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映画「秘密のかけらWhere the truth lies ’05」劇場公開2005年12月

2013-01-28 20:44:37 | 映画

                
 ニューヨークのホテルのバスタブに沈んでいるモーリーン(レイチェル・ブランチャード)が発見される。麻薬の過剰摂取で溺死と判定された。

 ところが、ラニー・モリス(ケヴィン・ベーコン)とヴィンス・コリンズ(コリン・ファース)のお笑いコンビにはモーリンと面識があった。それは誰にも言えない秘密だった。その秘密を追求するのは、ジャーナリストのカレン(アリソン・ローマン)だった。

 カレンは、15年前ラニーとヴィンスのポリオ撲滅の寄付を募るテレソンで救われた少女だった。謎をはらみながら徐々に核心に迫るという展開。不必要なレズシーンもあるが、おおむね良く出来た作品といえる。結局、二人に長年執事として仕えていたルーベン(デヴィッド・ヘイマン)がすべて仕組んだことだった。
           
           
           
           
           

監督
アトム・エゴヤン1960年7月エジプト、カイロ生まれ。

キャスト
ケヴィン・ベーコン1958年7月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。
コリン・ファース1960年9月イギリス、ハンプシャー州生まれ。
アリソン・ローマン1979年9月カリフォルニア州パームスプリング生まれ。
レイチェル・ブランチャード1976年3月カナダ、オンタリオ州トロント生まれ。
デヴィッド・ヘイマン1950年スコットランド、グラスゴー生まれ。
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映画「今日、キミに会えたらLike Crazy’11」劇場未公開

2013-01-25 16:30:01 | 映画

                 
 「愛してる。狂おしいほどに……あなたが必要だし失いたくない!」恋愛の始まりは大体こんな気持ちだろう。

 その二人は、ジェイコブ(アントン・イェルチン)とアンナ(フェリシティ・ジョーンズ)だ。ロサンジェルスの大学を今卒業するところだった。
 アンナは、イギリスからの留学生で卒業間もなくビザがきれる。ジェイコブは決まりどうり一旦帰国したほうがいいというが、アンナは燃え上がった炎に焼き尽くされたのか、あるいは法を超越する存在だと勘違いしたのかビザの期限を無視した。

 アンナはアメリカに不法滞在したとして再入国が許可されない。これが二人を遠距離恋愛に落とし込む。ジェイコブは家具デザイナーとしてロサンジェルスで開業。アンナはロンドンで雑誌社の編集の仕事をしていた。二人をつなぐのは、携帯のメールと会話だけ。遠く離ればなれというのは、いい結果をもたらすことはない。

 ジェイコブにもアンナにも恋人が出来た。しかし、心のどこかにお互いを消し去れない残滓が漂っていた。それでも会ったときには口げんかに発展することもある。やっと再入国の許可が下り、ロサンジェルスのジェイコブの家に落ち着いた。

 広い仕事場や部屋を眺め回すアンナ。頭の中では、ここでジェイコブと恋人だったサム(ジェニファー・ローレンス)との生活に思いを馳せ表情に影が浮かぶ。ジェイコブとアンナには、卒業時の燃えるような感情が残っていないかに見える。
 映画は、そういうやりきれない二人の表情のままエンディングとなる。二人が一緒になって、暗い表情のまま終わる映画は少ないだろう。

 しかし、考えてみればこの映画も明るいハッピーエンドにしようと思えばできる。ちょこっと脚本を書き換えるだけでいい。でもあえてそうしなかったのは何故か。
 彼らは、真っ白なキャンバスに絵を描こうとした。ところがうまく描けなかった。余計な線が引かれた上に新しい線を引くことになっただけ。どうするかは二人の問題。白い絵の具で消すのもいいし、そのままの上に描いてもいい。時間と知恵で解決出来るはずだ。二人に祝福あれ!
 未公開が不思議だが、品格漂う映像と細かい心理描写で印象に残る映画だった。アンナを演じたフェリシティ・ジョーンズがキレイだった。その雰囲気を少しでも味わっていただくために、YouTubeのトレイラーをご覧ください。
映画『今日、キミに会えたら』

監督
ドレイク・ドレマス1983年3月カリフォルニア州オレンジ生まれ。

キャスト
アントン・イェルチン1989年3月ロシア、サンクトペテルブルク生まれ。

フェリシティ・ジョーンズ1984年1月イギリス、イングランド バーミンガム生まれ。

ジェニファー・ローレンス1990年8月ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。

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読書「007白紙委任状Carte Blanche」ジェフリー・ディヴァー

