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ブラジルの通知表

2009-07-26 07:38:26 | Weblog
“世界の表彰・評価”から、“指標”を定めて、“数値”で、
日本の通知表”をみたが、同じ指標で、
ブラジルの通知表”は、どうなるだろうか?

「5歳のとき、両親に連れられて、ポルトガルからブラジルに移民した」
ポルトガルを去る時と、ブラジルに上陸したのを覚えている」
半世紀前の自分の記録映画を見るように、ブラジル人が言う。
「いま思えば、上陸したのはサントス港だった」
サントス港は、首都サンパウロの南75キロメートルにある移民船の受入港で、
日本の移民船、笠戸丸が入港したのものサントス港(1908年)である。

「ポルトガルには、何年か前に一度帰って、親戚に会った。
裕福になっているブラジル移民をみて、親戚はうらやましそうだった。
その後、親戚との交流はない」
移民という大英断をして、ブラジルに渡り、交易で成功した。

本国のポルトガル人から、うらやましがれているが、多くの苦労をした結果だ。
日本からの移民が、ブラジルで成功し、尊敬されるまでには、
多くの苦労と時間がかかったように。

「本場のポルトガル語は、ブラジルのポルトガル語とは少し違っていた。
ブラジルのポルトガル語は、400~500年前のもので、
意味が違ったり、ポルトガルでは使用していないものがあった」
「もう、自分はブラジル人だ、ポルトガル人ではない」
という思いを強くしている。

肉料理のレストラン、バルバコアBarbakoaシュラスコChurrasco

シュラスコは“岩塩”で味付けした肉を、串に刺して、炭火で焼く。
ビーフ、バッファロー、仔羊、チキン、ソーセージから、
セブ牛のコブ、心臓やレバーもある。サンパウロ。

テーブルには、お客さんに1枚、表裏が緑と赤の“”が置いてある。
6角形のプラスチック製で、大きさはビスケットほど。
”はYes, Please、もっと肉を!
”はNo, Thank You、満腹だ! もういらない。

ボーイが緑の札を見て、サーベルのシュラスコをもって近寄るから、
好みの肉ならば頼むと、ナイフでそいで、皿に落としてくれる。
そぐ回数は食べたいだけ、食べられるだけ。

うまいシュラスコに、ビールがゴクゴクとすすむ。
ビールのほかに、サンブカSambucaがある。セリに似たアニスから造る焼酎、
(Licor Anisというイタリア製だった)に、ライムを入れたもので、43度と強い。
このサンブカは、乾燥した空気とシュラスコに合って、クイクイと進む。

キリンビールが世界のビールの消費量を調査している。
国別ビール消費量 単位は1万キロリットル 2006年と2002年

中国が1位。2002年は、アメリカに次ぐ2位だったが、2006年は大差で1位。
ほかに、ロシアとメキシコの伸びが大きくて、順位を上げている。
このため、ブラジルは2002年の4位から、2006年は5位に落ちているが、
消費量は伸びている。やがて、ドイツを抜いて、4位にもどる。
日本は6位。しかし、伸びがないから、やがて、メキシコに抜かれる。

経済発展が著しいBRICs
(Brazilブラジル、Russiaロシア、Indiaインド、China中国)
のビールの消費量の伸びが大きい(インドを除いて)。
経済の発展はビールの消費量をうながす?

うまいシュラスコとビール、サンブカは、サッカーの選手を生み、
激しく踊るサンバのダンサーを育てる?
経済発展が著しいBRICsの“ブラジルの通知表”をみたい。

サンパウロの市街を望む。木立の先にアーチ型に並ぶ照明がある。

サンパウロのカーニバルの通り。左端には、照明つきの観客席が見える。

ランク…AA=3位以内 A=10位以内 B=20位以内 C=30位以内 D=40位以内。
1)創造力: ノーベル賞の受賞者はない→ランクF。
2)芸術力: カンヌ映画祭でパルム・ドール受賞作品1は11位→ランクB。
3)学力:  PISA2006の15歳の知識と技能は51位→ランクF。
4)文化力: 文化遺産は10で16位→ランクB。
5)運動力: サッカーのワールド・カップ優勝は5回で1位→ランクAA。
 陸上競技世界記録はない。
6)経済力: 国民総生産は10位→ランクA。
7)援助力: 政府開発援助を受ける国→ランクF。
8)総合力: ランクC。


ブラジルのレーダーチャート(2009年7月)。

[総合評価]
“創造力”は、ノーベル賞の受賞者がいないこと、
“学力”は、PISA2006が51位であること、
“援助力”は、援助を受ける国であるために、
いびつなレーダーチャートになっている。

