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「ジョン・ウィック チャプター2」ジェットコースターに乗っている気分で観る映画 

2018-01-29 15:49:01 | 映画

          
 この映画の監督、キックボクシング界から映画のスタントを経た異色の人物。そういえば格闘シーンでは足技が多い。

 凄腕の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)の愛車は、1969年式フォード・マスタングBOSS429だった。だったというのは壮絶はカーチェイスの結果がボロボロに。

 妻を病死で失い今は名もない愛犬と暮らす。ロシアン・マフィアから決別したと思ったら、今度はイタリアン・マフィアが絡んでくる。裏社会に住めば、なかなか表の社会へは戻れない。マフィアの奴等からすれば、凄腕といっても所詮使い捨ての駒にすぎない。

 そんな夜、ひょっこりと尋ねてきたのがイタリアン・マフィアの幹部サンディーノ・ダントニオ(リッカルド・スカマルチョ)。「足を洗ったんだから」というジョンに「以前の貸を返してくれ」と言わんばかりの強面ぶり。仕方なく引き受けたのが、なんとサンディーノの姉シアナ(クラウディア・ジェリーニ)を抹殺することだった。シアナは、組織のボスに君臨していて、サンディーノから見れば目の上のたんこぶだった。

 天井の高い広い部屋にジョン・ウィックがシアナの前に現れる。予期したような表情のシアナは、ドレスを脱ぎ棄て全裸で銭湯の湯船ぐらいある浴槽に入り両手首を切って自らの命を絶つ。

 ジョン・ウィックはご丁寧にも死んだ女の頭に念入りの一発を撃ち込んで立ち去る。さて、これで義務は果たした。 が、サンディーノは、「大事な姉を殺された。弟としては復讐するのは当然」とばかりジョン・ウィックに刺客を放つ。どっちに転んでも狙われるジョン・ウィック。

 昔馴染みの洋服屋やシェフと言われる銃器専門家から、防弾スーツや拳銃グロック34、銃身11.5インチAR15,イタリアの傑作ベネリM4、デザートと称してナイフの最高級品を調達。殴り込みをかけて延々と格闘と銃撃が続く。まったくお色気のない男くさい映画だった。

 それでも前作2014年「ジョン・ウィック」の製作費2000万ドル(約22億円)、興行収入8880万ドル(約100億円)というヒットだった。
 本作も製作費4000万ドル、興行収入1億7千万ドル(約193億円)というヒット作となった。2017年制作 劇場公開2017年7月
   
監督
チャド・スタエルスキ1968年9月アメリカ生まれ。

キャスト
キアヌ・リーヴス1964年9月レバノン、ベイルート生まれ。
コモン1972年3月イリノイ州シカゴ生まれ。
ローレンス・フィッシュバーン1961年7月ジョージア州オーガスタ生まれ。
ランス・レディック1962年12月メリーランド州ボルティモア生まれ。
リッカルド・スカマルチョ1979年11月イタリア生まれ。
クラウディア・ジェリーニ1971年12月イタリア、ローマ生まれ。
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「The Bridge/ブリッジ」シーズン1~3 北欧ミステリー、スウェーデン・デンマーク合作

2018-01-26 10:03:07 | 海外テレビ・ドラマ

           
 Bridgeの原題は、スェーデン語でBron,デンマーク語でBroen。映画やテレビドラマで描かれる日常は、現実をある程度反映しているものと思って間違いないだろう。そういう視点で観ると画面の雰囲気が寒そうで家の中ではシャツ一枚、ベッドに入る時は薄い寝間着、家屋は広く刑事の分際でこんな家に住めるのかと思うほど日本との違いが際立つ。

 そして一体どんな国かとなる。オリンピック等で知る国ではあるが、ウィキペディアを見るとかなり国力のある国だった。スウェーデンの面積は、449.964平方キロで日本の面積にもう一つ北海道を足した広さ。その広さに人が約950万人が住む。

 日本の12分の1、人口密度が19分の1となる。気候は冬は厳しく夏でも冷涼という。そして2016年度の国民総生産一人当たり5万1千ドル。

 デンマークは、面積43,094平方キロで人口約570万人。国民総生産一人当たり5万6千ドル。

 日本は、3万9千ドル。日本の国民一億二千万人で3万9千ドル。さらに貧困率の低いスウェーデンとデンマーク。日本は遥かに高い。そして両国とも高福祉国家。

 それでも犯罪がある。観光客を狙う置き引きやスリ。人間はどんな環境でも悪が存在する。犯罪はともかく、数字を見るとスウェーデンかデンマークに住んでみたいと思うが気候が問題。夏冷涼ということは、一年を通じて寒い日が多いということになる。日本には四季という神の贈り物がある。そんなことを想いながら観ていると、刑事でもこの家は普通なんだと思えてくる。