2013-01-22 16:26:23 | 読書

                 
 ジェームズ・ボンド、30代前半、身長180センチ、体重78キロ、黒い髪の毛、右頬に長さ8センチほどの傷痕があり、元海軍予備軍中佐。勿論頭脳明晰でハンサム。筋肉質な体。あらゆる銃に精通、射撃の腕も抜群。格闘技にも秀でている。一体こんな男が本当に存在するのか。

 逆説的に言えば、そんな男が存在しないからこそイアン・フレミングが造形したのだろう。ただ、このボンドにも悩みがある。本から引用すると“ジェームズ・ボンドのために生まれてきた女、すべての秘密を打ち明けられる女、彼の人生を共有できる女は、この世のどこかに存在していると思いたい”

 仕事柄一箇所にとどまることがない。しかも、非常に危険だ。MI6とかMI5という諜報機関に所属しているとはおいそれと女性に言えない。正義の味方ではあるが、手段を選ばないという点では恐らくほとんどの女性には理解してもらえないだろう。どこかに理解してくれる女性がいるのだろうが、今のところ出会いはない。したがって、女性とのデートもその場限りになる。

 映画でもボンドは、女性に囲まれてでれでれとしているが、内心は寂しいはずだ。カナーリ(イタリアの高級紳士服メーカー)の紺のスーツ、海島綿(西インド諸島(中南米)に産出する綿の最高級品。一着25,000円~35,000円ということのようだ)の白シャツ、バーガンディ色(ブルゴーニュ産の赤ワインのような濃い紫をさす)のグレナディン地のネクタイ。シャツとネクタイは、ターンブル&アッサーのもの(イギリスのファッション・メーカー)。それに黒いスリップオンの靴を合わせた伊達姿。多分国家予算で賄っているんだろうなあ。

 世界を股に掛けてまるで人食いサメのように遊弋している。今回も大量殺人のテロを嗅ぎつけて南アフリカで、銃撃戦や車の追尾、それに女性とのお楽しみもありエンタテイメント性充分だった。

 本筋のストーリーとは別に私としては楽しめた部分がある。まず、ボンドと車は切っても切れない関係だろう。出勤に使うのは、ベントレー・コンチネンタルGTだ。
“ツィンターボを搭載したW型十二気筒エンジンが低いうなりとともに目を覚ます。ダウンシフトパドルを指先で操作して一速に入れ、ゆっくりと通りに出た”こういう記述から見ると著者のジェフリー・ディーヴァーもかなり車好きに見える。

 もう一台、それは日本製のスバル・インプレッサWRX STI。エンジンは305馬力のターボチャージャー付きで、六速マニュアル・トランスミッション。元気のいい車だと褒めている。

 もう一つ、ワインやカクテルに造詣が深く、バーでマティーニを注文する場面はこんな具合だ。
 “舌が痺れそうなくらいよく冷やしたウォッカには、薬と同じとは言わないまでも、癒す力があると信じている。そこで、ストリチナヤ(ロシア産ウォッカ)を使ったマティーニをダブルで頼んだ。そして、よくシェークしてくれと付け加えた。ステアするよりもウォッカがよく冷えるだけでなく、細かな気泡が入るおかげで風味が格段によくなるからだ”

 なるほどなあ! ウォッカを使うのか。通常のレシピでは、ドライ・ジンを使うことになっている。本には物語を楽しむほかに、こういう食べ物や飲み物、ファッションや音楽などの薀蓄に触れることが出来るのがうれしい。
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映画「リンカーン弁護士The Lincoln Lawyer ’11」劇場公開2012年7月

2013-01-19 16:39:05 | 映画

                 
 アメリカの自動車メーカー、フォード・モーターズの高級車アブラハム・リンカーンから名づけたリンカーン・タウン・カーのナンバー・プレートには、「NTGUILTY(無罪)」とある。その後部座席を事務所代わりにしている刑事弁護士ミッキー・ハラー(マシュー・マコノヒー)の顧客といえば、麻薬の売人やけちな犯罪者たちが多い。
 そんな彼らを弁護するハラーに、検事や刑事たちからは蔑みの視線を浴びる。しかし、ハラーは次のように自己弁護をする。

