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海外テレビドラマ「NCIS~ネイビー犯罪捜査班」2007年~2008年版

2018-11-30 17:16:44 | 海外テレビ・ドラマ

            
 毎日、アマゾン・プライムで海外テレビドラマを楽しんでいる。この「NCIS」に加え「ロー&オーダー」、「ストライクバック:極秘ミッション」の三本。共通するテーマは、犯罪。とはいえ切り口の違いや味わいが異なるもので、大いに楽しめるものとなっている。

 「NCIS」は、コミカルな味付け。「ロー&オーダー」は、警察の捜査と検察の起訴という二つの側面を描く。「ストライクバック」は、かつての「24」を連想させる構成で、テロリストとの対峙を描く。

 NCISとは、Naval Criminal Investigative Serviceで海軍の犯罪捜査をする組織。わたしは現在シーズン5を観ているが、キャストが魅力的だ。

 6人で構成されていて、キャップをリロイ・ジェスロ・ギブス(マーク・ハーモン)。それを演じるマーク・ハーモンは、2008年当時57歳で笑顔の素敵なおじさん。しかし仕事には厳しい。

 ギブスに次いで古参のトニー・ディノッゾ(マイケル・ウェザリー)は、イタリア系の男で美人と見れば目がない。ニヤニヤと笑いながら接近する。モサド出身のジヴァからいつも冷やかされる。

 そのジヴァ・ダ・ヴィードにコート・デ・パブロが演じる。いつも冗談を言い合うトニーに密かに想いを寄せている風情だ。ジヴァはイスラエル諜報特務庁ニックネーム、モサドで鍛えられた女丈夫。小柄ながら格闘技は任しなさーいというわけ。

 そして一人で仕事をするのがイヤなアビー・シュート(ポーリー・ペレット)。助手がほしいが口癖。一人の寂しさを紛らわせるために、いつも大音量で音楽を流している。しかし、仕事をさせればあらゆる分析の能力は抜群で、ギブスがいつも頼りにしている。このシーズン5では、高給で招く企業があるとの噂がある。

 そして新人のティモシー・マクギー(ショーン・マーレイ)は、マサチューセッツ工科大学出身でアビーと話が合う。トニーの新人いじめもさらりと流すが、高所恐怖症の持ち主。

 死体の出る事件が多い。そこで検視官のダッキー・マラード(デヴィッド・マッカラム)の分析も重要。説明の前置きが長いので「結局何なんだ?」とギブスに言われる。的確な死因を示し捜査には大いに貢献している。

 捜査・分析の合間を縫ってそれぞれの過去が語られ、現在の恋の行方も彩りを添える。家族で安心して観られる一本と言える。現在シーズン16まで続く進行中のドラマだ。
   
    
   
   
   
   
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海外テレビドラマ「バンシー/BANSHEE」暴力とセックスがお好きな方に

2018-11-27 17:09:05 | 海外テレビ・ドラマ

           
  正直言って私は少々うんざりした。刑務所の巨大な鉄の扉がしずしずと開いた。明るい日差しの下、そのゲートを一歩娑婆に踏み出したのは、ルーカス・フッド(アントニー・スター)。
 迎えの車も待ち焦がれた恋人も姿もない上、Tシャツとジーンズのほかに荷物の類もない。鉄道線路を歩き、車を盗みマンハッタンのジョブ(フーン・リー)の店にやって来た。

 目指す住所を聞き出すために、部屋にあるパソコンやテレビを手当たり次第に壁にブチ当てる。観念したジョブが示すパソコンの画面。表に出るとギャングの用心棒が車の窓から首を出している。目があったがそのまま車を発進させる。用心棒が追ってきた。交通の多いニューヨークの街路をカーチェイス。交差点を尻を振りながら左折、そこへ用心棒の車が体当たり。ルーカスは窓から逃げ、折しもやってきたバイクを強奪。
 用心棒が拳銃を乱射。銃弾をかいくぐってペンシルヴェニア州のアーミッシュのをかすめてバンシーの町へ。

 そう、ここにはともに悪事を働いた愛する女アナ(イワナ・ミルセヴィッチ)がいる。ところがアナは、キャリー・ホープウェルと言い、検事ゴードン・ホープウェル(ルス・ブラックウェル)の妻で子供が二人いる。一身に罪をかぶったルーカスは、キャリーの家の庭で強奪したダイアモンドの分け前を要求した。

 キャリーは、「ダイヤはない。狡猾なセルビア人に全部取られた」「ダイヤも女も取られたってわけか」とルーカスは自嘲気味のセリフを吐く。

 ルーカス・フッドの名前の由来は、シュガー・ベイツ(フランキー・フェイソン)のうらぶれた酒場。独りバーボンを飲むルーカス。そこへ男が入って来た。この男よくしゃべる。「町長の指名でオレゴン州から来た保安官のルーカス・フッドだ」そこへ地元のゴロツキらし男二人が入って来た。保安官に因縁をつけ、三人の男が拳銃を突きつけ睨みあいとなった。保安官は「銃を降ろせ!」と叫ぶ。

