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余情を漂わせる映画「25年目の弦楽四重奏 A LATE QUARTET ’12」

2013-12-22 17:26:06 | 映画

                 
 25年目を迎えた「フーガ」という弦楽四重奏団。ベートーベンの弦楽四重奏第14番作品131の演奏を最後に引退すると言ったのは、チェリストのピーター・ミッチェル(クリストファ・ウォーケン)だった。理由は、パーキンソン病のためという。

 第1ヴァイオリンのダニエル・ラーナー(マーク・イヴァニール)、第2ヴァイオリンのロバート・ゲルバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ロバートの妻ヴィオラのジュリエット(キャサリン・キーナー)達の動揺は隠しきれるものではなかった。

 このベートーベン弦楽四重奏第14番作品131は、最高傑作といわれあまりにも難しく敬遠されがちだが、高貴で深遠なこの曲に憧れる奏者も多いという。この7楽章を途切れることなくつないでいく奏法に挑戦するピーターたちに危機が訪れる。

 私はクラシック音楽を特に好んでいるともいえず、土曜日の朝と日曜日の朝には、グリークの「朝」とか、ヴィヴァルディの「四季」などの初心者向けとも言える曲を流しているに過ぎない。

 それはともかく、四人の人間でがっちりと構成されていた弦楽四重奏団の骨組みが一つ狂い始めると全てがガタガタと音を立て始める。

 些細なことからロバートが浮気をして、ジュリエットと夫婦喧嘩の挙句一時別居の危機に直面する。また、第1ヴァイオリンのダニエル・ラーナーがゲルバート夫妻の一人娘アレクサンドラ(イモージェン・ブーツ)を指導しながら、この二人は男と女の関係に発展する。それを聞いたロバートは激昂する。そういうきしみ音を乗り越えて、演奏会当日を迎える。

 この映画で注目したのは、ラーナーがアレクサンドラに、曲を理解するにはベートーベンの伝記を読む必要があると言って分厚い本を手渡した。技巧的には上手な人は一杯いる。では一体何故聴衆に受け入れられないのだろうか。
 それは奏者の魂の叫びがないからだ。そのためにはまず作曲家を理解し、その曲の真髄を感得すべきというのがラーナーの気持ちだろう。

 これはすべての芸術についても言えるのかも知れない。楽器の演奏は、出演俳優が自ら演奏しているらしい。全曲ではないが、撮影の一部分のようだが必死に練習したそうだ。俳優というのは、素晴らしい素質を持っているからこそできるんだとあらためて理解させられた。

 特に感心したのは、クリストファー・ウォーケンで久々の好演ではないだろうか。私の心に残る映画となった。
劇場公開2013年7月
            
            
            
            
            
            
監督
ヤーロン・ジルバーマン出自不詳。劇映画としては、これが最初の監督作品。

キャスト
フィリップ・シーモア・ホフマン1967年7月ニューヨーク、フェアポート生まれ。’05「カポーティ」でアカデミー主演男優賞受賞。
キャサリン・キーナー1959年3月フロリダ州マイアミ生まれ。’05「カポーティ」でアカデミー助演女優賞ノミネート。
クルストファー・ウォーケン1943年3月ニューヨーク市クイーンズ生まれ。’78「ディアハンター」でアカデミー助演男優賞受賞。
マーク・イヴァニール1968年9月ウクライナ生まれ。
イモージェン・ブーツ1989年6月イギリス、ロンドン生まれ。
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