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映画「正義のゆくえ Crossing Over '09」劇場公開2009年9月

2010-11-30 10:40:07 | 映画

              
 この邦題はちょっと大げさな感じがする。アメリカの懐の深さはよく言われるところであるが、経済が停滞し失業率も思ったより改善しない状況下不法入国者が絶えない。多民族国家が抱える苦悩の一端が描出される。

 ICE(移民税関捜査局)の捜査官マックス(ハリソン・フォード)は、ある工場の手入れの時、メキシコからの不法入国者ミレアの「小さな子供がいる。どうか見逃して欲しい」という必死の嘆願の目が忘れられなくなる。その子供を探し当てメキシコの祖父母の元へ届けるが、強制送還されたミレアは再び国境を越えたという。

 これを縦糸にグリーン・カードの判定官コール(レイ・リオッタ)のオーストラリアからの女優の卵を交換条件に体を求めたり、韓国人クリーニング店の息子の暴走があったり、マックスの同僚ハミードの妹が殺されたり、少女タズリマの9.11テロについて教室での発言が、その主張を支持するように受け取られて強制送還になったりの横糸が絡む群像劇になったいる。

 不法入国者となれば、麻薬や売春が往々にして出てくるが、それらは描いていない。大上段に振りかぶったような正義を声高に主張しているわけでもない。そこには生まれた国や環境によって、悲しいほどの人間の辛さや苦しみが伝わってくる。マックスを演じたハリソン・フォードも抑えた演技で初老の人間味を出していた。
           
           
監督
ウェイン・クラマー1965年南アフリカ生まれ。

キャスト 
ハリソン・フォード1942年7月イリノイ州シカゴ生まれ。目の出ない俳優生活を送っていたが、'77「スターウォーズ」が大ブレイク。インディ・ジョーンズ役でスターの地位を確立。
レイ・リオッタ1955年12月 ニュージャージ州ニューアーク生まれ。長い経歴で助演者としてかなりの本数に出ているが、私は悪役の記憶しかない。
アシュレイ・ジャッド1968年4月カリフォルニア州生まれ。
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映画「それぞれの空に The Lucky Ones ’08」劇場未公開

2010-11-29 10:26:34 | 映画

               
 原題のラッキー・ワンは、イラク駐留のアメリカ兵の生き残りを意味する。イラクでの戦闘は、通常の戦争とは違った様相を示しているように思う。通常の戦争とは、両国の兵士が軍服に身を固め組織的な戦闘することだ。
 ところが、ベトナム戦争以来それが崩壊した。北ベトナム兵は、ベトナム人が着る日常の衣服で銃を持っている。一旦大衆に紛れ込めば判断がつかない。このイラクも民間人が頻繁に往来する市街地から原野に至るまで敵対する軍服の兵はいない。テロを仕掛ける民間人がいるだけである。そんな戦場から帰還するのは、ラッキー以外なにものでもない。

 そのラッキーな一員に選ばれた三人の兵士。コーリー(レイチェル・マクアダムス)、フレッド・チーヴァー(ティム・ロビンス)、T・K プール(マイケル・ペーニア)が、JFK国際空港に着いたとき5時間の停電ですべての国内線は欠航していた。
 レンタカーでセントルイスに帰るというチーヴァーとシェアしたこの三人。まったく偶然の出会いからアメリカ縦断の旅となった。徐々にお互いの絆が築かれていくが、問題も持ち上がる。

 チーヴァーの自宅に立ち寄った時、チーヴァーは妻から離婚を宣告される。理由は一人の生活が快適で気に入っているからと言う。この理由を聞いて納得するかしないか人それぞれだろうが、私はなんとなく分かる気がする。夫婦は他人という現実をまざまざと見せられた。それに加え息子がスタンフォード大に合格して入学金が2万ドル必要なことも分かりその工面に頭を痛める。

 もう一つ、T・Kには深刻な悩みがあった。イラクでパトロール中、爆弾の破片が急所に当たって不能を抱えていた。コーリーはボーイフレンドの戦死で遺品のギターを届けた先に妻と子供がいるのが分かる。

 三人の人生にそれぞれの苦悩が影のようにつきまとうが、再び三人を乗せたジェット機はイラクへと舞い上がった。カメラはずーっとジェット機を追っている。なにか「あなたも勇気を出して!」と言われているようだった。
           