 このドラマの発端は、スウェーデン(スカンディナビア半島)とデンマークとを結ぶオーレンス橋にある国境線上で女性の死体が発見される。その死体は胴部で切断され、しかも上半身はスェーデンの政治家、下半身はデンマークの娼婦だった。

 このオーレンス橋は、2000年7月に完成したエーレスンド海峡をまたぐ鉄道併用橋で全長16キロ、橋梁部と海底トンネルの構造。1997年に開通した東京アクアライン15.1キロの鉄道部を除いてまったく同じ構造。

 そのオーレンス橋の国境線上のスウェーデン人とデンマーク人に分割されるため合同捜査に入る。それを担当するのがスウェーデン側から女性刑事サーガ・ノレーン(ソフィア・へリン)、デンマーク側からベテラン男性刑事マーティン・ローデ(キム・ボドゥニア)。

 このコンビの人物造形が面白い。まず、サーガ。サーガには世間の常識が通用しない。思ったことを口に出すタイプで周囲への配慮は全くない。ユーモアが通じないし笑顔も少ない。一言でいえば嫌な女だ。しかし、抜群の事件解決能力がある。

 一方マーティンは、3人目の妻メッテ(プク・シャーバウ)と二人の子供がある。優秀な刑事でサーガの世間知らずな面を優しく導いている。サーガの態度は、上から目線で相手が容疑者でなくても質問に対して、やや説明的になると「イエスかノーで答えて!」とぴしゃり。強面のサーガに対してマーティンは人情刑事という役割のようだ。

 そんなマーティンではあるが女性には弱いところがあるようで、夫を亡くした女性と浮気をして妻メッテから追い出される。シーズン2まではこのコンビで描かれるが、シーズン3では、妻と娘が行方不明の刑事が相棒となる。

 そして第10話のラストは、シーズン4を意識したお手軽なメロドラマ風となり物語の展開が読めるというものだった。

 さらにこのドラマ、セックスに関してはかなりオープンだ。サーガの性生活も細かく描写される。サーガはセックスに対して食事と同様、別に恥じることも隠すこともないと考えているようだ。お腹が空けば食べる、欲求があればセックスをする。相手をバーで見繕ったり、いなければ自分で慰める。部屋の中では下半身丸出しで歩き回る。

 また、別のジャーナリストの姉が夫とのセックスがないEUサミットの運営委員の妹に男娼を紹介するという考えられないようなこともある。こういう様子がテレビで放映される。私は驚いたが、ネットで調べてみるとスェーデンやデンマークは性教育先進国でセックスをタブー視しないし、自分の欲求に忠実でこのドラマのようなことは当たり前のようだ。私の無知を知らしめてくれた。やっぱり映画やテレビは現実を反映しているんだ。

 ところが1月16日デンマークでフェイスブック上に15歳の少年と少女のセックス動画拡散で1000人を超える少年・少女が訴追されるという報道。性教育の難しさがここにあるのだろうが、このドラマももう少し抑制的な方がいいのかも。

 アメリカでもリメイク版が作られているので文句なくレベルの高い刑事ものだ。サーガを演じるソフィア・へリンは、役の性格を的確に把握して見事になりきっている。サーガを見るだけでも価値がある。画面はいつも暗く晴天でも曇っているようだ。これも気候・風土を反映しているのだろうか。
  
キャスト
ソフィア・へリン1972年4月スェーデン生まれ。
キム・ボドゥニア1965年4月デンマーク生まれ。
プク・シャーバウ1969年5月デンマーク生まれ。
ロッテ・ムンク1969年10月生まれ。
トーヴァ・マグヌソン=ノーリング1968年6月スェーデン生まれ。
トゥーレ・リントハート1968年6月スェーデン生まれ。
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海外テレビドラマ アマゾン・プライム「グッドファイト」

2018-01-23 16:27:34 | ドラマ

      
 2017年12月25日から配信のリーガルもの。「グッドワイフ」からのスピンオフ作品。「グッドワイフ」が法律事務所が舞台で、この「グッドファイト」も法律事務所が主舞台。サイド・ストーリーに新人弁護士マイアの父が詐欺容疑でFBIに逮捕されるというお話が絡まる。

