2009年にフランス、リヨンで一滴の血も流さず約17億円を積んだ現金輸送車を持ち去ったという実話。
鮮やかと映ったのかフランス国民から熱狂的な支持があったらしい。日本でもかつて東芝の給料を輸送していた車から、白バイ警官に化けて一億円を強奪した事件も、鮮やかさに感心させられた雰囲気が漂ったことがあった。この事件は迷宮入りして時効になった。 フランス国民も同じような気分になったのだろう。
しかし、映画的にはまったく面白くない。よく分からないところもあって淡々と描くだけ。持ち去ったのは現金輸送車の警備員トニ・ミュズラン(フランソワ・クリュゼ)。
フランソワ・クリュゼの名前に記憶はないだろうか。そう「最強のふたり」で重度の障害者に扮した俳優だ。どこかダスティン・ホフマンを連想させる。
そのトニは、借りたガレージに17億円を運び込んだ。しかし、動機や目的、行動がよく分からない。考えられる動機として警備会社への不満。かなり仕事はきつかったらしいが。目的はぜんぜん不明。
警察は貸しガレージから13億4千万円を発見する。残る3億6千万円は行方不明。ところが獄中で新聞記者にガレージの壁に隠したと告白。確かにガレージで建築用コンクリートブロックを積み上げていた。奪ったお金はそっくり返して、自分は5年の刑で刑務所暮らし。いったいぜんたい、なんでー? と言いたくなる。
警備会社でまじめに10年働きこつこつと貯め不動産投資信託で殖やし、酒もタバコもやらない。ダンスなんて一度も踊ったことがない。女性関係が派手でもない。そして、トニはテレビの音声を日本語にして観ている。なんのために? なんのために現金を強奪したのか? 変人は確かだ。
こんな場面がある。刑事が口述書にサインを求めた。トニは言う「サイン拒否と書いてくれ」。
トニのこと以外に気づいたのは、フランスの現金輸送車には、拳銃を携帯した警備員が配されるということ。そうか日本以外の国は物騒なんだ。ということは日本人はぬるま湯に浸かっているということか。フランス旅行はくれぐれも気をつけて!
映画がつまらないといっても実話だから面白くしようがないのかもしれない。それなら映画化しなくてもいいんだけどなあ。お金の無駄遣いって、このことかも。観た私も無駄遣いだった。劇場未公開で納得。
監督
フィリップ・ゴドー
キャスト
フランソワ・クリュゼ1955年9月パリ生まれ。
プーリ・ランネール