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デジカメ持って小旅行「坂東三十三箇所霊場28番札所龍正院(りゅうしょういん」

2009-01-31 10:47:26 | 旅行

          
 成田市滑川にあるこのお寺は、承和5年(838年)滑川城主小田将治が発願し、慈覚大師円仁が開山したと伝えられ、本尊の体内に納められている1寸2分(約3.6センチ)の観音像は、小田将治が出会った老僧が小田川で掬い上げたものとされている。
 この日は曇り空で、国道51号線を新東京国際空港(NARITA)に向かい途中から408号線へと左に折れる。ほとんどの車は408号で筑波方面に左折する「宝田」の信号を直進して、県道161号線をひたすら走ると滑川の地に到着する。
 セブン・イレブンでサンドイッチと牛乳を買ったとき龍正院への道順を尋ねると、今しがた通過した信号のそばにあることが分かった。間違って寺務所の入り口を入った。獰猛なドーベルマンに吠え立てられ、早々に別の入り口へ向かった。
 観音堂の横の入り口から入って車を停めた。きれいに掃き清められた境内に人影が二人ほど見えた。キョロキョロと周囲を見回すと仁王門が見えたのでそちらに歩いていった。
 正面から仁王門を眺めていると、その横に駐車場があるのが分かった。どうやら間違ったところに車を置いたらしい。参拝客も少ないことでもありそのままにした。国の重要文化財に指定されている仁王門は、文亀年間(1501~1504年)に再建された。
 県指定の有形文化財の観音堂は、入母屋造で元禄9年(1696年)江戸幕府5代将軍徳川綱吉の寄進により再建された。
           
           観 音 堂
 そのほかにも老夫婦が手をつないだ“ぼけ封じ道祖神”や“夫婦松”といったいまどきのすぐ別れる男女の風潮の対極にある、死ぬまで添い遂げる古き時代の名残を強調したものまであった。それはそれでいいが“ぼけ封じ道祖神”などは、商魂のなせるものに思えてならない。
           
            ぼけ封じ道祖神
                
             
              夫婦松とその説明
 車の中でサンドイッチの昼食を終え、スタート前の用足しに車を出た。参道を歩む品のある年配の女性と眼が合い、うなずいて「こんにちは」と挨拶を交わした。トイレは、体の不自由な人との共用でキレイなものだった。車に戻る途中観音堂に眼をやると、くだんのご婦人は参拝中だった。ご婦人の後姿を眺めながら、最近は一人旅をすると気分が若やいで、何かしらロマンティックな夢想が多くなったことに気がついた。
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デジカメ持って小旅行「坂東三十三箇所霊場29番札所千葉寺(せんようじ)」

2009-01-27 11:24:46 | 旅行

          
 今年の一つの目標は、坂東三十三箇所の満願達成があり、手始めに地元から巡礼を開始した。坂東三十三箇所は、神奈川県、埼玉県、東京都、群馬県、栃木県、茨城県、千葉県にまたがる観音霊場のこと。
 源頼朝によって発願され、実朝が西国の霊場を模範として札所を制定したとフリー百科事典『ウィキペディア』にある。
 霊場めぐりといっても装束(しょうぞく)に身を固めるということにはならないが、いとも簡単に車での巡礼となる。この日は快晴に恵まれたが朝の冷え込みが残り、気温は思ったほど上がらない。
          
 千葉市中央区にあるこの寺の入り口は、車が一台やっと通れるほどの道幅で、回り込んで境内の裏手に停める。そこ迄行くのに民家の間の貸し駐車場や墓場を掠める必要があった。全体に雑然とした雰囲気に包まれたお寺だった。
 709年(和銅2年)この地を訪れた奈良時代の僧行基が十一面観音を安置したのが始まりといわれる。文化財として、イチョウの木(県指定天然記念物)と鋳銅梅竹文透釣灯籠(国の重要文化財)東京国立博物館所蔵がある。
             
