Wind Socks

気軽に発信します。

うつ病の家族が起こす喜劇「クロッシング・マインド消えない銃声」2017年制作 劇場未公開

2017-12-31 16:11:25 | 映画

            
 実に分かりづらい映画で劇場未公開はうなずける。観終わって場面と場面をつなぎ合わせるのに苦労する。二女エリサ(ライリー・キーオ)がアイランド・キッチンでコーヒーを淹れてトルーマン・カポーティ著「ティファニーで朝食を」を指でなぞる。画面はここでカット。

 ずいぶん時間がたってからコーヒーを淹れるシーンから「ティファニーで朝食を」をなぞり、リビングを通って恋人の男がいる部屋へ。こういうカット割りには戸惑ってしまう。「ティファニーで朝食を」の本をなぞるまでのカットは必要ない。その意図が見えない。随所にこういうカット割りがあるから見る側からは混乱しかない。映画のテーマもうつ病だから、こちらもうつ病になりそうだ。

 ただ「ティファニーで朝食を」は、マンハッタンで暮らすポリーは華やかな世界に生きるパーティガール、いつでも自由気まま富と贅沢が大好きでお金持ちの男性との結婚を夢見ている女のお話。エリサの憧れる生活を示唆しているのかとも思う。

 それはさておき大きなお屋敷に住む家族は、母親ナンシー・グリーン(キャサリン・キーナー)、長男マックス(アントン・イェルチン)、長女マデライン(アニー・スターク)、二女エリサ(ライリー・キーオ)、三女リリー(ケイトリン・デヴァー)だった。それが今住んでいるのは母親のナンシーと三女のリリーだけ。リリーも精神科医にかかる軽度の病気を持っている。映画はこのリリーを中心に展開されていく。

 やがて家族がそろう時が来る。自殺未遂を起こしたマックス、出戻りのマデライン、歌手として成功しているエリサたちの帰宅。母親ナンシーのレズ、マックスのゲイという意味は何だろう。

 屋敷の近くにある木の橋の真ん中から、車が落ち込んでいるのをナンシーが発見する。男を引っ張り出して名前を聞く。「フランク・ハーパー」と名乗る。「警察に連絡する」と言って屋敷に戻り受話器を上げたが考え直す。拳銃を取り出して男のもとに戻って射殺する。それは今しがた二女のエリサから告白されたのが「フランク・ハーパーからレイプされた」だった。

 そしてマックスが拳銃を入れた袋を外のゴミ箱に捨てて、みんなで屋敷を後にする。いったいどこへ行くのだろうか。うつ病に限らず普通の家族とは言えない。

 オープニングで次のキャプションが出る。「人間は悲しみや激情から自らを守るために心の中に防波堤を築く。愛や仕事や家族、信仰に友情、否認、アルコール、ドラッグ、薬物療法それがいかなる手段であれ我々は生きている間、壁を築いていく。“躁うつ病を生きる”ケイ・レッドフィールド・ジャミソン」

 これをテーマにしたピア・ベダーセンは、出自未詳で本作では脚本・監督を務める。もともとは上級プロデューサー。

 エルビス・プレスリーの孫ライリー・キーオ、女優のグレン・クロースの娘アニー・スタークなど次世代を担う人もいるが、祖父や母を越えられるか。

 この映画が分かりずらいのは当然、うつ病がテーマだから健常者にはムリと言っているようだ。さらに邦題の「消えない銃声」の意味がさっぱり分からん。
  
監督
ピア・ベダーセン出自未詳

キャスト
キャサリン・キーナー1959年3月フロリダ州マイアミ生まれ。
アントン・イェルチン1989年3月ソ連、レニングラード生まれ。2016年6月19日自宅で自分の車と門に付いている郵便受けに挟まれて死亡。27歳だった。
ケイトリン・デヴァー1996年12月アリゾナ州フェニックス生まれ。
ライリー・キーオ1989年5月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。
アニー・スターク1988年4月コネチカット州生まれ。
モリー・シャノン1964年9月オハイオ州生まれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ショーン・ペン監督作品を一気に観る「インディアン・ランナー」「クロッシング・ガード」「プレッジ」

