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読書「ウィンWIN」ハーラン・コーベン著2022年小学館文庫刊

2023-06-30 09:18:23 | 読書
 自他共に認める大金持ちウィンザー・ホーン・ロックウッド三世。ウィンと自称している。推定年齢40代半ば。ハリウッド女優との間にイマという娘がいる。後半この娘にメロメロになる場面もあって、男親というのは娘にも異性の匂いを敏感に感じるものなのだろうかと思ったりする。

 そのウィン、どんな男なのか明らかにしてみよう。大金持ちの御曹司だからプライベート・ジェット機、プライベート・ヘリコプター、運転手付きのリムジン、自分で運転するジャガーXKRーS GT。この車のエレガントな乗り心地とスポーティな内装には、サマになる“オトコ”の条件ははるかにハードルが高いとネットの記事。そうウィンのような男にはお似合いだろう。

 ピンストライプの淡いブルーのサヴィル・ロー(ロンドン中心部のメイフェアにある通り。オーダーメイド紳士服店が集まっている)特別仕立てのスーツ、ジョージ・クレバリーのボルドーカラーの誂え靴、リリー・ピュリッツアーの限定販売品であるピンクとグリーンのシルクタイ、それに花びらのように整えて左胸に挿したエルメスのポケットチーフ。しかも頭脳明晰でハンサムあらゆる武術に通じていて、相手次第ではセックスに準ずる愉悦を堪能する。もちろん独身。セックスもこよなく愛する男で、ランデブー・アプリで相手を見つける。身元はお互い明示してあって、もめごとには発展しない。男女を問わずセックスそのものを楽しみたいという時もあるだろう。

 ウィンのお相手はそれなりの身分と地位にある。ある時、親友のマイロンの元恋人ジェシカ・カルヴァーと楽しいひと時を過ごす。そんな折FBI捜査官の訪問を受ける。同道した先はセントラルパークが見渡せる高層マンション。その20階の部屋で男が死んでいて、WHL3ウィンザー・ホーン・ロックウッド3世のイニシャルの入ったスーツケースも見つかる。FBIはウィンに疑いの目を向けている。

 電話は意外なところから掛かってくる。元FBI捜査官のPTからだ。ウィンはPTとしか知らない。本名も住んでいるところも独身か否かもしらない。ウィンが大学を卒業した後、FBIに勤めたことがあって、その時の指導教官がPTだった。かくしてウィンは事件に巻き込まれた。

 その後の展開に読書の醍醐味を堪能したのは言うまでもない。ドイツ系のアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたアン・アキコ・マイヤースのヴァイオリン演奏をBGMに。なお本作は著者の「マイロン・ボライター・シリーズ」からのスピン・オフ作品という。

それでは、アン・アキコ・マイヤースの演奏を聴きましょう。バッハのG線上のアリアです。
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読書「潔白の法則THE LOW OF INNOCENCE」マイクル・コナリー著2022年講談社文庫刊

2023-06-22 08:28:02 | 読書
 有能な刑事弁護士ミッキー・ハラーが殺人容疑で逮捕される。検察側とどのような駆け引きを展開するのか、興味津々で読み進む。

 ミッキー・ハラーは明確に「第三者有責性を狙う」と言った。この第三者有責性というのは、ほかの誰かがやった犯行であり、私は意図的にはめられたか、あるいは警察が無能極まりなく、ろくな論証ができず、その過程で私に濡れ衣着せたという法律的表現という。したがってほとんど法廷場面で推移する。

 アメリカの裁判で重要視されるのが陪審員選びだ。専門のコンサルタントもいるという。テレビドラマでは「NCIS~ネイビー犯罪捜査班」のトニー役で人気だったマイケル・ウェザリー主演の「BULL/ブル 法廷を操る男」が面白い。

 男女、人種、職業、思想などチェック項目が多い。この本のこの部分を引用してみると「陪審員選定はある種の芸術形態である。社会データと文化データの研究と知識が必要であり、最後は直感がものをいう。最終的に望んでいるのは、真実を求めるためにその場にいる注意深い人々の一団だ。見極め、排除したいのは、真実を偏見のプリズムを通してみる人々だ――――人種的、政治的、文化的などなどの偏見プリズムで。そして何かの目的を果たすための隠れた動機を持つ人々だ」

 そんな中でミッキー・ハラーの家族思いが顕著になる。最初の妻で検察官のマギー・マクファーソンも休暇を取ってミッキーの共同弁護人を務める。その行為がミッキーの心の琴線に触れ、ミッキーは再びマギーを愛おしく思い始める。二人の間に生まれたヘイリーもロースクールの学生で両親の後を追っている。ミッキーにとって眼に入れても痛くない愛娘なのだ。ミッキーにとっっては、絶対無実を得なければならない。スリルを伴う法廷劇に時間を忘れる。
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海外テレビドラマ「女医フォスター 夫の情事、私の決断Docter Foster」イギリス、BBC One2015年制作

2023-06-18 16:32:01 | 海外テレビ・ドラマ
 一言でいえば「くだらん」。夫の浮気を疑う医師の妻という構図。そこから夫婦の痴話喧嘩を延々と見せられれば「くだらん」としか言えない。

 公共放送のBBCの作品を好んで観ている私にとって失望することになった。セリフもきわどく品位に欠ける表現や映像もポルノまがいの描写もある。ところが2016年イギリス全国テレビ賞に作品と主演女優賞を受賞している。さらにシーズン2も2018年同賞を受賞している。

 主演女優賞を受賞したスラン・ジョーンズは、1978年生まれで他の作品でも高く評価されているようだ。

 2020年に韓国で「夫婦の世界」としてリメイク、2023年には日本で日本テレビ金曜ドラマDEEPで「夫婦が壊れるとき」としてリメイク版が放送された。

 どうやらこの作品は韓国も資金を出しているように思われる。なぜかといえば、女医フォスターが乗る車がヒュンダイ製のSUVだからだ。欧米あたりでも医師や弁護士、ハイクラス・ビジネスマンなどは、ベンツやBMW、日本製ならレクサスが相場。車がドラマの品質に影響しないとはいえ、違和感は感じる。

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読書と映画「夜に生きるLIVE BY NIGHT」小説デニス・ルヘイン著 映画ベン・アフレック監督・脚本・主演。

2023-06-14 09:34:56 | 読書と映画
 ボストン市警警視正トマス・コグリンを父に持つ、無法者と自称するジョー・コグリンの愛と暴力の世界を描いて読者を魅了する。弱冠20歳でギャングのボスの情婦エマ・グールドとの情欲に溺れるが、その彼女が自己保身のためにジョーを売る。コテンパンにやっつけられて屋外に出たところで、彼の父ボストン警察の急襲で命拾い。しかし、銃撃戦で警官を射殺したため刑務所送りになる。

 刑務所は人をより強くするのか、あるいは狡猾にするのか。ジョーは両方を持って出所した。服役中に親しくなったギャングのボス、マソ・ベスカトーレの指示を受けて動き出す。フロリダ州タンパで、ラム酒の密造・輸送・販売をはじめナイトクラブやもぐり酒場で利益を上げる。

 そして目を付けたのがカジノ。建設途中でストップしていたホテルを買収してリフォームの上利用するというもの。ところが問題が発生する。タンパ市警本部長アーヴィング・フィギスの美人の娘ロレッタなのだ。著者は次のように書いている。ふぃくらとした唇は髪と同じ赤ワイン色、眼は誠実な青、肌は朝の牛乳に浮かぶ甘いクリームのようになめらかな白という。彼女は美貌に自信があったのかカリフォルニアのハリウッドに行っが思いどうりにいかず、薬漬けになり娼婦に成り下がったが、矯正してキリスト教の伝道者としてもどったロレッタ。彼女の説教は万人に受け信者を増やしていった。当然カジノには批判的だった。あまりにも力をつけてきたため、ボスのマソから「彼女を消せ」という指令を受けたジョーだったが無視する。

 ジョーが言う無法者とは、金品を奪うが人の命は奪わない。ギャングはそうではない。もう内部抗争で殺し合いが始まるのは目に見えている。

 AIが回答するチャットGPTがすごいが、やはりもっとすごいのは生身の人間が書く文章だろう。一例としてこの本の中から引用しよう。
ジョーがタンパ市警本部長宅のポーチでアーヴィング・フィギスを待ち会話の後の文章
フィギス「ビールでもやるか? ビールそのものじゃないが、悪くない」
ジョー「いただきます」
 フィギスは家の中に入り、ビールもどき二本を持ち、犬を連れて戻ってきた。ビールは冷え、犬は老いていた。バナナの葉ほどもある柔らかい耳をした、灰色のブラッドハウンドだった。ジョーと入り口の間のポーチに寝そべって、両眼を開けたままいびきをかいた。

 ただし映画では犬は出てこない。映画でジョーを演じるのはベン・アフレック。製作者と俳優で成功している。1972年生まれ。
ロレッタを演じたのは、エル・ファニング。
アーヴィング・フィリスをクリス・クーパー。

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映画「荒野の誓いHOSTILES」2017年制作

2023-06-08 08:38:57 | 映画
 憎む相手と交流するに従い相互理解が深まるというお話。1892年荒野の一軒家にコマンチ族が襲い掛かり、一家皆殺しを企てた。夫・子供三人が犠牲に、ただ一人生き残ったのが妻であり母親のロザリー(ロザムンド・パイク)。

 その地方の砦にはインディアン討伐に勇猛をふるったジョー・ブロッカー大尉(クリスチャン・ベール)がいた。「軍人は殺すのが仕事だ」と言って憚らない。そのブロッカー大尉にシャイアン族の首長イエロー・ホーク(ウェス・スチュディ)がガンで余命いくばくもないことから、故郷モンタナ州にある熊の渓谷まで護送する大統領令が発せられた。大尉はしぶしぶ受けるしかなかった。

 途中一家惨殺されて生き残ったロザリーを助け出し同道する。長い旅の間にはコマンチ族の襲来もあったが、共に戦い寝食を共にすることで相互理解と友情すら生まれる。そしてブロッカー大尉とロザリーの間にも微妙な感情の渦が起き始めた。

 西部劇で楽しいのは馬の疾走だろう。馬の走る姿がキレイだ。この映画にはそれがなかった。しかし、山の穏やかな稜線を馬に乗った人々が行くショットや荒野を大俯瞰するショット、朝日が昇る場面を観ながら、これがロケーションであることを望まずにはいられない。

 そしてラストシーンが気に入った。シカゴ行きの列車に乗るために駅までロザリーを送ってきたブロッカー大尉。プラットホームで別れの言葉。ロザリー「ありがとう……」あとの言葉が続かない。列車に乗り込んでも言い残したくないという素振りで「ありがとう……」で車内に消えた。

 うなずいただけの大尉は、何か考えているようなのだ。列車が動き始めると大尉は、ゆっくりと歩きながら最後尾の列車のステップに乗り込んだ。やがてドアを開けて車内に消える。ロザリーの満面の笑みが見えるようだ。この映画、批評家の評価が高いようだ。

監督スコット・クーパー 1970年ヴァージニア州アビントン生まれ。
音楽マックス・リヒター 1960年ドイツ生まれ
撮影マサノブ・タカヤナギ 高柳 雅暢 群馬県高岡市出身。2011年ハリウッドデビュー

キャスト
クリスチャン・ベール1974年イギリス、ウェールズ生まれ。2013年公開の「アメリカン・ハッスル」でアカデミー賞主演男優賞を受賞。
ロザムンド・パイク1979年ロンドン生まれ。オクスフォード大学で英文学を学び、優秀な成績で卒業。2014年の「ゴーン・ガール」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。

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海外テレビドラマ「ハリー・パーマー国際諜報局THE IPCRESS FILE」2022年イギリス、ITV制作

2023-06-02 08:56:52 | 海外テレビ・ドラマ
 前置きとしてスターチャンネルの解説文は、「作家レン・デイトンが「007」へのアンチテーゼとして執筆したスパイ小説「イプクレス・ファイル」は『国際諜報局』として映画化され、主人公ハリー・パーマーを演じたマイケル・ケインを一躍スターにした。労働者階級出身、黒縁メガネで料理好きと、ジェームズ・ボンドとは対照的なキャラクターは人気を博しシリーズ化。

 『キングスマン』がオマージュを捧げた作品としても知られている。そのハリー・パーマーが新たなキャストで57年ぶりに復活!『トレインスポッティング』のジョン・ホッジが初のTVドラマ脚本を手掛け、ジョー・コール(『ピーキー・ブラインダーズ』)、ルーシー・ボイントン(『ボヘミアン・ラプソディ』)、トム・ホランダー(『キングスマン:ファースト・エージェント』)ら豪華キャストで贈るスタイリッシュな英国スパイ・サスペンス。(全6話)」

あらすじ
 1963年、冷戦下の西ベルリンに配属されていた英国陸軍軍曹ハリー・パーマーは、軍の物資を盗み東側に横流ししていた罪でロンドンの軍事刑務所に投獄される。その頃、核兵器を開発していた英国人教授が誘拐される事件が起き、ドルビー率いる特別諜報機関W.O.O.Cが救出作戦に動き出す。ドルビーは誘拐に関与している男と一緒に写真に写っていたパーマーを訪ね、服役免除を条件に協力することを要請。かくして諜報員になったパーマーはベルリン、ベイルート、そして米国が原発実験を行う太平洋の環礁へと世界を飛び回る。果たして誘拐事件の黒幕は誰なのか?

 このドラマの主要人物は三人。ハリー・パーマー役ジョー・コール、上司のドルビー役トム・ホランダー、ジーン・コートニー役ルーシー・ボーイントン。時代が1960年代ということで、衣装もその時代を反映したものになっている。特にルーシー・ボーイントンが着るものに郷愁を覚えるのだ。しかもオードリー・ヘップバーンそっくりとくれば、このドラマから目が離せなくなる。ジョー・コールにも好感が持てる俳優だ。
ジョー・コールは1988年ロンドン生まれ。
ルーシー・ボーイントンは、1994年ニューヨーク生まれのロンドン育ち。
トム・ホランダーは、1967年イギリス、オックスフォード生まれ。

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