ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

昔(1987年)は、赤ん坊の隣で女性が(平然と)煙草を吸っていたようなシーンがあったのだなと思った(『マルサの女』)

2023-05-26 00:00:00 | 映画

現在「午前十時の映画祭」で、『お葬式』とのカップリングで、『マルサの女』が上映されています(~6月8日)。ご興味のある方はご覧になってください。

それで、映画の出来うんぬん(漢字で「云々」と書く。「でんでん」と読んだ元首相(故人)がいたが、よい子の皆さんは、そのような大人にはならないように)についてはここでは論じません。私が「時代だなあ」と思ったシーンを。

つまり都内のビヤホールで、主人公の宮本信子が、1人ビールを飲んでいます。すると、現在税務調査中のラブホテル(同伴旅館)経営者の山﨑努が彼女の隣に座って話しかけるのですが、話の内容はこの際関係なし。私が「え」と思ったのが、宮本信子の隣の席に、赤ん坊がいます。彼女はその赤ん坊に微笑んだりしているのですが、その隣で煙草を吸い始めるのです。

全くの余談を書きますと、このシーンは、京橋のモルチェという店でロケーションされています(エンドクレジットでも店名が出ます)。最近は全然行っていないのですが、かつてはけっこうここで食事したものです。改装されたから、現在はだいぶ雰囲気は違うでしょうが、スタッフの人に「ここで『マルサの女』のロケーションしたでしょ」と話をさせていただいたこともあります。

それはともかく、さすがにこれは今ではありえない、全くのNGシーンだよね。『お葬式』でも出演している俳優たちがやたら煙草を吸っていました。『マルサの女』もご同様。最近80年代の映画やドラマをわりとよく見ていまして、『お葬式』は1984年、『マルサの女』は87年の作品です。80年代というのは、この伊丹作品に限らず、ドラマでも実によく喫煙シーンがあります。当時は、日本では、まだ「成人男性たるもの煙草くらい吸わなければ一人前じゃない」くらいの気風がありました。私は幸い煙草は吸わないですんでいます。

この映画よりちょっと前の1982年に放送された倉本聰脚本、萩原健一主演のドラマ『君は海を見たか』など、出演した俳優たちが、これでもかというくらい煙草を吸っています。なにしろ当時は、診察室で医者が煙草を吸っていたシーンすらあるくらいです。現在ならコンプライアンスでアウトでしょう。下の記事を参照してください。

何をいまさらだが、昔は煙草を吸うということが大人の男性のたしなみだった(追記あり)

ただ倉本聰という人は、喫煙に特殊な思い入れがある人物らしく、脚本に執拗に喫煙シーンを入れる人ではあるようです。どんだけ時代錯誤なんだか(苦笑)。

喫煙シーン検閲「たばこ描けないなら作品書かぬ」と倉本聰氏

が、大人が大人の中で煙草を吸うのは、時代背景からしてしょうがないとしても、1987年の時点でも、赤ん坊の隣で煙草を吸うのはよくないでしょう(煙草を吸うシーンでは赤ん坊の姿はオフなので、撮影時には近くにいなかったのでしょうが、設定は隣です)。これも時代ですね。

最近はドラマでも、喫煙シーンはなくなってきましたが、ただ復権(?)しつつあるという指摘もあるようですね。それは、宮崎アニメが1つのきっかけではないかという説もあります。下の記事を参照してください。

綾野剛ほか、地上波で喫煙シーン続々解禁 きっかけは宮崎アニメか

私個人は、非喫煙者で煙草は嫌いなので、ドラマなどでも喫煙シーンは好きではありませんが、撮影して公開(放送)するのなら要所要所でのシーンにしてほしいですね。『君は海を見たか』レベルの喫煙シーンの氾濫はよろしくありません。あそこまでのシーンが放送されることは、さすがにないとは思います。