2017-12-27 16:40:11 | 映画

 2016年ショーン・ペン監督作品で劇場未公開の「ラスト・フェイス」を見た後、これが5作目だと知った。ほかの作品を観ていないとは……。

1991年制作「インディアン・ランナー」
 この映画は、ブルース・スプリングスティーンの曲「Highway Patrolman」が基になっているという。
「私の名前はロバーツ。州の仕事をしている。誇り高い仕事を誇りに思っている。フランキーという名前の弟がいる」こういう歌詞をカントリー・ミュージック風で歌う。これがそっくりそのまま物語に展開する。

 1965年ネブラスカ州の冬、パトロール警官ジョー・ロバーツ(デヴィッド・モース)は、雪原の中の道路を逃げる車を追跡していた。急停止した車から降りてきた男が発砲した。ロバーツは、ライフルの照準を合わせて引き金を引いた。一発で相手の心臓を撃ち抜いていた。正当防衛とはいえロバーツの心に深い傷が刻まれた。

 ベトナムの戦場から帰還した弟のフランク(ヴィゴ・モーテンセン)も心に傷のある男だった。ジョーは真っ当な仕事を懸命にこなしているが、フランクはなげやりで喧嘩早い。同じ苦悩を抱えていても対照的なふたり。この世はヒーローとアウトローしかいない。

 妻の出産の日、フランキーはどこかへと旅立った。兄弟でも相容れないものがある。ましてやこの世は地獄だ。 と言いたげなフランキー。
  
1995年制作「クロッシング・ガード」
 娘を交通事故で亡くしたフレディ(ジャック・ニコルソン)は、その事実を直視できない。服役している犯人ジョン(デヴィッド・モース)を殺すことしか考えていない。そんな夫と別れた妻メアリー(アンジェリカ・ヒューストン)の「娘のお墓にも行っていないでしょ?」の問いにも「行ったよ」とは言うが「墓に刻まれた文句は?」「墓石の色は?」「丘の上? それとも木陰?」「墓石は埋め込み式だった?」フレディはこれらには答えられない。嘘をついているからだ。

 ジョンが6年の刑期を終えて出所した。ジョンは実家の庭のモーターホームに住んでいる。そこへ乗り込んだフレディ。銃を突きつけたが弾が入っていない。なんというドジ。ジョンはその隙に飛びかかってもこない。フレディは、「3日後に来る」という捨て台詞。

 やってきた3日後、アルコールをしこたま飲んでいるフレディ。モーターホームの前で座り込んでいると、ライフルを持ったジョンが現れる。覚悟をしたフレディが「ああ、撃てよ。いいよ」。やにわにジョンは、ライフルを投げ出して走り出した。あのライフルには弾が入っていなかったのだろう。

 路地や庭、大通りを抜けて走り続ける。それを追うフレディ。やがてフレディの娘エミリーの墓に倒れこむジョン。エミリーの墓は、埋め込み式だった。色はピンク。それを見降ろすフレディは、やっと現実を受け入れることが出来た。

「クロッシング・ガード」は交通指導員のこと。朝の登校時に交差点で交通整理を行う。人生には青信号も赤信号もない。自らが選ぶ必要がある。この映画もブルース・スプリングスティーンの「Missing」がテーマ曲。
  
2001年制作「プレッジ」
 プレッジは堅い約束を意味する。6時間後に定年を迎える刑事ジェリー(ジャック・ニコルソン)は、自身の送別会の最中、少女が殺された事件が発生する。周囲はもう定年だからほかの人間に任せたら? 

 ジェリーは根っからの仕事人間だった。雪の降りしきる事件現場で「ボタンを鑑識に回せ」と鋭い着眼点も見せる。遺族に顛末を話すのをみんなが嫌がる。それを引き受けたのがジェリー。泣き叫んだ遺族の母親から「神に誓って犯人を捕まえろ」と約束させられる。

 そして容疑者としてトビー(ベニチオ・デル・トロ)が連れてこられる。取り調べて「殺した」とは言うものの「誰を?」「いつ?」「どのように?」が不明。それでも警察は留置を決め警官が連れだした。その時トビーはその警官の銃を奪って口にくわえて拳銃自殺を果たす。警察はトビーを犯人と決めつけて一件落着。

 腑に落ちないジェリーは、退職後もガソリンスタンドを買い取って犯人を待ち伏せる。殺された少女が描いた絵、背が高く黒い服を着てバンのような車が描いてある。唯一の手がかりと言ってもいい。