監督ニール・バーガー

キャスト
ティム・ロビンス1958年10月カリフォルニア州生まれ。’92「ザ・プレイヤー」でカンヌとゴールデン賞に輝き「ショーシャンクの空に」に出演。監督した「デッドマン・ウォーキング」でアカデミー監督賞にノミネートされる。’03「ミスティック・リバー」で高い評価を受けアカデミー助演男優賞を受賞。
                
レイチェル・マクアダムス1978年11月カナダ、オンタリオ州生まれ。
           
マイケル・ペーニア1976年1月イリノイ州シカゴ生まれ。
                
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映画「きみの読む物語The Notebook ’04」劇場公開2005年2月

2010-11-27 14:13:31 | 映画

              
 日本で言えば特別養護老人ホームだろうか。認知症の女性に恋物語を読んで聞かせる。 お金持ちの娘と労働者階級の若者の純愛。
 1940年ノア(ライアン・ゴズリング)とアリー(レイチェル・マクアダムス)の二人は恋に落ち両親の反対を押し切って結婚した。今物語を読み聞かせるのは年老いたノア(ジェームズ・ガーナー)、認知症の女性はアリー(ジーナ・ローランズ)だった。
 映画は、それにつれて回想形式で描かれる。オープニングの夕日を受けて赤く輝く湖を、一艘のボートが水面を揺らめかせているキレイな映像は、バックに流れるピアノの旋律とともにステキな物語を予感させる。
 一途な若い恋と今でも愛する老いた恋。どちらも切なく息苦しくなるほどの体の震えが止まらない。

 とは言っても二つほど不満が残る。一つは年老いたアリーは、頑丈な肉体でどうもロマンティックな雰囲気に欠ける。この役のジーナ・ローランズは、この映画を監督したニック・カサヴァテスの母親でミスキャストに思えてならない。もう少しほっそりとした雰囲気のある女優がよかったように思う。

 それにラストシーンで二人を死なせるが、あれは必要なかったように思う。余韻を残したければ、充分なセリフがあった。
アリー「私たち一緒に死ねるかしら」
ノア 「私たちの愛に不可能はないさ」
アリー「愛してる」
ノア 「私も愛しているよ」
アリー「お休み」
ノア 「また会おう」

 若いノアを演じたライアン・ゴズリングも強い印象が残らなかった。
            
            
            
            

監督
ニック・カサヴァテス1959年5月ニューヨーク生まれ。’97「フェイス/オフ」’02「ジョンQー最後の決断」など
              

キャスト
ライアン・ゴズリング1980年11月カナダ、オンタリオ州ロンドン生まれ。
            
レイチェル・マクアダムス1978年11月カナダ、オンタリオ州生まれ。
ジーナ・ローランズ1930年6月ウィスコンシン州生まれ。’74「こわれゆく女」’80「グロリア」でアカデミー主演女優賞にノミネートされる。
            
ジェームズ・ガーナー1928年4月オクラホマ州生まれ。’74スタートのTVシリーズ「ロックフォードの事件簿」で個性を発揮。
            
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映画「ダウト~偽りの代償Beyond a reasonable doubt’09」劇場未公開

2010-11-26 13:43:21 | 映画

              
 この映画が劇場公開されていないのは、俳優のネームヴァリューに不足するからか? マイケル・ダグラス以外名前が通っていないせいかもしれない。私は法廷劇が好きでよく観るけれど、検事と弁護士の駆け引きが大好きだ。出来の悪いアクション映画よりもはるかに面白い。

 大まかなストーリーは、知事選にも立候補するほどの大物検事ハンター(マイケル・ダグラス)の17件連続の勝訴に捏造の疑いがあるというテレビ・リポーターC・J・ニコラス(ジェシー・メトカーフ)は、友人とある事件後を細工して自ら被告人席に坐る。

 ここからが実に面白い展開になっていく。そして最後の最後、強烈などんでん返しが待っていた。これ以上言うとネタバレもいいところ。

 ちょっと気になるのは、最後にそのからくりに気付く検事補エラ(アンバー・タンブリン)の唐突感が拭えない。巧妙な伏線がはってあったのだろうか? 思い出せない。それに、検事補エラの服装が、胸の谷間を見せ付けるようなもので仕事中としてはそぐわない気がした。それとも一般的な服装なのだろうか? アメリカでは……そんな小さなことを考えなければ楽しめる作品だった。
            