 「社会の多くの人間が私を悪魔と考えているが、彼らは間違っている。私は油で汚れた天使なのだ。私こそまさに真のロード・セイント(市井の聖人)だ。私は必要とされ、望まれている。両方の側に。私は機械の中のオイルなのだ。私はエンジンをかけ、回転させるギアを作動させる。システム(司法制度)のエンジンを動かし続けるのに手を貸している」とは言っても稼ぎが多いほうがいいのは当然だ。

 離婚した元妻を連絡係として雇い、別居中の検事をしている妻マギー・マクファーソン(マリサ・トメイ)との娘の養育費、それにリンーカーンの運転手アール(ローレンス・メイソン)の給料など、稼ぎがいくらあっても邪魔にはならない。

 そんな時、なじみの保釈保証人から美味しい話が持ち込まれる。手広く住宅販売を営む会社の息子ルイス・ルーレ(ブライアン・フィリップス)が、女に暴行を加えたとして傷害容疑の事件だった。保釈保証金は、少なくとも100万ドルは確実だった。

 この刑事弁護士ミッキー・ハラーのせこいところは、随所に現れる。この保釈保証金をルーレ家は所有不動産を売って金を作ると言ったが、ハラーは「時間がかかる」ということで保釈保証人から借り入れさせる。これも暗黙の出来レースだ。

 さらにルーレの顧問弁護士と二人で立っているところへ、フリーのテレビ・カメラマンが撮影し始める。金持ちのルーレ家には迷惑なことだ。ハラーは、カメラマンを呼んでビデオ・テープを1000ドルで買い上げる。勿論、顧問弁護士に「経費でいいな?」の言葉も忘れなかった。
 後でそのカメラマンに200ドル、自分は800ドルの分け前となった。前もって仕組んだ芝居を演じたハラー。

 暴走族相手にもたかるハラー。収監中の暴走族の一人ハロルドに「弁護料を払え!」と迫りながら、判事に証人を探す必要があるから裁判の延期を申し立てる。
「いつまでだ?」と判事。
「わかりません」とハラー。判事は検事に聞くと、検事は「いいよ」との返事。ハロルドはいつまでたっても豚箱から出られない。

 ロサンジェルスの輝く陽射しを浴びながら、目的地に向かうミッキー・ハラー。やがて一団の暴走族に囲まれる。エディという暴走族の頭目がハラーの窓に肩肘をついて「ハロルドに聞いたぞ。裁判を遅らせていると」
「弁護料がまだだ」とハラー。
「5000ドル 払ったろ」
「とっくにない、半分は航空写真のプロに渡した。ハロルドの農場へ麻薬取締局が低空飛行で侵入したと証言してもらう。そのためには彼をニューヨークから呼んでホテルなども手配しないと……契約を交わしただろう? 資金が足りない」平然と言うハラー。
「また、5000払えと?」
「1万だ。飛行機はビジネス、ホテルは一流」
「ハロルドはいいクサを育てる。分かるだろ?」
「分かりたくもない。気に入らなきゃ公選弁護人に頼め。腕は落ちるだろうが……」
エディは、一万ドルの入った封筒を差し出す。

 再び陽光に囲まれてリンカーンは海原を行く船のようにゆったりと走る。運転手のアールが口を開く。
「その証人を迎えに行きますか?」
「誰も来ない。写真のプロなら地元にいる」
「なるほど、あなたならストリートでもやっていける」
「今だってストリートを走ってる」ハラーは、そう言って微笑む。

 ところが美味しい話にはどこか胡散臭くぼろ儲けなんてとんでもない。これが巧妙な罠と気づいたハラーがいかにしてその苦境から逃れるか。俄然エンタテイメント溢れる展開になる。ハラーの調査員フランク(ウィリアム・H・メイソン)が殺される。それはハラーの銃だった。ハラーは容疑者とされるが、銃が見つからないことには拘束できない。

 一方ルーレの裁判では、ハラーの妙手が的中するが、決して褒められた手段ではない。そしてフランク殺害の意外な結末が待っていた。

 私も好きなアメリカの人気作家マイクル・コナリーの同名の原作を映画化したもの。舞台がロサンジェルスでマイクル・コナリーは、作中に実在するバーやレストラン等を書き込んでいて、観光旅行に使えるなと思ったことがある。映画としてはテンポもいいし楽しめる作品だ。
             
             
             
             
             
             
             