 そこに割って入ったルーカスだったが、銃撃と乱闘で保安官と二人の男が死んだ。シュガーと死体を埋める穴を掘っているとき、保安官の携帯が鳴った。「町長だが保安官のルーカス・フッドか?」「ええ、そうです」犯罪者が保安官になりすました。

 いいことも悪いこともする保安官ルーカス・フッド。暴力シーンもセックス・シーンもどの時間帯で放送しているのか知らないが、おおよそご家庭向きとはいえない。暴力シーンなんてくどすぎて、逆に退屈する。わたし的にはシーズン1だけで十分。2013年制作
  
  
  
       
製作
 グレッグ・ヤイタネス1970年6月マサチューセッツ州生まれ。2004年「ドクター・ハウス」2007年「ダメージ」がある。

 アラン・ポール1957年5月ジョージア州アトランタ生まれ。2001年「シックス・フィート・アンダー」2008年「トゥルー・ブラッド」がある。

キャスト
アントニー・スター1975年10月ニュージランド生まれ。
イワナ・ミルセヴィッチ1974年4月ボスニア・ヘルツェゴビナ、サラエボ生まれ。1998年から20年のキャリア。
フランキー・フェイソン1949年6月ヴァージニア州生まれ。1981年からのキャリア。
フーン・リー1973年7月ミネソタ州生まれ。
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海外テレビドラマ「スタートアップ/STARTUP」多民族国家のアメリカ、マイアミが象徴的。

2018-11-21 12:41:29 | 海外テレビ・ドラマ

           
 アマゾン・プライム・テレビとして2016年に始まったドラマ。シーズン3がアップされた。フロリダ州マイアミでハイチ人ギャング、ロナルド・ディシー(エディ・ガテギ)と銀行員のニック・タルマン(アダム・ブロディ)、キューバ系のジェンコイン発案者でハッカーのイジー・モラレス(オトラマ・マレロ)達の奇妙な出会いから時間が経ち、ニックとロナルドは、IT企業の「アラックネット」のCEOとなり登録者数1億を目指していた。イジーは、ロシアン・マフィアの情報をFBIに密告、故郷キューバに身を隠している。

 そんなとき、この3人が再び顔を合わせる機会を作ったのは、国家安全保障局の捜査官レベッカ・ストラウド(ミラ・ソルヴィノ)。このレベッカ、現職の捜査官でないと、のちに分かるがアラックネットに乗りこんできて「VXガスの出荷にアラックネットが使われている。テロや犯罪を助長しかねない。パートナーシップを組みたい」

 きっぱりと断りを入れると「出資者の後ろ暗いところがある。ディジー、ギャング組織「LH7」の過去の犯罪で追求されないといいね」などと脅しをかけていった。

 こういう風にあやしい人間を出現させたり、ディジーのギャング仲間との腐れ縁で縄張り争いに加担したり、アラックネット社内の意見対立など全10話、6時間半を飽きることなく見せる工夫もあって一気に観てしまった。

 注目したいのは、ロナルド・ディジー役のエディ・ガテギだ。見るからにギャングにぴったりの風貌で場面によっては鋭い視線を投げかける。彼の出自を映画サイトIMDsによるとケニア生まれのカリフォルニア育ち、ニューヨーク大学のアクティングプログラムを卒業とある。

 ちなみに「STARTUP」は、コンピューターを起動する意味から、始めることやベンチャー企業も指す。まさにベンチャー企業が舞台だ。DVDの発売は今のところなし。
  
  
  
  

キャスト
アダム・ブロディ1979年12月カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。
エディ・ガテギ1979年3月ケニア、ナイロビ生まれ。
オトマラ・マレロ出自未詳 
ロン・パールマン1950年4月ニューヨーク州ニューヨーク、マンハッタン生まれ。
アディソン・ティムリン1991年6月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
ミラ・ソルヴィノ1967年9月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。1995年「誘惑のアフロディーテ」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
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映画「モリーズ・ゲーム」元モーグル選手の華麗なマネー・ゲームが行きついた落日??

2018-11-18 10:21:54 | 映画

          
 モリー・ブルームは、女子モーグル北米3位の実力者で生まれ育ったのがコロラド州ラブランド。コーチは父(ケヴィン・コスナー)。かなり厳しい。それでも学業では、コロラド大学で政治学の学士号取得。GPA(成績評価値)3.9(4が最高点)で首席で卒業。ロースクール共通入試ラインは、ハーバードが169点、モリーは173点という才媛。

 ところが2002年ソルトレークシティ・オリンピック予選の最終戦。標高2470メートルのディアバレー、傾斜角度ピラミッドと同じ52度、風は左から右へ吹いていて風速は10メートル、スタート地点の気温はマイナス19度。