 主な俳優クリスティーン・バランスキーとクシュ・ジャンボがスピンオフしていて、新たにマイア(ローズ・レスリー)という新人弁護士も加わる。

 ロックハート&リー法律事務所の代表パートナーの一人でもあるダイアン・ロックハート(クリスティーン・バランスキー)は引退を宣言。理由の一つに代表パートナーが多すぎるというジョークを交えて、これからは人生を楽しみたいというもの。

 ちなみに代表パートナーが8人もいる。受付では「ロックハート、デクラー、ガスマン、リー、ライマン、ギルバート=ルーサー、ケーガン、タネンバウム法律事務所です」と言わなければならない。いくらなんでも長すぎる。

 それはともかく、ダイアンは引退に備えて南仏の150万ユーロ(約1億7千万円)の「光の邸宅」を購入すべく手付金を支払い済み。ダイアンの顧客、投資会社経営のヘンリー・リンデル(ポール・ギルフォイル)の娘マイアの名付け親ともなっている。そのマイアは、イリノイ州の司法試験に合格してロックハート&リー法律事務所に就職した。上顧客のヘンリーの口添えもあって法律事務所側は受け入れたようだ。

 ダイアンの引退まで決着が必要な案件「ケンダル」がある。警官3人からの殴る蹴るの暴行を受けたとして裁判沙汰になろうとしている件だ。裁判になるとケンダル対クック郡となる。クック郡の弁護をするのはダイアンのロックハート&リー法律事務所で、被害者を弁護するのは黒人経営のレディック&ボーズマン法律事務所。

 証言録取の時に現れたのが、かつてダイアンの事務所で働いていたルッカ・クイン(クシュ・ジャンボ)と同事務所の代表パートナー、エイドリアン・ボーズマン(デルロイ・リンドー)だった。

 録画を見せられるとクック郡には不利な状況だった。それを覆すヒントを見つけたのがマイアだった。ダイアンの満足な顔。

 ところが一転して顔面蒼白となる事態が発生する。上顧客でマイアの父親ヘンリー・リンデルが、投資詐欺容疑でFBIに逮捕される。資金を集めたが運用を一切していない。金はどこに? ダイアンはこの投資話を広めていた。事務所に引退を撤回したが受け入れられない。しかも、親しい友人から今の状況ならどこも雇ってくれない。しばらく静観したら? とまで言われる始末。

 破産し働き口もない。そんなとき救いの手を差し伸べてきたのは、なんとライバルのレディック&ボーズマン法律事務所のボーズマンだった。事務所を拡張するので白人枠でどうだというもの。事務所内で揉めたがルッカの「情熱と理想と狡猾さを併せ持つ弁護士です」の一言がダイアンを受け入れる決め手となる。マイアと抱き合わせでレディック&ボーズマン法律事務所の一員となったが、これが第1話になり黒人系の事務所でどのように活躍するか。面白い展開になりそう。一味違うドラマだ。

 マイアがレズビアンで黒人法律事務所が舞台。マイアの相手は検事補のエイミー(ヘレン・ヨーク)。こちらも美人。マイア役のローズ・レスリーは、お姫様だよ。スコットランドの15世紀から一族に伝わる住居「リクリーヘッド城」で育った。なんとなく気品があるなあと思っていたよ。育ちが分かろうというもの。それでももう30歳だ。最近婚約したらしい。残念ながら今のところ、レンタルDVDやブルーレイはない。
  
キャスト
クリスティーン・バランスキー1952年5月ニューヨーク州バッファロー生まれ。
クシュ・ジャンボ1985年イギリス、ロンドン生まれ。
ローズ・レスリー1987年2月イギリス、スコットランド、アバディーン生まれ。
デルロイ・リンドー1952年11月イギリス、ロンドン生まれ。
ヘレン・ヨーク1985年2月カナダ、ヴァンクーバー生まれ。
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第二次大戦中、英仏軍の撤退を描く「ダンケルク」2017年制作 劇場公開2017年9月

2018-01-19 12:41:23 | 映画

           
 戦争映画で国に逃げ帰る軍隊を描いたのを観た記憶がない。負け戦の様子なんて誰も観たくない。それでも撤退は人間の本性が現れる場面でもある。イギリス軍兵士が「フランス兵はダメだぞ」と乗船をさせないとか。