しかし、注目するのは“運動力”と、“経済力”である。
経済力は、広大な国土は自然資源に恵まれているし、多くの人口がある。
石油、鉄鉱石を産出し、日本は鉄鉱石を輸入している。日本は、ほかに、
アルミ、コーヒー、バイオエタノール、小型ジェット機を輸入している。

ブラジルは、サトウキビのバイオエタノールの世界最大の輸出国である。
CO2を削減するバイオ燃料として、自動車に使われ、ガソリンと、
エタノールの混合に対応したフレックス燃料車が走っている。

国策会社エンブラエルの小型ジェット機は、世界に輸出され、
日本では、名古屋空港と、静岡空港に就航している。
さらに、バイオエタノールだけで飛ぶ小型ジェット機を、
エンブラエルは開発し、発表している。

ブラジルは、アルゼンチン、ウルグアイ、ベネズエラほかと、
南米共同市場メルコスールを形成して、域内の経済の交流が拡大している。

“運動力”のサッカーはピカ一である。
ワールド・カップの優勝国と優勝回数 1930年~2006年

ブラジルは最多の5回の優勝である。
2002年の日韓大会で、ドイツを破って、5回目の優勝をしている。

このときブラジルは、南米予選では、プレイ・オフからはい上がって、
やっとワールド・カップの本戦に出場した。
「ワールド・カップ史上、最も弱いチーム」
と、祖国から言われて、送り出された。
それが、本戦では、試合ごとに個人技に組織力がかみあって、
ブラジルは、引き分けもなく全勝した。
ロナウドが得点王になり、5回目の優勝に大きく貢献している。

空き地でサッカー。サンパウロの昼休み。


キング・ペレ」と呼ばれた“王様ペレ”は、ブラジルから外せない。
ワールド・カップでブラジルは、5回優勝しているが、
初優勝を含めて、ブラジルの3回の優勝に、ペレが代表で参加している。
ブラジルの初優勝は、17歳で代表となった1958年スウェーデン大会。
ペレの17歳は、大会最年少である(1940年生)。
決勝戦、地元スウェーデンに5対2で勝ったが、2点はペレの華麗なシュート。
これで、「キング・ペレ」と呼ばれ、ブラジルの国民的な英雄となった。

1962年のチリ大会は、ブラジルはチェコスロヴァキアを破って大会2連勝。
しかし、ペレは大会中のケガで、決勝戦には出場できなかった。
1966年のイングランド大会は、ブラジルはグループ突破ができなかった。

1970年のメキシコ大会で、ブラジルはイタリアを破って、大会3勝目をあげた。
ペレはケガもなく、全試合に出場して、優勝に多いに貢献した。

「キング・ペレ」のさらなる活躍は、1,283ゴールである。
サントスでデビューした16歳から、36歳で引退するまでの得点で、
これは、破られそうにない。

引退後、ペレはスポーツ大臣になり、青少年の教育に力を入れ、
ファヴェーラ(貧民街)に、スポーツ施設を造って、
子どもが、犯罪に巻き込まれることを防止している。
「ペレ自伝」白水社を参照。


ファヴェーラ(貧民街)。サンパウロ。

ブラジル人は人が良かった。
しかし、なじめないのは、セキュリティの厳重さだ。
警備員の腹にはがあるから、緊張が走る。

訪問したのは銀行や官庁ではない、製造会社である。
訪問を終えて出るときに、警備員は、車の中の顔と人数、
製品の持ち出しがないか? を確認してから、左手で鉄の扉を開けた。

銃はガン・ホルダーに収まっているのではない。
スラックスとシャツの間に突っ込んであって、
「撃たれる前に、撃つ!」
と、いつでも撃てるように右手は空けて、備えていた。
警備員は元軍人?  元警察官? おそらく相当の腕前だろう。

“経済力”の国民総生産GDPが10位とは、すばらしい経済発展であり、
G7の国を追いぬく勢いで加速している。そして、
国連安全保障理事会の常任理事国入りを、日本とともに目指していく。

広大な国土は自然資源に恵まれ、多民族国家だが、民族の抗争はない。
陽気で人のいい国、ブラジル。
うまいシュラスコ、ビール、サンブカがあり、カーニバルがある。
サッカーの強さは、ブラジル人に宿るDNAだ。
貧富の差を解決しながら、強大な国を目指す。

を! みなさんにを! この世にを!」
王様ペレの引退試合のスピーチである。


サンパウロの市街。
コメント
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