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読書「警官の街Cop Town」カリン・スローター著

2021-11-29 16:09:25 | 読書
 アメリカ南部、ジョージア州アトランタ1974年。二人の女性警官が味わう喜怒哀楽を人種差別や女性蔑視を背景にダイナミックに描かれる。

 叔父が警官、兄も警官という警察一家に生まれたマギー・ローソン。

 裕福な階層が住む地域で庭師として働く父をもち、ガレージの上にある家で育ったという新人のケイト・マーフィー。実はこれは仲間内への詭弁なのだ。

 本当は大きな屋敷に住む金持ちのお嬢さん。いろんな仕事をしたが続かず、社会貢献として警官を選んだ。配属されたアトランタ市警。  
 そこでは何者かに5人の警官が殺されていた。マギーとケイトが犯人逮捕に執念を燃やす。

 警察内の人種差別として、白人警官と黒人警官が組むことはない。女性蔑視は、新人の女性警官が点呼室に入っていくと男の警官からところかまわず触られ、卑猥な言葉でやじられる。ニックネームも付けられる。ケイト・マーフィーは、羊ちゃん。

 さらに女性警官からもやじられたりいびられたりと散々な目に合う。女性警官の更衣室でも白人と黒人の境があって、そこにはカーテンで仕切られている。

 さらに、パトロール区域も白・黒のテリトリーがある。黒のテリトリーでポン引きに事情聴取をしたいときは、黒人警官に断わりを入れなければならない。この逆もしかり。まるでヤクザの世界と同じ。

 古いタイプの刑事たちは、昼間っから飲んだくれているヤツがいるというから開いた口が塞がらない。人種や宗教などによる差別を禁じた公民権法が成立してから10年後の1974年。抑圧されていたマイノリティが徐々に発言権や存在感が増すなかでも時代の流れに乗れない人たちもいた。

 世の中、法律が制定されたからといって即座に変わるものでもない。アトランタの公設民営グレディ病院救急病棟の匂いは、公営住宅街を思わせ悪臭が満ちている。金もちの患者が来るようになれば、きれいになるだろうに。天井は汚れてダークブラウンになっており、ところどころ欠けている。ドアは危険警告用のビニールテープで留められている。隅ずみに壊れた道具が積まれている。チカチカする照明は悲惨だ。

 著者カリン・スローターが謝辞の中で「この小説には現実世界の細かな事実がちりばめられていますが、作品自体はフィクションです。つまり私がでっち上げたものです」とはいっても1970年代のアトランタについて、専門家の意見を参考にしているのは確か。大げさに書いてある部分もあるかもしれないが、大まかには上記の状態ではあったのだろう。

 ここ1・2年外から見るアメリカが1974年から大きく変わったという印象はない。白人警官が逮捕の時、黒人を必要以上に押さえつけて死に至らしめた。これがきっかけで暴動まで起こる。終戦直後、偉大に見えたアメリカ。どうなったんだろうと思わずにはいられない。
 話はすっ飛んで、マギーにリリーという妹がいる。このリリー、キャロル・キングの歌を大音量で聴く。マギーはいつも音量を落とせと苦々しく思う。
 リリーが聴くキャロル・キングの歌曲は、「つづれおりTapestry」なのだ。

 シンガーソングライターのキャロル・キングは、ニューヨークブルックリンで1942年ユダヤ人家庭に生まれた。1971年この「つづれおりTapestry」が大ヒットした。15週連続1位。アルバムは最優秀アルバム賞、最優秀女性ポップ・ヴォーカル賞、最優秀レコード賞「It's too late」、最優秀楽曲賞「You've got a friendきみの友達」の4部門のグラミー賞を受賞している。

 私好みでいえば最優秀楽曲賞「You've got a friendきみの友達」の方がいい。それを聴いていただきます。
When you're down and troubled 落ち込んでいるとき、悩んでいるとき
And you need some lovin' care  愛情のこもったケアが必要なときに
And nothin', nothin' is goin' right 何もかもがうまくいかない時には
Close your eyes and think of me 目を閉じて私のことを考えてほしい
And soon I will be there     そしてすぐに私はそこにいるでしょう
To brighten up even your darkest night あなたの暗い夜を明るくするために

You just call out my name あなたは私の名前を呼んで
And you know, wherever I am 私がどこにいようと、あなたは知っている
I'll come runnin' 走ってくるよ
To see you again もう一度あなたに会いに
Winter, spring, summer or fall 冬でも春でも夏でも秋でも
All you have to do is call あなたがしなければならないのは、呼ぶことだけ
And I'll be there そして私はそこにいる
You've got a friend あなたには友達がいる

If the sky above you もし、あなたの頭上の空が
Grows dark and full of clouds 暗くて雲だらけになったら
And that old north wind begins to blow あの北風が吹き始めたら
Keep your head together 頭の中を整理して
And call my name out loud 大声で僕の名前を呼ぶんだ
Soon you'll hear me knockin' at your door すぐに私がドアをノックするのが聞こえるだろう