 フランスのダンケルクに追い詰められたイギリスとフランスの軍隊。姿が見えないドイツ軍からの銃撃。空からの爆弾投下。Uボートが狙う帰国兵満載の駆逐艦。ドイツ軍から見ればまるでゲーム。射撃練習とも言える。

 イギリスの軍隊は、猫以下の集団になり下がる。猫は激しく威嚇するが、この軍隊はなにもしない。唯一空軍3機の編隊がドイツ軍機を撃ち落とすが。兵士の救出には民間のボート軍団が向かう。軍団と言っても10隻に満たない。この映画、本当に迫力がない。

 IMAXで見ると迫力があるという人もいるが、迫力のある映画は自宅のテレビで見ても感じるものだ。テレビ界出身の若手のフィオン・ホワイトヘッドが、右往左往しているにすぎない。

 フランスをのけものにする場面を作ったせいか、最後にはボルトン中佐(ケネス・ブラナー)がフランス軍を待つために残るという場面も作るはめになった。

 愛機も被弾してエンジン・ストップのファリアー(トム・ハーディ)は、グライダーのように滑空して浜辺に着陸。火を放ってドイツ軍に投降。

 ダンケルクの実際のところはどうだったのか。1940年ドイツ軍の戦車や航空機などの機動力と80万人の勢力で、フランス本土最北端のダンケルクに英仏軍を追い詰める。英仏軍40万人のうち36万人が帰還成功。撤退作戦としては成功したと言える。

 残り4万人の内訳は、戦死者1万人、捕虜3万人だった。日本の天皇直属の最高統帥機関だった大本営ならどうしたのかと思ってしまう。アッツ島で米軍の総攻撃に敗れた日本守備隊の全滅を「玉砕」と美化するような大本営だから「全員玉砕せよ」なんて言いかねない。さきの戦争で戦死者310万人のうち玉砕で死んだのは2百数10万人とも言われるからだ。

 イギリスのチャーチル首相は、全員救助を敢行した。当時ドイツは航空機を101機を持っていたが、英仏軍は177機の保有だった。映画の場面ではドイツ軍は映らないし、英軍の飛行機も3,4機で迫力ないことおびただしい。まあ、製作費をけちったとしか思えない。
  
監督
クリストファー・ノーラン1970年7月イギリス、ロンドン生まれ。

音楽
ハンス・ジマー1957年9月ドイツ、フランクフルト生まれ。1994年「ライオン・キング」でアカデミー作曲賞を受賞。

キャスト
フィオン・ホアワイトヘッドイギリス生まれ。テレビ界の出身。
ケネス・ブラナー1960年12月イギリス、北アイルランド、ベルファスト生まれ。
トム・ハーディ1977年9月イギリス、ロンドン生まれ。
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サーペンタインダンスの先駆者ロイ・フラーの伝記「ザ・ダンサー」2016年制作 劇場公開2017年6月

2018-01-16 15:47:10 | 映画

          
 サーペンタイン(Serpentine)蛇のような動き、曲がりくねったというように両腕で長い棒を掴み白い絹で覆われた布をまとってくねくねと蝶のように舞う。クラシック曲を背景に照明の色で幻想的な舞台を作る。パガニーニの「24の奇想曲」に乗って舞う姿は超肉体労働といえる。しかし、幻想的に躍動する姿に感銘を受けるのは確かだ。

 それを編み出したのがロイ・フラー(ソーコ)でモダンダンスの祖ともいわれる。ロイ・フラーは、1890年代アメリカとヨーロッパで人気となる。パトロン的存在のルイ・ドルセー伯爵(ギャスパー・ウリエル)との恋。ロイ・フラーも認めるライバルの卓越したバレーダンサーのイサドラ・ダンカン(リリー・ローズ・デップ)との不毛の愛。

 ウィキペディアを信じるとすれば、その記事にはルイとの関係は一切出ていない。映画では脚色なのだろう。

 ロイ・フラーは、日本舞踊の動きにも関心を持った。「1900年のパリ万国博覧会でパフォーマンスを披露した際は、アーサー・ディオシーに紹介された世界巡演中の日本の川上音二郎一座を招き、川上貞奴(かわかみ さだやっこ)ブームを生み出し、パリ公演が成功した」とある。