監督
ブラッド・ファーマン出自不明

キャスト
マシュー・マコノヒー1969年11月テキサス州ウバルデ生まれ。’96「評決のとき」が飛躍の足がかりになった。
マリサ・トメイ1964年12月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。’92「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を受賞。
ブライアン・フィリップス1974年9月デラウェア州ニューキャッスル生まれ。
ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州生まれ。
ローレンス・メイソン ニューヨーク市ブルックリン生まれ。
コメント (3)
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映画「私が、生きる肌LA PIEL QUE HARITO ’11」劇場公開2012年5月

2013-01-16 15:40:34 | 映画

                 
 人工皮膚開発の権威で形成外科医のロベル(アントニオ・バンデラス)の邸宅の一室には、ベラ(エレナ・アナヤ)が閉じ込められている。ベラは人工皮膚開発の実験台でもあるが、実はビセンテ(ジャン・コルネット)という男から性転換した女だった。ベラはロベルの亡き妻にそっくりに作られていた。ロベルの思い入れが強いのか、当然のごとくベラと肉体関係を結ぶ。
 しかし、ベラの内奥には強制的に性転換させられた憤怒は消え去ることはなかった。そして、悲劇的な終焉を迎える。

 この映画は一言で言えばポルノ映画だ。スペイン製作の映画だけあって、セックス・シーンはアメリカ映画より露骨だ。アメリカ映画では、男女が裸でからむシーンでも女優の乳首に唇をよせることはないが、このスペイン映画は一瞬ではあるががっぷりと唇が覆っている。
 しかも男が重なって腰を波打たせている。とはいっても劣情を催すことはなかった。

 笑ってしまうシーンもあった。まだ、完全に女になっていない段階。顔が男で人工膣を形成してロベルが取り出したのは、太さの違う男根の模型。細いものから始めて徐々に太いものでトレーニングをせよとのたまう。

 その時ふと思った。人工膣は感覚も正常なのだろうか? ということ。映画のベラは、痛いといっているから不完全な代物のようだ。
 そしてまたふと思った。将来iPS細胞が実用化されれば、人工膣も自然なものを作ることが出来るかもしれないと。
           
           
           
           
           
           
           
           
           

監督
ペドロ・アルモドバル1949年9月スペイン、ラ・マンチャ生まれ。

キャスト
アントニオ・バンデラス1960年8月スペイン、マラガ生まれ。
エレナ・アナヤ1975年7月スペイン生まれ。
ジャン・コルネット1982年2月スペイン生まれ。
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映画「卍(まんじ)」

2013-01-13 13:12:02 | 映画
原作の卍を読んだあと映画化されているのを知り、まず2006年に製作されたDVDを観た。ところがこれが大失敗。邦画やテレビをほとんど観ない私にとっては、監督の井口昇や女優の秋桜子、不二子なんて聞いたこともない。
 一言で言えば文豪谷崎潤一郎を侮辱するような出来だ。タイトルには、原作谷崎潤一郎となってるから正気かと思った。女優の演技は下手だし大阪弁のアクセントも不完全。それに体も原作の色白がない。そこらへんの女と同じ。
 もっと言えば、美人の女優なら我慢も出来ようが、そうでもないから始末に負えない。それに心理描写がないし、人物造形もない。途中でやめようかと思ったが、折角だから観てしまった。しいて言えば、ポルノ映画なら何とか観れる程度。

これに満足できなくて、1964年製作の「卍」を観る。
監督 増村保造 1924年8月~1986年11月山梨県生まれ。
脚本 新藤兼人 1912年4月~2012年5月広島県生まれ。
キャスト 若尾文子(徳光光子)1933年11月東京生まれ。
     岸田今日子(柿内園子)1930年4月~2006年12月東京生まれ。
     川津祐介(綿貫栄太郎)1935年5月東京生まれ。
     船越英二(柿内幸太郎)1923年3月~2007年3月東京生まれ。
 これは、さすがに美人女優を配してあるし、原作を忠実に脚本化されていて人物造形もしっかりしたものになっている。

 若尾文子の裸体(と思う)も白くてキレイだし、勿論、岸田今日子も同様だ。心理描写は難しいのか、それほどの感銘は受けなかった。
 綿貫を演じた川津祐介が熱演している。特に園子と兄妹の契りを結ぶといって、腕をかみそりで切ってその血を吸うところがある。園子に吸われる場面では、一瞬気持ちよさそうな表情を作っていた。女に腕を吸われると気持ちがいいのは当たり前だから、なかなか芸が細かいなあ。と感心した。

