ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

北朝鮮が崩壊する前に亡くなったという話(恵谷治氏)(追記あり)

2018-05-23 00:00:00 | 北朝鮮・拉致問題

bogus-simotukareさんの記事で知りましたが、北朝鮮問題などについての本や執筆で知られる恵谷治氏が亡くなりましたね。産経新聞の記事を。

>2018.5.21 17:34

恵谷治氏が死去 世界の紛争地帯を取材 雑誌に記事発表したばかり

 ジャーナリストの恵谷治(えや・おさむ)氏が膵臓(すいぞう)がんのため、20日に死去していたことが21日、分かった。69歳。通夜は26日午後6時、葬儀・告別式は27日午前9時半、東京都渋谷区西原2の42の1、代々幡斎場で行われる。喪主は妻の真保(まほ)さん。

 早大卒。同大探検部在籍当時より世界の紛争地帯を現地で調査、取材した。北朝鮮の核・ミサイル開発を含め世界の軍事動向に精通したジャーナリストとして雑誌に多数の記事を寄稿。現場での知識と経験に基づく分析で新聞、テレビのコメンテーターとしても活動した。

 月刊「正論」6月号で、米朝緊迫の中で準備されている米軍の対北朝鮮軍事作戦計画5015に関する記事を発表したばかりだった。

>月刊「正論」6月号で、米朝緊迫の中で準備されている米軍の対北朝鮮軍事作戦計画5015に関する記事を発表したばかりだった。

ってことは、4月くらいまである程度執筆ができたってことだったんですかね。それならせめてもの、というものなのかもしれません。ご冥福をお祈りいたします。

ところで氏って、「けいたに」とか「けいや」という名前でなく「えや」とお読みになるんですね。前に読んだことはありますが、忘却していました。これも「珍名さん」のたぐいかもしれません。

それで氏ですが、昨今以前ほどは活躍していなかったみたいですね。『正論』とか『SAPIO』などでは執筆していたのかもですが、どうもその種の雑誌でしか仕事が回ってこなかったのかもですね。最近出版した本では、

北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか (小学館101新書)

メリカ、ロシア、中国、イスラム圏を知ればこの複雑な世界が手に取るようにわかる 

がありましたが、小学館の本はすでにAmazonで1円で売っている状態ですし、題名を見ても、現在読む価値があるとも思えませんね。小学館が2013年の発売、もう1冊が15年です。

さて、拙ブログで恵谷氏のことを取り上げた記事で、1998年発売の反北朝鮮本での北朝鮮予測があります。

20年前の、対北朝鮮強硬派の考えや意見を再度ご紹介(なにが「常識人の常識」だか)

その元記事での執筆者紹介で、氏のことを私は、

>知名度の高い人ですので、私の追記は省略します。

と書きましたが、たぶん2010年当時よりこの人の知名度はだいぶ低くなったと思います。その一因は、たぶん彼の北朝鮮分析が妥当でなかったことでしょう。荒木和博や西岡力みたいな狂信者ではないですが、やはり北朝鮮崩壊という持論に固執して的確な北朝鮮分析ができなかったのだと思います。彼は、

>1:金正日はいつまでもつか

恵谷 治:20世紀末まで。

>2:北朝鮮という国はいつまでもつか

恵谷 治:21世紀初頭まで。

といった感じで、完全に予測を外しています。

それで外したのは仕方ないとして、そのあと彼は、自分の予想がなぜ外れたのか、そこで自分が反省すべき点は何か、といったようなことをつきつめて考えたんですかね。ほとんどしてはいないんじゃないんですかね。でなければ2013年に上のような題名の本は出さないでしょう。自分だって信じちゃいないが、金儲けのために本を出したんだとかいう話だったらもはや議論するようなことではありませんが、けっきょくやっていることは「研究者」とか「ジャーナリスト」でなくて政治活動家になっちゃうじゃないですか。中国関係の本を執筆したり関係の記事を書いて生計を立てているはずの福島香織が、自分のツイッターでは先日の日中韓3首脳会談を全く触れていない(この記事執筆時点)のと同様、それでは自分のイデオロギーに外れる、都合が悪いことは無視するということで、それはジャーナリストとかにそぐわないでしょう。

さて、上の予測執筆者の中では、ほかに私の知っている限りで、玉城素と田中明も死去しています。田中は韓国庇護のもと(「これまで通り」とはそういう意味でしょう)北朝鮮体制は続くと書き、玉城は(1998年から)15年ほど続くと主張していますが、田中はともかく(ただ李明博政権以後韓国は、田中のいう「これまで通り」とは違うんじゃないんですかね? このあたり田中の真意がわかりにくいですが)、そして玉城も、2008年に亡くなっていますから、彼の予想する北朝鮮最後よりは先に亡くなったわけですが、恵谷氏はたぶん自分が北朝鮮滅亡より先に死ぬとは思っていなかったんでしょうね(苦笑、いや笑っちゃいかんか)。