 川上貞奴は、日本初の女優とされ、岐阜県各務原市にある貞照寺は貞奴が建立した。1985年NHK大河ドラマ「春の波濤」で取り上げられた。

 ロイ・フラーは、結局独身を通したようで1928年1月1日肺炎のためパリで亡くなった。65歳だった。

 ロイ・フラーを演じたソーコは、フランスの人気歌手。リリー・ローズ・デップは、デップが示すようにジョニー・デップの娘。
  

  
監督
ステファニー・ディ・ジュースト出自未詳

キャスト
ソーコ(ステファニー・ソコエリンスキー)1985年10月フランス、ボルドー生まれ。
ギャスパー・ウリエル1984年11月フランス、ブローニュ=ビランクール生まれ。
リリー・ローズ・デップ1999年5月フランス、パリ生まれ。
マラニー・ティエリー1981年7月フランス生まれ。
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19世紀のアメリカ、精神を病んだ女性3人を運ぶ女「ミッション・ワイルド」

2018-01-13 16:19:08 | 映画

           
 トミー・リー・ジョーンズ監督の劇場映画2作目。杭を立ててそこに2年間住めば土地は自分のものなるという法律が出来た19世紀のお話。

 その時代の女性は家庭にいるものとされ、ほとんど使用人並みの扱いだし、子供製造機と勘違いする男の犠牲者でもあった。そんな環境に精神を病み、男を困らせる事態にもなる。

 メアリー・ビー・カディ(ヒラリー・スワンク)は、そんな女性とは違いたった一人で農業や畜産を営むこの時代では異色の女性だった。彼女にも悩みがあった。30歳を過ぎても独身だということだ。なにせ広大な荒野に一軒ぽつんと立つ家が多いとなれば縁遠くもなる。

 やって来たボブ・ギッフェン(エヴァン・ジョーンズ)に「私の蓄えで農作物や豚や牛を増やして、子供も、結婚しよう」ギッフェンは言う「東部で妻を探す。それにいつも俺には命令する」。

 ようするに今でいう「出来る女」は、男は敬遠するの図式そのもの。カネもないくせに男の沽券に関わるという痩せ我慢。

 ネブラスカのこの地域に精神を病んだ女性が三人いる。女性たちを受け入れてくれる教会が隣のアイオワにある。地域の牧師がこの女性たちをその教会に届ける人を募る。男三人のうち一人は辞退する。その穴埋めにメアリー・ビーが応募して帽子の中から黒豆を掴み運搬人となる。

 本来このホームズマンと言われる仕事は、馬や銃の扱いに馴れたものが適任とされる。メアリー・ビーは、勝気な女で男より馬や銃に馴れているし、輸送するのが女だから私が適任だと言う。かくしてメアリー・ビーは、屋根と鉄格子と鍵の付いた箱形の馬車で出発した。

 たった一人のアイオワへ650キロの旅は不安でもある。法律なんてないも同然、男たちのやり放題の世の中、荒野で遭遇でもしたらレイプなんて当たり前だし、命の危険も大きい。そんな不安に一人の男に目を止める。馬にくくりつけられロープを首に巻かれた男がいる。先端は木の枝から根株ににしっかりと結わえてある。何かの拍子に馬が暴れだしたら首が絞められて一巻の終わり。

 男は助けてくれと言う「どんな命令でも従うと神に誓う」。男は、留守の家に住み込んでいたところ男たちに発見され縛り首にされた。要するに小悪党の西部の流れ者だ。名前を聞き出したが本名なのか曖昧でジョージ・ブリックス(トミー・リー・ジョーンズ)と名乗った。

 小悪党だけあって根は従順で使いやすい。精神を病んだ女たちの排せつの手助けも、インディアン7人に囲まれた時、「俺がやられても決して銃で反撃などするな。荷台に入って女たちを殺して自決しろ」誇りをなくすなと優しい言葉をかける。

 ある夜、メアリー・ビーはジョージに求婚する。「農業や酪農で牛や馬を増やそう」「俺は農業は出来ない」とジョージは断る。メアリー・ビーはそれならとセックスを求める。どうしたことか、その翌朝ジョージはメアリー・ビーが首を吊って自殺しているのを発見する。この自殺がどうしても理解できない点だ。

 京都ヒストリカ映画祭で上映後のトークでトミー・リー・ジョーンズは次のように言っている。「冒頭、、メアリー・ビー(ヒラリー・スワンク)が「いい音楽がなければ生きていけない」と言っています。19世紀の女性は家庭にいるもの。しかし、ヒラリーは一人で畑を耕して暮らしている。普通の女性はそういうことはしません。それが死を選んだ理由です」