 勢いよく飛び出したモリーだったが凍った松の枝にビンディングを引っ掛け、体は宙を舞い背骨で着地した。幸いにも大怪我でなくしばらくして立ち上がった。これによりオリンピックへの出場は逃したが、ロースクールを出て女性の起業を支援する会社を設立する目標は諦めなかった。

 が、ロースクールへ行く前に少々の心の洗濯というか若さを満喫するためにロサンゼルスに行き、当座の資金としてハリウッドのクラブでお酒を売る仕事をしていた時、ディーン(ジェレミー・ストロング)と知り合いポーカー・ゲームの世界に入っていった。

 12年後、ウェストハリウッドのアパートで早朝というのに携帯電話が鳴った。「こちらFBIだ。30秒以内に出てこい。でないとこちらから踏み込む」ドアを開けると「誰かほかにいるか? 銃を持っているか? 違法賭博運営の容疑で逮捕する」矢継ぎ早の質問に応える間もなく手首に手錠がかけられた。

 映画は、モリーの弁護士となったチャーリー・ジャフィー(イドリス・エルバ)との対話を交えてこれまでのいきさつを語り、モリーの父との確執という家族の問題にも触れがら有罪を認めすべての資産放棄と投獄を覚悟するモリーを描く。

 ところが判事の判断は「すべての情報を考慮し当法廷は、検察の求刑に同意しかねる。当法廷はウォール街から近い距離にある。経験から言えることだが、ウォール街の人々は日常的に起訴状にある被告より重大な罪を犯す。被告を投獄することにいかなる意味も見出せない。ミス・ブルーム、当法廷はあなたに200時間の社会奉仕と1年間の保護観察、薬物検査及び20万ドルの罰金を科す。本件は以上だ」

 投獄を免れたとはいえ、モリーにとってはこれからどうすかが大問題。しかし、映画は不屈の闘志を持つモリーは必ず復活するだろうと予言する。これは実話の映画化だから実際にモリー・ブルームは、2014年に出版した「自叙伝」が映画化されることで再起したと言える。

 この映画は高い評価を批評家は与えている。中でもアーロン・ソーキンの脚本とジェシカ・チャンスティンの演技が高く評価されている模様。原題「MOLLY'S GAME」2017年制作 劇場公開2018年5月
  
  
  
監督
アーロン・ソーキン1961年6月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2010年「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞脚色賞受賞。この映画は初監督となる。

キャスト
ジェシカ・チャンスティン1977年3月カリフォルニア州生まれ。2012年「ゼロ・ダーク・サーティ」でアカデミー賞主演女優賞ノミネート。
イドリス・エルバ1972年イギリス・ロンドン生まれ。
ケヴィン・コスナー1955年1月カリフォルニア州生まれ。
ジェレミー・ストロング出自未詳。
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野球「大谷翔平のファン層は、限りなく幅広いのでは……」

2018-11-14 13:27:42 | スポーツ

 2018年度MLBルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人王)に、アメリカン・リーグでは大谷翔平が選ばれた。この賞は、生涯で一度きりの貴重な賞だろう。

 最優秀選手賞や打撃のハンク・アーロン賞、投手部門のサイ・ヤング賞などは、成績さえ残せば何度でも取れる。そう思うとずっしりと重さを感じるのではないだろか。

 ファン層となれば推測でしかないが、ネット放送の「虎ノ門ニュース」のきのう火曜日の出演者、百田尚樹さんと有本香さんのお二人が言った言葉が推測の根拠になる。

百田さんは「あんな息子がほしいね」
有本さん「よかった。おめでとう」。
 こういう心情が全てを現わしている。若年層から高齢者層まで幅広いファンであふれているのではないだろうか。

 往年のスーパー・スター、王・長島にない天性の才能と容姿に恵まれた大谷といえる。ホームラン第1号でベンチに帰って来た時、チームメートが知らん振りしている。拍子抜けした大谷はチームメートの一人に後ろから抱きついて「どうしたんだい?」という感じ。その時、爆発的にチームメートの洗礼を受けた。

 この映像が、子犬がじゃれるさまを連想してキュートな一面を感じた人が多かったのかも。二刀流とキュートな面がアピールした結果の新人王だと思う。来シーズンが非常に楽しみ。
では、ホームラン第1号あとの映像をどうぞ!

