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読書 リチャード・エイリアス「愛しき女は死せり」

2006-09-27 14:30:51 | 読書
 
               
私立探偵ジョン・ブレイクは、《デイリー・ニューズ》の紙面を睨んでいた。それは、十年前の高校卒業記念アルバムに載っていたミランダ・シュガーマンの写真だった。
 見出しは「ストリッパー殺害さる」と印刷されていた。ジョンの記憶が十年前、18歳の夜に戻る。

 “ミランダが私にキスをしたとき、まぶたが震えていたこと、それから、終わったあとで、指で私の髪を梳き、私の頭を胸に引き寄せたことも覚えている。”

 ジョンはニューヨーク中のストリップ小屋を回って真相に近づこうとする。そして待っていたのは、意外な結末だった。

 本書は、エドガー賞、シェイマス賞の最優秀新人賞にノミネートされたという。私にはのめり込むほどでもなかった。著者の本名は、チャールズ・アルダイ。ミステリ叢書〈ハード・ケース・クライム〉を立ち上げる。自身もリチャード・エイリアス名義で本書を執筆する。
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映画 ダイアン・レイン「トスカーナの休日(‘03)」

2006-09-22 12:49:35 | 映画
 ダイアン・レインという女優の名前は聞いたことがある。映画通から言わせればいまさら何を……という叱責が飛びそうだが、この映画が初めて観る映画になる。
                右 ダイアン・レイン
 で印象は悪くない。40歳近い大人の雰囲気は十分出ていた。が、女優というのだからこのくらいの演技は当たり前で、特に言うことはない。
 物語そのものは、どこにでもある失意から再生の物語で、作家のフランシス(ダイアン・レイン)がイタリア トスカーナで買った家の修復を通じて離婚の傷をいやし、いろいろな人と出会い、幸せの女神が微笑むというもの。ダイアン・レインにもう一段の成長を期待したい。

 今ひとつ印象に残らないのは、演出に冗漫な点を感じるからか。一例として、家を買う場面で、フランシスがその家に入っていくと先客があり、売主の女性が先ほどの値段の倍額でないと売らないという。先客は怒って帰ってしまう。
 フランシスは買う値段を言う。やはり売らない。神のお告げがないからだという。フランシスはあきらめて帰ろうとしたとき、鳩の糞が額に落ちる。それがお告げということで家を手に入れられた。こんなご都合主義もない。

 たとえ原作がそうであっても映像にする場合は、リアリティと自然さが必要だろう。神のお告げはいい、その表現の仕方の問題だ。ホラー映画ではないのだから。この映画の監督は脚本家出身で、この映画が二作目だという。今後に期待したい。

 フランシスの親友としてサンドラ・オーという中国系の女優が出ているが、私にはこの女優の容貌は何度も観たいと思わない。うがった見方をすれば、中年女のダイアン・レインをより美しく見せるためにサンドラ・オーを配したのではないかと。
               
               左から サンドラ・オー ケイト・ウォルッシュ ダイアン・レイン
 
 監督 オードリー・ウェルズ1960年4月サンフランシスコ生れ。‘99「写真家の女たち」でインディペンダント・スピリット賞の脚本賞にノミネートされる。
 キャスト ダイアン・レイン1965年1月ニューヨーク生れ。’79年映画デビュー、当時は天才スターの評価も受け着実に地歩を固めたかに見えたが、出演作二本とも興行的に振るわず不運が続く、ところが、‘02「運命の女」でアカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされたほか、NY批評家協会賞や全米批評家協会賞など多くの映画賞を受賞。
 「トスカーナの休日」でも全米ロングラン・ヒットを記録、大人の女性が持つ魅力を存分に表現できるハリウッド女優としての地位を得る。
 サンドラ・オー1970年11月カナダ生れ。
 ケイト・ウォルッシュ1967年10月カリフォルニア州サンノゼ生れ。テレビ出演が多い。最近映画にも出ているようだ。
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映画 「愛についてのキンゼイ・レポート(‘04)」

2006-09-18 13:21:35 | 映画
 1948年男性篇、1952年女性篇として,アメリカ白人男性,女性の性生活が明らかにされる。
 おおよそ1万8千人からの聞き取り調査の結果だった。調査したのは、アルフレッド・キンゼイ(1894.6.23~1957.8.25)生物学者で人間の性について実態調査をして発表した。
                