 とは言っても精神を病んだ女性を届ける途中で、なぜ死ななければいけないのか。メアリー・ビーは責任感のある女性だ。あるいは結婚の見込みがないのを悲観したか。原作にもあって今や故人となっている作者のグレンドン・スウォーサウトにも聞けない。

 ジョージはやっと教会のアルタ・カーター(メリル・ストリープ)に三人を届け、メアリー・ビーの墓標を持って渡し船に乗る。やっと解放された気分もあったのかウィスキーでほろ酔い。フォークソングを歌いながら踊る。船の船頭が誤って墓標を川に落とす。流れていく墓標。
 それと知らぬジョージは踊り続ける。小悪党ジョージ・ブリックスは、墓標があろうと無かろうと西部の流れ者になるしかない。メアリー・ビーの異端の女性とジョージ・ブリックスの異端の男。早々に決着をつけたメアリー・ビー。これからもさ迷い歩くジョージ・ブリックス。所詮、人は消えていくもの。

 この映画、配給会社の人が劇場未公開にしたのも分かる。映画はエンタテイメントだ。大衆が楽しめなければ何にもならない。興行収入243万ドル、2億7千万円これでは赤字だろう。2014年制作 劇場未公開 2016年京都ヒストリカ国際映画祭で上映
  
監督
トミー・リー・ジョーンズ1949年9月テキサス州生まれ。初監督作品は、テレビの1994年「ワイルド・メン」。劇場映画は2005年「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」

キャスト
トミー・リー・ジョーンズ 
ヒラリー・スワンク1974年7月ネブラスカ州生まれ。
ジェームズ・スペイダー1960年2月マサチューセッツ州ボストン生まれ。テレビの「ボストン・リーガル」「ブラック・リスト」がある。
メリル・ストリープ1949年6月ニュージャージー州生まれ。短い出演時間。友情出演か。
エヴァン・ジョーンズ出自未詳

精神を病んだ三人の女性。
ミランダ・オットー1969年12月オーストラリア、ブリスベン生まれ。
グレイス・ガマー1986年5月ニューヨーク市生まれ。メリル・ストリープの娘。
ソニア・リヒター1974年1月デンマーク生まれ。
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人間も食う地球外生命体「ライフ」2017年制作 2017年7月劇場公開

2018-01-10 16:08:16 | 映画

           
 ISS(国際宇宙ステーション)火星ピルグリム7計画遂行中のクルー6名、司令官通称キャット(オルガ・ディホヴィチナヤ)、医師デビッド(ジェイク・ギレンホール)、検疫官ミランダ(レベッカ・ファーガソン)、航空エンジニア ローリー(ライアン・レイノルズ)、システム・エンジニア ショウ(真田広之)、宇宙生物学者ヒュー(アリヨン・バカレ)だ。

 ヒューはピルグリムが8ヶ月をかけて持ち帰った火星の土のサンプルからある種の個体を取り出した。一向に動きが見られない。マイナスの気温からプラスまでも反応がない。原生代の地球に近い環境、酸素を少なくし二酸化炭素を多くすると反応を見せた。

 まだ試験管の中にいる地球外生命体の誕生。地球では小学生が学校の名前「カルビン」と名付けた。ヒューの観察では、いくつもの細胞が集団で動き出した。電気的活動を共有、神経回路網に似ている。数兆もの細胞が協力し合う大きな一つの生命体。

 大多数の多細胞物と違いカルビンの細胞は単独でも機能する。それぞれの細胞に存在するのが、筋細胞、神経細胞、視細胞、全身の細胞すべてが筋肉であり、脳であり、目である。環境と作用しあう手段を持ち、それは原始の付属器官のようだ。

 海に漂う藻のような優雅なものから成長して、タコの頭をとった足だけの姿の生き物がヒューの手に絡みつく。ものすごい力で締め付けてくる。最初に犠牲になったのはローリー。カルビンが口から体内に入り内臓をむさぼり食っているのかローリーの口から血液が飛び散る。人間を食ったカルビンは一段と成長した。

 この生き物を地球に持ち帰るわけにいかない。このステーションで処理する必要がある。もし出来なければ我々は永遠に宇宙をさまようことになる。崖っぷちの戦いでまだ生きているのは、デビッドとミランダになった。

 デビッドは提案した。「救命艇にカルビンを誘い出す。君は救命艇Bに乗って地球に帰還してくれ」「宇宙のかなたへ行ってしまうの? 私が行く」「ダメだ。俺は宇宙に長い。80億人のバカがいるところへ戻りたくない」かくしてデビッドは自身の墓場を宇宙と決めた。ところが、ところがである……。この映画の続編が必要と思うがな。