 ガソリンを売る合間に池でマスを釣ったりする、そんな日常の中にレストランのローリー(ロビン・ライト・ペン)と親しくなる。子持ちのローリーにはクリシー(ポーリン・ロバーツ)という娘がいる。少女殺人事件が頭の中で大部分を占めているジェリーにとってクリシーは目が離せない存在となる。

 夜はベッドで絵本を読んで聞かせる。そういう風景を見るローリーにとって、別れた暴力亭主との違いに心が動く。その暴力亭主に襲われてけがをしたローリーが娘を連れて夜中、ジェリーの家に飛び込んでくる。これがきっかけとなってジュリーの強い勧めもあってローリー親子も引っ越してくる。まるで新しい所帯を持ったようだ。

 そんなある夜、クリシーから「魔法使いからチョコのヤマアラシを貰った。明日またくれる」と言う。それを聞いたジェリーは「こいつが犯人だ」と確信する。二人の秘密にしようと言って場所を聞く。近くのピクニック広場だ。

 自転車で広場に行ったクリシーを遠巻きに警察のスタン(アーロン・エッカート)やSWATの数人が待ち伏せする。犯人がなかなか現れない。車が一台勢いよく広場に止まる。降りてきたローリーがジェリーをなじる。「クリシーをオトリにして人でなし」罵詈雑言の嵐。

 引き上げるスタンが目にしたのは、トラックと正面衝突をしたバンの燃え盛る現場だった。多分、このバンに乗った男が犯人だと示唆しているように思われる。それとは知らないジェリーは、気がふれたのか閉店してボロボロになったガソリンスタンドで独り言を繰り返す姿があった。
  
 以上三本のショーン・ペン監督作品であるが、登場する男の性格描写を「インディアン・ランナー」のフランク、「クロッシング・ガード」のフレディ、「プレッジ」のジェリーともども頑固で一徹、そして風変わり。しかもすべて悲しみに覆われている。ショーン・ペンは悲しみの美学を描きたいのだろうか。

 「プレッジ」のジェリーは頭がおかしくなるが、はたして長年刑事をやった男が恋人のなじりに対してそういう状態になるだろうか。これなんかよく分からない部分だ。映画は全体として見せるものがあればいいので些細なことに拘ることもない。作品としては平均以上の出来で、観る人を満足させるだろう。

 ちなみに「プレッジ」でジャック・ニコルソンが駆るSUVは、日本ではお目にかからなくなったイスズのビッグホーンだった。牧草地の有刺鉄線をなぎ倒しながら疾駆する姿は、馬の疾駆とは違った迫力があった。この場面はショーン・ペンの遊びだったのかもしれない。こういう車で荒れ地を走る快感を知っているのかも。ショーン・ペンは男の子。

監督
ショーン・ペン

キャスト
デヴィッド・モース、ヴィゴ・モーテンセン、ヴァレリア・ゴリノ、パトリシア・アークエット、チャールズ・ブロンソン、デニス・ホッパー ベニチオ・デル・トロ、ジャック・ニコルソン、アンジェリカ・ヒューストン、ロビン・ライト、パイパー・ローリー、アーロン・エッカート、ヘレン・ミレン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ミッキー・ローク、サム・シェパード、パトリシア・クラークソン。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「午後8時の訪問者」のアデル・エネルが淫乱な女に……「愛しすぎた男37年の疑惑」2014年制作

2017-12-23 15:39:18 | 映画

           
 これは実話をベースにしたフィクションということわりがある。その実話と言うのはカジノ令嬢失踪事件。映画はこれをカトリーヌ・ドヌーヴをカジノ社長、その令嬢にアデル・エネル、顧問弁護士にギヨーム・カネで人間の強欲と怨念を描く。

 70歳を過ぎたカトリーヌ・ドヌーヴ、化粧をすると太めの体で妖艶さは消えていない。ルネ・ルルーが役名。娘アニエス・ルルー(アデル・エネル)が結婚に破綻、帰郷する。空港に出迎えたのがモーリス・アニュレ(ギヨーム・カネ)。この男スリー・ピースに身を包み実直な顧問弁護士を装っているが根は狡猾。それをお見通しなのがルネ。

 夫の残したカジノ「パレ」は、営業不振で苦境に落ち込んでいた。モーリスの助言はすべて計画されたもの。母ルネと娘アニエスとの確執、遺産のパレの株式を買い上げて欲しいというアニエスに「今は苦しいからダメ」と母親。モーリスはこれを利用する。