 これが性科学発展の礎となり、性革命や女性解放運動に大いに貢献したといわれる。このいわゆるキンゼイ報告を映像化したのがこの映画である。
 すべての研究結果を映像化出来ないので、特徴的なものが取り上げられている。きわどい言葉や男性助手のヌードシーンに加え男性同士のキスシーンにまで及び自分の妻と助手の男とのセックスを許すという、科学者の普通の人々とは違う価値観に、ついて行けない思いをさせられる。
                
 21世紀の今、家族の間で、性について語り合われているのかどうか、下記のような会話は、かなり進んだ現代でもそうそうあるもではないだろう。
 キンゼイ家は、夫婦と娘二人、息子一人という構成。そして、夕食の席での会話。
「アンは?ジムとは長いんだろう」とキンゼイ博士は問いかける。
「ペッティングだけ、セックスは大学までお預け」とアンは答える。
博士「その方がいい」
すると妹が「アンがいいなら私だって」
「姉さんは18歳で恋人もいる」と博士。
唐突に妹が母親に「痛い?」
母親「何が?」
「初体験よ」
「ちょっぴりね」微笑みながら母親が答える。
博士が「外陰を広げると挿入が楽だ」
 息子は我慢の限界に達し、怒って席を立つ。
「父さんは変人だといわれているよ」
博士は「お前は石頭だ」と怒鳴る。
私も石頭呼ばわりされるだろう。しかし、映画は学究的雰囲気に包まれて、それほど違和感なく観られることも事実だ。

リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、ピーター・サースガードという演技派俳優の起用が成功している。
監督 ビル・コンドン1955年10月ニューヨーク生れ。‘02「シカゴ」でアカデミー脚本賞にノミネート。製作総指揮にフランシス・フォード・コッポラも加わっている。
キャスト リーアム・ニーソン1952年6月北アイルランド生れ。’93「シンドラーのリスト」でアカデミー主演男優賞にノミネート。
ローラ・リニー1964年2月ニューヨーク生れ。‘04年この「愛についてのキンゼイ・レポート」でアカデミー助演女優賞にノミネート。
ピーター・サースガード1971年3月イリノイ州生れ。
クリス・オドネル1970年6月イリノイ州生れ。
                
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映画 ニコラス・ケイジ「ロード・オブ・ウォー(‘05)」

2006-09-14 14:05:44 | 映画
 ロシア系移民の子としてブルックリンで生まれ育ち、両親のレストランを手伝っていたユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は、ある日ロシア系のギャングがライフルで殺そうとした相手に、拳銃で殺されるシーンを目撃する。

 飲食店事業は食べる必要を満たすため、ならば、別の必要を満たす事業を……ヒントを得て始めた武器売買業。
 試しにイスラエル製ウジー短機関銃を売り込むと、とっさに気の利いた言葉が出て、自分に商才があることが分かる。
               
 彼が目指すのは”今、世界には5億5千万丁の銃がある。ざっと12人に1丁の計算だ。残る課題は1人1丁の世界”
 というわけで、戦争や民族紛争があるところへ、たとえ熱砂の中でもダークスーツにネクタイ姿で現れる。どこかの国のクールビズなんて、お呼びじゃない。
 男の戦う姿がこれだと言わんばかりに。弟ヴィタリー(ジャレッド・レトー)を引き込み、世界を股にかけたビジネスは大成功を収める。
                
 それに十代からの憧れだったエヴァ・フォンテ―ン(ブリジット・モイナハン)を、嘘で塗り固めた言葉で手に入れニューヨークの高級アパートメントでの生活。
                
 ひたすらユーリーを追う捜査官ジャック・バレンタイン(イーサン・ホーク)の影が忍び寄る。そして逮捕はされるがユーリー・オルロフは、ジャックを相手に自信に満ちた口元に笑みをたたえながら言う。

 “予告してやろう。心の準備が出来るように。ドアがノックされ外に呼び出される。廊下には上官がいてまず君の手柄を褒める。平和への貢献だと、そして表彰と昇進を告げる。
 次に私の釈放を命じる。君は抵抗する。退職も辞さないと。だが結局私は釈放。武器密輸容疑そのものが釈放理由だ。私は残虐な指導者たちと仕事で付き合ってきたが、その何人かは、君たちの敵の敵だ。
 最大の武器商人は君のボス、合衆国大統領だ。輸出量は1日で私の1年分、証拠が残るとまずい取引もある。そんなときは私のようなフリーランサーに委託する。
 だから、私を悪と呼ぶのはいい。だが君にとって必要悪なんだ”

ジャックは叫ぶ“地獄に堕ちろ”