監督
ピーター・ハイアムズ1943年7月ニューヨーク生まれ。CBSでテレビ・ムービーを手がけたあと、’78「カプリコン」が高く評価された。職人監督の一人。祖父は大興行主のソル・ヒューロック。父はブロードウェイの評論家。

キャスト
マイケル・ダグラス1944年9月ニュージャージー州生まれ。
’87「ウォール街」でアカデミー主演男優賞受賞。
            
アンバー・タンブリン1983年5月サンタモニカ生まれ。TVシリーズ’95~’01「General Hospital」のエミー役で注目される。
            
ジェシー・メトカーフ1978年12月コネチカット州生まれ。モデルを経て「デスパレードな妻たち」で注目される。
            
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映画「噂のモーガン夫妻Did you hear about the Morgans?’09」劇場公開2010年3月

2010-11-25 13:04:12 | 映画

              
 どこにでもある夫婦の痴話喧嘩。犬も喰わない話をロマンティック・コメディに仕上げたもの。夫ポール(ヒュー・グラント)の浮気で妻メリル(サラ・ジェシカパーカー)がむくれて別居中。ポールは未練たっぷりに元に戻りたがっている。
 そんな折、メリルの仕事不動産セールの現場にやってきた時、顧客がアパートのテラスから転落死するのを目撃する。テラスに顔を出した男も目撃、その男に追われる危険があるからと、警察(FBI?)は証人保護プログラムで二人をワイオミング州の小さな町の保安家宅に預ける。

 ニューヨークが恋しいけど、どうすることも出来ない。この広い大地に癒し効果もあるのか? 暇を持て余した二人は、ジョギングを始める。広い草原を走る二人の姿を見ていて、こういうウェアで走るのは日本では見られないなあ。と思った。日本人は地味すぎる。
 ヒュー・グラントは、黒のTシャツ、白のパンツでコントラストが鮮やか。サラ・ジェシカパーカーは、髪を後ろで束ねサングラス、スポーツブラとグレイの七分丈のスパッツ、すらりとした肢体によく似合っていた。日本ではまず見られない女性のジョギング姿だ。

 メリルが衝撃的な告白をする。「実は私も一度浮気したわ」これを聞いたポールのショッキングな表情。これも殺し屋の銃撃を受けて、お互いの身を案じたことから、ますます愛情が深まった。そして熱いキス。キスの音までリアル。あれ本当に舌を絡ませているんじゃないかと思うくらいだった。官能的な音だった。映画はめでたしめでたしで終る。
           
           
           
           
監督
マーク・ローレンス1959年10月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。過去の作品を見ると、ラブストーリーの脚本が目につく。それから監督の道に入ったようだ。’02「トゥー・ウィークス・ノーティス」を観た記憶がある。

キャスト
ヒュー・グラント1960年9月ロンドン生まれ。’87「モーリス」でベネチア映画祭主演男優賞を受賞注目を集める。’94「フォー・ウェディング」でアカデミーにノミネートされ人気スターに、現在ではロマンティック・コメディに欠かせない存在。とは言っても年齢的にそろそろ転換期かもしれない。
サラ・ジェシカパーカー1965年3月オハイオ州ネルソンヴィル生まれ。’98「セックス アンド シティ」が女性を中心に評判を呼び長期の人気番組になる。
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映画「パルプ・フィクションPulp Fiction’94」劇場公開1994年9月

2010-11-24 06:47:38 | 映画

              
 この映画を見逃していたとは、恥かしいし偉そうに映画の感想を書く資格がない様に思う。とにかく観終わって、おお、面白い! と思わされる。
 それにしてもテーマはなんだったんだ? 暴力? ワルの世界も実力主義? まあ、冒頭、断り書きがしてある。

「パルプ(1)柔らかく湿った形状のない物体。(2)質の悪い紙に印刷された扇情的な内容の出版物」と。だからこれは質の悪い扇情的な創作物で低俗以外なにものでもない。監督をしたクエンティン・タランティーノや出演のジョン・トラヴォルタやサミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、ブルース・ウィリスもその辺を承知していて存分に存在感を示しているように見えた。
 久しぶりの復帰となったジョン・トラヴォルタやサミュエル・L・ジャクソンの殺し屋二人組の饒舌かつ卑猥でくだらないセリフをさも真面目腐って演じている。一昔前なら絶対に目にしない単語が出てくる。セリフの英語もファックで埋め尽くされている感じだ。