              イチョウの木
 余談になるが、ここのトイレはキレイだった。建物は周囲から浮き上がっているが。
             
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ジャック・ロンドン「野生の呼び声」

2009-01-23 13:59:38 | 読書

            
 1オンス(約30g)の贅肉もなく、150ポンド(約68キロ)の体重は、すみずみまで闘志と気力にあふれふさふさとした毛並みは絹のような光沢で光っていた。それに幅広い胸と頑丈な前足は、体の他の部分とよくつりあっており、筋肉が皮膚の下で固く盛り上がっていた。この大きな体格と体重は、セントバーナード種の父親から受け継ぎ、外観はシェパード種の母親からのものだった。
 狡猾と知性も兼ね備えていた。狡猾さはオオカミのものであり知性はシェパードとセントバーナードからのものだった。その犬の名前は、バックと言った。彼はアメリカ西海岸サン・ディエゴから遠くないサンタ・クララ渓谷のミラー判事の大きな邸で気持ちのいい日向ぼっこをしていた。その彼に運命の転機が訪れる。
 アラスカで金鉱が発見され、一攫千金を夢見た人々が押しかけた。いわゆるゴールドラッシュである。極寒の地となればソリを牽く犬も必要とされ、ミラー判事の園丁マニエルよってひそかに売られる。
 ここから南国育ちのバックが、鞭と棍棒によって野性に目覚める旅が始まる。幾多の困難に耐えほとんど死に直面したときジョン・ソートンとのめぐり合いが一命をとりとめ、深い愛情の世界を内包しながら荒々しい野生の呼び声に応える。なかでもソートンとの人間と動物の情感の交感には強い感動を覚える。
 著者は、1876年1月サンフランシスコに生まれる。母はジョン・ロンドンと再婚する。ジョンは、農場労働者で生活は苦しかった。子供のころから家計を助けるために働いた。1896年カナダで金鉱が発見され一攫千金組みにジャックも加わったが壊血病にかかり一年足らずで帰ってくる。
 この貴重な体験がのちに作品の大きな助けとなった。この頃から作品が少しずつ売れるようになる。1916年11月22日、狂気の恐怖に駆られて自殺するまでの十六年間におびただしい作品を発表しているが、優れた作品はその割には少ない。この「野生の呼び声」は、著者27歳の作品で、1903年に出版され当時の人々の熱烈な歓迎を受け発売直後一万部を売りつくしたといわれている。
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隆慶一郎 「影武者 徳川家康」

2009-01-18 11:27:39 | 読書

            
 慶長五年(1600)陰暦九月(現在の十月)関が原の合戦において、家康は暗殺された。家康五十九歳のときだった。家康の死は密閉され、長い影武者の時代を経て、影武者の死とともに家康の本当の死が訪れることになる。
 一言で言えば非常に面白い読み物だった。戦国時代といえばスリルとサスペンスに満ちていて、下手なミステリーより格段に楽しめる。それにしても家康はチビだった。身長160センチにも満たずおまけに肥満で足が短い。いかつい顔で決してスマートとはいえない。
 しかし、この男めっぽう女には強く何人にも子を生ませていた。特に戦の前にはアドレナリンの分泌が性欲を促すのか、二十三歳の側妾お梶の方との濃厚な交わりに愉悦していた。
 一方影武者も家康によく似た体躯で、そっくりさんだった。そっくりなのは体躯ばかりでなく、性力も勝るとも劣ることはなかった。お梶の方も影武者との最初の交わりに、家康以上の喜びを味わったほどだった。
 セックスも当然だが、日常の生活そのものにも興味が尽きない。意外とこれらの記述が少ない。どんなものを食べているのか。どんなところで寝ているのか。武将以外の兵卒の食べ物やトイレ、寝場所などだ。多くの歴史ものは、飲まず食わずOKのサイボーグが戦っているのではないかと思わせられる。この本で合戦の後処理に触れてあったのはうれしい限りだ。
 著者の隆慶一郎は、大正12年(1923)東京赤坂生まれ。大学教授の職を経てシナリオライターとして活躍。60歳を過ぎて小説家となり、僅か5年の作家生活であったが読者に好まれる歴史小説を残した。1989年11月没。
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USエア機事故に思う