 無関心のふりをしながらアニエスになにかと世話をする。やがてアニエスを落とす。アニエスも離婚後の孤独からの解放は、セックスに夢中になるには十分だった。モーリスに恋人フランソワーズ(ジュディット・シュムラ)がいるのを知りながら。やがてルネの没落、アニエスの失踪という悲劇が起こる。

 映画はこの没落と失踪まで「愛しすぎた男」を丹念に描くが、「37年の疑惑」は短い法廷場面とラストの字幕で済ませてある。この映画、どう考えてもラブ・ロマンスでなくミステリーだろう。そうならリーガル・サスペンスとして描いたほうがよかった気がする。

 カトリーヌ・ドヌーヴの妖艶さと没落後の一転した落ちぶれようとアデル・エネルの見事なヌードは必見か。豊満で白い乳房に目を奪われるが、私の年代では子供のころは、人前で子供に授乳させるのも見慣れた風景であったし、それに家風呂のない時代で銭湯に母親と行けば女湯に入る。女の裸は見慣れていた。従ってアデル・エネルの乳房も母親を思い出したくらいだ。何とも色気のない話で……。

 ちなみに原題の「L'homme qu'on ai mait trop」をグーグル翻訳で見ると「私たちも同じ人」とあった。金銭欲、色欲、恨みつらみみんな持っているよと言いたげ。
   
監督
アンドレ・テシネ1943年3月フランス生まれ。

キャスト
カトリーヌ・ドヌーヴ1943年10月フランス、パリ生まれ。1963年「シェルブールの雨傘」が代表作。フランスの権威ある映画賞セザール賞に2013年から2015年にかけ主演女優賞にノミネートされている。
ギヨーム・カネ1973年4月フランス生まれ。
アデル・エネル1989年1月フランス、パリ生まれ。2014年「LES COMBATTANS(戦闘機)」でセザール賞主演女優賞受賞。
ジュディット・ジュムラ1985年7月フランス生まれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

母の死がもたらしたもの「母の残像」2015年制作 劇場公開2016年11月

2017-12-19 18:23:36 | 映画

            
 報道写真家の母イザベル(イザベル・ユペール)が急逝して3年後、写真展の企画が持ち上がった。アフガニスタンやシリアに同行した同僚のリチャード(デヴィッド・ストラザーン)から「ニューヨーク・タイムズ紙に彼女の記事を書く、宣伝の一環だ。記事を書く上では彼女の死の真相に触れないわけにいかない」とイザベルの夫で高校教師のジーン(ガブリエル・バーン)に言う。戸惑いながらも承諾するジーン。

 というのも高校生の二男コンラッド(デヴィン・ドルイド)が母の死以後、人が変わったように自分の殻に閉じこもっている。真相を知らないのはコンラッドだけ。

 長男のジョナ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、若くして大学教授になり第一子誕生の病室で満面に笑顔を浮かべている。小腹が減ったからスナックを調達してくると言って出掛けたジョナ。遅い時間のために院内の店は閉まっていた。

 廊下をウロウロと探し回りふと気がつくと大学時代の恋人だったエリン(レイチェル・ブロズナハム)がいた。偶然の再会に近況を話しあって別れたジョナに動揺が見られる。初恋の人って意外に忘れられないんだ。

 こういう前ぶれからイザベル、ジーン、コンラッド、ジョナ、リチャードそれぞれの人生での途中経過が語られる。自殺を選んだイザベルの家族にとっては、あまりにも重い記憶となっている。写真展をキッカケとしてジョナも資料整理に里帰り。父ジーンと二男コンラッドの間にある冷たい空気も暖気に変わるだろうか。

 それは母イザベルについて掲載された記事をコンラッドがコンビニで読んだ時に始まる。この映画のエンディングは、それぞれの登場人物の人生の始まりを示唆している。

 ジーンは、リチャードに妻と不倫したのかと問い詰める。リチャードは取材中だけそんな関係になったと言う。ジーンにとって非常に腹立たしいこと。しかしそれを言っても今となっては詮無いこと。

