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気軽に発信します。

厚かましいかも知れませんが、アマゾンのkindle電子書籍をアップしました。

2017-02-13 16:24:01 | 

 厚かましい自己PRで恐縮です。「狙撃他二編」です。内容を紹介しますと、「この本は三編で構成されています。まず、若い年代の別れの憎悪から許しに至る滑稽を描いた「届いた手紙」。狙撃銃の十字線に浮かぶ標的がわが娘かもしれない。政府の情報局内に籍を置くスナイパーにも過去にほろ苦い恋があった「狙撃」。人生に必要なのは財産でもなく、地位でもない。必要なのは人を愛する心だけでいい「恋は朝の光の中で」。青春期のお話から壮年期に至る三つの愛の物語です」

 大人向けになっていてジャンルは「アダルト」。電子書籍を読むためには、アマゾンの「kindle無料アプリ」が必要です。それはアマゾンのホームページからダウンロードします。手順は、ホームページの左端にある「カテゴリー」にカーソルをあてるとプルダウン・メニューになり、その中の「kindle本&電子書籍リーダー」にカーソルを持っていくと右側に「kindle電子書籍リーダー」「kindleストア」「サービス」の項目が表示されます。「サービス」の中に「kindle無料アプリ」があります。それをクリックしてください。スマホ・PC・タブレットとお好みでどうぞ。

この本を読んでいただければ幸いです。100円です。(ただし、アマゾン・プライム会員の方は無料です)

ご面倒ですが、クリック一つで私は幸せになります!

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狙撃他二編
村井 清一
村井清一


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読書  厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No8プロのアドバイス

2010-08-29 11:18:51 | 
                


 アンソニーシェフは、休みの日にレストランで食事をしたいと思うことは滅多にない。食べたいのは、お袋の味。シンプルなトマトソースのスパゲッティ、残り物をぶちこんで煮込んだツナのキャセロール、ローストビーフのヨークシャプディング添えなど。これは洋の東西を問わない。帝国ホテルの故村上シェフも自著で、家に帰れば味噌汁、焼き魚、たくわんなどを食べたいと書いていた。

 さて、料理をする上で最初に必要なものは、包丁やクッキングナイフだろう。極端に言えば一本のナイフで十分事足りる。アンソニーの長年の付き合いがあるプロの多くは、いまやドイツ製のナイフに代えて、もっと軽量で研ぎやすく、もっと安価なパナジウム入りのステンレス鋼で出来たグローバルナイフを使うようになっている。

 このグローバルナイフ、実は日本製ではないだろうか。新潟県燕市にある吉田金属工業(株)がグローバルの商品名で販売している。一本8,000円からある。そしてかなりクールな形状をしている。
            
             グローバルナイフ
 ちなみに、私は普通の万能ステンレス包丁を使っているが、料理の前にコーヒーカップの底で片面10回ずつ研いでいる。切れ味は悪くない。もう一つ付け加えるならば、日本製のスライサーも評判がいい。

 次に鍋、底の厚いフライパンは必携、そして底の厚いテフロン加工のフライパンも重宝するという。そして、使うたびにペーパータオルで拭い絶対洗わない。

 必携品といえば食材もある。列記しよう。エシャロット(プロの隠し味)、バター(仕上げにバター)、焼きニンニク(ニンニク絞りは使うな! 小房の一つを丸ごと火であぶり、焼き色がついて柔らかくなったものをしぼると香りがよく甘味がでる)、刻みパセリ、スープストック(あぶった骨を何本かと炒めた野菜を大鍋で水から煮込み、ひたすら煮詰める。充分に煮詰まったら、裏ごし器で漉し小さな容器に分けて冷凍しておく)、ドゥミグラス(先のスープストックに赤ワインを足し、エシャロットと生のタイムとベイリーフと粒コショウを加えて弱火でゆっくり煮込みスプーンにねっとりとついてくるくらいまで煮詰める。それから漉す。後は冷凍しておけばいつでも使える)。

 よい素材、新鮮な食材を使って盛り付けに工夫する。アンソニーお勧めの一品、丸ごとの魚(フエダイ、タイ、なんでもいい)のえらとわたと鱗を取り、冷水で洗う。魚の腹の中と外側に粗塩と粒の黒コショウをこすりつける。ニンニクひとかけ、レモンスライス、生ハーブ(ローズマリーかタイム)少々を,わたを抜いたあとの空洞に詰め込む。
 薄く油をひいたフライパンかアルミホイルの上に魚を置いて高熱のオーブンに入れ、火が通って皮がぱりぱりになるまで焼く。フードプロセッサーで作ったバジルソースを皿一面に散らし刻みパセリをふりかけ、魚の上にはバジルの葉を飾る。