 元締めのボス、ヴィング・レイムスの指示で動くジョン・トラヴォルタとサミュエル・L・ジャクソン二人組みの殺し屋。ティム・ロスとアマンダ・プラマーのちんぴらギャング。八百長試合を引き受けた根っからのファイターだが峠を越えたボクサー、ブルース・ウィリスは約束違反で追われる身になる。死体をクリーンアップするハーヴェイ・カイテル。

 のめり込んだ小説の一ページ、一ページをめくる様に楽しませてくれた映画だった。後半ジミー役でこの映画を監督したクエンティン・タランティーノが出てくる。演技の勉強をしただけあって流れるようなセリフを一気に吐き出していた。明瞭な発音とよく通る声の持ち主だった。’94アカデミー賞作品賞にノミネートされている。

監督
クエンティン・タランティーノ1963年3月テネシー州ノックスヴィル生まれ。

キャスト
ジョン・トラヴォルタ1954年2月ニュージャージー州イングルウッド生まれ。一時期の低迷を脱しての復帰作。航空機好きでボーイング742-400の副操縦士の免許を持ち、自宅には2機のジェット機と数機の軽飛行機を所有。それらを飛ばすための滑走路まであるという。なんとも日本では考えられないスケールの大きさ。
サミュエル・L・ジャクソン1948年12月ワイントンDC生まれ。’91「ジャングル・フィーバー」でカンヌ映画祭助演賞を受賞。’94「パルプ・フィクション」で一気に注目される。
ユマ・サーマン1970年4月マサチューセッツ州ボストン生まれ。本作でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、その後小品に出ていたが、’03「キル・ビル」で復帰する。二児の母。

 その他にハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、アマンダ・プラマー、マリア・デ・メディロス、ヴィング・レイムス、ブルース・ウィリスなど
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映画「やさしい嘘と贈り物 Lovely, still ’08」劇場公開2010年3月

2010-11-18 13:11:37 | 映画

              
 ものすごく地味な映画。それにこれを監督したニコラス・ファクラーも、ものすごく若い。経験もあまりなさそうで24歳。それでも水準作を撮った。劇場公開もあったらしいが、果たして採算は取れたのだろうか? 実年齢79歳と78歳が演じるのでメイクもあまり手を加え
なくともよさそうだ。

 ロバート(マーチン・ランドー)は、ふとしたことからメアリー(エレン・バースティン)と知り合う。一人暮らしのマーチンは、寂しさのあまり自殺まで考えていた。メアリーと出会ってからのロバートは、人が変わったように生き生きとしてきた。

 ところがメアリーには、ある意図が隠されていた。これ以上は、ネタバレの危険があって書けない。レストランでの夕食のデート、そり遊びや手を握ったり見つめあったり、恋は年齢とは関係なく訪れ二人を熱くする。最後はちょっと捻りを効かせて余情が残る。
 若い人がこれを観ても途中で投げ出すだろう。最近、中高年や高齢者の恋を描いたものが多くなった気がする。

 恋は公平でなまめかしく、観るものを刺激してくる。ロバートの皺に覆われた手のアップを見て、思わず自分の手を見る。あれほどの皺がなかったので、やや安心した。若い恋は情熱、老いた恋は優しさがよく分かる。
           
           
監督
ニコラス・ファクラー 生年月日や場所不明。24歳らしい。この映画の脚本を書いている。

キャスト 
マーチン・ランドー1931年6月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。’94「エド・ウッド」でアカデミー賞助演男優賞を受賞。
エレン・バースティン1932年12月ミシガン州デトロイト生まれ。’71「ラスト・ショー」でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。’74「アリスの恋」で主演女優賞を受賞。
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映画「イングロリアスバスターズINGLOURIOUS BASTERDS '09」劇場公開2009年11月