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映画「ザ・シークレットマン」ウォーターゲート事件のディープスロートの真実

2018-11-14 11:40:27 | 映画

          
 共和党の第37代リチャード・ニクソンアメリカ合衆国大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」というのがあった。1972年の大統領選挙中、1972年6月17日ワシントンD.C.にある民主党本部に何者かが盗聴器を仕込むために侵入したが、警備員に発見され警察に逮捕されだ。これが事件の始まりであり政権崩壊の端緒となった。勿論政権は否定する。

 ワシントン・ポスト紙はこの問題を取り上げ、徐々に政権を追い詰めていく。記者は情報源を明かさず、単に「ディープスロート」と説明するだけ。のちに「ディープスロート」がFBI(連邦捜査局)の副長官マーク・フェルトであることが33年後、本人が公表した。それを映画はマーク・フェルトをリーアム・ニーソン、その妻オードリー(ダイアン・レイン)でつぶさに描く。

 かなり地味な映画でワシントン・ポスト紙の記者とがらんとした駐車場やさびれたダイナーでの情報交換場面がミステリアスに感じる程度。

 それよりも、共和党であることが共通している今のトランプ政権が、このときのニクソン政権と酷似しているのが興味深い。先のセッションズ司法長官を更迭したトランプ大統領。

 司法省の機構、FBI(連邦捜査局)、ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)、DEA(麻薬取締局)、USMS(連邦保安局)というお馴染みの組織がある。

 後任の司法長官によっては、これらの機構への関与の度合いが図れるというもの。いくら大統領といえども独立機関であるFBIに直接命令することは出来ない。正義は何人も犯さざるものなのだ。野党民主党はすでにいきり立っている模様だ。
2017年制作 劇場公開2018年2月 原題「MARK FELT」
  
  
  
監督
ピーター・ランデズマン出自未詳

キャスト
リーアム・ニーソン1952年6月イギリス、北アイルランド生まれ。
ダイアン・レイン1965年1月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州リトルロック生まれ。
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映画「ローマンという名の男」人権派弁護士の挫折

2018-11-10 15:43:58 | 映画

        
 原題「ROMAN J. ISRAEL, Esq.」ローマン・J・イズラエル エスクワイアとして名刺にも書いてある。Esqは手紙などの相手の姓名の後に用いるとある。ローマン・J・イズラエル殿なんだが、自分の名刺に書くのはどうなんだとも思うが。劇中でも依頼人が尋ねた。ローマンは「ジェントルマンより上で、ナイトより下です」と答えた。まあ、日本でもふざけて「おれ様は……」なんて言うし、自分の名前を「安倍様だよ」と言ったりするブラックジョークの類かな。

 ローマン・イズラエル(デンゼル・ワシントン)は、家族経営のウィリアム・ジャクソン法律事務所に勤める弁護士。こまごまとした犯罪の弁護をして有能だった。司法の堕落「公正な裁判を受ける権利は刑事事件では無視され裁判は行われない。検察は被告を脅し公正な裁判を受けさせず強制的に過剰な量刑を押しつけて有罪を認めさせる」と真剣に思っている。

 ローマンはまるで弁護士らしくない。ぶかぶかとした上着とズボンの色違いを着てヘッドホーンで音楽を聴きながら大きなカバンを持ち歩く。彼の持ち味は刑法や刑事訴訟法など関連する法律の条文が全て頭に入っていることだ。法廷で相手を攻撃するときには有力な武器になる。

 ところが事務所代表のジャクソンが心臓発作で倒れる。病状は思わしくない。ジャクソンの孫娘が、これを機会に赤字を出す事務所を整理するという。不服ながらそれに従うことにしたローマン。

 整理するのはピアス法律事務所。その代表がジョージ・ピアス(コリン・ファレル)で、ローマンに「うちで働かないか?」と誘う。一匹狼的なローマンは断って自分で探し始める。しかし、求職活動は不首尾に終わり、ピアス法律事務所で働き始める。

 取り扱う案件の中に「コンビニ店員殺害事件」があった。二人の若者が襲い一人が逃げ、一人が逮捕された。殺された店員がアルメニア人だったため、アルメニア協会が懸賞金10万ドルをつけて殺人犯を追っていた。

 逮捕されたデレル(デロン・ホートン)と面会した時、「俺は殺していない。殺したのはカーター・ジョンソン(アマーリ・チートム)だ。保護拘置と刑期の短縮を引き換えにカーターの住所を言うよ」

 このカーター・ジョンソンは、ギャングの幹部で4件の事件のうち2件で発砲しているというワルだった。ローマンは検事局に司法取引の電話をした。
女性検事が「異議申し立てと上訴の権利を放棄に協力すれば、暴行・誘拐罪を取り下げ故意の殺人で10年」
ローマン「非故意で3-5年」
検事「21歳の店員が殺されたのよ。無理だわ」
ローマン「こっちも命を預けて有罪を認めてるんです。減刑を」
検事「譲れないわ。故意で10年。いい取引よ」
ローマン「クソ取引だ」
検事「時間のムダね」

 翌日、ジョージの部屋に呼び出され「ローマン、なぜ検察と交渉を? 誰が許可した? あれほど言ったのに。今朝デレルが刺殺された。保護拘置は認められなかった。君が取引を蹴ったからだ。しかも依頼人に相談せず。過誤訴訟を起こされたら、うちは完全に負ける。君にも理解できるようハッキリ言うよ。不始末を認めることになるから、今はクビにしない。いずれクビだ。勝手に辞めたら損害賠償と弁護士資格剥奪だぞ。以上だ」