2009-01-16 16:59:02 | 社会
奇跡呼んだ機長の判断・技術…機内歩き脱出確認(読売新聞) - goo ニュース
 なぜか感動で涙腺が緩んだ。乗客の運命が機長の力量にゆだねられているのを痛感する。鳥がエンジン全部に飛び込んで飛行不能にする不運を、見事な着水で奇跡をもたらした。不運な日本経済の落ち込みを見事に操って奇跡の復活を実現する日本国のキャプテンはどこにいるのか。そんなことを思わずにいられない。
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ジョイス・キャロル・オーツ「生ける屍」

2009-01-13 06:23:50 | 読書

           
 Q・P(クウェンティン)は、自分の支配下に置きたいゾンビを探していた。医学書からその方法を学んだ。
 “患者の麻酔が効いたところで、親指と人差し指で患者の上まぶたをはさみ、眼球からじゅうぶん離す。次に、皮膚やまつげに触れないようにしながら、白質切断用メスを結膜に差し、そのまま先端が眼窩の底に当たるまで突き進める。
 それから手術台の脇に片ひざをつき、メスの向きを鼻梁の骨に対して平行を保ちながらわずかに中線のほうに変える。五センチの印のところまで来たら、眼窩の幅いっぱいにメスの取っ手を横に動かし、前頭葉の底の繊維組織を破壊する。
 それが終わるとメスを元の位置の途中まで戻し、やはりメスの動きに細心の注意を払いながら、上まぶたのふちから七センチの深さまで突き刺す。そうして片ひざをついた状態で患者の横顔を撮影する。この手術については、これ以上に精密なやり方はない。
 次に視神経のある部分に移る。動脈がすぐそばにある。メスを全額面に入れたまま、顔の中央に向けて十五度から二十度、横方向に約三十度動かして、中央位置に戻す。最後に、まぶたに相応の圧迫を加えて出血を防ぎつつ、ねじりながらメスを引き出す。次はもう一方の目だ。新たに殺菌してから同じメスを用いる”
 Q・Pは、ページを切り取りながら勃起するほど興奮した。Q・Pは三十一歳の白人で精神異常者ではあるが、大学に通う目立たない一人の男だ。同性の若い男が性的嗜好の対象になり、ゾンビの候補者だ。
 巻末解説には、異常な心の闇について書いてあるが、わたしにはよく分からない。この小説にはモデルがいる。ジェフリー・ダーマー1960年生まれ。白人の同性愛者。逮捕される1991年まで十七人の男性を殺害し遺体を切り刻んでは食べていたという。楽しい読み物ではない。
 著者は、1938年ニューヨーク州生まれ。別名義のサスペンス小説も含め、多数の著作でアメリカ社会のダークな側面を描きつづけてきた。全米図書賞、O・ヘンリー賞をはじめ、数多くの文学賞に輝き、ノーベル文学賞の候補にもあげられた。本書はブラム・ストーカー賞を受賞
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映画 デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ「アメリカンギャングスター(’07」