これからは恋仲の同じ学校の国語教師ハンナ・ブレナン(エイミー・ライアン)と新しい人生を歩めるか。

コンラッドは、母の紛争地での報道写真の仕事が精神的にキツく交通事故死が自殺だったという真実を受け入れて、明るい人生とすることができるか。

ジョナは、エリンへの思いを断ち切り家庭を守っていけるか。

今、ジーンがジョナを家に送っていく車の中で、息子二人の寝顔に四人家族の幸せな時間が重なる。
  
監督
ヨアキム・トリアー1974年デンマーク、コペンハーゲン生まれ。

キャスト
ガブリエル・バーン1950年5月アイルランド、ダブリン生まれ。
ジェシー・アイゼンバーグ1983年10月ニューヨーク市生まれ。
イザベル・ユペール1953年3月フランス、パリ生まれ。
デヴィン・ドルイド1998年1月ヴァージニア州チェスターフィールド生まれ。
デヴィッド・ストラザーン1949年1月カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。
レイチェル・ブロズナハム1990年12月ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ。
エイミー・ライアン1969年11月ニューヨーク市クイーンズ生まれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大谷翔平君を斜めに見る

2017-12-14 16:21:18 | スポーツ

  
 エンジェルスと契約、念願のMLBという舞台に立てる大谷。投手部門ではヤンキースの田中将太、ドジャーズからFA中のダルビッシュ・有、ドジャースの前田健太がいる。

 今シーズン田中は好不調が激しかった。ポストシーズンで面目を保った。ダルビッシュもポストシーズンの大事な試合2試合を落とした。前田はそこそこ頑張ったという状態だった。期待外れと言ってもいい。

 そこで注目されるのが二刀流をトレード・マークにする大谷翔平。名門ヤンキースをはじめドジャースやレッド・ソックスも書類審査で落として、西海岸のアナハイムを本拠地とするエンジェルスを選んだ。

 「縁を感じたから」というのが主たる理由。別の理由を挙げる新聞記事もある。「市場規模の小さい球団で日本人選手が所属し活躍していないのがいい」という。

 「市場規模の小さい球団」というくくりを考えたが確たる推測ができなかった。そして「日本人選手が所属していない」という条件は、ここから斜めで見ることになるが、まず大谷翔平は、新新人類に属するだろう。

 日本式のウェットな先輩・後輩という関係を嫌ったのだろう。それともう一つMLBに行ったからには、通訳を必要としないぐらい英語力を身につけようと決心したはず。日本人選手がいるとどうしても日本語を話さなくてはならない。それもうざったい話だ。高校卒業と同時にMLBを希望したのもすべては彼の遠大な計画によるものだと思う。

 日本人選手にいつも影のように存在する通訳なしのインタビューを、2年後には見ることが出来るのではないか。160キロの速球と投手としてのホームラン数も興味の対象だが、私はこの英語力にも関心を持っている。ケント・ギルバートが放送で呟いた「大谷はカッコいいですね」。

 さらに今朝の新聞(12月14日)に週刊文春の広告、「エンジェルス大谷翔平 女子アナ、女優とは結婚しない」というキャッチコピー。
 ひょっとするとアメリカ女性が視野にあるのかも。それは賢明な判断だ。日本人の人種改良という点からもいいね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大事なことは人と人との交流「はじまりへの旅」2016年制作 劇場公開2017年4月

2017-12-11 15:56:41 | 映画

           
 どこの学校にも負けない英才教育に加えアスリートのような運動能力を備えようとも、人と人との交わりがないのは車の両輪の一つが欠けているに等しいと言っているようだ。これは現代の風潮を示唆しているのではないか。巷でスマホに没頭している姿を見ると一縷の危惧を覚える。

 大自然の中で子供6人を育てるベン(ヴィゴ・モーテンセン)の日常は、原始的生活といってもいい。食事は屋外、火は火打石、飲料水は雨水をろ過という具合。食材の肉は、野生のシカを襲って手に入れる。食後は、勉強のための読書。

 ベンが子供たちに質問をする。
「量子のもつれは理解できたか?」
「大丈夫よ」
「そうか。では明日、M理論について物理学者の説とともに発表しろ」

 年齢的には幼稚園児から高校生と幅広い。先の命令は特定の子供に発せられる。この中にお母さんが見当たらない。入院中だが手首を切って自殺したと伝えられる。遺言には火葬してトイレに流してくれとある。仏教徒の母だが遺灰をトイレに流すとは、脚本家ももう少しロマンティックに書けないのかな。