 己の信念のためにやって来たローマンだが、組織の中で仕事をするのは初めてで一匹狼的体質がアダとなった。これを機会に、ローマンは信念を放棄した。

 そして何をしたかと言えば、コンビニ店員殺害事件の殺害犯カーター・ジョンソンの住所を担当刑事に告げることだった。身分を明かさない方法として路地に置いてある大型のごみ容器にナップザックに入った懸賞金の10万ドルを受け取った。誰にも見られず濡れての泡の大金。パリッとしたスーツや靴、やっと一流弁護士になった気分を味わう。札束を握りしめ好みの食べ物と飲み物を持って海岸で寸暇を楽しむ。こんな楽しい時間がすぐに終わるのは世の常。

 ジョージからカーター・ジョンソンの弁護を引き受けたから拘置所に行くと告げられた時、心底どきっとしたローマン。拘置所で面会したローマンは、まともにカーターの目が見られない。ジョージが担当の弁護士ローマンを紹介して先に退出した。

 残されたローマンとカーター。カーターの目がぎらぎらと光っている。
「お前がチクッたな」
「いや俺じゃない」
「ふざけるな! デレルはお前にしか住所を言ってないと言っていたぞ。お前をヤルよう手配したぞ」

 なんと言う皮肉。世の中悪事は、バレるように出来ている。そしてローマンは自分を告発する文書を下書きした。「被告の弁護士資格及び人間の資格の永久剥奪を求む。被告は俗物的で自分の人生を否定する背信行為を行った」この文書が最高裁判所ロサンゼルス支部に提出されることはなかった。

 10万ドルの残金が警察に返還され、ローマンは何者かの手によって銃撃され死亡した。そしてジョージ・ピアスは、かねてローマンが熱く語っていた「公正な裁判を受ける権利を守るために集団訴訟を起こす膨大な弁論趣意書」を持って最高裁判所ロサンゼルス支部に提出し、女性の係員がその処理をするのをじっと見守っていた。

 この映画の見所は、デンゼル・ワシントンの演技力だ。表情に注目。2017年制作 劇場未公開
     
  
  
  
監督
ダン・ギルロイ1959年6月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。

キャスト
デンゼル・ワシントン1954年12月ニューヨーク州マウント・バーノン生まれ。2001年「トレーニング・デイ」でアカデミー賞主演男優賞受賞。本作では、アカデミー賞主演男優賞にノミネート。
コリン・ファレル1976年5月アイルランド、ダブリン生まれ。
カーメン・イジョゴ1973年10月イギリス、ロンドン生まれ。
デロン・ホートンテキサス州生まれ。
アマーリ・チートム出自未詳
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映画「エヴァ」悪女の話と言うが

2018-11-07 10:59:17 | 映画

          
 「官能と誘惑。すべての男たちがこの女に狂わされる」というキャッチコピーに惑わされてはならない。65歳のイザベル・ユペールが誘惑する娼婦を演じるとしているが、どこにも悪いところや官能的ですらない。どうみても悪女に見えない。
 平気で裸を撮るフランス映画にしてイザベル・ユペールの全裸を見ることは出来ない。白いローブ姿だけ。

 エヴァ(イザベル・ユペール)に一目惚れするのは、盗作戯曲で時の人になったベルトラン・バラデ(キャスパー・ウリエル)。時の人になり有名劇作家の娘カロリーヌ(ジュリア・ロイ)という恋人がいる。

 監督はこの若いジュリアの裸を惜しげもなく披露している。豊かなバストは魅惑的。そんな恋人がいるのに年上のエヴァに心が移るとは、ベルトランの屈折した精神を現わしているのだろう。

 盗作をする機会そのものが通常ではない。電車の走る高架の傍にあるアパート。老劇作家の入浴の手伝いをするベルトラン。浴槽に浸けると気持ちよさそうに「君も入らないか」。シャツを脱ぎ始めたたとき、老劇作家に異変が起こる。「早く薬をくれ」冷酷な目でじっと見守るベルトラン。

 湯船に沈んだ老人の死を確かめて、部屋を後にするとき先ほど話していた新しい作品「合言葉」の原稿が目に止まる。一瞬考えをまとめて、原稿とパソコンをカバンに入れた。パソコンは帰り道の川に投げ捨てた。

 そして今、「合言葉」の舞台が賛美する拍手に包まれていた。人気作家になったベルトランには、周囲から次作へに期待の声が聞こえるが素養のないベルトランには書けるはずがない。毎日書くふりをしている。 同棲しているカロリーヌも毎日のように「書けた? 書いてる?」と疎ましい。そんな環境から逃れるために「ここでは書けない」と言う。カロリーヌの反応は、「実家の別荘ならいいかもね」

 フランス東部アルプス山脈の麓、アヌシーにある別荘へ雪の降る夜、別荘への道に一台の車が止まっている。雪で前に進めないから放置したのだろう。ベルトランも車を置いて別荘に入っていった。誰もいないはずの別荘に明かりが点き窓が開けられている。音楽も聴こえる。