 ただ、残念なのは大阪弁のアクセントが不自然なところだ。それでキャストの出自を見ると、東京生まればかりではないか。これでは、原作の雰囲気を出せるはずもない。
               
            
            
            
            
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読書「卍」谷崎潤一郎

2013-01-10 13:14:01 | 読書

                 
 男女四人のまんじどもえの愛憎が繰り広げられる。弁護士の夫柿内幸太郎と夫婦仲のあまりよくない柿内園子。
 大阪天王寺にある女子技芸学校の絵画教室で、園子の描く薄物をまとったモデルの顔がどうしても徳光光子の顔になってしまう。この女子技芸学校は、絵画、音楽、裁縫、刺繍その他の教科がある。一言で言えば、いわゆる花嫁学校だ。したがって生徒は、お金持ちの女の子ということになる。徳光光子の父も何十億円もの資産家でないと娘を嫁にやらないと豪語する家庭だった。

 光子は白い肌の稀に見る魅惑的な女性だった。その光子に惚れたのが園子だった。当時は、世間から忌避される同性愛関係に落ちた。浮いた噂の一切ない夫幸太郎は面白くない。

 そして現れたのが光子にぞっこんの綿貫栄次郎という男。この男、光子と園子の関係が気に入らず、自分が睾丸炎による無精子になっていることを知られ、ねちねちと嫌味をいい悪巧みまで画策する。
 ある時点で光子と幸太郎が深い仲になって、幸太郎は綿貫を排除することに成功する。それらを知った園子は、いつ離婚を告げられるかと考えるものの、園子自身も過去の男関係が浮ついたものでもあったから文句がいえないとも思う。

 光子は幸太郎、園子とも関係を保ちたい一心が奇妙なことを行わせる。光子は睡眠剤とぶどう酒を持ってきて言う「二人ともこれ飲んで寝なさい。あてあんた等の寝ついたん見てから行(い)ぬ」そして更に「二人ともあてに対して忠実誓うねんやったら、その証拠にこれ飲みなさい」(注あて(わたしの意)、行ぬ(帰るという意味))
 光子にとって自分抜きの性愛を嫌った結果で、これが毎日続けられ薬漬けの体は食欲減退のため生気を失っていった。

 そんな時、綿貫が逆襲してきた。柿内夫妻と光子の変態性欲関係が新聞に暴露された。幸太郎は弁護士の仕事を失うし、光子も生きる希望を失った。三人が相談して死を選ぶ。睡眠薬を飲んだが園子一人が蘇生する。結果的に光子と幸太郎は情死。

 この顛末を先生と呼ぶ人に告白する。心理的マゾヒズムを描いた傑作と言われ、すべて関西弁で改行のないべったりとした文章が並ぶ。それでも巧みな心理描写に興趣が尽きない。
 わたしは大阪生まれの大阪育ちだから、巻末の注解を参照しなくてもいいが、関西人以外は面倒だろう。

 一体この光子という女はどんな女なのか。美人であるが故に自己陶酔と気位の高さがうかがえる。「異性の人に崇拝しられるよりも同性の人に崇拝しられる時が、自分は一番誇り感じる。何でや云うたら、男の人が女の姿見て綺麗思うのん当たり前や、女で女を迷わすこと出来る思うと、自分がそないまで綺麗のんかいなあ云う気イして、嬉してたまらん」

 男から見れば嫌味は女だなあ。しかし、そういう同性とも異性とも性愛を好む女であっても、迫られたらどうなるのかな。心と体は別だから罠にはまってしまうかもしれない。園子の夫がその例かも。
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映画「ワン・デイ ONE DAY ’11」劇場公開2012年6月

2013-01-07 12:49:35 | 映画

                  
 23年のラブ・ストーリーという副題がつく。1988年7月15日エマ(アン・ハサウェイ)は、大学卒業の日少々酒に酔っていたとはいえ初めて言葉を交わしたデクスター(ジム・スタージェス)と一夜を共にする。

 しかし、並みの男女ではないらしい。同じベッドに横たわりながら友達でいようと約束する。なんとねー、私は到底出来そうもない。それが毎年7月15日が描かれる。23年も。

 ちょっといらいらするかな。まあ、アン・ハサウェイのファンは観ていいかもしれない。彼女は時としてすごくキレイなときがある。私はむしろジム・スタージェスに好感を持った。
 それも中年にさしかかった年代に。男の一番見た目が成熟する年代といえば30代後半だろう。その魅力をたたえていた。
               
