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映画「50歳の恋愛白書The private lives of Pippa Lee ’09」劇場公開2010年2月

2010-10-28 15:30:43 | 映画

            
 邦題からくる印象は、50代の恋が甘酸っぱく描かれるのかと思うがさほど濃厚にそれがでていない。むしろ原題からのピッパ・リーの過去に多くを費やされる。現在と過去が交互に描かれてる。地味な映画ではあるが、しっかりとした視点や見識に裏打ちされた場面構成は、心地よい印象を残す。

 例えばこんな場面。薬漬けの奔放な生活を送っていたピッパ(ロビン・ライト・ペン)は、あるパーティで作家のハーブ(アラン・アーキン)と出会う。30歳の年齢差があるがお金でなく何か心惹かれる。そしてある日ハーブの自宅で
ピッパ「わたしのどこが好き?」
ハーブ「君は見せかけとは違う。大変に知的だ。美人でありながら、そのことに無関心。どことなく悲しげ。そういうところが好きだ。ほどほどに」
ピッパ「その上着が好き」
ハーブ「それだけ?」
ビッパ「あなたの顔と声が好き、そして変かもしれないけど」
ハーブ「何が?」
ビッパ「あなたの感じていることを感じる。あなたが怒ったり喜んだり悲しんだりすると、私の体でそれを感じるの」
ハーブ「それはすごいな。君自身のことで、一番大事な点は?」
ビッパ「私はクズよ」
 
 これ愛の告白そのものだけど、二人の間に甘い空気はなく淡々として事務的だった。30歳の年齢差の男女が置かれる雰囲気を的確に描いてある。ハーブのような年代(このころはまだ50代)になると、若者のような粘りつくような愛の告白とは無縁になる。

 年を重ねてピッパは50歳になる。夫は80歳に近い。娘・息子にも恵まれた。そして、誰しもが考えるのが夫婦生活のこと。当然のようにベッドでは何も起こらない。この結婚生活について映画はピッパのセリフで次のように説明する。
「結婚は意志の問題。わたしは夫が大好き。でも、結婚が維持されているのは二人の意志。愛がすべてだと思っているなら誤解よ。愛は来ては去るそよ風」意志の問題として自分を納得させているピッパ。

 しかし、夫婦の間には目に見えない小さな溝が刻まれていた。そしてその溝が現われる口げんか。
ハーブ「僕は生きたい。この数年君は僕を埋葬してきた。口に中で土の味がする。死んでほしいか?」
ピッパ「まさか」
ハーブ「君は僕を憐れみ始めた。僕を恐れている。すでに喪に服しているんだ」
ピッパ「あなたが老いて死ぬのが怖い当然だわ」
ハーブ「喪に服されるのは願い下げだ。僕は幽霊じゃない。生きたい。いつ死ぬか誰もわからん。僕を年寄り扱いするな!」
ピッパ「あなたは年寄りよ」

 一方ピッパは、親友のカット(ジュリアン・ムーア)の34歳の息子クリス(キアヌ・リーヴス)とめぐり合う。ある夜のドライブで、遂に体を許してしまう。そうこうするうちに夫がこれまたピッパの親友と浮気をしていたのが発覚。離婚話の間に夫が死亡するが、ピッパは開放された気分に浸る。
 そしてクリスとともに50歳の旅立ちと相成る。50歳の女が34歳の男と? 不思議がる必要はない。現代は30歳の年齢差であろうが、50歳であろうが恋のはじまりは、いたるところにある。
           
           
監督
レベッカ・ミラー1962年9月コネチカット州生まれ。劇作家アーサー・ミラーの娘でダニエル・デイ=ルイス夫人

キャスト
ロビン・ライト・ペン1966年4月テキサス州ダラス生まれ。’94「フォレスト・ガンプ/一期一会」でガンプが恋をするヒロインを演じて一躍注目された。
アラン・アーキン1934年3月ニューヨーク生まれ。相当な経歴の持ち主。’06「リトル・ミス・サンシャイン」で三度目の正直で遂にアカデミー賞助演男優賞の受賞を果たした。
キアヌ・リーヴス1964年9月レバノン/ベイルート生まれ。’94「スピード」で有名になり、’99「マトリックス」が決定打となって今や有数の男優の一人。
ほかにジュリアン・ムーア
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映画「幸せのレシピNo Reservations ‘07」劇場公開2007年9月

2010-10-25 09:41:55 | 映画

             
 レストランの女性シェフいわゆる総料理長ケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、精神科医の治療を受けている。それは我を通しすぐ切れるから。女性オーナーともうまく行っていない。

 ケイトのアパートに向かっていた姉とその娘が交通事故にあい、姉が死亡娘ゾーイ(アビゲイル・ブレスリン)は一命を取り留める。姉の遺言でゾーイを引き取ったケイトは、子育て未経験。悪戦苦闘する。

 家族の不幸で休暇を取っていた間に、女性オーナーは副料理長を雇っていた。オペラ好きの副料理長ニック(アーロン・エッカート)に、苦々しく思うケイト。ところがゾーイを職場に連れて行ったことで事態が変化する。もう、筋書きは明らか。ケイトとニックのロマンスなんてどうでもいい。どうせ男と女なんだからくっつくんだろう。
             
 二人は自分たちの店を持った。ケイト&ニック&ゾーイの店というプレートが仰々しい。そのプレートをくるくると回して、ゾーイ&ケイト&ニックの店に変えてしまうお茶目なゾーイ。

 私はこの映画をぞくぞくしながら観ていた。厨房に興味があったからだ。というのも、ニューヨークの有名シェフ、アンソニー・ホーデインが厨房の裏表を書いた「キッチン・コンフィデンシャル」を読んでいたからだ。

 映画は、まるで戦場のキッチンをそつなく描いていた。コックの顔ぶれを見ても、主要な位置に白人系、その下にコックの黒人やメキシコ人。これが厨房での人種構成。フランス料理もたしかに見た目と食味は、世界でも有数の料理に違いない。日本料理も、フランス料理に勝るとも劣らないのはたしかだと思う。そんなことも考えていた。

 キャサリン・ゼタ=ジョーンズも、カメラの角度によって素敵な眼をしているのに気付いた。アイロンのかかった真っ白なコック服をびしっと着るゼタ=ジョーンズ。胸の膨らみも眩しい立ち姿は、すっきりとコック服が似合っていた。
             
監督
スコット・ピックス1953年3月ウガンダ生まれ。工藤夕貴が出演した「ヒマラヤ杉に降る雪」を監督し、現在はドキュメンタリー製作に当たっている。

キャスト
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ1969年9月イギリス/ウェールズ生まれ。’02「シカゴ」でアカデミー助演女優賞を受賞。夫はマイケル・ダグラス 
アーロン・エッカート1968年3月サンタクララ生まれ。
アビゲイル・ブレスリン1996年4月ニューヨーク生まれ
            
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映画「カサンドラズ・ドリーム  Cassandra’s Dream ‘07」劇場公開2010年3月

2010-10-20 15:53:51 | 映画

            
 どこにでも転がっている話で、アカデミー賞を狙える作品でもない。ユアン・マクレガーとコリン・ファレルの若手の演技に頼るしかない。この二人、兄役のユアン・マクレガー、弟役のコリン・ファレルだが、喜んで演じているのだろうか。台本を読んで魅力ある役柄なのか? と訝ってしまう。

 まあ、出演する役柄にすべてアカデミー賞クラスの演技を求めるのも酷な気がする。ちょっとお小遣い稼ぎと言えば語弊があるが、そんなところだろう。しかし、決して雑な演技で誤魔化しているようには見受けられなかった。さすがにプロで、お金に見合った仕事はしている。

 兄は父親の経営するレストランを手伝っているが、心根をいれず投資話に浮ついている。弟は、車の修理工場で働いていて、ギャンブルに目がない。ドッグレースで6万ポンド(約8百万円)を稼いで中古のヨットを買ったが、その後も勝ったり負けたりだったが、ポーカーで9万ポンド(約12百万円)の借金を抱えた。それも怪しげな裏金融から。

 丁度そのとき、カリフォルニアや中国でクリニックを経営してかなりの資産を持っている母の兄、伯父がやってきた。兄弟は泣きついた。ところが近々国税の調査が入る。伯父の秘密を知る男が証言すれば、一生刑務所暮らしという伯父の依頼というのは……とんだ犯罪を犯す羽目になる。これ以上はネタバレになる。

 セリフに気の利いたのがあるかと思ったが、「人生で確実なことは、死ぬことだけ」「一線を越えると後戻りできない」「今、今を生きる。今が続く」などというどこにでもあるものだった。それにコリン・ファレルがやたらに煙草を吸う。屋外の場面だけとはいえ、今時珍しい。

 考えて見れば、兄のレストラン稼業から、飛躍して金持ちになりたい願望。弟のささやかなギャンブル。誰にでもある感情や行い。これが一つ間違うとまさしく命取りになると言う教訓も含んでいるようだが、これも陳腐に見える。が、ただ一つ、この映画も眠くならずに観られたのはよかったと思うし、一流のシェフが振舞う料理に似て、食感も悪くなかった。
         
監督
ウディ・アレン1935年12月ブルックリン生まれ。変人のおっさん。
           
キャスト 
ユアン・マクレガー1971年3月スコットランド生まれ 
コリン・ファレル1976年5月アイルランド、ダブリン生まれ ‘02「フォーンブース」で印象に残った。
ヘイリー・アトウェル1982年4月ロンドン生まれ 
サリー・ホーキンス1976年4月ロンドン生まれ
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読書 「みずうみ」川端康成

2010-10-16 11:31:59 | 読書

               
 「しかし、正気の時の銀平はどうもその子が生きているように思う」と言うように、銀平は幻を見たり聞いたりする。銀平の内面が抉り出される。読む方はまるで夢を見ているように現実感が乏しい。

 この桃井銀平は、ストーカー趣味があるようで、高校の国語教師をしてるときに、女生徒の家までつけて行ったのが始まり。その女生徒とは、肉体関係になりその女生徒の友人の密告によって学校を追われる。また、成人女性を追って行ってハンドバッグで殴られる。その女性は三十代始めの水木宮子で、七十歳近い神経痛もちの老人に囲われている。老人は宮子に腕枕をしてもらって眠り、乳房に触れて母への愛惜を感じる。この辺の描写は、後年の「眠れる美女」の下地になったのかと思わされる。

 そして今うっとりするほどの17か8の少女を追っていた。銀平にとって女性は憧れの極致にあるようだ。しかし、銀平はこの少女に手を出していないが、行きずりの醜い女と酒を酌み交わしてむしろ鮮やかに少女への憧れが増してくる。

 読む私にとっては、現実にどうしても目を向けたくなる。高校教師という立場を利用して、少女をたぶらかす。銀平に限らず、高校教師の教育者としてのプライドが一切見えない行いには腹が立つ。現にそのようなことが往々にして行われているはずだ。まあ、それはともかく読後感は、多岐にわたることはたしかだろう。瀬戸内寂聴は、「わが性と生」の中で、この本はエロティックだと言っていた。
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映画 「ボーダー Righteous Kill ‘08」劇場公開2010年4月

2010-10-05 09:52:55 | 映画

            
 一言で言えば拾い物の映画だった。ロバート・デ・ニーロ(ターク刑事)とアル・パチーノ(ルースター刑事)の共演は、記憶が正しければ‘95「ヒート」以来のはず。私のいい悪いの判断基準が眠くなったかならなかったかという単純なもの。この映画は眠くならなかった。

 逮捕の甲斐もなく重罪犯が裁判で無罪放免されるのを苦々しく横目で眺める二人のコンビ刑事タークとルースター。しばらくするとそれらの男たちが次々に殺される連続殺人事件に発展していく。一体犯人は誰なのか? 原題が示すように、正しい殺人というから、正義を全うできる司法の側の人間を匂わす。

 タークに疑惑を持ち始めるメキシコ系の二人の刑事。タークとルースターは、イタリア系刑事。それに黒人のヤクの売人が登場すると、アメリカの人種問題がなにやら示唆されているようにも思われる。テンポのいい展開で、やがてどんでん返しの結末へと流れ込む。話としては、珍しくもない。辻褄がちゃんと合っていて不信感を持つこともなかった。

 ただ、一つだけルースターの手帳が、いつあの椅子にあったのかが解せない点だった。女性刑事のカーラ・グギーノの口元がジュリア・ロバーツに似ていて、お色気を楽しませてくれた。ご老体のデ・ニーロが、走ったり柵を飛び越えたりするのを見ているとハラハラしてしまったよ。
            

監督
ジョン・アヴネット1949年11月ブルックリン生まれ

キャスト
ロバート・デ・ニーロ1943年8月ニューヨーク生まれ
アル・パチーノ1940年4月サウス・ブロンクス生まれ
カーラ・グギーノ1971年8月フロリダ生まれ
            
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