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6 コメント

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Unknown (bogus-simotukare)
2023-05-26 06:03:18
 「男性の喫煙、飲酒」はともかく、昔はむしろ「女性がたばこを吸う(あるいは酒を飲む)なんて!」という「意識(女性はおしとやかであるべき)」があったように思いますね。
 映画的には「そうした意識への突っ込み」的な思いもあったのかもしれない。何せマルサは映画において「完全な男社会」ですからね。
 
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>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2023-05-26 22:30:53
この映画の監督である伊丹が私生活で煙草を吸っているかは私の知るところではありませんが、ご指摘の通りたぶんこの喫煙シーンは、あえてジェンダー的に問題のある言い方をすれば、「男勝り」という意味合いがあったのかと思います。今も昔も、なかなか女性の税務官がマルサになれるものでもないでしょう。
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Unknown (nordhausen)
2023-06-29 22:01:31
昔ほどではないのかもしれませんが、今なお下記の記事のように「女子が大学へ行くなどけしからん」という風潮が根強く残っていますからね。おそらく1987年当時はそういう風潮が今よりも根強かったのでしょう。

https://www.asahi.com/articles/ASLB35RCXLB3UTIL04C.html
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>nordhausenさん (Bill McCreary)
2023-06-30 23:24:25
鹿児島などは、いまでも「女性は短大でじゅうぶん」という考えがあるようですね。このあたりもいずれ記事にできればです。
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Unknown (nordhausen)
2024-06-01 20:39:14
>倉本聰

ところで、倉本は「週刊現代」2024年5月18・25日号で富良野市に外国人観光客が殺到している現状についてのインタビューに応じています(「現代ビジネス」2024年5月25日記事にも同様の内容が掲載されています)。その内容のほとんどは「富良野がニセコのように外国人観光客に占拠されて土地も外国資本に買われて外国の領土になりつつある(記事によると北海道の水源地が狙われているとの事)」と外国人の脅威を煽るような主張ですから、これだけでも「何だかなあ」と感じますが、私が気になったのは最後の「我々は『文明依存症』『進歩依存症』にかかっている」という箇所ですね。

倉本はまずこの箇所で「かつての日本人は貧しいけど幸せ、すなわち『貧幸』だった。僕らは第二次世界大戦後それを経験した」と発言していますが、戦後の混乱で貧困生活を送らざるを得なかった当時の日本人がすべて幸せだったという訳でもないと思いますが。それに、当時は乳幼児死亡率が今とは比べ物にならない程高かった事を彼はどれだけ認識しているのでしょうか? 彼は文明や進歩を非常に嫌悪していますが、乳幼児死亡率が大幅に低下していったのも、貴ブログの別記事でご指摘のように、医療技術や社会資本の発達によるものでしょう。

https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/dce8fbb60437f881f79444c7a7803552

また、彼は「『もっと豊かに、もっと便利に』と、いつまでも進歩を止めようとしない」とも批判していますが、そもそもこの30年間日本はほとんど経済停滞を続けており非正規労働者や貧困層や低所得層が増加し続けていますし、公共交通の分野でも特に地方における鉄道やバスが廃止、減便されて便利さを追求しているとは到底言えないのが現状ですからね。ついでに言うと、「依存症」と言うのなら「新自由主義依存症」と言った方が適切だと思います。

まあ、倉本が元々「脱成長、脱文明、脱進歩(すなわち退行)」志向だと言えばそれまでですが、彼から「いい加減豊かさや便利さを追求する事を止めて、かつての貧幸に戻れ」なんて言われても、長期不況に苦しめられてきた貧困層や低所得層にとっては単なる社会的強者の戯言にしか映らないと思います。
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>nordhausenさん (Bill McCreary)
2024-06-03 00:49:05
まあ倉本は、富良野に引っ込んでそれで生計を立てている人物ですからね。そういうことも言いたくなるのでしょうが、それも程度の問題ですね。時計の針を逆回転させるようなことは誰にもできません。
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