当面エライアス事件が解決するべき案件だった。

 ボッシュはレベルの高い捜査能力を持っているが、感情に走りやすく気質も難しい。一匹狼的な存在。しかし、ときには単独はあるにしても捜査は二人で行うのが決まりになっている。

 狙撃を受けたパートナーだったジェリー(ジェイミー・ヘクター)が療養開けに復帰してくる。狙撃はジェリーの家庭に溝を作った。妻は刑事の仕事を辞めて欲しいと願っている。しかし、ジェリーはこの仕事が好きで、退職なんて考えたくもない。
 ジェリーは目的地に行く車の中で「裏切らないでくれ」とボッシュに言う。過去に悔しい思いをしたことを思い出させるジェリー。ボッシュはあいまいな態度。

 ボッシュにはFBIの心理分析官だったエレノア・ウィッシュ(サラ・クラーク)との間に生まれたマディ(マデリン・レンツ)という娘がいる。もう大学に入ろうという年ごろ。エレノアとは別れていて、眼下にロサンゼルスの街を見渡せる家に娘と住んでいる。

 エレノアは中国人のレジーという男と結婚していたが、今は別居してFBIの潜入捜査官をしている。フロリダでカジノのポーカー係の経験を生かして夜な夜な開かれるポーカー・ゲームの会に現れる。監視が主な任務のエレノアが何を狙っているのか定かでない。

 FBIは何を画策しているのか、FBIがベラベラと一地方のハリウッド署の刑事に詳細を話すわけがない。エレノアは中華料理店閉店後のカード・ゲームに参加した。カモの中国人という情報でお安い御用だ。ところが突然ポーカーが中止となり、世話役が「帰れ、帰れ」と急き立てる。通用口に向かって歩いていると、客の若いカモと言われた男が殴られているではないか。

 エレノアはトイレに駆け込んでスマホのレンズをカバンから少し出して、通りすがりに暴行現場を撮影した。止めた車に向かうエレノアを、背後の高い窓から一人の男が眺めている姿があった。

 一方、エライアス事件で容疑者として拘束した刑事のフランク・シーアン(ジェイミー・マックシェーン)は、ハリスへの拷問は認めたが、エライアス殺害は否定した。この事件に関連して地元の活動家が「真実、透明性、説明責任そして正義という武器で、ハリウッド署まで行進し、被害者たちとロサンゼルスのために正義を訴える。警察にこそ今こそ裁きを」というデモ計画もあり、ハリウッド署の前は騒然としている。

 地道な捜査が続けられているさ中、エレノアから相談があるという電話を受ける。ボッシュは「デュパーズ」で15分後に会おうという。デュパーズはファーマーズ・マーケットにあるオープンテラスのカフェで、向かい合って座りエレノアの話を聞く。

 要点はレジーとの関係とFBIの捜査の件だった。FBIの要望でレジーのおじの身辺捜査だが、レジーも中国マフィアに戻ったこと。そして、中国政府にパスポートを没収され2週間拘留されてたこと。おじの身辺捜査をしたことでレジーは激怒。レジーは「おれかFBIかどちらかを選べ」と言い。エレノアは「おじか私たちかを選べ」と言ったが、彼は私たちを選ばなかった。「バカな男だ」とボッシュ。 

 エレノアは「仕事があるでしょ?」と言って駐車場に向かった。ボッシュがテーブルに目を這わせるとエレノアのスマホが置き忘れられてあった。それを手にして「エレノア、君のスマホだ」と呼びかけると同時に二人の男が乗ったバイクから二発の銃弾がエレノアに撃ち込まれた。胸を撃たれたエレノアは、そのまま帰らぬ人となった。

 まるで遺言のようなデュパーズでの会話がボッシュに重くのしかかる。失意はマディをさいなみ父と子の関係までもギクシャクとしたものになった。たとえ肉親の死があろうとも、時間は容赦なく過ぎていく。数日の心の休息を経て特捜班の部屋に戻ったボッシュ。

 ようやくボッシュとも会話を始めたマディは、ボッシュに行き先の電話を入れて、殺伐とした砂漠に通る道路をチェロキー・ジープを駆る。母エレノアとのツーショットの背景を探し求める。母の遺言は「火葬にして遺灰をあの荒涼とした砂漠に撒いてほしい」というものだった。

 そして、ようやく謎が解けたとボッシュは確信する。最後は意外な事実が明らかになる。確かな構成で銃撃戦とか派手なカーチェイスはないが、しっとりとした情緒も漂うミステリー・ドラマになっている。

 マイクル・コナリー本にはお馴染みの実在するお店や場所、それにジャズも取り入れてあってにやりとする瞬間も楽しめる。ロサンゼルスで観光地としても有名なファーマーズ・マーケットでボッシュとエレノアが相談した場面とか、警察の証拠品保管室でラジオからジャック・ティーガーデンの演奏が流れるのに気づいたボッシュが「ボリュームを上げてくれないか。もうすぐベン・ウェブスターが始まる」

 ここで私にも気付かされたことがある。証拠品の段ボールを持ってきた警官が「サインと母印を」と言った。母印? どうするんだろうと思っていたら、指紋採取用のあの黒いインクを親指につけて押していた。なるほどサインだけで通用しないところもあるんだ。新しい発見だった。

 さらに、エンジェルス・フライトというケーブル・カーも観光地として有名だが、この地下に空間が広がっている。このロケ地も有名になるかも。なお、メイン・タイトル・ソングは「Can't Let Go(手放せない)」by Caught a Ghost

  製作総指揮
エリック・オーヴァーマイヤー1951年9月コロラド州ボルダー生まれ。
マイクル・コナリー1956年ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
ジョン・マンキウィッツ1954年2月ニューヨーク生まれ。

キャスト
タイタス・ウェリヴァー1961年3月コネチカット州生まれ。製作も関与。
クラーク・ジョンソン1954年9月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
サラ・クラーク1972年2月ミズリ州セントルイス生まれ。
マディソン・リンツ1999年5月ジョージア州アトランタ生まれ。
ジェイミー・へクター1975年10月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。
アミー・アキノ1957年3月ニュージャージー州生まれ。
ランス・レディック1962年メリーランド州ボルチモア生まれ。
ジョン・ゲッツ1946年10月アイオワ州生まれ。
ジェイミー・マックシェーンニュージャージー州生まれ。
ダジュアン・ジョンソン出自未詳。
ポール・カルデロン1959年プエルトリコ生まれ。
ウィンター・アヴェ・ソーリ1980年3月ペンシルヴェニア州ニューホープ生まれ。
ダンべリア・ペリー出自未詳
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「セリーナ 炎の女」女は一途に愛を求める(ネタバレ)2014年制作

2018-04-15 15:51:12 | 映画

           
 テネシー州とノースカロライナ州の境界にまたがるグレート・スモーキー山脈の稜線から太陽の燭光が顔を見せ始めた。1929年、この静謐な朝まだきパンパートン製材所を経営するジョージ(ブラッドリー・クーパー)はそれを眺める。

 この穏やかな時間が過ぎれば、危険な作業とこの地域を国立公園にするという話が浮上し存立の危機、さらに人畜に被害を与える猛獣の一頭のクーガーが気掛かり。

 独身のジョージは、久々に妹アガサ(チャリティ・ウェイクフィールド)を訪ねて、馬場を眺めながら他愛もないおしゃべり。ジョージは馬場の障害物を難なくクリアしていく一人の女性に目をとめた。兄の表情から察知した妹が「伐採キャンプ育ちの先住民よ。美人ね。でも火事で天涯孤独に。傷心の女よ。そして木が好き」皮肉な笑みを浮かべてアガサは言う。

 馬上の彼女の名前は、セリーナ(ジェニファー・ローレンス)。皮肉を無視して森へと馬を駆るセリーナを追いかけ、自己紹介の後「結婚してほしい」とジョージは求婚。意外性のある男に気を良くしたのか二人は結婚する。

 勝気で情熱的なセリーナは、現場を回りながら口を出す。それも的を射ているから異論が出ない。現場でたびたび顔を合わせるギャロウェイ(リス・エバンス)は寡黙な男で、僅かに頷いて目で挨拶をする。そのギャロウェイが石につまずいて手を木にかけると同時にキコリの大型の手斧が左腕先に食い込んだ。まさに「ギャー」というギャロウェイの叫びが轟く。とっさにセリーナは、作業員のベルトで止血、自身の絹のマフラーを包帯にして病院へ搬送。

 左腕先は失ったものの一命を取り留め、ジョージに「母は俺を生んだ日、俺が女性に救われる夢を見た。奥様がその女性です。名誉にかけて守る」と言う。これが後に悲劇を増幅させる。

 女の勘は鋭い。無言の雰囲気から漂ってくるのは、今までジョージの食事の世話をしていた若いレイチェル(アナ・ウラル)。その女に子供が出来る。ひょっとするとジョージの子ではないか? と言う疑問が浮かぶ。

