MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

医療通訳の当事者

2010-07-09 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
昨年に引き続いて大阪大学GLOCOLの大学院プログラム
「グローバルコラボレーションの理論と実践」で
医療通訳の話をさせてもらいました。

大学院のプログラムなので学際的で
医療関係の学生も参加しており、
こちらも非常に貴重な意見を聞くことができました。

そのひとつが、ある看護士の資格をもつ学生の話でした。
「外国人患者が来たとき医療通訳がいなくてとても大変だった。
医療通訳の制度があれば是非利用したい。」

私が医療通訳の制度化に向けての話をしたので、
共感をしてくれたのだと思います。
ただ私は強い違和感を感じました。

ちょっといじわるを言いますね。

「医療通訳を制度化するのは一番困っているあなたたちではないのか?」
という疑問です。

よく考えてみると
医療通訳が制度化されなくても医療通訳者はぜんぜん困りません。
医療通訳の報酬はしっかりと確立されているわけでもなく、
失いたくない仕事のうちには入らないからです。

私たちが医療通訳をしているのは、
患者が困っているからです。

でも同じように医療者も困っているはずです。
というか、医療通訳の当事者は患者と医療者なのです。

医療者の中から
「医療通訳を制度化しよう。」
「病院スタッフとして受け入れよう」
という声が上がってきたことはとてもうれしいです。

是非、多くの医療者の中から、
きちんとした治療をするために医療通訳が不可欠という
共通認識がでてくることを期待したいと思います。

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先日、ある医療者の方に聞かれました。
「通訳者の人たちは収入どうしているの?
ご飯食べてる?」

実は、こういう質問を医療者からされたのは初めてでした。
とてもうれしかったです。
「医療通訳者」と簡単に言いますが、
通訳者にも生活があります。

医療通訳をしている人は、
私も含めて多くが不安定雇用の中にいて、
ここ数年、収入が激減しています。

もうボランティアどころではなく、
生活のために仕事を掛け持ちしています。
その中で医療通訳の活動をしているのです。
勉強会は参加するけど、懇親会はやめておくとか、
本は図書館とか・・工夫はしているんですけど。

最近は身体が持つかなあとも思いはじめました。

だから簡単にボランティアでといわないで欲しい。
生活の安定している医療者の皆さん、もっとがんばってください。