2009-01-09 10:00:18 | 映画

           
 これは実話だそうだ。ニュージャージーの警官リッチー(ラッセル・クロウ)は、まれに見る高潔な男だった。麻薬ディーラーの車のトランクを開けると、おびただしい現金の束が見つかった。相棒は横取りしようと言うがリッチ―は頑として譲らない。同僚からはあまり歓迎されない。
 しかし、上層部はリッチ―に麻薬特捜班を任せる。ニューヨークの黒人の裏社会で絶大な権力と人気を誇っていた男が死んだ。その男に長年仕えてきたフランク(デンゼル・ワシントン)がその跡を継いだ。
 時はベトナム戦争真っ只中。フランクは軍を利用して純度100%のコカインを密輸入する。莫大な利益を上げ豪壮な邸宅に母親や兄弟やいとこを呼び寄せて、男どもには仕事を手伝わせていた。ニューヨークの悪徳刑事トルーポ(ジョシュ・フローリン)に金を巻き上げられるのは授業料と思うことにした。
 しかし栄華は長く続かない。リッチ―の地道な捜査が実を結ぶときがきた。日曜礼拝を終えフランクが表に出たとき、教会の周囲は制服警官で包囲されていた。向かいの舗道の車に寄りかかって、にやついているリッチーと眼が合った。
 リッチ―の追及は厳しく、ギャングの逮捕だけでなく悪徳警官にも及んだ。こういう裏社会と司法機関を描くのはよくあるパターンだけに一歩間違えば失敗作になる。わたしは失敗、成功のどちらでもないと思う。中途半端の印象が強い。
 まず、登場人物が多すぎる。ギャングにデンゼル・ワシントンでいいのだろうか。画面から悪の匂いが漂ってこない。白昼借金を返さない男を、街中で射殺するという無法地帯を思わせるシーン。導入部で、路地で男にガソリンをかけライターで火をつけるシーン。これらでギャングの非情さを出そうとしているのか。イタリアン・マフィアになった俳優も迫力不足だ。2時間30分はチョット長い気がする。 監督 リドリー・スコット1937年11月イギリス・サウスシールズ生まれ。’79「エイリアン」が世界的ヒット、SFの‘82「ブレードランナー」で地位を確立。’91「テルマ&ルイーズ」でアカデミー監督賞にノミネートされた。‘01の「ハンニバル」も世界的ヒットになった。
 キャスト デンゼル・ワシントン1954年12月ニューヨーク州マウントバーノン生まれ。’87「遠い夜明け」でアカデミー助演男優賞ノミネート。’90「グローリー」でアカデミー助演男優賞受賞。‘01「トレーニング・デイ」でシドニー・ボワチエ以来黒人俳優二人目のアカデミー主演男優賞を受賞。
            
 ラッセル・クロウ1964年4月ニュージランド・ウェリントン生まれ。’00「グラディエーター」でアカデミー主演男優賞を受賞。‘01「ビューティフル・マインド」でも主演男優賞にノミネ-トされる。
            
 ジョシュ・ブローリン1968年2月カリフォルニア・ロサンゼルス生まれ。主な出演者として、それぞれの作品で存在感を示す。
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映画 ジョン・トラヴォルタ「WILD HOGS/団塊ボーイズ(’07)」

2009-01-05 11:28:53 | 映画

           
 誰にでも訪れる危機。特に中年に差し掛かった男にとっては看過し得ない問題で、人生の転換点に立つ男が呻吟する問題だろう。いささか大げさか!
 つまり「このまま人生を終えていいのだろうか」カミさんやこどもにすがりつかれて「妻や子供を養うだけの人生。もっと違う夢を見ていたのではないか」「結婚生活が思ったほど楽しくない。なるほどセックスはただだけど」でも自由がない。 そんなことを言っていれば、妻や子供の立場からも同じことが言える。それに気づかない男の自分勝手でわがままな性根がハーレーダビッドソンを駆ってアメリカ大陸横断の旅に出立した。
            