 鍵で玄関ドアを開けて入ってみると、年配の男がトレーに酒瓶とグラスを載せて立っていた。悪びれず何やら弁解をしている。そして二階に向かって「エヴァ」と呼ぶ。二階の浴槽で女が背中を見せていた。ベルトランは、音楽を消した。振り向いた彼女が「だれ?」「家主だ」とベルトラン「それがどうした」と女。

 階下に降りてみると男が言う。「いい女だろ。君も抱いていいぞ」ベルトランは、この一言でどんな種類の女か見当がついた。ベルトランは、年配の男を叩き出した。そうエヴァを独り占めにするために。ソファで眠る娼婦エヴァに近づき体に触れようとした。そうするといきなり灰皿で後頭部を強打される。これがエヴァとベルトランの最初の出会いだった。と同時に転落への始まりでもあった。

 エヴァにはジョルジュ(マルク・バルべ)という夫がいる。夫は美術商で骨董品の贋作売買で服役中。自宅も室内から操作する頑丈な鉄の門を備えた大きな家だ。この家でエヴァは、親しい客と後払いで過ごすこともある。

 ベルトランには、忙しい夫だから帰宅しても数時間しかいない。すぐ別の外国に出かけていくとウソを言う。謎の女エヴァ。謎めいた女エヴァに執心するベルトラン。書けないベルトランでも、エヴァとの状況を書き始める。

 ホテルの夜のレストラン。ワインを飲みながら根掘り葉掘り聞くベルトラン。エヴァは巧みに論点をずらし真実はなにも分からない。「あともう一本飲みましょう。シャルム・シャンベルタン? いい名前ね。でも、もう運転できないわ。泊りましょうか」嬉しいのかベルトランの表情が読めない。立ち上がってふらつきながらフロントに向かうベルトラン。それを見ていたエヴァ「フラフラだわ」

 部屋に入るといきなりエヴァを押し倒したベルトラン。跳ね返して「男はみんなそうなんだ」と怒り別室で鍵をかけてしまう。ベルトランにしてみれば面食らうだろうね。お互い酔っていてしかも娼婦のエヴァだよ。押し倒されたって商売する筈だよね。やっぱり謎だ。

 そんなことがあってもエヴァが好きなベルトランは、別の日アヌシーの別荘へエヴァを連れていく。エヴァを別荘に残しアヌシーの町へ雑誌を買いに出かけた。その留守中にカロリーヌがやって来て、カロリーヌの浴衣を着たエヴァを見る。怒りと失望を抱えたままカロリーヌは林道をかなりのスピードで車を走らせる。

 別荘への帰路パトカーと救急車とすれ違うベルトランの車。別荘の前でエヴァが叫んでいる。「彼女が来たわ。仕組んだのね。答えなさいよ! 家に送って!」ベルトランはスマホの受信を確認した。「カロリーヌよ。伝言を送ってよ!」事前に確認のメールが入っていたんだ。エヴァの色香に迷い確認を忘れていた。

 エヴァを乗せてパトカーと救急車の止まる事故現場に近づいた。路肩に止めってエヴァのスーツケースを路上に放り投げた。さっさと帰れと言わんばかりに……。ベルトランが事故現場の崖下を覗くとまさにカロリーヌの車が転落していた。

 エヴァにひどい仕打ちをしていながら、エヴァの家を訪れた。すんなりと門扉が開いた。招じ入れられ部屋で待たされた。なかなか現れないので、二階に上っていった。開いたドアからジョルジュが現れベルトランを羽交い絞めにして階段から突き落としなおも足で腹を蹴っていた。二階の手摺で冷たく眺めるエヴァ。

 重傷のベルトランが横たわる病院のベッドに近づいたエヴァ。「もう、これっきりよ。付き纏わないで」と唇にキスを残して去って行った。「合言葉」の作者を冷酷に突き放し、恋人も失い、今またエヴァも失い、何一つ書けない売れっ子作家の立場も失った一人の男。自分の力で生きようとしなかった男の悲しい人生と言える。

 なお、レストランで注文するシャルム・シャンベルタン(アルマン・ルソー)2005年物は、日本では約23,000円で手に入る。2018年制作 劇場公開2018年7月
  
  
監督
ブノワ・シャコー1947年2月パリ生まれ。

キャスト
イザベル・ユペール1953年3月パリ生まれ。2016年「エル」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。
ギャスパー・ウリエル1984年11月フランス、ブローニュ=ビランクール生まれ。2016年「たかが世界の終わり」でセザール賞主演男優賞受賞。
ジュリア・ロイ出自未詳
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映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」風変わりな風刺コメディ

2018-11-04 11:40:36 | 映画

          
 スウェーデン映画で監督したリューベン・オストルンドは、多分変わり者だと思う。下の写真のように撮られ方も何かを表現したいという意図がうかがえる。

 スクエアは、正方形、四角の意味と柔軟性に欠けることの意もある。クリスティアン(クレス・バング)が勤める前衛的な美術館「X-ROYAL」の新しい企画は「ザ・スクエア」。この「スクエア」には人類の理想とする「平等で助け合う」という思いやりの精神があふれる場所としたい。