2010-11-14 12:49:07 | 映画

              
 SS(ドイツ親衛隊)のハンス大佐(クリストフ・ヴァルツ)は、アメリカ軍の秘密組織バスターズのアルド隊長(ブラッド・ビット)に言う。
 「ヒトラー、ゲッベルス、ゲーリング、ボルマンの四人がいなければ、この戦争は終る。その鍵は私が握っている。この電話で連絡しなければね。分かるだろ?」
 後ろ手に縛られているアルドには選択の余地はなかった。本国との連絡に手を貸す。言わずと知れたヒトラーは、アドルフ・ヒトラー。ナチ党党首狂信者。ゲッベルス、ヨーゼフ・ゲッベルス「プロパガンダの天才」「小さなドクトル」などと称され、ヒトラーの政権掌握とナチ党(国家社会主義ドイツ労働者党)政権下のドイツの体制維持に辣腕を振るった。ゲーリング、ベルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング、ナチ党で政権下のドイツにおいて、ヒトラーの後継者に指名されるほど高い政治的地位を占めた。閣下元帥。ボルマン、マルティン・ルートヴィヒ・ボルマン、ナチ党官房長でヒトラーの側近・個人秘書を長らく務めた。親衛隊大将。ウィキペディアから拾った簡単な四人の経歴だが、なるほどこの四人がいなくなれば戦争が終るのは確かだろう。

 この場面は終盤になるが、町の小さな劇場で上映される「国の誇り」というアメリカ兵150人を殺した狙撃兵の話し。そのプレミア上映にこの四人が集まった。しかも、この映画館主はハンス大佐がかつてフランス人農家にかくまわれていたユダヤ人の一人の逃げる女に狙いを定めたピストルを「まあ、いいか」と降ろした相手だった。

 可燃性の高い映画フィルム350本がこの劇場を木っ端微塵にする。いずれにしても娯楽性の高い面白い映画だった。この映画でアカデミー助演男優賞をハンス大佐役のクリストフ・ヴァルツが獲得している。確かに微笑みの裏側の残忍さを巧みに演じていた。

監督
クェンティン・タランティーノ1963年3月テネシー州ノックスヴィル生まれ。’94「パルプ・フィクション」でカンヌ映画祭でグランプリを受賞。

キャスト 
ブラッド・ビッド1963年12月オクラホマ州生まれ。’10「食べて、祈って、恋をして」など製作総指揮の面でも忙しい。この映画を久しぶりに劇場で観たが、あまり印象に残らなかった。
          
メラニー・ロラン1983年2月フランス、パリ生まれ。劇場館主を演じた。
          
クリストフ・ヴァルツ1956年10月オーストリア、ウィーン生まれ。
          
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映画「新しい人生のはじめかた Last chance Harvey ’08」劇場公開2010年2月

2010-11-10 11:40:56 | 映画
 
              
 文句なしにいい映画。同年輩かそれ以上又はそれに近い人が観れば、場面が霞んでしまうほど涙腺が緩む。ステキな恋の物語。

 ハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)は、かつてはジャズ・ピアニストを目指したというテレビCM作曲家。若手作曲家も台頭してきてハーヴェイの立場も危うい。そんな中、娘の結婚式のためにロンドンへ向かう。
 親族が集う前夜のディナー。別れた妻の夫や旧友に再会。ぎこちない握手。ディナーの席のやるせない違和感。
 父親と言っても長い別離の生活は、自分の娘にハグを促がすほどの空気が漂う。しかも元妻ジーンは昔のことを蒸し返し、冷たい視線を送ってくる。
 娘スーザンからは、ヴァージンロードは継父と歩くと告げられ「結婚式にはでるけど、後のパーティには出ない。ニューヨークに大事な仕事があるから」と言う。

 渋滞に巻き込まれ飛行機に乗り遅れ、翌日の便しかない。おまけに仕事までも失う。うんざりしながら空港のバーに入っていった。そこで出会ったのがケイト(エマ・トンプソン)だった。何気ないが洒落たやり取りで、二人の心が開かれていく。

 日本人が言うとキザに思われそうなのがこんなセリフ。ケイトが携帯電話にでないのを見て、ハーヴェイは言う。「僕と話したくて? そうなら笑顔を見せて」ケイトはニヤニヤする。キザでもないか! 一度使ってみたい気がする。

 二人は急速に接近して、ハーヴェイの娘のパーティに押しかける。そこで、「突然で悪いが、司会者はさっき‘花嫁の父親’と言った」と継父の挨拶を押しのけてスピーチをする。
 観る者は今までの状況が分かっているので感涙ものだった。「皆さん、ジーンと私は離婚してあることを学びました。それは離婚で子供が一番苦しむと言うことです」に始まり娘を褒め、娘の相手を歓迎し継父に乾杯の音頭を譲り、ケイトにピアノの曲を聞かせてロマンティクなひと時を過ごす。