 なんだかごてごてした感じだな。わざわざオーブンで魚を焼かなくても、日本なら魚焼きグリルで済ませる。レモン汁を振りかけておしまい。私はシンプルなのが好きだから。とはいっても、味覚文化の違いだからどちらがいいとは言えないが。スープストックやドゥミグラスには、牛の骨か鶏の骨か分からないし、赤ワインの分量も書いていない。これは読者が試行錯誤してやりなさいということなのだろう。
          
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読書  厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No7月曜日の魚料理

2010-08-25 13:06:44 | 
                  
 「月曜日には魚料理を注文しない」とアンソニーは言う。月曜日の魚が古いと知っているからだ。
 つまり、シェフは木曜日に魚を注文し、金曜日の朝に届けてくれという。次の配達日は月曜の朝になるから、大量に注文する。市場は金曜日の夜に閉まる。悪くすれば、木曜日の魚と同じものになる。だから、四日前の魚という理屈だ。

 月曜日のスペシャルメニューは、気をつけたほうがいい。まあ、こんな調子だが、アンソニーの食への好奇心はとどまるところを知らない。食べ物や料理は賭けのようなものだ。牡蠣を食べてあたることもあるだろう。たまたまあたったからといって、血入りのソーセージや刺身やキューバの安食堂の煮込み料理を味わう喜びを捨てる気は私には毛頭ないと言い切る。

 ムール貝を敬遠しろとか、戻ってきたパンの使い回しはほとんど常識だという。そのほかにもいろいろあるけれど、レストランを選ぶヒントもさりげなく記述してある。
 つまり、トイレの不潔な店では食事はしない。これは絶対確実だろう。日本ではあまり気にしなくてもいいかもしれない。私は寿司屋に入って思うが、この板前はトイレに行けば手をよく洗っているのだろうか? 手で握られるので気になることではある。

 福島県喜多方市は、喜多方ラーメンでも有名なところだ。ある年のあるとき、駅前のラーメン店に入った。ちっちゃい店でお客もそこそこ入っていた。テレビや週刊誌で有名になったのかもしれない。食べ終わってトイレを借りた。目にしたトイレは、汲み取り式の薄暗くて陰気な場所だった。とたんに、食べたものが胃からせり上がってきた。今でも、喜多方=汲み取り式トイレ、ラーメン=汲み取り式トイレが連想されて胸が悪くなる。

 どこかのお家を訪問してもトイレの様子が、そこの人を物語る。お寺でも、きれいで身障者用のトイレまであるところは、庭や周辺の手入れが行き届いている例が多い。
 また、キャンプ場にも洋式が用意されるようになっていて、私のように和式の苦手な者にはうれしい限りだ。

 アンソニーの食へのこだわりは、「シーフードを食べるのは相変わらず火曜、水曜、木曜と決めている。なぜなら、そのほうが旨いと分かっているし、またの機会もあるからだ。
 だが、たった一度、内蔵も含めた本格的なフグ料理を味わうチャンスがあったらどうする?その板前とは面識がなく、なじみのない極東の奇妙な都市にいる。そして、明日の飛行機で帰国する予定だったら? 私なら食べる。一生に一度なのだから」
 市場についてはアメリカでの話しで、日本の築地市場は日曜日が休みで、祭日や水曜、木曜が休みの場合があるようだ。
         
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読書  厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No6厨房は戦場

2010-08-21 10:12:31 | 
                  
 世の中にはその職に適した人間というものがある。シェフとかコックという料理人の適材は、遅刻しない、病欠しない、繰り返しの作業を嫌がらない。これが不可欠。

 こう見ると何も料理人ばかりでなく、普通のサラリーマンだって同じことだ。人生なんて繰り返しの連続だ。繰り返しが嫌なら生きてもいけない。

 実は人間は、そう単純に出来ていないらしい。そこが困ったところで、料理人の世界でもアメリカ人は、適格性を欠くらしい。一番適性があるのは、エクアドル人やメキシコ人のようだ。この世界では、シェフが絶対だということを肝に銘じる必要がありそうだ。

