タクシー・ドライバーは、街の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
48) タクシー料金を乗客に聞くドライバー
ロンドンのブラック・キャブは、遠回りをした。
北斗七星の柄杓(ひしゃく)の形で走った。
旅行者とみたボッタクリだ。
「パーク・ロードがクローズなんだ」
と、キャブ・ドライバーは言って遠回りをしたから、
「ライセンス・ナンバーを通報する。
それに、クローズという道路の名前を、ここに書いてくれ」
と、言った。
すると、ドライバーはガラリ! と態度を変えた。
これまでの高圧的な態度やめた。
そして、
「私はオネスト/正直者だ」
と言う。
それから、
「来るときのタクシー料金は、いくらだった?」
と、聞いてきた。
「?……」
タクシー料金を、乗客に聞いて、それに従おうという提案だ。
ロンドン市街からヒースロー空港までのタクシー料金は、
キャブ・ドライバーが一番よく知っていることだ。
それを、乗客に聞こうというのだ。
これが、オネスト/正直者だろうか?
言葉を間違えている。
頭がいいのか、ずる賢いのか。
いずれにしても、これまでに何度か使ってきた手だろう?
それで、ちょっと困った!
ヒースロー空港からロンドン市街に来るときには、
10ポンドのヒースロー・エクスプレスに乗った。
ブラック・キャブは使わなかった。
ここは、ロンドンに滞在していた当時を思い出して、
タクシー料金を推察するしかない。
かけ離れて安ければ、
「ブラック・キャブの料金を知らないな?」
と、バカにされる。
高過ぎれば、正規料金よりも余分に払うから、
おもしろくねェ。兼ね合いがむずかしい……。
それに、回答はモタモタ、オドオドと、
手間取ってはいけない。
タクシー料金を、早く答えなければ……。
「34ポンド(5,400円)」
まっすぐ行った場合の、正規料金を言ったつもりだ。
「よし、それならば、34ポンドで行く」
と、ドライバーは私の提案をあっさりと受け入れた。
料金は妥当だったようだ。
そして、
「土曜日の午後は、1.2ポンドが追加になるが」
と、余計なことを言う。
「34ポンド以上は、払わない」
運転席のうしろには、乗客にわかるように、
割増料金表が貼ってある。
日曜日とか深夜の割増料金は書いてあるが、
土曜日の割増料金はどこにも書いてない。
34ポンドが決裂したら、ここまでの料金を払って、
ほかのブラック・キャブに乗り換えるつもりだ。
幸いに、多くのブラック・キャブが、
あたりを走り回っている、まだ市街だから。
「OK! だ」
ドライバーは、すぐに1.2ポンドの上乗せの要求を取り下げた。
以外にあっさりと、取り下げたなァ。
タフな交渉相手で、決裂も覚悟をしていたが。
「ライセンス・ナンバーを通報する」
が、効いたのかな?
それとも、ヒースロー空港まで行くのは上客だ。
そのタクシー料金は失いたくない。
交渉は成立したから、ドライバーは、
再びブラック・キャブを走らせた。
もう遠回りはやめた。
34ポンドと上限を決められたから、
近道をしてヒースロー空港に向かった。
すぐに、モータ・ウェイM4に乗った。
北斗七星の柄杓(ひしゃく)の、
柄(え)の部分に来たのである。
さて、タクシー料金だが、
あっさりと、34ポンドが決まったから、
「34ポンドは、高すぎたんじゃないかな?」
と、ちょっと不安になった。
あとは、メーターが34ポンドを越えなければ、
損をする? どのくらいになるかだ?
メーターをズーッと見ていた。
なんだか、メーターの上がりが遅い気がする?