 得体のしれない生命体との戦いはスリル満点で、無重力の環境も面白い。カルビンの命名に地球と交信した時、小学生の質問に「トイレはどうするんですか?」ショウが丁寧に答えていた。実際の国際宇宙ステーションでもやっていることなのだろう。トイレは重要な問題だよね。

製作費5800万ドル 興行収入1億3千万ドル。
  

  
監督
ダニエル・エスピノーサ1977年3月スウェーデン、ストックホルム生まれ。サスペンス、アクション、ミステリーが今までのジャンル。2012年デンゼル・ワシントン主演の「デンジャラス・ラン」、2015年トム・ハーディ主演「チャイルド44森に消えた子供たち」など。

キャスト
ジェイク・ギレンホール1980年12月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。
レベッカ・ファーガソン1983年10月スウェーデン、ストックホルム生まれ。
ライアン・レイノルズ1976年10月カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー生まれ。
真田広之1960年10月東京生まれ。
アリヨン・バカレ1971年イギリス、ロンドン生まれ。
オルガ・ディホヴィチナヤ1980年9月ロシヤ生まれ。 

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海外テレビドラマ「ハウス・オブ・カード野望の階段シーズン5」

2018-01-07 16:38:05 | ドラマ

  
 2013年から放映の政治・社会派サスペンス。ネット配信で公開されたドラマ・シリーズとして史上初めて夜間番組を対象としたプライム・タイム・エミー賞を受賞した。

 ハリウッド・スター、ケヴィン・スペイシーとロビン・ライトを起用、この二人とも野心家で冷酷という性格設定でホワイト・ハウスを利用して国民を騙す。こういう大統領なら独裁者よりも恐ろしい。微笑みに隠れた殺人者であるからだ。

 フランシス・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)が副大統領時代、ワシントン・ヘラルドの新聞記者ゾーイ・バーンズ(ケイト・マーラー)と肉体関係を持つが、自身の秘密を嗅ぎつけられ地下鉄のホームで突き落として自殺に見せかけて殺す。相手を陥れたり脅迫したりは日常茶飯事。

 それらに協力する妻のクレア(ロビン・ライト)。クレアもしたたかな女で究極の目的は、史上初の女性大統領。シーズン5でそれが実現するが、その過程で邪魔者を排除するのをいささかも躊躇しない。

 フランシスが自身の伝記のためとスピーチ・ライターとしてホワイト・ハウスに招き入れた作家のトム・イェーツ(ポール・スパークス)とクレアが肉体関係を持つようになる。アンダーウッド夫妻は、廊下を挟んで向き合う寝室で別々に就寝する。フランシスは、クレアとトムの関係を知りながら黙認する。不思議な感覚の夫婦ではある。しかし、仕事では見事な協調がある。

 アレックス・ロメロ下院議員(ジェームズ・マルティネス)が大統領選での不正を調査委員会で追及し、ホワイトハウス内部からのリークを入手したワシントン・ヘラルドの編集長ハマーシュミット(ボリス・マクギヴァー)はゾーイ・バーンズ殺害を追及する空気が漂い始める。

 実はホワイトハウスからのリークもフランシスの恣意的な行為にほかならない。実に悪の策士だ。不都合な真実を知られたら亡き者にするリストの中にスピーチライターのイェーツがある。

 クレアは猛毒のつる性常緑低木から抽出したゲルセシウムを密かにウィスキーに混ぜてイェーツに勧める。この効果は約1時間後というから、最後のセックス中イェーツは昇天する。クレアは、イェーツの頬をなでて「トム」と一言。状況はクレアが大統領就任間近という時期、そんなときスキャンダラスな内容は困るというわけ。

 トムへの後の言葉を想像すると、「トム、ドジを踏んだわね」「トム、もう少し賢いと思ったけど」「トム、心から愛していたのよ。スキャンダルを持ち出そうとしたあなたが悪い」この三つのうちどれかかもしれない。

 フランシスも人を殺す。知りすぎた政治コンサルタント、リアン・ハーヴェイ(ネーブ・キャンベル)を交通事故死させ、デュラント国務長官(ジェイン・アトキンソン)を階段で突き落として殺す。

 さらにスキャンダルを避けるために、クレア大統領の恩赦で放免されるのを確約させた上でフランシスは辞任した。ところがクレア大統領のシリアへの派兵のあとフランシスを恩赦するはずが、それがなかった。