 逞しい女性コックも存在する。女を意識するとやっていけないらしいし、与太話の好きなバカどもの扱いにも根性がいる。

 “ある朝、出勤して来た女性コックは、自分のステーション(仕事場)にハードコアのポルノ写真があるのに気付いた。エクアドル人のパスタ・コックが、とびきり下品なやつを選んで貼っておいたのだ。
 不細工な女たちがあられもない姿態をさらし、前科者の刺青をした太鼓腹の男たちが毛むくじゃらのケツを見せて、女たちの体の穴という穴に挿入している。
 彼女は顔色一つ変えなかった。あとでパスタ・コックのそばを通りすぎながら気軽に声をかけた。「ホセ、あれはあんたの家族の写真でしょ。あんたのおふくろさん、あの年にしちゃイケてるじゃないの」”

 有能なシェフあるいはコックとはどういうものなのだろう。同じテーブル十人分を同時に仕上げる。それも熱いもの冷たいもの取り混ぜた注文をだ。
 ラムのあばら肉をぴったりミディアムで焼き上げた時に、ソテー・ステーションで舌平目が腐りかけていてはダメだ。二つをぴったり同時に完成させろ!まさに戦場だ。

 アントニーは言う。「料理は手工芸であり、一流のコックは工芸家であって、アーティストではない」要するにお客様の求めるものを、求める時に提供する。そのとき、初めて戦場の勝利者になれる。
        
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読書  厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No5親友ディミトリと、いざニューヨークへ

2010-08-17 12:38:50 | 
                 
 卒業するまでにもう一つエピソードがある。不用意に熱いソースパンを掴んで「バンド・エイドは?」の問いかけに、巨漢のタイロンが示した究極の屈辱にまみれて一年半後の夏、再びプロヴィンスタウンに現われた。

 知識と自信も以前とは段違いのレベルだった。パスタ係のディミトリとは相性が良かったのか、アンソニーのコック人生で二番目に影響を及ぼした男だった。アメリカ生まれではあるが、父親はロシア人、母親は有能で厳格な産婦人科医でドイツ人だった。

 雇い主のマリオは、毎年恒例のガーデンパーティの料理担当者を二名選ぶことになった。そしてアンソニーとディミトリが選ばれた。
 プロヴィンスタウンで肉や魚のパイ皮包み(パテ・アン・クルート)やゼリーで固めた冷たい詰物料理(クガランティーヌ)や鶏や魚の凝ったゼリーよせ(ショーフロワ)など、まだ誰も手がけていなかった。

 その料理に二人は果敢に挑んだ。結果は報われた。そして「ムーンライトメニュー」というケータイング会社を立ち上げた。
 名刺を作って手渡しながら、「別に仕事が欲しいわけではなく、注文をとろうなどという気はまったくないんです。そもそも、あなた方にはちょっと手が出ないかもしれません。なにしろ、このケープ全域でもっとも高価にして、かつもっとも先端を行くケータリング会社ですからね! われわれのように高度な訓練を受けた料理人には仕事が殺到して困っているんです。というわけで、よろしく」

 まったく大風呂敷を広げたもんだ。普通なら、そんなに仕事があるんなら、何で名刺なんか配ってるんだ? といいたいところ。ところが1976年の夏の終わりごろのプロヴィンスタウンには、贅を凝らしたお別れパーティで他人と差をつけたいと思うビジネスマンが大勢いた。これらの人たちの注文を受けて、ブランド化した。
 ここからアイデアがどんどん膨らみ、より飛躍するために世界の大都市ニューヨークへと夢がつながる。
       
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読書  厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No3降りかかるショック

2010-08-08 11:41:15 | 

               
 アンソニーは思った。花嫁ともセックスできるし、ウェイトレスとも出来るとなればシェフになることに何をためらうものか。ところが、そんな不純な動機ではおいそれとシェフになれるものではない。

 思いっきり知る機会がやってきた。夏の終わりごろには、皿洗いからフライ係に昇進してパン粉をまぶしたハマグリやエビを揚げ、蒸しあげられたロブスターの殻を割り、遂に最上級のグリルを二回ほどあずかるようにもなった。

 そして翌年、目の覚めるようなブルーのシアーサッカーで出来たピエール・カルダンの新品のスーツに身を固め、グリル・ステーションに抜擢されるのを想像しながら笑みを浮かべた。 そしてグリル担当のタイロンを紹介された。トニーは彼の助手という役回りだった。

 そのタイロンは、身長二メートル半、体重二百キロ、頭を剃り上げ銀歯がギラリと光る。耳たぶには拳ほどの金の輪っかをつけ筋骨隆々の黒曜石を思わせる黒人だった。トニーといえば去年の自慢話をとうとうと喋りまくり、周囲のひんしゅくも目に入らない。