 もっとアンバランスなのが原始的生活なのに、大家族ゆえバスが家族の足となっている。このバスで母親を引き取りに行くわけだ。大自然に囲まれて家族だけの生活が問題なのが、キャンプ場やファミレスなどで露呈する。

 ファミレスに入ったはいいが、ハンバーガーやマフィンは体に悪いとベンが言ってそそくさと出てしまう。何のために入ったんだい、と言いたくなる。入る前から分かっていることだし。

 それにキャンプ場。キャンピング・カーでバカンスを楽しむ人の中で若い女性と親しくなった長男のボウ(ジョージ・マッケイ)。夜、周辺を散歩しているとき、いい雰囲気になってきた。当然キスなんだがボウはしかたが分からない。鼻と鼻をぶつけあったりするものだから、女性のリードで事なきを得た。

 笑いごとではない。わが青春の思い出も似たようなもの。年上の女性だったから安心していられた。ジャーナリスト・評論家の故大宅壮一が「人生二度結婚説」唱えたとか唱えなかったとか、つまり若い時には年上の女性と、年をとれば若い女性とという具合。男から見た勝手な論理と言われそうだが、理にかなっていると思える。フランスのマクロン大統領がそれを実践しているように見える。

 横道にそれたが、世間知らずの人間に育てたくなければ、世の荒波に投げ込んだほうがいい。映画はそんなところだ。 が、昨今の風潮を見ると荒波に投げ込んだが、悪知恵ばかりが目につき学習しない輩が多いのが気にかかる。
   
監督
マット・ロス1970年1月コネチカット州生まれ。

キャスト
ヴィゴ・モーテンセン1958年10月ニューヨーク市マンハッタン生まれ。
フランク・ランジェラ1938年1月ニュージャージー州生まれ。
キャスリン・ハーン1973年7月イリノイ州生まれ。
ジョージ・マッケイ1992年3月イギリス、ロンドン生まれ。
サマンサ・イズラー1998年10月オクラホマ州生まれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミゲルと会う前の私は頭で理想を追うだけだった。「ラスト・フェイス」2016年制作 劇場未公開

2017-12-07 15:54:39 | 映画

               
 この映画が劇場未公開が不思議でならない。監督ショーン・ペン キャストシャーリーズ・セロン、ハビエル・バルデムというアカデミー賞主演男優賞や助演賞、主演女優賞受賞のメンバーだ。ピチピチとした若さはないが成熟した大人としての愛の物語を重厚に描く。

 オープニングのシーンは、2014年の南アフリカ共和国ケープタウンで行われる国連の「世界の医師団資金調達イベント」でスピーチをするレン・ピーターセン(シャーリーズ・セロン)が恋人のミゲル(ハビエル・バルデム)に同行してくれと頼むが「行く必要はないよ。君のスピーチ原稿は読んだから」それを聞いたレンは、ひとしずく涙を流す。オープニングで観客にアピールする手法だろう。

 ご丁寧に次の字幕のサービスもある。「2003年に終結したリベリア内戦でも、それから10年を経た南スーダンの紛争でも少年兵が残虐な行為に関与、世界が痛ましい現実にやっと気付き始めたその陰でひとつの叶わぬ愛が消えていった。ある男と女によるひとつの愛」

 レンは子供のころから家族と離れて人の命を救うために奮闘して80歳で亡くなった医師の父と行動を共にした。国連人権高等弁務官事務所に籍を置き、内部の改革にも提言していた。
「抗レトロウィルス薬の供給は800万人増加とかサハラ以南80カ国でマラリアでの死亡が75%減少というようなものばかりの声明ではその度に信頼を失っている。もう少し正直になっては?」などと言う。

 国連人権理事会といえば、日本にとって腹立たしい記憶がある。ボコバという中国寄りの理事長の偏向ぶりだ。この映画もハッキリ言わないが批判的と言える。

 南スーダン・マラカル国連基地。ここでレンとミゲルの運命的な出会いがある。「国境なき医師団」の一員として働くミゲル医師は、運び込まれる無残な体、不足する医薬品、この医薬品などは車で運搬すると途中で武装勢力の強奪にあう。厳しい環境での医療活動。スペイン出身のミゲルはとにかく献身的。その姿はかつてのレンの父を連想させるほどだ。

 あまりにも悲惨な現場は、レンの意思もくじけがち。現場を離れて帰国したレン。追ってきたミゲルと将来を語るが、レンの未来への想像は、ミゲルがやっぱり現場に戻るということ。