 フランシスは呟く「そうか、なら殺すしかない」あとはシーズン6に続く。しかし、問題がある。ケヴィン・スペイシーにセクハラ問題が起こった。32年前のこととはいえ2017年のハリウッドや政界のセクハラ旋風で失職や辞職が相次ぐ。

 ケヴィン・スペイシーも製作・キャストから降ろされた。シーズン6の計画もあるが、それが最終になりそう。ここまでの作品の水準は高く眠くならずに観られる。非情さの表現ではロビン・ライトのほうが凄味があった。
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天才ファッション・デザイナーの10年「サンローラン」2014年制作

2018-01-04 15:58:59 | 映画

            
 天才ファッション・デザイナーは、言わずと知れたイヴ・サン=ローラン。1936年8月1日に生まれ、2008年6月1日にがんで死去、71歳だった。

 カトリーヌ・ドヌーヴも縁の深い女優で、1967年の映画「昼顔」ではサン=ローランが衣装をデザインした。モデルとしてもカトリーヌ・ドヌーヴはランウェイに立った。いまでも化粧品や香水の広告モデルを続ける。

 1967年といえば、イヴ・サン=ローランがパリにブティックを開設してから1年後ということになる。映画は1967年からの10年を綴る。

 1977年フランスの日刊紙リベラシオンの編集室。イヴ・サン=ローラン死亡の噂にどんな記事を書くか、記者たちが議論している。「ジーンズこそ手掛けなかったが、彼は女性のシルエットを永久に変えた。女性自身も」とか「彼はファッションだけでなく、女性の内面を大きく変えた人」「時代との関わりについては、時代の変革に貢献した。美の職人としてまた芸術家として」このくだりでイヴ・サン=ローランの全体像が分かろうというもの。

 パリ・コレクションとかニューヨーク・コレクションとか言われるが、私はあまり関心がない。新聞のモード欄に写真付きで紹介されるが、実用性という点では全く役に立ちそうもない。映画の衣装デザインとかヨーロッパの上流階級が顧客の気がする。とは言っても一般のデザイナーにとって何かヒントがあるのかもしれない。

 ファッションに関心がないと言っても、映画の中の衣装には関心を持っている。女性のシャツスタイルをとっても形に変化がある。男のは変化が少ない。

 そしてゲイ。イヴ・サン=ローランはゲイだった。男が男を恋人にするというのがどうしても理解できない。この映画でも男が裸になるが(局部はボカシが入る)、気持ちが悪い。

 レズビアンについては、大らかに見られるから不思議だ。このレズビアンという言葉、私の中学生時代の女子生徒達からよく耳にしたのは「あの子とあの子はSじゃない?」このSの意味がよく分からなかった。

 そのまま時代が過ぎてパソコン時代となり「調べる」というのが容易になり「レズビアン」を検索してみた。そこにSの秘密があった。紀元前625~570年頃、古代ギリシアのレスボス島に住んでいた女流詩人サッポーは、作品や言動から非常に女性同性愛と結びつけられやすかったため、現代では、Sapphic (サッポー風の)は女性同性愛者を、Sapphism(サッフィズム)は女性同性愛を示すのに用いられる。(ウィキペディアから)

 主役を演じたギャスパー・ウリエルは16本の映画に出演、2003年ラブ・ストーリーの「かげろう」で注目され、2004年の「ロング・エンゲージメント」ではセザール賞有望若手男優賞を受賞。2016年には「たかが世界の終わり」でセザール賞主演男優賞を受賞。

 両親がファッション業界で働いていたというから、本作出演は因縁めいてくる。美形の男優トップと言っていいかもしれない。

 かつて美形男優のアラン・ドロンがいたが、男優は36歳ごろが一番脂がのっているというか、青臭さが消えて男の性的魅力が最大になる時ではないだろうか。アラン・ドロンの36歳頃にそれを感じた。ギャスパー・ウリエルも33歳だし女性ファンを狂喜させているはず。この作品でも中性的な魅力で迫ってくる。
  
監督・脚本・音楽
ベルトラン・ボネロ1968年9月フランス、ニース生まれ。

キャスト
ギャスパー・ウリエル1984年11月フランス、ブローニュービランクール生まれ。
ジェレミー・レニエ1981年1月ベルギー、ブリュッセル生まれ。
ルイ・ガレル1983年6月フランス生まれ。
レア・セドゥ1985年7月フランス生まれ。
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