 そうこうしているうちに、熱いソテーパンを素手で掴むというへまをした。そして言った。「バンドエイドないかな?」この言葉は、熱や火とオーダーメモでかっかと燃えている厨房の連中を一瞬のうちに凍らせた。

 タイロンが言った。「なーにが欲しいって? 白んぼの坊や。やけどの薬? バンドエイドだ?」タイロンはトニーの目の前に両の手のひらをつきだした。醜い水ぶくれが星座のように縦横に走り、グリルのあとが真っ赤なミミズ腫れになっている。
 タイロンはトニーをじっと見据えながら、ゆっくりと炉の中のじゅうじゅうと音を立てる鉄の皿を取り出してトニーの前に置いた。顔色一つ変えずに。

 なんとも情けない自分に腹が立ったトニー。しかし、これで諦めるトニーではなかった。屈辱から立ち直って、米国で最高の料理学校である、米国料理学院(CIA)で学ぶことを決意する。
          
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読書 厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から No2花嫁とファックするシェフ

2010-08-04 16:22:28 | 
                
 アンソニー・ボーデインにとっても他の人間にとっても、なにがきっかけで決断するのか誰にも分からない。

 「1973年、失恋したうえ、一年早く高校を卒業した私は、(飛び級で卒業、頭がいいんだ)欲求のはけ口をヴァッサー大学へと移した.この時期十八歳を前にした私はしつけのなっていない無分別な若造で、大学でも落ちこぼれ寸前だった。自分自身と他の人間すべてに腹を立てていた。起きている時間のほとんどは酒を飲むかマリファナを吸うかで、自分と同類のバカな連中とつるんでは笑ったり怒ったりしていた」

 そしてある夏、ケープコッドのプロヴィンスタウンの部屋でごろごろしていた。このプロヴィンスタウンは、1620年メイフラワー号が上陸した場所であり、ユージン・オニールやテネシー・ウィリアムズなどの劇作家や作家が集まったことで知られ、現在ホエールウォッチング観光の拠点になっている。

 しかし、アンソニーはすかんぴんだった。ガールフレンドの紹介で得た皿洗いの職が、アンソニーの未来を決定づけるとは本人も思ってもいなかったに違いない。ところが、世の中なにが起こるかわからない。

 結婚披露宴がやかましく行われていた。その最中、真っ白なウェディングドレスを着た金髪美女は、シェフの耳元に何事か囁いた。「トニー(アンソニーのこと)、しばらくここを頼む」というシェフの言葉。皿洗いのトニーからすれば驚天動地の出来事。

 ところが好奇心の方が勝利を収めた。窓からそっと覗いて見た光景は、花嫁はドラム缶を抱いてうつぶせになり、ウェディングドレスのスカートは尻までめくれ上がり、シェフの激しいピストン運動に、若い花嫁は白目をむいて「いいわ……そこよ……すごくいいわ」と喘いだ。

 それを見たアンソニーは、本気でシェフになろうと思った。どうも解せないのは、花嫁ももうすぐ初夜で、思う存分楽しめるのにどうしてシェフと? 世の中には不思議なことがあるものだ。
         

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読書 厨房の裏側「キッチン・コンフィデンシャル」から NO1ヴィシソワーズと生牡蠣

2010-07-30 16:29:02 | 
                 
 著者のアンソニー・ボーデインは、父親がコロンビア・レコードの重役、母はジャーナリストという家庭の生まれ。>
 料理に興味を持ったきっかけというのは、小学生四年の夏ヨーロッパへの家族旅行で乗ったクイーンメアリー号の特別二等食堂で出会ったヴィシソワーズだった。
 冷たいポロネギ風味のジャガイモのポタージュスープで、バターでジャガイモ、ポロネギを炒めてから、コンソメを加えて煮たものを裏ごしして生クリームを加えて冷やす。

 「銀の蓋つき容器からお玉で私のスープ皿によそってくれたウェイターの手つき、細かく切った薬味のあさつき(チャイブ)、リーキとポテトのクリーミーな味、そして思いがけず、冷たいと知ったときのあの快い驚き」とそのときの印象を書いている。ほとんどの記憶が消えていき、このスープの記憶だけが残る。これが第一の料理に対する目覚め。