 「世界の医師団資金調達イベント」でスピーチをするレン。
「私たちは難民を難民としか見ていません。自分とは違うと。でも同じなのです。仕事を持っている。会計士や教員や建設業者や農民。愛する家族がいて希望を抱いている。明日への希望。世界の多くの人々が希望を奪われています。

 戦争は希望を奪う。貧困は希望を奪う。天災は希望を奪う。病気は希望を奪う。皆さんのお金よりも信じる力に支えられて、彼らは希望を叶えることができる。その理由は、希望を抱くのは特別なことじゃない。難民は私たちと何の違いもありません。まさに私たち自身なのです。私たちと同じく彼らにとって希望を生きるための糧となるなによりも大切なものなのです」

 ミゲルはこのころすでに南スーダンに旅立っていた。スピーチが終わってミゲルの手紙を読むレン。「レンへ。どうしても君に伝えたかった。きっとまた会える。僕には分かる。この広い砂漠を見渡して名前を呼べば、君の顔が見える。誰よりも僕を愛してくれたひとの顔。僕に生きる希望を与えてくれた」

 レンは国連人権高等弁務官事務所で秘書の報告を受ける。「南スーダンでヘリコプター事故、6人死亡。その中にミゲルが……」一点を見つめるレン。

 「彼のことを思うと自分の胃を感じた。皮膚の内側にある肋骨も。私はそこにいた。さもなければ失われていた自分。彼と出会う前は、頭で理想を追うだけで存在していなかった。彼を思い出すことで本当の私でいられた」かつての父の姿をも重ねているのかもしれない。

 すばらしい男女の出会いと別離。愛を優先しないで仕事を選んだ二人。結婚だけが人生ではない。結婚しなくても愛し合うことはできる。しかし、もうミゲルはいない。やっぱり切ない気分になるなあ。

 カンヌ国際映画祭で上映されて酷評されたという。主人公を白人として前面に出したことで、「難民を対象化する」という批判を受けたという。これもよく分からない理屈だ。

 ショーン・ペンは並みの映画監督ではない。本作が5作目で過去の何れも高い評価を得ている。
1991年「インディアン・ランナー」実直な警官の兄とベトナム帰りで精神を病んだ弟との葛藤を重々しく。
1995年「クロッシング・ガード」幼い娘を交通事故で失った男が、犯人の刑期満了を待って報復しようとする。まるで人生の交差点が赤信号も青信号もなく、自ら切り開いていかなければならないという直喩。
2001年「プレッジ」刑事の定年間近に起きた少女強姦殺人事件の犯人追跡に執念を燃やす男。
2002年「セプテンバー・イレブン」2001年9月11日について一編を担当。
2007年「イントゥ・ザ・ワイルド」貯金も裕福な実家も捨ててアラスカの大自然に立ち向かい餓死した青年を描く。

ただし、捕鯨反対運動のシーシェパードを支援しているのが気に食わない。
   
監督
ショーン・ペン1960年8月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。2003年「ミスティック・リバー」、2008年「ミルク」でアカデミー主演男優賞受賞。

キャスト
シャーリーズ・セロン1975年8月南アフリカ生まれ。2003年「モンスター」でアカデミー主演女優賞受賞。
ハビエル・バルデム1969年3月スペイン、カナリア諸島ラスパルマス生まれ。2007年「ノーカントリー」でアカデミー助演男優賞受賞。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

怖いものがなくなれば大胆なことができる「ジーサンズ、はじめての強盗」2017年制作 劇場公開2017年6月

2017-12-04 15:50:00 | 映画

              
 人間70歳を過ぎると怖いものがなくなるのは万国共通なのだろうか。ここに80歳代の男仲良し3人組。ウィリー・ディビス(モーガン・フリーマン)、ジョー・ハーディング(マイケル・ケイン)、アルバート・ガーナー(アラン・アーキン)たち。

 ジョー・ハーディングがローン支払督促状、いわゆるイエロー・カードを持って銀行を訪れる。ジョーは急に返済額が増えたのが気に食わない。担当者曰く「ローン開始時に説明したとおり、一定期間が過ぎるとサービス金利から標準金利に上がる。それが理由だ」聞かなかった、言ったの応酬中やにわに銃をぶっ放す音。