 素晴らしい! ところが現実は、しかもクリスティアン自身も含めて真逆の行為が普通の世の中。それをクリスティアンが人助けをしたのが原因で財布とスマホを掏り取られる発端から我々人間の恥部をつぶさに描く。

 クリスティアンが出勤のために歩いていると突然どこかで「助けて!」の声が聞こえる。見渡しても「助けて」の主が見えない。何度か聞こえた時、立ち止った。すると「助けて」と大声をあげる女が隣の男にすがりつく。クリスティアンもこの男も何が起こっているのか見当もつかない。すると前方から走ってくる男がいる。

 二人の男はこの男が女を追ってきたと思いこんだ。制止したが「おれはただ走ってるだけだ。何故止める?」と言ってすっと姿を消した。女もいなくなった。二人の男は、この突発事が無事に終わってほっとする。「胸がドキドキしたよ」と笑いながら別れる。歩き始めてクリスティアンが財布もスマホも無いのに気づく。まんまとスリにやられた。これを取り戻すにはどうすればいいか。

 アフリカ系と思われる部下が「財布やスマホを盗る奴等は貧しい奴らだ。貧困層が住むアパートに脅迫めいたチラシを配ったらどうか。おれが配ってもいいよ」知的水準の高いクリスティアンも、やすやすとこの話に乗る。

 出来上がったチラシを持って15階建てのアパートに着いた。てっきり部下が配るものと思っていたが「盗られたのがあなただから、あなたが配るのが筋だ」と言う。クリスティアンは、「車を見張っててくれ。これからも君を信頼していいんだな?」と念を押してアパートへ向かった。私用だから命令するわけにもいかないが、アフリカ系の人間を皮肉る結果となる。お陰で財布とスマホが返ってくる。一つ一つの出来事が皮肉と人の心の陰を浮き彫りにする。

 圧巻なのは美術館で300人を超すブラック・タイ・パーティが催される。いわゆる富裕層の格式ばったパーティだ。女性は華やかなドレス。そこに現れたのが隆々とした胸郭を持つ上半身裸の男(テリー・ノタリー)。奇声を発しながらゴリラのように歩き回る。人は物珍しそうに好奇の目を注ぐ。

 やがてこの人間ゴリラは、トーンをあげ男性にちょっかいを出すが男性は逃げる。ますますエスカレートして、テーブルに飛び乗ってグラスや皿を飛び散らす。目の前の若い女性の顔に触れる。嫌がる女性。すると人間ゴリラは、髪の毛を引っ張って倒しレイプに及ぼうとする。自分の娘なのか高齢の男性が人間ゴリラに飛びかかる。娘は「こいつを殺して!」と叫ぶ。多くの男がこの人間ゴリラに襲いかかる。

 映画とは分かっているが画面に固唾をのんだ。観る者に衝撃を与える映像だった。しかし、この映画の中にも多くのホームレスの映像が現れるが、このパーティの場面で持てる者の参加者の傲慢さと言葉を発せない貧しい者の人間ゴリラの叫びは、現実のスウェーデン社会を描出していると思っていいのかも。いや、これはスウェーデン社会を例にとった世界の現実を突きつけているのだ。

 そしてもう一つの人間にとって根源的な問題「セックス」について、これでいいのか? と問うているようだ。要するにフリーセックスが一般化して、高い山をヘリコプターで頂上に降りるように、セックスも途中の互いに慈しむ行為がお忘れではないのか。

 クリスティアンは、アメリカ人のインタビューアー、アン(エリザベス・モス)とベッドインをする。裸の二人は布団に覆われている。クリスティアンは、なにかごそごそとやっている。やがて「準備が出来た」と言う。コンドームをつけたという合図。騎乗位でアンが、バックでクリスティアンが果てる。

 またクリスティアンがごそごそ。使用済みのコンドームを外す。アンが「塵箱に捨ててよ」、クリスティアンはイヤ、俺が捨てる。この言葉の応酬が何回か行われ結局塵箱に捨てる。この場面がよく分からない。

 なんでコンドームを取り合いするの。精子は空気に触れると即死するが、精液の状態なら乾燥までは生きているかもしれない。だからと言って使用済み精液の使い道があるとも思えない。あえて考えてみると、動物のような潤いのないセックスはやめた方がいいよ。 と言っているのかも。

 セックスは相手への思いやりが充分でないと満足したものにはならない。相手が今何を求めているかを見定めることは、潤いのあるセックスの絶対条件だろう。

 スウェーデンはウィキペディアによると「IMFによると2015年のスウェーデンの国内総生産(GDP)は4,926億ドル。同年の一人当たり国民総所得(GNI)は57,810ドルで、世界第7位の高所得国となっている」