 ウディ(ジョン・トラヴォルタ)ダグ(ティム・アレン)ボビー(マーティン・ローレンス)ダドリー(ウィリアム・H・メイシー)背中にWILD HOGSのロゴをつけた革ジャンにサングラス。いくつになっても男は子供っぽい。携帯電話をかなぐり捨てて、草原地帯をはるか彼方の地平線を目指す。
 この映画の監督ウォルト・ベッカーは、現代の西部劇を作りたかったという。そうなると、ならず者集団との対決を入れなくてはならない。これはチョット陳腐だろう。バイク好きの監督がバイクの映画を作った。バイクをただ走らせるという純然たるロード・ムービーでも良かったのではと思う。わたしはそんな期待をしていた。
 それにしても、あの一直線の道路は、眠気に襲われそうで走ってみたいと思うし反面かったるい思いもある。むしろ日本の道路のほうが変化もあって面白いと思う。アメリカ人はいつも広い道路を走っているせいか、ハワイ島のヒロへ行く83号線の曲がりくねった道を走ると大威張りするとなにかの本で読んだことがある。それはともかく、この映画はコメディでひとときを楽しめればいい。
 監督 ウォルト・ベッカー1968年9月ハリウッド生まれ。この映画は三作目で、ヒットしたようだ。
 キャスト ジョン・トラヴォルタ1954年2月ニュージャージー州イングルウッド生まれ
 ティム・アレン1953年6月コロラド州デンヴァー生まれ
 マーティン・ローレンス1965年4月ドイツ・フランクフルト生まれ
 ウィリアム・H・メイシー1950年3月フロリダ州マイアミ生まれ‘94「ER緊急救命室」でモーゲンスターン部長を演じて注目される。’96「ファーゴ」でアカデミー助演賞にノミネートされる。
 マリサ・トメイ1964年12月ニューヨーク市ブルックリン生まれ‘92「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を受賞
           
そのほかにレイ・リオッタ、ピーター・フォンダらが出ている。
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ローリー・アンドリューズ「遺伝子捜査官アレックス/復讐の傷痕」

2009-01-02 06:17:06 | 読書

           
 本のタイトルが遺伝子捜査官となっているが、権限を持っているわけではない。AFIP(米軍病理学研究所)に勤務する民間人のアレクサンドラ・ブレークは、ブルーの目、魅力的なハート形の顔、着古した茶色の革のジャケットが運動選手のような引き締まった体を包み、ぴったりのジーンズが一層魅力的にしている。
 彼女はコロンビア大学で遺伝医学を学び、医師免許と博士号を取得していて、AFIPでは細菌戦争を食い止めるワクチンの開発に従事している。ところがたびたび科学捜査に引きずりこまれる。そんなことで捜査官のような仕事をすることになる。
 今ベトナムから頭蓋骨の返還を求められている。ベトナム戦争当時、米兵は北ベトナム兵の頭蓋骨を持ち帰ろうとした。税関で押収されてAFIPに保管されているが、グロテスクな絵や上部を切り取って灰皿にしたもの、ネオンカラーに塗られいたずら書きで覆われてっぺんに開けたいくつもの穴にろうそくが突き刺してあるという代物だ。
 このまま返還することは出来ない。それなりの体裁が必要だろうということで、副大統領の提案でホワイト・ハウスの公式行事として返還式が行われることになった。アレックスは頭蓋骨の整備を命じられる。アレックスには意外な展開が待ち受けていた。
 ベトナムで手広い事業を行っていた会社の会計士が殺される。しかもアレックスまで殺されそうになり返還式当日には頭蓋骨が爆発するというスリリングな場面もあって読み応えがあった。著者(Lori Andrews)は、法医学と遺伝子学の専門家であり、国際的にその名は知られている。アメリカ政府によるヒトゲノム計画では、連邦諮問委員会で法的、倫理的、社会的影響の審議責任者を務めた。
 シカゴ・ケント大学終身教授。その一方で、2006年には「遺伝子捜査官アレックス/殺意の連鎖」で作家デビューを果たした。この経歴を見ると、かなり堅物の印象だが、なんのなんの、アメリカ人の長所、ユーモアセンスも十分身につけている。
 ベトナム出身の精神科医トロイとカフェテリアでの会話。
“「ここの霊長類の注意をひきつけたようだな。こんなに大勢のオスに囲まれて毎日過ごすんでは、気が滅入らないか?」
アレックスは、皮肉を言い返したくなる衝動を抑え、この質問を真剣にとらえることにした。
「本当のことを言うと、私が嫌なのは、彼らのポーカーフェース。なにを考えているのか、読めないのよね」
 彼女は、話しながら手振りを交え、眉毛を上げ、微笑し、鼻にしわを寄せた。「きみとは大違いだ」トロイは言った。「きみの表情は交響楽を奏でているようだからね。鼻と顎の間だけでも」“
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