You just call out my name
And you know, wherever I am
I'll come runnin', runnin', yeah, yeah
To see you again
Winter, spring, summer or fall
All you have to do is call
And I'll be there, yes, I will

Now, ain't it good to know that you've got a friend 友達がいるというのはいいことだよね
When people can be so cold? 人はそんなに冷たいものなのか?
They'll hurt you, yes, and desert you 人はあなたを傷つけたり、見捨てたりするが
And take your soul if you let them あなたがそうすれば、あなたの魂を奪うでしょう
Oh, but don't you let them でも、そうしないで

You just call out my name
And you know, wherever I am
I'll come runnin', runnin', yeah, yeah
To see you again
Winter, spring, summer or fall
All you have to do is call あなたがしなければならないのは、電話だけだよ
And I'll be there, yes, I will そして、私はそこにいる、そう、そこにいるよ
You've got a friend
You've got a friend

Ain't it good to know you've got a friend 友達でいることはいいことだよ
Ain't it good to know, ain't it good to know いいことだよ、いいことだよ
Ain't it good to know
You've got a friend
Oh, yeah, now, you've got a friend
Yeah baby, you've got a friend
Oh, yeah, you've got a friend

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海外テレビドラマ「Instinctー異常犯罪捜査」

2021-11-09 15:55:05 | 海外テレビ・ドラマ
 オーストラリア出身のモヤナ・ノヴァコヴィッチが女性刑事リジーを演じ、スコットランド出身のアラン・カミングが元CIAのスパイで、今は異常行動学を大学で教えていて一方その才能を犯罪捜査に役立てているディランを演じる。形はリジーを補佐する役割。

 このドラマ、シーズン2で打ち切りになった。確かに地味でインパクトに欠けるかな。そんな印象だ。

 ただ、私的にはすごく興味深い点もある。二人の主役リジーとディランのファッションだ。これは実に参考になる。専門のスタイリストの考案なのだろう。女性のファッションは割愛するが、ディランについてちょっと触れる。

 ディランはいつもスリーピースのスーツを着ている。スリーピースはシングルのスーツにチョッキを加えたもの。かなりフォーマルな雰囲気にはなる。
 スーツの色とネクタイの色とワイシャツの色、胸ポケットを飾るハンカチの色がいつも絶妙のバランスを保っている。もし私が現役であれば確実にこれらを参考にして衣装を調えているだろう。

 ただ一つ不満がある。それはディランが両手をズボンのポケットに突っ込んで歩くからだ。しかもスーツの第一ボタンをとめて、その下を両脇に垂らすという不格好さなのだ。どう考えても玉に傷。ちなみにInstinctは、本能・勘・生来の素質などの意味。
      

コメント (40)
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読書「グッド・ドーター」カリン・スローター著 2020年9月刊

2021-11-06 16:03:10 | 読書
 ジョージア州の小さな町パイクビルに住む姉サマンサ・クインと妹シャーロット・クインが遭遇した悲惨な事件から、28年後に真実が明らかになる。

 ある日、二人の男が訪れる。姉妹の父親に用があるらしくショット・ガンを携えている。不在と知るや姉妹にレイプしようとしたので、母親のハリエット・クインが娘たちの盾になるが、非情な男の銃弾で斃れる。

 姉妹は奇跡的に命拾いをするが、姉サマンサは、両目、脚に傷を負い、頭を撃たれて父ラスティが放り込まれる筈だった墓穴に埋められる。

 妹シャーロットは、一人の男にレイプされ大事なところにナイフの柄を突っ込まれ子供を産めない体にされながら、森の中を傷だらけになって助けを求めた。サマンサが生きているのは、暴漢の一人が裏切って助けてくれたからだ。

 28年後、サマンサはニューヨークで特許法律事務所の弁護士。シャーロットは地元で父親と同じ弁護士。父ラスティ・クインは、麻薬の売人、性的暴行犯、殺人者、強盗、車泥棒、小児性愛者、誘拐犯、銀行強盗などの犯罪者を弁護する。すべてがうまくいくとは限らないから、恨みを買うこともある。この暴漢二人組の要求は、弁護士費用2万ドルをチャラにせよというもの。こんな身勝手なことを言えたものだ。

 たまたま不在だった父親の代わりに、妻の犠牲と娘二人が被害にあった。そのラスティも後日、ナイフで刺される。疎遠だった姉妹がこれを機縁に再会するが、不幸なことにラスティが息を引き取る。

 残された姉妹には28年前の事件が、体のそこここに残り心の片隅にも影を落とす。肉親といえども理解し合えるとは限らない。この本の主題がここなのだ。著者のカリン・スローターは、巧妙なプロットで読む者を魅了する。

 カリン・スローターは1971年生まれの50歳、現在アトランタに在住。作品が27編。2018年刊行の「彼女のかけらPieces of her」がNetflixでオリジナル作品として公開が予定されている。ただ、アマゾンの書評にはバラツキがあるが、ドラマ化は別物として期待したい。

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