               
               
              

監督
ロネ・シェルフィグ1959年5月デンマーク、コペンハーゲン生まれ。

キャスト
アン・ハサウェイ1982年11月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。私は、’05「ブロークバック・マウンテン」のアン・ハサウェイが印象に残っている。
ジム・スタージェス1981年5月ロンドン生まれ。
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読書「ひとごろし」山本周五郎

2013-01-04 11:51:22 | 読書

                
 どうしてこの本を読んだのかというと、ニコラス・ケイジ主演の「ハングリー・ラビット」という映画のせいだ。この映画が組織的な交換殺人を業としていて、妻がレイプされた上重傷を負わされたニコラス・ケイジに「犯人を代わりに殺してやれる」と持ちかけてくる。そこでふっと湧いたのが仇討ちだった。

 江戸時代には公認の制度だった。ネットでこの本がヒットしたというわけ。さて、この本、10編の短編からなっている。その一つが表題の、ひとごろしだ。真理や情、命がけの恋や詐欺商売までなかなか色とりどりで面白い。

 この中に「鵜」というのがある。これが印象に残った。実に悲しい恋で胸が押しつぶされそうになる。愛しい人を待ちながら釣り糸を垂れる布施半三郎。
 70日ほど前、この淵で逢う約束をした。彼女、ただこは現れなかった。ただこは、筆頭家老藤江内蔵允(ふじえ くらのじょう)の妻だった。夫と年齢が30歳も離れている。ただこはまだ20代中ごろ。何故半三郎と出来たのかは、容易に想像できる。
 そして、半三郎との約束を守るために家を出ることを決心。その日、籠に乗ったとき暴れ馬に籠を押しつぶされて死んでしまう。それと知らずに待ち続ける半三郎。

 表題の「ひとごろし」は、臆病者と周囲から言われている双子六兵衛が、上意討の相手剣術と槍の名手仁藤昂軒(にとう こうけん)に奇手で挑む。これはコメディ・タッチの一編だ。
気楽に読んで、ほっとした気分を味わえる一冊。
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映画「ハングリー・ラビットSEEKING JUSTICE ’11」劇場公開2012年6月

2013-01-01 11:00:41 | 映画

                
 “空腹の兎は跳ぶ“ 空腹が人間性で、兎は理性、跳ぶは、正義。法に従わず人間性や理性、正義に従うという組織の暗号である。この組織の対象とする人物は、殺人者やレイプ犯それに幼児性愛者といったところ。

 高校で国語の教師を務めるウィル(ニコラス・ケイジ)の妻ローラ(ジャニュアリー・ジョーンズ)がレイプされひどい傷を負う。病院の休憩室で男が近づいてきた。サイモン(ガイ・ピアース)という。

 「犯人を殺してやる。金は要らない。代わりにちょっとした頼みを聞いてくれるだけでいい」一見代理殺人であるが、そのちょっとした頼みが交換殺人になるのは目に見えている。

 で、思い出すのは1951年ヒッチコックの「見知らぬ乗客」だ。要するに殺人には動機が必ず絡んでくる。ところが交換殺人になると、被害者との動機が全く見えてこない。そういう状況がものすごいサスペンスを生み上質のミステリーだった。

 この映画は交換殺人というアイデアを引き継ぎ、それを組織的にしてあるのが目新しい。一旦この組織に絡めとられると確実に命を狙われるだろう。警察も1951年当時と捜査能力は格段に上がっている筈だ。仮にウィルが交換殺人を実行したとして、警察の捜査がウィルに迫ったとすると組織は確実にウィルを抹殺するだろう。なにせ警察にも組織の一員がいるんだから。

 で、悪をがんがんやっつけるこういう組織を立ち上げたいと空想したことを思い出した。特に暴力団に対して強く思ったものだ。暴対法が出来たとはいうものの、相変わらず悪がはびこるのを見ていると歯がゆくなる。さて、ウィルは殺人を実行しなかったために組織に追われるハメになる。
観ても観なくてもどちらでもいい映画かな。
             
             
             
             
             
             

監督
ロジャー・ドナルドソン1943年11月オーストラリヤ生まれ。

キャスト
ニコラス・ケイジ1964年1月カリフォルニア州ロングビーチ生まれ。
ジャニアリー・ジョーンズ1978年1月サウスダコタ州生まれ。
ガイ・ピアース1967年10月イギリス生まれ。
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