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「エルELLE」レイプをテーマにした良質の映画 2016年制作 劇場公開2017年8月

2018-03-04 16:43:51 | 映画

            
 この映画の主人公を誰もやりたがらないだろう。しかし、人物造形は挑戦する価値はありそう。この映画を監督したポール・ヴァーホーヴェンは、「ニコール・キッドマンならミシェルという難役を演じられるという確信を抱いていた。キッドマンの他にも、ダイアン・レイン、シャロン・ストーン、ジュリアン・ムーア、マリオン・コティヤール、シャーリーズ・セロン、カリス・ファン・ハウテンがミシェル役に想定されていた。
 ヴァーホーヴェンはアメリカ人女優がこのような大胆な役を演じたがらないことに不満を述べている。ヴァーホーヴェンはオファーを受ける可能性があった唯一の女優としてジェニファー・ジェイソン・リーの名を挙げたが、知名度の不足から起用に至らなかった」 とウィキペディアにある。

 とにかくこのミシェルという女性は、レイプされた後も何事もなかったように掃除をしワインを飲むそして残酷。警察不信で被害届を出さない。この役をイザベル・ユペールが相変わらず動き回りながら的確に演じる。2016年だと63歳。さすがにアップではそれなりの年齢を感じさせるが、ちょっと離れた全身像とか化粧でキレイにすると細身で若さも見える。

 やっぱり世の中はなるようにしてなる。二コール・キッドマンの主演を想像してみたが、身長180センチの大女ではレイプ犯がぶっ飛びそう。イザベル・ユペールがこれ以上の適役は無いと思わせるところがすごい。

 ハリウッド女優がなんで敬遠したかといえば、多分ではあるがオナニー場面を演じなければならないからだと思う。しかもこの場面の必然性が見えない。それでもイザベル・ユペールは、双眼鏡片手に自宅前の家に住む若い銀行員パトリック(ロラン・ラフィット)との妄想を描きながらせっせとオナニーに励む。

 ミシェルの家族関係も特異。父は連続殺人犯で服役中、ミシェルは憎悪している。母イレーヌ(ジュディット・マレー)は、自分より年下の男とセックスを楽しんでいる。その最中にミシェルはずかずかと入って行く。それを見ても平気な顔で話しかける。

 ミシェルは、IT企業の社長だ。IT企業と言ってもゲーム制作会社だ。その作品もセックスがらみ。そういう立場なのに息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)は、アルバイトをしている。母と息子はあまりうまくいっていない様子。この息子の恋人がものすごくキツイ女。二人の間に生まれたのが黒い肌の子。どう見ても二人の子供には思われない。嬉々として育てるから不思議。

 ミシェルの残酷なところといえば、友人のアンナ(アンヌ・コンシニ)の夫ロベール(クリスチャン・ベルケル)と肉体関係があったとアンナに告白するところだろう。なんで親友を嘆かせるのか。ミシェル独特の感性かもしれない。

 レイプ犯は誰なのか。大よその見当はついていた。はずれなかった。そしてミッシェルの氷のような反撃と今までの事はまるでなかったような親友アンナとの友情がホット。女は強く永遠の謎と言えるかもしれない。

 フランス語のELLEは「彼女」の意、つまりミッシェル。監督のポール・ヴァーホーヴェンは、もう80歳ながら新しいものに挑戦していると公言する。その志は大いに評価し、このセックスにこだわる映像に長い人生の帰結点と思っていいのかも。80歳になってようやく分かる類のもの。とは言っても不必要なシーンやよく分からない場面もあるが、ミッシェルを演じるイザベル・ユペールの存在感がすべてを納得させるのだろう。

 そのことは第69回(2016年)カンヌ国際映画祭コンペティション部門で高い評価を得たし、昨年の第89回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。受賞は「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン。
  
監督
ポール・ヴァーホーヴェン1938年7月オランダ、アムステルダム生まれ。

キャスト
イザベル・ユペール1953年3月パリ生まれ。
ロラン・ラフィット1973年8月フランス生まれ。
アンヌ・コンシニ1963年5月フランス生まれ。
シャルル・ベルリング1958年4月フランス生まれ。
クリスチャン・ベルケル1957年10月ドイツ生まれ。
ヴィルジニー・エフィラ1977年5月ベルギー・ブリュッセル生まれ。
ジュディット・マレー1926年11月フランス生まれ。
ジョナ・ブロケ1992年7月ベルギー・ブリュッセル生まれ。
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