 見れば銀行強盗3人組。鮮やかな手口で現ナマをかっさらって行った。何やらジョーに畏敬の念の表情。悪事も鮮やかなら羨望の眼(まなこ)になるのか。

 こんな下地があって最後通牒いわゆるレッド・カードの到来。家を差し押さえて競売に付す。時を同じくして企業年金支給のストップまでついてくる。銀行強盗を提案したジョー・ハーディング。年金がストップするとウィリーもアルバートも食っていけなくなる。

 「捕まってもリゾート風の刑務所で暮らせるからいいだろう」なんという能天気。あながち軽蔑する事もないなあ。おそらくほとんどの人は同じように考えるだろうから。

 そんなことで老いぼれ爺さんの3人組強盗。フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスjrのマスクを着けてウィリアムズバーグ銀行に乗り込む。入っていきなり銃をぶっ放す。これはジョーがイエロー・カードで相談に来た時の銀行強盗のコピー。

 未払いになる年金額だけを盗る計画が、かなり予定をオーバーした。オーバーした分は、老人ホームへ寄付したりして良心的強盗の本領発揮。警察の事情聴取と面通しも,幸運に恵まれて晴れてリゾート風刑務所にお世話にもならなくて済んだ。

 余生は食事代無料、家賃無料、健康診断ありという刑務所暮らしという発想も悪くないかな。日本の現状も高齢者の再犯が多いというのも頷ける。
  
監督
ザック・ブラフ1975年4月ニュージャージー州サウスオレンジ生まれ。

キャスト
モーガン・フリーマン1937年6月テネシー州メンフィス生まれ。2004年「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー助演男優賞受賞。
マイケル・ケイン1933年3月イギリス、ロンドン生まれ。1999年「サイダー・ハウス・ルール」、1986年「ハンナとその姉妹」でアカデミー助演男優賞受賞。
アラン・アーキン1934年3月ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。2006年「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー助演男優賞受賞。
アン=マーグレット1941年4月スウェーデン、ヴォルソビン生まれ。1975年「Tommy/トミー」でアカデミー主演女優賞にノミネート。
マット・ディロン1964年2月ニューヨーク市生まれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

午後8時を過ぎてブザーが鳴る。それを無視した若き女医「午後8時の訪問者」

2017-12-01 14:37:18 | 映画

                
 地域の診療所に代診医師として勤務するジェニー・ダヴァン(アデル・エネル)は、優秀な医師として近く医療センターでの勤務が待っていた。研修医ジュリアン(オリヴィエ・ボノー)に「患者に気持を入れすぎる。医師としてもっと冷静になったほうがいい」などと説教をする。そんな折、ブザーが鳴る。ジュリアンは出ようとするがそれを止めて「こんな時間に来るのが悪い」ジュリアンが「急患かもしれない」「急患なら何度も鳴らすわ」

 何かにつけて辛辣なジェニーに対して不満が募り無言で診療所から帰宅する。翌日も出勤しない。ジュリアンという新たな問題を抱えさらに刑事の訪問を受けて提出した監視カメラの映像には、午後8時5分黒人の年少の女が写っていた。この子が近くの川岸にある工事現場で遺体で見つかったという。

 ショックを受けたジェニー。あの時ブザーに出ていれば……自身の行動が悲劇を招いたという後悔にさいなまれる。身元不明と聞くと彼女の死後があまりにも無残でジェニーには耐えがたい。せめて名前だけでもハッキリさせたい。医療センター勤務を捨て、地域の小さなこの診療所を引き継いで亡くなった女性の出自を追って行く。

 この執念がやがて社会の弱者を浮き彫りにし、ジュリアンに向き合うジェニーの人間的成長も心にしみる。カメラは、常にアップで撮られ音楽が一切なく車の走る音、電話の音など日常の雑音がBGMという感じ。

 一人の女性を徹底的に描くドキュメンタリー手法は、以前観たマリオン・コティヤール主演の「サンドラの週末」と通じる。本作の主演女優アデル・エネルも派手さは無いが堅実な演技派と言える。お色気の全くない社会派映画だ。2016年制作 劇場公開2017年4月
   
監督
ジャン=ピエール・ダルデンヌ1951年4月ベルギー生まれ。2014年「サンドラの週末」がある。

キャスト
アデル・エネル1989年1月フランス、パリ生まれ。
オリヴィエ・ボノー出自未詳
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする