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読書「殺し屋ケラーの帰郷HIT ME」ローレンス・ブロック著2014年二見書房刊

2022-11-28 17:07:55 | 読書
 ようやく「殺し屋ケラー」3部作を読了した。前作で罠にはめられ全国指名手配犯として追われる身となり、ニューヨーク ハドソン川近くの居心地のいいアパートメントにも居られず、ルイジアナ州ニューオーリンズに流れ着いたケラー。

 そこで巡り合ったのがジュリア。ニューオーリンズ市内の小さな公園で、レイプされようとしていたジュリアを救ったのがケラーだった。犯人の男は、ケラーの腕で首の骨を折られて死んだ。ジュリアは、「命の恩人」と何度もケラーに言った。しかし、目の前で人を殺したケラーにとって、ジュリアに何らかの説明が必要だと感じた。

 そこで包み隠さず自身の生業を告げた。ジュリアは動じなかった。しかも、結婚まで踏み込んだ。ケラーもドニーというリフォームを請け負う男を師として、リフォーム会社を経営するまでになった。

 そして趣味として子供の頃からの切手コレクションを再開する。生粋のニューヨーカーのケラーも、ここニューオーリンズが大いに気に入っているようなのだ。
 「ケラーはよく歩いた。アメリカでは珍しいことだが、ニューオーリンズは歩行者に優しい街だ。歩き回れば、見て面白いものを発見できるだけではない。ニューオーリンズの人々は――赤の他人でも――すれちがうと笑みを浮かべ、温かみのある言葉を交わしあう。ハリケーン・カトリーナ以降は路上犯罪が明らかに問題になっており、笑みを浮かべたり温かみのある言葉を口にしたりしない輩が、銃を持ったホールアップ強盗に変身することも少なくなかったが、それでも大半は遵法精神豊かな市民だ」というような記述もある。

 しかし世の中、義理というものからなかなか逃れられない。ケラーも可愛い娘ジェニーを授かった身であっても、古からの友人ドットからの電話を無視することはできない。標的をどうするかということもあるが、切手の蒐集もしなければならない。

 ケラーがピンセット片手に切手コレクションの鑑定や整理に入ると、無我の境地をさまようようなのだ。著者のローレンス・ブロックが、切手蒐集が趣味のようで、記述が細かくそれが趣味でもない私には苦痛だった。

 ケラーが切手の鑑定に訪れたのは、ワイオミング州シャイアンに住む切手蒐集家の未亡人ディニア・ゾダリング夫人宅だった。どこの国も同じ、鑑定人というプロを選ぶのは素人には荷が重い。善人ですというプレートをぶら下げているわけでもない。

 特にディニア・ゾダリング夫人にとって、夫の遺産“切手コレクション“をどうするかは頭の痛い問題だった。そんな時、風の便りというか知人の知人の知人というコースをたどって行きついたのがケラーというわけ。

 かつてケラーの買い取ったコレクションが、思った以上に高値で売れ、3,500ドルをエディス・ヴァス・リックス夫人に戻した。善行も口コミで伝わっていく。

 さて、ディニア・ゾダリング夫人のコレクションを、三社で競わせ思った以上の高値になった。夫人はケラーの愛娘ジェニーのために10万ドルを信託に預け、ジェニーが大学生になったとき受け取れるようにすると言ってきかなかった。

 そして夫人が造ったテキサス州やメキシコの料理のチリコンカン。絶品だったとケラー。ディニア・ゾダリング夫人の料理のコツの蘊蓄は、豆を飲み残しのコーヒーで煮ること(飲み残しがなかったら新しくコーヒーを淹れればいい)とクミンを使うことだそうだ。

 ちなみにこのチリコンカンのレシピは、牛や豚のミンチと豆とトマトを煮込んだもので、使うスパイスで味が決まるようだ。ネットでチリコンカンのレシピを見るが、クミンを使うレシピは意外に少ない。

 クミンはいいね。私がこのクミンを知ったのは、ルイジアナ名物料理「ジャンバラヤ」を作ったときで、香りと味のうま味にクミン大好き男になった。今では、ハンバーグ、ミンチかつ、コロッケなど、なんでも入れる。

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海外テレビドラマ「主任警部モース Inspector Morse」1987年ITV系列で放送された。

2022-11-24 20:28:21 | 海外テレビ・ドラマ
 オックスフォードシャー、キドリントンのテムズ・バレイ警察本部CID(警察刑事捜査課)所属の主任警部モースは、プッチーニのオペラ「トスカ」を大音量で聴きながらジャガーマーク2のハンドルを握り、幾多のクラシック音楽とウィスキーとビールをこよなく愛し、エドモンド・スペンサーやジョン・ウィルモットの詩集に親しみ、ミルトンの「失楽園」の一節を朗唱する教養人ではあるが、暇を見つけては女性に色目を使う初老の独身男なのだ。

 ずる休みがしょっちゅうのようで、上司の警視正からは小言の嵐。ある捜査の過程で女性三人がシェアする住宅を訪問した際、その中の女子学生が持つエドモンド・スペンサーの「妖精の女王」の本を見て、“気高き騎士は、野へ進みゆけり“と詩の一節を口ずさむ。

 “刑事と詩“なんて取り合わせが奇妙に映ったのか、その女子学生は「警部さんが詩を?……」と目を丸くする。以後彼女は「チャーミングな警部さん」と言うようになった。

 このモース警部を演じるのは、1942年イングランド生まれのジョン・ソウ。本作で英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を1990と1993年の2回受賞している。その彼は、2002年2月食道がんのため60歳で他界している。

 モース警部は酒飲みの上、仕事の合間に女性をランチやディナーに誘ういわば普通の男だが、捜査能力は高く、パートナーの巡査部長ルイス(ケヴィン・ウェイトリ)ともども事件を解決していく。

 この作品は、1987年に放送されているので当時の治安状況が想像される。モース警部もルイス巡査長も拳銃の携帯はない。最近作られた作品を観ていると、刑事は必ず拳銃を携帯している。しかも、どの国も。治安の悪化が世界的に蔓延している証左なのだろう。

 後にルイスを主役とした「オックスフォード・ミステリー・ルイス警部」やモースの若いころを想定したスピンオフ作品「刑事モース~オックスフォード事件簿」も作られている。
 「刑事モース~オックスフォード事件簿」は観て損はない。主演のショーン・エヴァンスが味わいのある演技で好感が持てる。
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海外テレビドラマ「ライン・オブ・デューティLine of Duty汚職捜査班シーズン6」2021年ITV制作BBCが放送

2022-11-16 20:24:57 | 海外テレビ・ドラマ
 2012年から始まったこのドラマ、警察内部の汚職や不正を摘発する嫌われ者の部署AC-12汚職捜査班が主体となる。ターゲットになるのはいつも警部とか警部補というリーダーたち。経験豊富な彼らと対峙するには、物事を理解する力、ことの本質を見抜く力、発想の豊かさ、迅速性を持つ、自身の感情をコントロールできる、不測の事態に対処できるという資質が求められるが、一人で全部を持っている人はごくわずか。

 人は補い合って成果を上げる。AC-12にもボス役のテッド・ヘイスティングス(エイドリアン・ダンバー)、スティーブ・アーノット(マーティン・コムストン)、ケイト・フレミング(ヴィッキー・マクルア)が演じそれぞれの特色を出して、脚本の良さと相まってBBC Twoでの最高の視聴率を残したと言われている。

 引用すると「2021年6月26日にBBC Twoで放送を開始すると、その先の読めない展開でBBC Two史上最高の視聴率を獲得し、シーズン4からはBBC Oneで放送が開始。
 シーズン6は2020年2月から撮影が開始するも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で撮影が中断。9月から撮影が再開され、2021年3月21日にBBC Oneで放送が開始。
 ついに、「H」の正体が明らかになったシーズン6最終話は平均1,280万人が視聴。
イギリスBBCによると、1つのエピソードの視聴人数としては、1,320万人が視聴したITVで放送のドラマ「Heartbeat」以来の最高記録。 
 900万人が視聴したシーズン5最終話から400万人も上回る結果になりました」とある。
 
 シーズン6の緊張感は素晴らしい。私は毎晩、夕食にアルコールを少々たしなみ、就寝前にパソコンで主に欧米のドラマを観るのを習慣としている。大概のドラマは途中で眠くなるのだが、「ライン・オブ・デューティ」はすっかりと酔いが覚めてしまう。いいドラマなのだ。

 シーズンごとにある尋問場面の迫力は見逃せない。すべての捜査官に共通するあらかじめストーリーを描き、それに沿った尋問という印象が強いが。シーズン6の幕切れから、この最終話でシリーズは終わった。 と思ったが、シーズン7の噂もあるようなのだ。期待したいが、どうなることやら。

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季節の移ろい「紅葉は樹のどこから始まるのだろうか?」

2022-11-10 10:30:57 | 季節
 昨日(11月9日)午前10時ごろから近くの遊歩道でウォーキング&ジョギングを楽しんだ。樹々の多くは紅葉が進んでいて、穏やかな日差しの中で季節の終わりを彩っている。

 私のウォーキング&ジョギングは、自宅から4分ほど歩いて遊歩道に達し、そこから走り始めて9分ほどで跨線橋で1回目が終わる。跨線橋の先は砂利道が続く。転倒が怖いからここは歩く。

 以前転倒して脱臼した経験がある。さらに今年のゴールデンウィーク、後頭部を自宅で打って内出血、血を抜く手術を二回という経験は、転倒に細心にならざるを得ない。

 そんな中でなぜか気がついたのだ。樹の下部から紅葉が始めっている樹が目に入った。紅葉は樹々の上から、あるいは枝の先からと思っていたが、樹にもいろんなタイプがあるのか。ネットで調べても樹々の上、枝の先というのが説明なのだ。この樹は来年どうなるのか見極めてみたい。

