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この時代の精神病院は恐ろしい「カッコーの巣の上で」1975年制作

2015-01-20 20:45:58 | 映画

              
 人間の自由と尊厳について精神病院を舞台に描く問題作。暴力的な男マクマーフィ(ジャック・ニコルソン)は、淫行罪で逮捕され精神鑑定のためオレゴン州立精神病院へ送られる。

 廊下で最初に出会ったのが、大きな体のインディアンで無口なチーフだった。病院のラチェッド婦長(ルイーズ・フレッチャー)のやり方に不満を持つマクマーフィは、たびたびいちゃもんをつける。たとえば野球放送を観たいとか。

 その反抗的な態度は脱走前夜のドンちゃん騒ぎが婦長の首を絞める行為に発展。病院側はマクマーフィに前頭葉切除のロボトミー手術を実施。結果、マクマーフィは言葉もしゃべれず意思もなく廃人同然の姿で戻ってきた。
 仲が良かったチーフは、枕を頭に押し付けて安らかにあの世へ送る。そして、マクマーフィが取り外せなかった幾つも水栓のある大きな筐体を引き抜いて窓を破壊。チーフは暗闇のかなたへと去っていく。

 マクマーフィが最初に出会ったのがチーフだし、最後を看取ったのもチーフで、口の悪い暴れん坊のマクマーフィに共感を憶えていたのだろう。

 実はこの題名に考えをめぐらせていた。やっと分かった。原題が「One Flew Over the Cuokoo's Nest」となっていて、ウィキペディアから引用すると「邦題も一読して意味を理解することは難しいが、原題は最後にチーフという名の患者が一人 (One) で自由を求めて、cuckoo=crazy、つまり精神病を患う人の集まる精神病院 (the cuckoo's nest) から飛び出して脱出する (flew over) ことを象徴しており、もともとの由来はマザー・グースの詩である。またカッコーの巣(cuckoo's nest)は、「精神病院」の蔑称のひとつである」とある。なるほどね。

 私は演技に詳しくはないが、ジャック・ニコルソンとルイーズ・フレッチャーを見ていると自分の役割を消化して精一杯演じているのが分かる。

 ジャック・ニコルソンの表情は当然として何気ない仕草にもその才能を見て取れる。病院の院長との面接の場面。院長が書面を見て喋っている。ジャックはふいに机の上のハエか虫を叩いた。カメラはジャックから院長に変わったが虫は写っていない。院長は、ハエか虫がいるであろうところに目をやって戻した。

 私の推測だが、たぶんアドリブだろう。精神異常を装って入ってきたジャック。普通の面接はありえないと思ったのかもしれない。そのアドリブに応えた院長役の俳優もすごいことだ。

 それにルイーズ・フレッチャーの冷たい表情。テコでも動かない信念を持つ婦長もすごい。意外とこういう女性も魅力的に思える。が、こんな場面を観ていると自分のサラリーマン時代と重ねてしまう。こんなねちねちといびられたら発狂するかもしれない。

 映画は、実在のオレゴン州立精神病院で撮られたようだ。それに、監督のミロス・フォアマンはジャック・ニコルソンについて、次のように言っている。「まさに奇跡としか言いようがない。実生活がマクマーフィそのものなんだから」と絶賛したとある。

 なお、17人の患者役は、全米で長期間に渡って行われ1200人以上の俳優の中から選ばれた。その中にダニー・デヴィートもいる。
 また、映画化権を持っていたカーク・ダグラスが息子のマイケル・ダグラスの世代でようやく実現したらしい。その間13年も費やしている。

 AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)2007年版歴代ベスト100の33位の作品でもある。
           
           
           
           

監督
ミロス・フォアマン1932年2月チェコスロバキア生まれ。

キャスト
ジャック・ニコルソン1937年4月ニュージャージー州ネプチューン生まれ。本作でアカデミー主演男優賞を受賞。
ルイーズ・フレッチャー1934年7月アラバマ州ボーミンガム生まれ。本作でアカデミー主演女優賞を受賞。
ダニー・デヴィート1944年11月ニュージャージ州生まれ。
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