 セリーナも妊娠するが、流産で二度と子供が産めない体になる。ジョージはレイチェルの産んだ子供に強い関心を示すようになる。

 セリーナが密かにジョージの机を調べてみると、引き出しにあったのはレイチェルと子供の写真、それに「子供へ」と表記され現金が入っている封筒。これを境にセリーナは狂気へとなだれ込む。セリーナに対して忠誠心の強いギャロウェイを使って、レイチェルの子供を殺そうとする。子供がいなくなれば、ジョージは私を愛してくれる。

 ジョージは自分の子供を助けるために、国立公園化を阻むワイロの詳細を記した帳簿をマクダウェル保安官(トビー・ジョーンズ)に渡し子供の行方を聞く。鉄道の駅でギャロウェイが貨車に飛び乗るのが見えた。ジョージも続く。髭そりの剃刀を手にしたギャロウェイが、レイチェル母子に迫る。ジョージが飛びかかってもみあい、落ちていた剃刀でギャロウェイの喉を一閃血しぶきが飛ぶ。

 レイチェルには、子供もなついているヴォーン(サム・リード)がいる。彼の許へ行くというレイチェルを寂しく見送るジョージ。自身の身から出た錆であり、罪に問われる身でもあって子供との別れを受け入れるしかない。

 罪の罰を受ける前に、一つやり残したものがある。人間を襲うあのクーガーを仕留めなくてはならない。単身クーガーの生息域に死んだシカを引きずって入っていく。岩場の陰から見ていると、ゆっくりと灰色のクーガーが近づいてくる。
 「ヤツだ。よし」と言ったかどうか分からないが引き金を引いた。仕留めた筈がそこにはクーガーがいない。傷を負わせた証拠の血だまりがある。目を周囲に這わせたがいない。背後に気配を感じて振り返った。灰色のクーガーが飛びかかって来た。

 保安官は約束の出頭時限に表れないジョージを探して森に入り、そこで目にしたのは転落死しているジョージだった。車の音がしたのでセリーナは祝杯のつもりでグラス二つを並べて窓際から外を見た。荷台にジョージが横たわっていた。

 保安官の「身元確認をお願いします」の呼びかけにも無言を通し、その夜、傷心の女となったセリーナは、ライターに火をつけベッドわきに放り投げた。再び天涯孤独になり愛を失ったセリーナを弔う炎が夜空を焦がしていった。

 2014年クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートのブラッドリー・クーパーと2012年「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー賞主演女優賞受賞のジェニファー・ローレンスという力のある俳優の共演で愛憎劇を演じているが、劇場未公開が不思議だ。 で、2018年1月より開催の<未体験ソーンの映画たち>での上映のみという寂しさ。

 一級の映画ではないがそれなりの出来栄えで、二度と子供を産めない体になったのを告げられた時、心の底からの悲しみを表現するジェニファー・ローレンスの好演もある。
  

  
監督
スザンネ・ピア1960年4月デンマーク、コペンハーゲン生まれ。

キャスト
ブラッドリー・クーパー1975年1月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
ジェニファー・ローレンス1990年3月ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。
リス・エバンス1967年7月イギリス、ウェールズ生まれ。
トビー・ジョーンズ1967年9月イギリス、ロンドン生まれ。
チャリティ・ウェイクフィールド1980年9月イギリス、ウェールズ生まれ。
アナ・ウラル1985年6月ルーマニア・ブカレスト生まれ。
サム・リード1987年2月オーストラリア生まれ。
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大谷翔平は、ベーブ・ルースの記録を超えられるか。

2018-04-10 16:39:55 | スポーツ

 ちょっと気が早いと言われるかもしれない。それはベーブ・ルースの記録1918年投手で13勝7敗、打者で11本塁打がいまだに破られていない。破られていないのは、そういう投打に抜群の能力を兼ね備えた選手がいなかったからか、あるいはそういう選手がいても投手か打者の二者択一をせまられたからとも言える。

 ところが100年後の現在大谷翔平という希有な人物が現れた。彼は開幕後10日ほどで2勝0敗、本塁打3本という劇的なデビューを飾っている。この調子がずっと続くとは思えないが、まだ始まったばかり13勝11本塁打に手が届く気がする。「同一年度の10勝10本塁打」は確実だろう。

 むしろ「同一年度20勝20本塁打」が視野に入る。ネットでの大谷選手関連のニュースに多くの書き込みがあるが、共通するのが「怪我」の心配。これは最大の敵だし、もう一つ「女」にも気をつけないと。みんながみんな大谷選手を好意的に受け止めるとは限らない。どこかのメディアあるいはチームが魅力的なスパイを送り込むかもしれない。超ベテランのソーシア監督だから、その辺はぬかりなく目を配ってくれることだろう。