 ちなみに日本は、世界第26位。高福祉国家と言われるスェーデンだが、映画でも描かれている多くのホームレスは現実なのかそれとも映画のために集めてきたものなのか。いずれにしても、改めて現実を直視するよう仕向けられた気がする。

 ところどころ分からないところもあるが、2017年第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、最高賞のパルム・ドールを受賞した作品だから一見すべきだと思う。2017年制作 劇場公開2018年4月
  
  
  
監督
リューベン・オストルンド1974年4月スウェーデン生まれ。

キャスト
クレス・バング1967年4月デンマーク生まれ。
エリザベス・モス1982年7月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
テリー・ノタリーカリフォルニア州サンラファエル生まれ。「猿の惑星」シリーズで猿役をやっている。シルク・ドゥ・ソレイユ(直訳太陽のサーカス)の出身。

 シルク・ドゥ・ソレイユは、カナダに本社を置くエンターテイメント集団で常設公演をラスベガス他で興行している。ラスベカスのベラージオ・ホテルの公演はO(オー)で「フランス語で水を意味するeau(オー)に基づくネーミング。シルク・ドゥ・ソレイユの名声を一気に広めた代表的な演目。ステージが一瞬のうちに巨大なプールになってしまうという、初見では理解できないほどのインパクトを与えた舞台装置。それにより、それまでのシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスにアーティスティックスイミングの要素が加わり、かつて体験した事のない世界観を作り上げたと絶賛された」とウィキペディアにある。一度見たいと思う。
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映画「ゲティ家の身代金」世界一の富豪は世界一のケチ

2018-11-01 11:34:13 | 映画

          
 世界一の大金持ちだったジャン・ポール・ゲティの孫ジャン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)誘拐事件を事実を交えたフィクションとしてリドリー・スコットが映画化した。

 祖父のジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)は、何でも値切ることは当然で無駄なことはしないが信条だった。金が唸るほどあってもホテルでは下着類を自分が洗う。また、観光土産も15ドルを5ドルに負けさせるのに1時間を費やす。

 さらにひどいのは、高価な美術品のような像を子供の頃のゲティ3世に「これは今売れば120万ドルにもなるよ」と言ってプレゼントする。これが後に観光土産で15ドル程度の値打ちしかないのが分かる。世間の常識ともほど遠い人と言える。

 3世は1973年16歳の頃、誘拐される。犯人からの身代金要求は、1700万ドル(約18億7千万円)。祖父ゲティからすればこの程度でいいのかという感じだろうが、値切り癖があって「支払えば、14人の孫も誘拐される危険がある」として拒否する。

 そのうち、3世から切り取った耳が新聞社に送られてくる。身代金も下がっていって400万ドルになった。この期に及んでもすんなりと払わない祖父ゲティ。節税対策をどうするなど金持ちはケチと言われるが、ここまで来ると病的だ。

 離婚した息子の嫁アビゲイル(ミッシェル・ウィリアムズ)は、母としてお金を工面しようとして競売のザザビーズの店を訪れた。高価な美術品のような像が、二束三文であることが分かり祖父に裏切られて涙を流すアビゲイル。

 エンタテイメント性を加えた物語は、3世の解放と祖父の死で終わりを告げるが、祖父の会社を継げるのは子供たちで、その年齢に達していないのでアビゲイルが当座の代表となる。このときの遺産総額は約7千3百億円、遺産の大部分は美術館を管理するゲティ財団に委ねた。

 これに不満な一族は、財団、兄弟同士、子供は親を訴えたりと骨肉の争いが長く続いたとウィキペディアにある。なお、2009年のゲティ財団の資産は、4千6百億円とか。

 ロサンゼルスにあるゲティ美術館は、観光のメッカになっている。ジャン・ポール・ゲティには、多くの面白い逸話があるようで、それはウィキペディアでどうぞ。

 ジャン・ポール・ゲティ役をケビン・スペイシーで撮り終えたが、過去の少年にセクハラをしたと報じられ本人も認めたため、急きょクリストファー・プラマーで撮り直した。そんなバタバタした撮影でも、ちゃんとした役作りをするプラマーはすごい俳優と言える。

 興行成績も黒字のようで……原題「All the money in the world(世界のすべてのお金)」2017年制作 劇場公開2018年5月 世界一の富豪の金、カネ、カネと追いかける姿が、ペラペラの紙幣のようにどこか潤いのないものに見えて仕方がない。
  
  
  
  
監督
リドリー・スコット1937年11月イギリス、サウスシールズ生まれ。作品には「テルマ&ルイーズ」「グラディエーター」「ブラックホーク・ダウン」など。

キャスト
ミッシェル・ウィリアムズ1980年9月モンタナ州生まれ。
クリストファー・プラマー1929年12月カナダ、オンタリオ州トロント生まれ。2011年「人生はビギナーズ」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
マーク・ウォールバーグ1971年6月マサチューセッツ州ドーチェスター生まれ。
チャーリー・プラマー1999年5月生まれ。
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