 道はこの樹から舗装された上り坂で、ここからかなり歩く。下り坂にかかると、軽くジョギング。あとは少しの歩きで自宅に到達する。  
 所要時間50分程度。歩数約7千歩。ある医師の忠告では、1万歩は歩きすぎ、せいぜい8千歩。私のウォーキングは、その範囲。ウォーキング&ジョギングは、爽快な気分で終わる。

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読書「殺し屋 最後の仕事HIT AND RUN」ローレンス・ブロック著2011年二見書房刊

2022-11-06 09:16:56 | 読書
 殺し屋稼業を引退したいと思っていたケラーに舞い込んだのは、アイオワ州の白人の男が標的の依頼だった。その男も確認してるが、どういうわけか実行の延期命令が続く。そんな中重大ニュースが飛び込んできた。

 オハイオ州知事ジョン・テータム・ロングフォード暗殺事件だった。ジョン・テータム・ロングフォードは、フットボールのラインバッカーで鳴らしプロのチームにも入ったがひざを痛めて退団、ロースクールに進んだカリスマ性を備えたハンサムな黒人男だった。アイオワ州には大統領候補として遊説中だった。全国的重大ニュースとして耳目を集めていた。

 ケラーはドットに電話した。二人の意見は、どうも変で罠かもしれないというものだった。それがハッキリしたのは、テレビ画面に指名手配犯としてケラーの顔が映し出されたからだ。

 こうなると人に顔を見られるのは大変危険だ。どのようにしてニューヨークに帰るか。飛行機や長距離バス、電車は危ない。今乗ってるニッサンのレンタカーしか選択の余地がない。このようにしてロード・ノベルの様相を呈し、インターステートを避け国道を走ることになる。

 アイオワ州の北の州境に接するのは、ミネソタ州でそこはカナダとの国境に接している。平面な地図を見るとアメリカ合衆国の上の位置にある。ニューヨークまでかなりの州を横断しなければならない。全国チェーンのモーテルを避け、地元の個人が経営するモーテルを探して泊まったり、レストランにも入れないのでドライブスルーで食品を購入したりしてニューヨークの自分のアパートメントに到達した。
 ここも安全ではなかった。FBIか警察かわからないが、部屋が徹底的に捜索された痕跡がある。ケラーは放浪の身の上となった。

 そしてたどり着いたのがルイジアナ州ニューオーリンズだった。しかもジュリアという女性とも出会ったのだ。ニューオーリンズの街を歩いていると公園の中から「助けて」という女性の声。ケリーの足が自然に動き走っていた。

 男が女に覆いかぶさるような格好だった。ケリーに気がついた変態男がナイフを取り出した。それに怯えるケリーではない。ナイフを持った手を足でけり上げると、ナイフがどこかへ飛んで行った。首に腕を回して揉めていると男はぐったりした。首の骨が折れて死んだのである。警察への通報は避けて、その場に放置した。命の恩人だというジュリア、後で自らの立場をジュリアに説明するケラーだった。

 理解したジュリア、二人の関係は急速に親しくなっていく。ルイジアナ州はテキサス州の隣でメキシコ湾に面している。ニューオーリンズは食の街といってもいい。
 その辺を本の文章を拝借しよう。「ケラーはここ数年間のあいだにニューオーリンズを二、三回訪れたことがあり、カフェ・デュ・モントで出されるベニエ(四角形のドーナッツ)やチコリコーヒー(チコリの根の入ったコーヒー)の味が今でも忘れられなかった。しかもそれはタバスコの瓶のふたに過ぎない。ニューオーリンズの名物料理のほんの一端に過ぎない。

 ガンボスープ、オクラを入れスパイスを利かせたルイジアナ特有のシーフードシチューを食べずして、ニューオーリンズを去ることなど、果たして人間に出来るものだろうか。あるいは、レッドビーンズ・アンド・ライス、赤インゲン豆と豚肉のシチューをライスの上にかけた料理やオイスター・ポーボーイ・サンドウィッチ、カキフライのサンドウィッチやジャンバラヤ、ルイジアナ特有の炊き込みご飯やクロウフィッシュ・エトフェ、ザリガニのシチューをご飯の上にかけた料理といった、ニューオーリンズではたいていどこの店でも食べられても、ほかの地域では決して出されることのない素晴らしい料理を味わうことなしに別の地域に行く? 出来ない」そんなわけでケラーはこの地に落ち着こうとしていた。

 しかし、やり残しの仕事があるんじゃないかな。罠にはめたヤツを探し出すということを。ローレンス・ブロックはそれを忘れることをしなかった。このケラーというネーミングだが、英文でKELLERだからKILLERS殺人者のもじりではないかと思っている。いつものように冗談多いけど面白く読了した。

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