これは家族愛の物語である。舞台は、実在するマサチューセッツ州ミドルセックス郡ニュートン、ボストンの西に隣接しボストンへの通勤者の住宅地で、治安の良さで有名。
広い公園の奥は鬱蒼と茂る樹々に囲まれ、誰もが羨む住環境なのだ。この公園には起伏のあるジョギング・コースがあって、ジョギングをしていた女性が死体を発見した。被害者は、近くに住む14歳のベン・リフキンだった。
着衣にたった一つついていた指紋がジェイコブ・バーバーのそれと一致した。容疑者として逮捕される。ジェイコブ・バーバーの父親は、ミドルセックス地区検事局の首席検事補の立場にあるアンディ・バーバーなのだ。
当初アンディは、捜査に参加して前歴のあるレナート・パッツに焦点を合わせていた。ところが自分の息子ジェイコブの逮捕によって停職を命じられる。妻ローリーともども今までの生活が一変する。
逮捕されたのが地区検事補の息子ということでビッグ・ニュースとして衆目を集めることとなった。近所の冷たい視線、ジェイコブのクラスで親しくしていた母親たちのとってつけたような態度、スーパー・マーケットで密かに指される指先。当然、保釈金を積んで帰宅したジェイコブを囲む夫婦の悩み。
何としてでも守ってやりたいジェイコブではあるが、永年秘めてきた家系の真実を伝える時が来た。まったく見捨てていた父親にもジェイコブのことを伝えておかないといけないとアンディは考える。隠していてもいずれ公にされることは確実だからだ。それは、曾祖父、祖父、父が殺人者だった。父は今も服役している。
驚愕と落胆と怒りに包まれるローリー、戸惑うジェイコブ。これらの背景から弁護士は、ジェイコブに精神科医の診断を勧める。その結果ジェイコブには、「自己愛性人格障害NPD」と「反応性愛着障害RAD」の兆候があると診断される。上記二つの障害をひと言でいうのは難しい。自身が他者より優れていると思い込み、他者とのコミュニケーションがぎこちないとも言える。
級友のジェイコブに対する不利な証言に加え、ポルノ小説まがいの犯行を示唆する短編が出るに及んでジェイコブの立場が揺らぎ始める。
前半は家族、後半は法廷という本格的なリーガル・サスペンスとなっている。この物語は意外な悲劇で幕を閉じる。アンディの父が重要な役割を担うが、ややご都合主義的かなと思ったりするが、全体として読者を惹きつけてやまない作品だ。この作品は、アップルテレビでドラマ化されている。その雰囲気をこちらでどうぞ!