ヒースロー空港に近づいてくる。
メーターは、ゆっくりと、
しかも確実に上がっていく……。
そして、ついに、34ポンドを越えた。
「ヤッタァ!」
ニンマリした。
そして、決めた。
「この先どこまでメーターが上がるかわからないが、
34ポンド以上は、ビタ1ペンスも払わんぞ!」
「それで、もめるようだったら、当局に通報しよう」
「“ライセンス・ナンバー”といっしょに」
それで、運転席のうしろにあるプレートの、
ライセンス・ナンバーをメモした。
「Ex9xx」とある。
おつりがないように、紙幣で30ポンド、コインで4ポンド、
ぴったり34ポンドを用意して、にぎりしめた。
「34ポンド以上は、絶対に払わんぞ!」
「チップなんて論外だ」
メーターは41ポンドを示して、
成田便が発着するターミナル3に着いた。
ドライバーが手で設定したメーターの横の表示には、
土曜日の午後の追加料金だという1.2ポンドが点灯している。
それを上乗せすると、42.2ポンドになる。
34ポンドで交渉は成立したから、もう、文句は言うなよ!
ブラック・キャブから降りた。
そして、ガラス窓越しに、
「34ポンドだね?」
「そうです」
と、ドライバーは、まったくおとなしい。
以外なくらいだ。
握りしめていた、ぴったり34ポンドを渡した。
なにも言わないのに、ドライバーは領収書を取り出した。
そして、34ポンドと書いて、サインをした。
サインは読みにくいが、C.Fxxかな?
こんな名前があるのか?
まぁ、いい、34ポンドだ。
この領収書は勝った証しだ。
遠回りをし、イヤな気分にさせられた代償だ。
ブラック・キャブのドライバーは、
メーターの41ポンドと、34ポンドとの差額が7ポンド、
それに、もらえるチップが5ポンド、
合わせて12ポンド(1,900円)ほどを損した。
さらに、ガソリン代と時間までも。
ブラック・キャブだけは大丈夫だと思っていたが、
旅行者とみると、
オネスト/正直者じゃないドライバーがいるのだ。
RECEIPTと印刷された領収書には、
“LICENSED LONDON TAXI”
「認可されたロンドン・タクシー」とあり、
“Thank You for your custom”
「ご利用、ありがとうございます」と、お礼があり、
“ALWAYS USE A licensed TAXI・CAB”
「いつも認可されたタクシー・キャブの使用を」とある。
旅行者にも、お礼が伝わるような、ロンドン・タクシーになってくれ。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
48) タクシー料金を乗客に聞くドライバー
ロンドンのブラック・キャブは、遠回りをした。
北斗七星の柄杓(ひしゃく)の形で走った。
旅行者とみたボッタクリだ。
「パーク・ロードがクローズなんだ」
と、キャブ・ドライバーは言って遠回りをしたから、
「ライセンス・ナンバーを通報する。
それに、クローズという道路の名前を、ここに書いてくれ」
と、言った。
すると、ドライバーはガラリ! と態度を変えた。
これまでの高圧的な態度やめた。
そして、
「私はオネスト/正直者だ」
と言う。
それから、
「来るときのタクシー料金は、いくらだった?」
と、聞いてきた。
「?……」
タクシー料金を、乗客に聞いて、それに従おうという提案だ。
ロンドン市街からヒースロー空港までのタクシー料金は、
キャブ・ドライバーが一番よく知っていることだ。
それを、乗客に聞こうというのだ。
これが、オネスト/正直者だろうか?
言葉を間違えている。
頭がいいのか、ずる賢いのか。
いずれにしても、これまでに何度か使ってきた手だろう?
それで、ちょっと困った!
ヒースロー空港からロンドン市街に来るときには、
10ポンドのヒースロー・エクスプレスに乗った。
ブラック・キャブは使わなかった。
ここは、ロンドンに滞在していた当時を思い出して、
タクシー料金を推察するしかない。
かけ離れて安ければ、
「ブラック・キャブの料金を知らないな?」
と、バカにされる。
高過ぎれば、正規料金よりも余分に払うから、
おもしろくねェ。兼ね合いがむずかしい……。
それに、回答はモタモタ、オドオドと、
手間取ってはいけない。
タクシー料金を、早く答えなければ……。
「34ポンド(5,400円)」
まっすぐ行った場合の、正規料金を言ったつもりだ。
「よし、それならば、34ポンドで行く」
と、ドライバーは私の提案をあっさりと受け入れた。
料金は妥当だったようだ。
そして、
「土曜日の午後は、1.2ポンドが追加になるが」
と、余計なことを言う。
「34ポンド以上は、払わない」
運転席のうしろには、乗客にわかるように、
割増料金表が貼ってある。
日曜日とか深夜の割増料金は書いてあるが、
土曜日の割増料金はどこにも書いてない。
34ポンドが決裂したら、ここまでの料金を払って、
ほかのブラック・キャブに乗り換えるつもりだ。
幸いに、多くのブラック・キャブが、
あたりを走り回っている、まだ市街だから。
「OK! だ」
ドライバーは、すぐに1.2ポンドの上乗せの要求を取り下げた。
以外にあっさりと、取り下げたなァ。
タフな交渉相手で、決裂も覚悟をしていたが。
「ライセンス・ナンバーを通報する」
が、効いたのかな?
