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著者のアンソニー・ボーデインは、父親がコロンビア・レコードの重役、母はジャーナリストという家庭の生まれ。>
料理に興味を持ったきっかけというのは、小学生四年の夏ヨーロッパへの家族旅行で乗ったクイーンメアリー号の特別二等食堂で出会ったヴィシソワーズだった。
冷たいポロネギ風味のジャガイモのポタージュスープで、バターでジャガイモ、ポロネギを炒めてから、コンソメを加えて煮たものを裏ごしして生クリームを加えて冷やす。
「銀の蓋つき容器からお玉で私のスープ皿によそってくれたウェイターの手つき、細かく切った薬味のあさつき(チャイブ)、リーキとポテトのクリーミーな味、そして思いがけず、冷たいと知ったときのあの快い驚き」とそのときの印象を書いている。ほとんどの記憶が消えていき、このスープの記憶だけが残る。これが第一の料理に対する目覚め。
フランス南西部のジロンド県アルカション湾で、ムシュー・サンジュールが食べさせてくれた生牡蠣の味。「貝殻を口に近づけ、そっと傾けた。そして、一気に口に流し入れ、ずるずるっと飲み込んだ。それは海水の味がした……塩からく、ふっくらとして……なぜか……未来の味がした。こうして、すべてが一変した。なにもかもが」これが第二の目覚め。
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