 そして、エンディングでユーリー・オルロフのナレーションは続く。“「彼ら」に私が必要だから釈放したに過ぎない。ともあれ私は天職に戻った。世界を受け継ぐのは武器商人だ。
 ほかは殺し合いで忙しい。生き残る秘訣は「戦争に行かないこと」特に自分からは”

 次のようなテロップで締めくくられる。“本作は実際の出来事に基づく。個人経営も繁盛しているが、最大の武器供給者は米、英、露、仏、中である。この5カ国は国連安保理の常任理事国でもある”
 これらの武器によってもっとも被害を被っているのは、武器もない金もない一般の国民である。

 釈放されたものの、ユーリー・オルロフは両親から勘当され、妻にも見捨てられ唯一残されたのは武器密輸ビジネスだった。しかし、このビジネスの盛衰の鍵は対立や紛争がなくなるかどうかである。
 残念ながら、今のところ地球上には、そこら中に商機は転がっている。

 監督アンドリュー・ニコル1964年ニュージランド生れ。ロンドンでTVコマーシャルの仕事を皮切りに、‘98「トゥルーマン・ショー」でアカデミー脚本賞にノミネートされる。
 キャスト ニコラス・ケイジ1964年1月ロングビーチ生れ。コッポラ一家の血筋。
 ジャレッド・レトー1971年12月ルイジアナ州生れ。
 ブリジット・モイナハン1972年9月ニューヨーク州ビンガムトン生れ。モデル出身、一年に1本の割合で出演。
                
 イーサン・ホーク1970年11月テキサス州オースティン生れ。’01「トレーニング・デイ」でアカデミー助演男優賞にノミネート。‘04「ビフォア・サンセット」でアカデミー脚本賞にもノミネートされる。
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大リーグ ゴジラが帰ってきた。ヤンキース松井4打数4安打1四球

2006-09-13 14:42:28 | スポーツ

               
 4ヶ月ぶりのヤンキー・スタジアム、雨の心配のない快晴の夕暮れ、ヒデキ・マツイのアナウンスに観客はスタンディング・オ―ベイションで祝福、大きな拍手で迎えられる。
 その期待に応えるように、つまりながらもセンター前に落とすヒットで走者が還る。その後、ヒットを続け最終打席は四球を選んだ。
 テレビを見ながら,試合後トーリ監督はどんなコメントを出すのだろうかと考えていた。私がトーリ監督なら次のようなコメントになる。

「ヒデキは、苦しいトレ二ーングを積んで、きっちりと仕上げてきた。最後の打席に特に敬意を表したい。なぜなら、大抵の打者は、大きな花火(本塁打)を上げたくなるもの。
 それを、ボールをよく選び、大差でリードしているゲームなのに、基本をしっかりと見極めているのは、真のプロといえる。ヒデキがヤンキースの一員であることに誇りに思う」トーリ監督から、このようなコメントがなくても心の中で思っているはずだ。ヒデキのポスト・シーズンでの働きに期待が膨らむ。
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映画 スピルバーグ「ミュンヘン(‘05)」

2006-09-11 13:41:51 | 映画
 1972年9月5日早朝、旧西ドイツのミュンヘンでオリンピック開催中に、パレスチナの“黒い九月”のメンバー8名がイスラエル選手村に乱入、イスラエル代表チーム11名のうち選手とコーチ2名を殺害、残り9名を人質に取ったため競技は中断された。
               
 “黒い九月”は、イスラエルに収監されているパレスチナ人234名の解放を要求する声明を出す。西ドイツと犯人グループとの交渉で、ミュンヘン国際空港からエジプトのカイロへ脱出することで合意されていた。
 しかし、本当は違っていた。西ドイツ側は、空軍基地に移動させ犯人を狙撃し殺害、人質解放が狙いだった。しかし、狙撃に失敗、人質全員が死亡する。

 そして、“黒い九月”のメンバーに対し、報復とテロ防止のためとして、モサド工作員による暗殺が実行される。
 映画はこのいわゆる神の怒り作戦の暗殺を描写しているが、当然のこととして、相手からの報復や工作員自身懐疑的になったり自殺したりする人間的苦悩にも踏み込み一つの問題提起がなされている。
                