で、1998年の本のころは、彼は自分の書いていることを本気で信じたんでしょうが、これは読んでいないので私もめったなことは言いませんが、2013年の本では、それなりに読者を納得させることを書けていたのかなと思います。知る限りほとんど世間でも評判にならなかったみたいだし。そして発売5年後の現在、その分析が妥当だとは言えないでしょう。それで実際氏は、2014年にはこんなことまでほざいていますからねえ。

>◆救出作戦が法律上可能でないと、装備は買えず演習もできない

西岡 惠谷さんに聞きたいんですが、先ほどもいいましたが、自衛隊を使って被
害者を助けることでAとBがあるわけです。金正恩政権あるいは朝鮮労働党独裁
政権が健在であり、治安が維持されている中で、特殊部隊を使って日本単独で助
け出す作戦Aと、混乱事態が起きた時に米韓軍が動き、もしかして中国軍も出動
しているかもしれない、北朝鮮に内戦が起きているかもしれないような中でどう
助けるかというBと二つあります。

 それらについて、法律のことは置いとくとして、今の自衛隊の実力で、これは
日本政府の情報機関の実力も含めてですが、助けることは可能ですか。

惠谷 まず作戦A、つまり平時において、例えばめぐみちゃんの居所が分かった
ということで救出作戦をしても実施は非常に困難です。それは模擬実験なども色
々やって、平時は基本的に無理だという結論です。

 しかし作戦B、有事の場合、何らかの混乱状態が北朝鮮で起きた場合、あるい
は南に侵攻しそうだというような場合、つまり北朝鮮に混乱が予想される場合、
これもシナリオを書いて考えたことがありますが、これは十分に可能だと私は考
えています。

 現状は法的な制約がありますが、しかしそれでも、現状のままでも、軍事的、
技術的に可能だと思います。

ねえ、そんな有事が起きるんですか? 起きた時点で、日本人拉致被害者の所在って確認できるんですか? 軍事的、技術的に可能って、そんなことに成功した事例って、あるんですか? あったとしたら、どんな事例ですか? 馬鹿も休み休み言えとはこのことです。こんなこと彼だって本気で言うほどの狂信者でもないでしょうに。この時点で彼は、デタラメほざいても商売にしようと考えていたんでしょうね。どうしようもないにもほどがあります。

さてそう考えると、いつも同じことを書きますが、関川夏央はどうなんだよと考えます。彼は自分たちの予測を

>常識人の常識

とまで書いたのだから、自分の予測が外れたことに少しは反省なり釈明をする必要があるんじゃないんですかね。荒木みたいな悪質な政治活動家と組んでいたのだから、そのくらいの責務はあるでしょう。彼は、たぶんもうしばらくは生きているのでしょうから、それなりの時間はあるはずです。でも彼にとっては、北朝鮮問題に首を突っ込んだのは人生の黒歴史なのでしょうね。たぶん死ぬまで逃げるつもりなのでしょう。それもどうかです。

荒木とか西岡みたいに自分の意見に固執するのもどうかですが(恵谷氏も、連中ほどひどくはないですが、同じ系統でしょう)、関川のように徹底的に逃げるというのも言論人としてあまり感心はできんなと思い記事を終えます。そう考えると、蓮池透氏のような人はやはりすごいと考えます。それからbogus-simotukareさんの、上の記事だけでなくこちらの記事もぜひお読みください。いろいろ興味深いものがあります。

同日の追記:同じくbogus-simotukareさんのこちらの記事もご参照いただけると幸いです。

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17 コメント

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Unknown (ブラウ)
2018-05-23 13:46:24
>恵谷氏はたぶん自分が北朝鮮滅亡より先に死ぬとは思っていなかった

そうなんでしょうねえ、きっと。
結局、反北朝鮮論者たちの言うこと考えることには強烈な認知バイアスがかかっていて、帝国日本の本質的失敗とまったく同じ轍を踏んでいるんですよね。
彼らの核心にあるのはただ、「赤いチョンの国など滅ぶべし」的な、民族差別と反共イデオロギーのからみ合った「感情」があるだけなんだと思いますよ、きっと(まあ、商売としての要請もオマケとしてあるでしょうが)。

ところで確かクリントン政権下の米国では、当時のペリー国防長官が「『あるがままの北朝鮮』を対手として認めなければならない」と、分析のうえで結論づける政策提言を行なったと記憶しています(朝鮮半島核危機を経た後にです)。
残念ながらその提言も、後の米政局の中でワヤにされ今日に至っているわけですが、政府閣僚に従前の政策をひっくり返せるだけの情報分析力があるんですから、アメリカはやはり腐っても流石です。
返信する
Unknown (アンドリュー・バルトフェルド)
2018-05-23 20:16:24
恵谷治は「空母いぶき」の監修をしていましたが、かわぐちかいじはどこまでやるのかが気になります。