 MLB最大の選手で功労者のベーブ・ルースは、1948年8月16日53歳の生涯を閉じた。ルースの眠る墓地には今も献花が絶えないと言われる。ルースの野球人生22年のうち投手生活は10年だった。94勝46敗、防御率2.28 被本塁打10本。打者としては、本塁打714本、打点2217、打率.342。伝説のベーブ・ルースの記録の一部を超える可能性がある大谷翔平が、新しいページを書き加えるのか大いなる関心事ではある。

 それにひしひしと感じるのは、王・長島を擁して川上監督のもと9連覇を果たした読売ジャイアンツ、大リーグ挑戦の先達となった野茂英雄、そして大谷翔平。この人たちの活躍を目の当たりにできる時代を生きていることが、偶然とは言いながら幸せな気分になることも確かだ。
     
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「女神の見えざる手MISS SLOANE」ゴキブリロボが起死回生の強打を放つ

2018-04-08 10:03:50 | 映画

            
 アメリカで頻繁に起こる銃乱射事件。全米ライフル協会(NRA)の隠然たる政治関与に銃規制賛否が割れている。

 大手ロビー会社コール=クラヴィッツ&Wで辣腕を振るうエリザベス・スローン(ジェシカ・チャンスティン)は、「信念のあるロビイストは、勝つ能力だけを信じる」を金科玉条とする。
 彼女の専門は税と自由企業への政府の干渉なのだ。簡単に言えば不当な課税や企業への規制を監視し善処するものと言える。その彼女に銃規制反対派のビル・サンフォードから世の女性たちの賛同を増やすべく手を貸してくれとの申し入れ。スローンは、カラカラと笑い事実上話を一蹴する。

 スローンは銃規制賛成論者だ。上司のCEOの怒りを買いクビになる。そんなとき声をかけてきたのがロビー会社ピーターソン=WのCEOロドルフォ・シュミット(マーク・ストロング)だった。その話に乗ったスローンは、コール=クラヴィッツ&Wでのチームのうち一人を残して全員移籍する。

 当然怒り心頭のコール=クラヴィッツ&WのCEOジョージ・デュポン(サム・ウォーターストン)がスローンを潰すことに全力を挙げる。スローンの身辺調査が進む。だが、スローンも黙ってはいない。密かに隠密チームがゴキブリロボで主な人間の監視を続ける。

 40代初めの独身の彼女、特定の恋人はいない。彼女の支配的な気性からして並みの男どもは魅力的なスローンでも敬遠しているのが実情のよう。女40代、健康な肉体なら定期的に訪れる性欲の処理をエスコート・サービスを生業とするフォード(ジェイク・レイシー)と、まるで食事でも摂るかのような満腹感を表すオーガズムだけを求める。

 スローンが恐れるのは、この行為が外部に漏れることだ。その点、フォードは「この仕事は口が堅くないと務まらない。絶対秘密にする」という。

 コール=クラヴィッツ&Wから上院倫理規定違反の疑いの要請で開かれた公聴会。委員長のスパーリング上院議員(ジョン・リスゴー)の執拗な尋問。やがてスローンがサインした資金提供の認定書が出てきた。それを認めるスローン。

 「非営利団体が署名し提出した書類をあなたが書いたとは、外遊費用の手配に関与したことを示す“一応の証拠”となります。これは上院倫理規定への明白な違反です」とスパーリング上院議員。

 スローンにとってはこれらは予定した展開にすぎない。次いでエスコート・サービスのフォードが証人となりスローンとの関係を明確に否定する。彼は秘密を守った。職業倫理を全うしたと言える。それを平然と聞き流すスローン。彼女はどこまでクールなのか。

 そして翌日の公聴会、事態は激震へと向かう。つまり相手陣営を木っ端みじんに吹っ飛ばした一連の結果は、スローンが敷いた罠だったのだ。それにはゴキブリロボが秘密兵器だった。

 「勝つ能力だけを信じる」ロビイストの面目躍如。実にクールで男も太刀打ちできない強面の女性を演じたジェシカ・チャンスティンに喝さいを贈る。 が、批評家の評価は意見が二分する。2016年制作 劇場公開2017年10月
  
監督
ジョン・マッデン1949年4月イギリス、ポーツマス生まれ。1998年「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー監督賞にノミネート。

キャスト
ジェシカ・チャンステイン1977年3月カリフォルニア州生まれ。2012年「ゼロ・ダーク・サーティ」でアカデミー主演女優賞にノミネート。
マーク・ストロング1963年8月イギリス、ロンドン生まれ。
ジェイク・レイシーマサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。
ジョン・リスゴー1945年10月ニューヨーク州ロチェスター生まれ。 
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