 この苦悩は、リーダーのアヴナー(エリック・バナ)が妻とのセックス中も、空港での殺戮が甦るという場面で象徴的に示される。
 これは、スピルバーグが導入部で明言している。“イスラエルの取った行動の動機を探ろうとした。一番の防衛手段として、なぜ「暴力には暴力」を選んだか。理解するには共感が必要だ。この映画を通じてイスラエルに共感できれば彼らの行動を理解できる。
 また、報復行動を非難するつもりはない。むしろ正しい判断だったかもしれないが、難しい問題として残っている。今日、テロに対抗するには慎重な対応が必要だ。行動することをためらわず、常にわれわれの望む結果を出すべきである。だが、思いがけない最悪の結果に苦しめられる可能性もある。暗殺者の苦悩を描き問題提起をしたんだ”
 パレスチナ側の描写が、おそらく政治的な配慮で描かれていないこともあって、共感を求められてもムリだ。
                
 モサドの工作員は、簡単に人間的な感情を取り戻すのだろうか。スピルバーグは原作に忠実に描いていないと言っているので、その辺は脚色したのだろう。
 ちなみに、モサドとは、イスラエル総理府諜報特務局で,対外諜報活動と特殊任務,工作等専門的に従事する。モサドの実力は、アメリカのCIAに比肩するかそれ以上といわれている。

 テロに対する有効な解決策は示されていないし、世界はいまのところ正しい回答を持っていない。

 私にとってあまり馴染みのない俳優たちだった。中でも、バーでアヴナーを誘惑しようとする女を演じたマリ=ジョゼ・クローズが目を引いた。短い出演時間だったが、魅力的な顔と表情はかなりの実力をうかがわせた。
 調べてみると‘03年「みなさん、さよなら」で作品は’03年アカデミー外国語映画賞を受賞し、彼女はカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞している。納得した。

 それに蛇足だろうが、このときの日本選手団に国際的非難が集まったようだ。ウィキペディアから引用してみよう。
 “各国選手団が最悪の結果に沈む中、日本選手団だけは最悪の結果にもかかわらず、競技再開の知らせに喜んでいた。さらに、追悼式にジャージ姿で参列した選手や、練習のためと称して参加しなかった選手が多数いたことで、海外の一部マスコミから「メダル・アニマル」と批判された”当時のコーチ陣の国際感覚欠如を物語っているのだろう。
 ブログのかなりの部分を、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を参考にする。

 監督 スティーヴン・スピルバーグ1947年12月オハイオ州シンシナティイまれ。‘72「激突」が映画初監督で評価され、’93「シンドラーのリスト」‘98「プライベート・ライアン」でアカデミー監督賞を受賞、この「ミュンヘン」は、’05年アカデミー監督賞にノミネートされる。その他に数多くの受賞がある。
 キャスト エリック・バナ1968年8月オーストラリアメルボルン生れ。
 ダニエル・クレイグ1968年3月イングランド生れ。
 キアラン・ハインズ1953年2月北アイルランドベルファスト生れ。
 マチュー・カソヴィッツ1967年8月パリ生れ。
 ハンス・ジシュラー1947年6月ドイツ生れ。
 マリ=ジョゼ・クローズ1970年2月カナダモントリオール生れ。
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映画 ブラッド・ビット&アンジェリーナ・ジュリー「Mr.& Mrs.スミス(‘05)」

2006-09-07 11:40:54 | 映画
 夫婦は別々の組織に属する暗殺者だった。漫画的であり劇画っぽい、お気楽に観るならそれなりに楽しめるだろう。と言うわけで何も残らない映画。
 封切られる映画がすべて印象に残るなんてことはまずないだろうけど。ブラッドのファンでもないし、アンジェリーナ目当てでもない。ただDVD半額キャンペーンで手に取っただけ。
               
 ブラッドはそろそろオスカーを狙わないと落ち目の俳優の仲間入りになるぞ。アンジェリーナを見ていて、モデルの経験があるのかなと思ったほど感情の表現が乏しく一面的だった。調べてみるとやはりモデルだった。彼女もお色気だけでは、シャロン・ストーンのようになるかも。

 とはいえallcinema ONLINEデータベースに書き込んであるレヴューを見ると、好意的なのがほとんど。アンジェリーナはべた褒め。
 わたしはこの二人より、エディに扮したヴィンス・ヴォーンに注目している。‘05年の「ビー・クール」を見て印象に残っていた。彼はいずれアカデミー助演男優賞を獲る予感がする。
                