 フランス南西部のジロンド県アルカション湾で、ムシュー・サンジュールが食べさせてくれた生牡蠣の味。「貝殻を口に近づけ、そっと傾けた。そして、一気に口に流し入れ、ずるずるっと飲み込んだ。それは海水の味がした……塩からく、ふっくらとして……なぜか……未来の味がした。こうして、すべてが一変した。なにもかもが」これが第二の目覚め。
         
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読書 ジェフリー・アーチャー「運命の息子」

2010-07-22 13:19:56 | 
                
 
 運命とは、物事のなりゆきや人間の身の上を支配し、人の意志で変えることも予測することも出来ない神秘的な力。また、それによって定められている物事のなりゆきや人間の身の上であるが、まさにナット・カートライトとフレッチャー・ダヴェンポートの身の上に起こったことだ。
 
 ジェフリー・アーチャーは、発端からドラマティックに物語を展開していく。マイケル・カートライトとスーザン・カートライト夫妻の双子の兄弟の新生児室のベッドの横には、ロバート・ダヴェンポート、ルース・ダヴェンポート夫妻の一人息子が眠っていた。
 看護婦のミス・ニコルは、ダヴェンポート夫妻のなに不自由ない一生を送る息子を抱き上げようとして立ちすくんだ。多くのお産を経験すれば子供の死は一目でわかるようになる。そして、死が予測できない運命の歯車が回りだすのは、あるときは他人によって下されるとっさの決断である。
 ナットもフレッチャーもハーバードとイエールを優秀な成績で卒業して実業界に躍り出た。そして、二人の運命は知事選挙で対峙することになる。
 映画のシーンが変わるように小説の場面も短い段落で変わっていく。それがテンポのよい印象を与える。欧米人特有の回りくどい言い回しもなく読みやすい文体で一気に読了した。エンタテイメントとして読むには格好の読み物だろう。

 著者は、1940年ロンドン生まれ。イギリス上院・下院議員、保守党幹事長を務め一代貴族(男爵)。北海油田の幽霊会社に投資して全財産を失うが、処女作「百万ドルを取り返せ」が大ヒットして借金を完済。上院議員をスキャンダルで辞任、ロンドン市長選の偽証罪で投獄される。著者本人もかなり小説的で、エンタテイメント横溢の伝記になりそうだ。
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読書 ジョン・ハート「川は静かに流れ」

2010-07-18 11:11:45 | 
             
 友人のダニー・フェイスからの一本の電話が、アダム・チェイスを渋々ながら故郷ノース・カロライナ州ソールズベリの土を再び踏ませた。橋を渡った。その川は、ノース・カロライナとサウス・カロライナ両州にまたがって流れるヤドキン川である。橋から約13キロ下流で実家のレッド・ウォーター農場の北端に接する。アダム・チェイスという人間を形作った出来事は、すべてその川の近くで起こった。

 五年前、アダムは殺人容疑者として裁判にかけられた。起訴の根拠が、継母の目撃証言だった。しかし、確たる証拠に欠けていて無罪放免となった。そして、故郷を離れてニューヨークでの生活を求めた。アダムの苦悩の出発点は、母の自殺を目撃したことだ。父との確執、継母との不和が重く垂れ込める。地元の人間が見る目は、アダムを殺人者と断罪していた。

 農場の作業監督の娘グレイスが襲われて瀕死の重傷を負ったり、親友のダニーが殺されるという事件が起こる。五年前の未解決事件、グレイス襲撃事件、ダニー殺人事件の謎を背景に、レッド・ウォーター農場の家族の崩壊を描いてある。読み応えがあり一級のミステリーといえる。

 ちなみにアダムの実家レッド・ウォーター農場の敷地はどれくらいか。1215エーカーつまり4917平方キロメートルもある。これはわたしの住む千葉県の広さ5156平方キロメートルにほぼ匹敵する。
 自分の地所が、端から端まで車で走って2時間以上もかかるとは、目も眩む広さとはこのことか。アメリカならでは、というところか。それなりの苦労もあるようだが。
 なお、この作品は、2008年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞(エドガー賞)を受賞している。

 著者は、1965年ノース・カロライナ州生まれ。現在も在住。幼年期を作品の舞台となったローワン郡で過ごす。デイヴィッドソン・カレッジでフランス文学、大学院で会計学と法学の学位を取得した。
 会計、株式仲買、刑事弁護などさまざまな業種で活躍したが、やがて職を辞し、作家を志す。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にノミネートされた「キングの死」で華々しくデビューした。本書は、ニューヨーク・タイムズほかの主要紙誌で絶賛され、全米ベストセラーを記録した。
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