それとも、ヒースロー空港まで行くのは上客だ。
そのタクシー料金は失いたくない。
交渉は成立したから、ドライバーは、
再びブラック・キャブを走らせた。
もう遠回りはやめた。
34ポンドと上限を決められたから、
近道をしてヒースロー空港に向かった。
すぐに、モータ・ウェイM4に乗った。
北斗七星の柄杓(ひしゃく)の、
柄(え)の部分に来たのである。
さて、タクシー料金だが、
あっさりと、34ポンドが決まったから、
「34ポンドは、高すぎたんじゃないかな?」
と、ちょっと不安になった。
あとは、メーターが34ポンドを越えなければ、
損をする? どのくらいになるかだ?
メーターをズーッと見ていた。
なんだか、メーターの上がりが遅い気がする?
ヒースロー空港に近づいてくる。
メーターは、ゆっくりと、
しかも確実に上がっていく……。
そして、ついに、34ポンドを越えた。
「ヤッタァ!」
ニンマリした。
そして、決めた。
「この先どこまでメーターが上がるかわからないが、
34ポンド以上は、ビタ1ペンスも払わんぞ!」
「それで、もめるようだったら、当局に通報しよう」
「“ライセンス・ナンバー”といっしょに」
それで、運転席のうしろにあるプレートの、
ライセンス・ナンバーをメモした。
「Ex9xx」とある。
おつりがないように、紙幣で30ポンド、コインで4ポンド、
ぴったり34ポンドを用意して、にぎりしめた。
「34ポンド以上は、絶対に払わんぞ!」
「チップなんて論外だ」
メーターは41ポンドを示して、
成田便が発着するターミナル3に着いた。
ドライバーが手で設定したメーターの横の表示には、
土曜日の午後の追加料金だという1.2ポンドが点灯している。
それを上乗せすると、42.2ポンドになる。
34ポンドで交渉は成立したから、もう、文句は言うなよ!
ブラック・キャブから降りた。
そして、ガラス窓越しに、
「34ポンドだね?」
「そうです」
と、ドライバーは、まったくおとなしい。
以外なくらいだ。
握りしめていた、ぴったり34ポンドを渡した。
なにも言わないのに、ドライバーは領収書を取り出した。
そして、34ポンドと書いて、サインをした。
サインは読みにくいが、C.Fxxかな?
こんな名前があるのか?
まぁ、いい、34ポンドだ。
この領収書は勝った証しだ。
遠回りをし、イヤな気分にさせられた代償だ。
ブラック・キャブのドライバーは、
メーターの41ポンドと、34ポンドとの差額が7ポンド、
それに、もらえるチップが5ポンド、
合わせて12ポンド(1,900円)ほどを損した。
さらに、ガソリン代と時間までも。
ブラック・キャブだけは大丈夫だと思っていたが、
旅行者とみると、
オネスト/正直者じゃないドライバーがいるのだ。
RECEIPTと印刷された領収書には、
“LICENSED LONDON TAXI”
「認可されたロンドン・タクシー」とあり、
“Thank You for your custom”
「ご利用、ありがとうございます」と、お礼があり、
“ALWAYS USE A licensed TAXI・CAB”
「いつも認可されたタクシー・キャブの使用を」とある。
旅行者にも、お礼が伝わるような、ロンドン・タクシーになってくれ。