 監督ダグ・リーマン1965年7月アメリカ生まれ。’02「ボーン・アンデンティティー」ほか。
 キャスト ブラッド・ビット1963年12月オクラホマ州生れ。‘95「12モンキーズ」でアカデミー助演男優賞にノミネート。
 アンジェリーナ・ジョリー1975年6月カリフォルニア州ロサンジェルス生れ。’99「17歳のカルテ」でアカデミー助演女優賞を受賞。その後は、2001年、‘02年、’03年、‘04年のラジー賞のいずれもワースト主演女優賞にノミネートされ、MTVムービーアワードでは、この映画のキス・シーン賞がノミネート、格闘シーン賞は受賞している。
 ヴィンス・ヴォーン1970年3月ミネソタ州ミネアポリス生れ。このDVD解説で監督は、“作品ごとに新たな面を見せる。本作でも彼は、その素晴らしさを発揮してくれた。1ページ分の素材を千倍も面白くする男だから、大まかな指示だけで膨らませてくれる”というコメントがある。
               ヴィンス・ヴォーン
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映画 複雑に絡む中東の利権争奪を描く「シリアナ(‘05)」

2006-09-03 11:25:17 | 映画
 この映画には主演俳優はいない。おおよそ人間的な感情はほとんど描出されない。唯一、ブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)の息子がスイミングプールの漏電事故に遭った時、両親の必死の形相ぐらいのもの。
               
 CIA工作員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)、小さな金融コンサルタント会社社員ブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)、中東の小国のナシール王子(アレクザンダー・シディグ)らが運命の糸に手繰り寄せられる。そこにはCIAが遠隔操作する、ピンポイント攻撃が待っていた。
               
 石油大手ケネックス社が天然ガスの採掘権を中国と争い負ける。これにはナシール王子の力が働いている。
 一方キリーンという小会社がカザフスタンで大油田の採掘権を得る。この件に関し司法省もどうやってキリーンが採掘権を得たのか調査を始めていて、大手法律事務所のベネット・ホリデイ(ジェフリー・ライト)も同様の調査を指示される。
               
 石油利権に絡む背後の政治的、経済的、宗教的対立に、産油国の王族の王位継承をめぐる家族の確執、それにまつわる不正や陰謀が渦巻く中東の暗部を、まるで新聞記事を読むように、ドキュメンタリータッチで淡々と語られていく。
               
 それにしても、稼いだ金の使い道の象徴が道路整備という皮肉な場面がある。何もない広大な砂漠にたっぷりと幅を取った片側二車線の舗装道路が交差し、周辺には建物らしきものは皆無の風景。
 一方、労働者階級は、職もない不安な生活を強いられている。いったい中東の現実は、どうなんだろうと考え込んでしまう。

 この映画を観て、原油価格の高騰とあいまって、中東に今一度強い関心を持つきっかけになるのもいいかもしれない。ちなみにシリアナとは、イラク、イラン、シリアを一つの民族国家にまとめあげることを想定したシンクタンクで使われる言葉と言う。
 そのシンクタンクも欧米の企業で、言葉を生み出したのだろう。三国から見れば、冗談はよしてくれと言いたくなるだろう。

 石油をめぐる争いは、かくも見苦しいものであり、今のところ石油の確保が国運を左右すると、中国のなりふりかまわぬ石油あさりが証明している。
 投機の金も絡みガソリンや灯油の価格はばか高くなった。迷惑な話だ。でこの映画、一度観ただけではよく理解できないので、DVDで何度も観るしかない。

監督スティヴン・ギャガン1965年5月ケンタッキー州ルイズヴィル生れ。‘02「ケイティ」に次ぐ監督二作目。この映画の脚本も書いていて、アカデミー脚本賞にノミネートされている。

キャスト ジョージ・クルーニー1961年5月ケンタッキー州キシントン生まれ。’05アカデミー賞では、「グッド・ナイト&グッドラック」で監督賞と脚本賞にノミネートされ、この「シリアナ」では、助演男優賞を受賞している。
 マット・デイモン1970年10月マサチューセッツ州ケンブリッジ生れ。8歳の頃からの親友ベン・アフレックとの共同脚本‘97「グッド・ウィル・ハンティング」でアカデミー脚本賞を受賞。俳優としても同作で主演賞にノミネートされる。’02「ボーン・アイデンティティー」がヒットする。
 アマンダ・ピート1972年ニューヨーク生れ。
 クリス・クーパー1951年7月ミズリー州カンザスシティ生れ。脇役で光る。‘02「アダプテーション」でアカデミー助演男優賞受賞。
 ジェフリー・ライト1965年12月ワシントンDC生まれ。
 クリストファー・プラマー1927年12月オンタリオ州トロンと生れ。
 ウィリアム・ハート1950年3月ワシントンDC生まれ。
 ティム・ブレイク・ネルソン1964年11月オクラホマ州タルサ生まれ。
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