原作がバカ売れしていてかつ「来年に劇場化」という頭の痛い状態なので「早く連載が終わらないか」と思っています。

現実的には恵谷が最終回までの指示を出していればそれに従うか、新たに監修者を呼んで継続するのでしょうが。

この手の扇動漫画は挙げるとキリがないので、止めておきます。
返信する
Unknown (ブラウ)
2018-05-23 21:17:54
「空母いぶき」の監修問題についてですが、私の記憶が確かならば、かわぐちかいじ氏の過去作「ジパング」のコミックスで、恵谷氏は自分と同郷の幼馴染であり、現在(=生前)の仕事をリスペクトする旨の一文を記していたと思います。

まあ要するに、両者の腐れ縁が生んだ漫画作品が「空母いぶき」なのではないでしょうか。
かわぐち氏は「沈黙の艦隊」で大当たりしてからというもの、海上自衛隊という「軍組織」と実際の戦闘行為との「政治的すりあわせ」に、ひたすらこだわる作品を発表することをライフワークとしているように私には見えます。
返信する
>ブラウさん (Bill McCreary)
2018-05-23 23:43:24
>彼らの核心にあるのはただ、「赤いチョンの国など滅ぶべし」的な、民族差別と反共イデオロギーのからみ合った「感情」があるだけなんだと思いますよ、きっと(まあ、商売としての要請もオマケとしてあるでしょうが)。

仰せのとおり、まさに差別意識と商売がまともに噛み合っちゃったんでしょうね。それもどうかですよねえ。でなければ、こんなに飽きずにアンチ北朝鮮やアンチ韓国の言論が世間に跋扈するものでもないでしょう。

>残念ながらその提言も、後の米政局の中でワヤにされ今日に至っているわけですが、政府閣僚に従前の政策をひっくり返せるだけの情報分析力があるんですから、アメリカはやはり腐っても流石です。

米国のほうが日本よりはるかに現実的なんでしょうね。なんだかんだ言って、元大統領であるカーター、クリントンが訪朝しているし、たしかオルブライトさんも行ったはずです。

>空母いぶき

これについては私は読んでいないので論評できませんが、これもやっぱりさっきの話と同じで、個人的な興味と商売が噛み合っちゃったんでしょうねえ。そうなっちゃうと第三者がどうこう言えるような話でもないですが、なんとも無様で無残です。
返信する
>アンドリュー・バルトフェルドさん (Bill McCreary)
2018-05-23 23:44:55
ブラウさんのコメントへの返しでも書いたように、私はそれを読んでいないので論評できませんが、まあジャーナリストがそういうことをしていたら、本業にかなり差し障るという気はします。。
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「空母いぶき」とその周辺 (アンドリュー・バルトフェルド)
2019-01-10 22:09:22
実写映画化されるのはお話しましたが、原作とは違って「中国がどうこう」というのはやらない方向だと聞きました。理由は良く分かりませんが、勝手に吹き上がるのがいるから映像化は勘弁願いたいのは相変わらずです。

監修者問題ですが、新刊は惠谷治の名前がクレジットされています。「最終巻まで彼を監修者として記すのかな」と投稿後に思いました。
よしんば続編があれば外すか、他の監修者を呼ぶのかもしれません。

とはいえ「モーニング」で掲載された「サガラ」との兼ね合いがありますが。

言ったことが前と違うことはお詫び申し上げます。
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>アンドリュー・バルトフェルドさん (Bill McCreary)
2019-01-10 23:50:44
さすがに実写映画では、そんなに無茶できないということですかね。そうであれば、大変いいことです。

>言ったことが前と違うことはお詫び申し上げます。

いえいえ、お気になさらないでください。
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「空母いぶき」をめぐる「どうもなあ」ということ (アンドリュー・バルトフェルド)
2019-05-13 22:45:31
空母いぶきの実写映画で、総理大臣役の佐藤浩市が叩かれています。
「安倍さんを揶揄するな、キイキイ」ということですが、余計なお世話だという感があります。
例のコピペ作家が「絶交だ」とも喚いていますが「言っている意味がわかんないのですが」と思っています。

同作品のコミックが「1~3巻までをセットで600円」で売られている(パックがなくなったら終わりですが)のを見て「作者が許可したのかよ」と呆れました。
返信する
>アンドリュー・バルトフェルドさん (Bill McCreary)
2019-05-14 21:57:58
私もその映画の予告編は見ていますが、本編励んだなき観ていないのですが、どういう内容なんですかね。原作も読んでいないのでよくわかりませんが、もしご覧になったらいろいろ教えてください。
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Unknown (アンドリュー・バルトフェルド)
2020-01-11 22:28:46
コンビニで「ゴルゴ13」の廉価版(コンビニコミックと言うらしいです)を立ち読みしていたら
「空母いぶき」の広告が掲載されていました。

掲載しすら読んでいなくてこの時まで知りませんでしたが「空母いぶき グレートゲーム」という続編になっていました。

監修者は惠谷治のままで、原作者か何かで潮匡人と千葉何とかいうのが加わっていました。
潮がそうだから千葉もウヨなのは間違いないと思っています。
何にせよ、悪化の一途を辿っているいるのは否めませんね。

島耕作もロクに読まないで言っていますが、その件はどこかで話そうと思います。
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