 まさに大人、こういう風になりたいと思わせるシーンが続く。おそらくどの国の人も誰でも言う言葉「私たち、うまくいくと思う?」とケイト。「まるで見当がつかない。でも頑張る。約束するよ」とハーヴェイ。

「絶対うまくいくよ」と訳知り顔で言わないところが、人生経験を積んだ人間の言葉だ。そして二人は散歩をする。よかったあなとしみじみと思わせて映画は終る。それにしても、ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソンのアカデミー賞受賞俳優のまったく自然な演技には惹き付けられてしまった。

監督
ジョエル・ホプキンズ1970年9月ロンドン生まれ。この若い監督が二大俳優といい仕事をしたなと思わせる程の出来。

キャスト
ダスティン・ホフマン1937年8月ロサンゼルス生まれ。幼い頃はピアニストを目指した。大学でも音楽科を専攻したが。俳優に憧れアクター・スタジオで学ぶ。’67「卒業}でアカデミー主演男優賞にノミネート。’79「クレイマー・クレイマー」でアカデミー主演男優賞を受賞。’88「レインマン」でも受賞。
エマ・トンプソン1959年4月ロンドン生まれ。ケンブリッジ大卒。’92「パワーズ・エンド」でアカデミー主演女優賞を受賞。
          
          
          
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映画「ニューヨーク、アイラブユーNew York I love you ’08」劇場公開2010年2月

2010-11-05 14:35:50 | 映画

               
 10人の監督がニューヨークの街角から愛の物語を届けてくれるオブニバス映画。若者の恋、中年の恋、老人の夫婦愛。

 中でも思わず笑ってしまったのは、イーサン・ホークが街角で際どいセリフとともに女を自分のロフトに誘うお話。
「俺はテクニシャンなんだ。Gスポットも教えてあげるよ。優しいキスと柔らかなクリトリスへの愛撫もあるよ」女はニヤニヤするだけ。まくし立てるイーサン。
 女はぽつりと言う。「私は娼婦よ。週末は忙しいから。電話をしてね」名刺を上着にねじ込んで去って行った。

 それに男の本質を抉るようなクリス・クーパーのお話。レストランの前で煙草を吸う。携帯が鳴って話をはじめる。煙草を持った女が出てくる。携帯で話しながら女に火をつけてやる。夜の歩道は何か物悲しさが漂う。女が話しかける。
「見ず知らずの女とセックスしたことある?」
「いや、見ず知らずはないね」
「レストランに戻っても、夫は見向きもしないわ。ノーブラ、ノーパンよ。セックスしたいでしょ」

 クリスが顔を近づける。さっと交わされる。「さっきのは何なんだ?」女は言う。「これから新しい旅立ちなの」女はレストランに戻る。

 えっ、一体どういうこと?  観ているほうは思う。クリスもレストランに戻って妻と食事をする。「愛しているよ」ワインが言わせたのか。さっきの見知らぬ女との会話を反省して言ったのか。それは分からない。ただ言えるのは、よくある男の得手勝手ということ。
 蛇足ながらノーブラ、ノーパンをセリフでもその通りに言っていたように聞こえた。聞き間違いかもしれないが。

 あと10年もしたら、私もあのようになるのだろうか? と思わされ老いた夫婦の優しさが印象的だった。そんなお話。
「脚を上げて歩くの。すり足じゃ転ぶわよ」妻が言う。信号が青に変る。交差点を渡る。「急いでね」妻が先に渡り終える。ようやく夫も渡った。「急がなくていいわよ」と妻。
じゃあ、一体どうすればいいんだ。と観る者は思う。安全に渡り終えた安心感から、言わなくてもいい言葉がでる。

 どこのご夫婦でも、日常に経験することだろう。若い二人もやがて支えあう文字通り「人」の形になる。この「人」の一片が欠けたとき人生の終焉を悟る。エンディングにふさわしいエピソードだった。

 この10のエピソードを、自分の人生と重ね合わせて観るのもいいかもしれない。この地球上で、愛を求め愛を失いまた求めて失う人間の業を見た気がした。一つ不満があるのは、このDVDが使いづらいことだ。チャプターがないので、気の利いたセリフの確認に最初から見る必要がある。面倒なのでうろ覚えのセリフを書いたので、そっくり同じでないことをお断りしておきます。
            
            
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