Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『他人を攻撃せずにはいられない人』

2014-10-31 00:05:13 | 読書。
読書。
『他人を攻撃せずにはいられない人』 片田珠美
を読んだ。

支配的で攻撃的な人。
職場や友人知人や家庭にそういう人がいるよっていう方は
けっこう多いのかもしれない、
この本がよく売れているところを考えると。

何を隠そう、うちの親父が、この本で挙げられるような
支配欲と攻撃欲の強い人の条件に120%当てはまっていたりします。
なんだ、うちの親父を観察して書いた本なんじゃないの?と
思えてしまうほど、ドンピシャでした。
なににつけてケチをつける、難癖をつける、
恩着せがましいことをいう、などなど、
まず攻撃的な人はそういう要素があるという点で、100点満点。
自分の万能感を維持したい、支配したい、
そういう自分でも気づいていないこともあるという欲求が、
チンパンジー的なサルの悪いところみたいなのが噴出している人間は
持っているということなんです。
そして、ターゲットにした相手に罪悪感を持たせたりして、
そこを突破口に攻撃を進めていき、支配しようとしていく。

必殺仕事人に仕事をお願いしたいような感じになりますよね…。

ちなみに、僕が初めて就職した会社の上司がこういう攻撃的な人で、
さらに部署の唯一の先輩から、
「上司になんか言われたらすいませんって言わなきゃだめ」
だとかって、正統じゃない場合でも罪悪感を持つように言われて、
そうやって万事休すになったことがあります。
僕も今以上に稚拙でしたが、この職場の人たちはバカ野郎どもです。
さらに、その職場では、スケープゴートにされている人もいて、
攻撃的な人が多かった。それは、ひとえに一人の攻撃的な上司のせいで
みながその心理状態に感染していしまったからなんだと、
この本を読んでわかったところです。

本書で書かれている対処の仕方、処方箋では、
9割がた僕はできているなという感じで、
やっぱり長年攻撃的で支配的な人と一緒だと、
だいぶ分析と距離を置くというのがわかっているみたい。
それでも、甘く見てはいけないし、一生ものの対峙になります。
本当に、困ったガキだぜ、という感じ。

こういうタイプの人間に苦しめられている人は多いと思います。
本書を読むことで、一時は怒りが増幅するかもしれませんが、
きっと、クリアに見つめられる人も多いと思います。

僕はだいたい、この本に書かれていることは分析できていて、
これを読むことで、うちは特殊なんじゃなくて、
一般的なものなんだと理解できた感じ。
また、自分がこういう攻撃欲と支配欲に支配された人間に
ならないためにもわきまえておきたいことでもありました。


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『一般意志2.0』

2014-10-30 14:09:02 | 読書。
読書。
『一般意志2.0』 東浩紀
を読んだ。

200年前のフランスの思想家、ルソーがその主著『社会契約論』で語った
「一般意志」という概念に東さんが光を当て、現代流に解釈し、
バージョンアップさせた「一般意志2.0」としての現代への適応と、
そこから変わる国家、民主主義というものを見ていく(論じていく)本です。

フロイトの精神分析の言葉を用いて、
「一般意志」とは無意識であるとしている。
そして、その無意識は、現代において、ツイッターやブログや、
その他、検索したりページをたどったりした足跡なりというデータが蓄積し、
浮かびあがる集合した無意識であり、それこそが「一般意志2.0」とされています。
これはきっと、今でいえば、いわゆるビッグデータのことなんでしょうね。

その「一般意志2.0」を元にして、政策を行うのがこれからの世界になるのでは、
あるいは、そうなるのが良い、と筆者は言っているように読めました。
よりよい理想に向かうと、そうなる、と。

いろいろと、著者の論説を補強する引用や、
熟議民主主義などのような昨今の主流の思想と
筆者のこの「一般意志2.0」をあいまみえさせて調整したり、
ときほぐしたりしています。
特に僕には終盤にでてきたリチャード・ローティの話が面白くて、
なるほどと思うようなのがありました。

それは、アイロニーに関する記述でした。
「アイロニー」というと、「皮肉」と訳されますが、
筆者は、ここでは矛盾を抱えた物言いのように解釈していました。
相反する物事や概念などを、一方だけを真実とせずに、
どちらも包みこんでしまって考える方が好ましいとする態度は、
僕個人の考え方に近いものがあります。

また、「連帯」というものには「憐れみ」がその繋ぐ糸になるというようなことが
書かれていましたが、この間読んだ村上春樹さんの小説
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』でも、
人は痛みや苦しみで繋がるっていうようなことが書かれていて、
ちょっとだけそこはリンクしているように感じました。
僕としては、アニミズム的な、モノに込められたその人の気配を感じ取ること、
もっと言えば、人の霊性を感じ取ることでのあたたかみっていうものが、
「連帯」や「社会的包摂」を作るんじゃないかって考えています。
そこは本書の中にはない概念ではありましたが、
「理性」と「情緒」のうち、近代は「理性」ばかりを重んじてきたが、
「情緒」にこそ、これからの社会をつくる何かがあるんじゃないかっていうような
主張があって、そこは繋がるよなぁと思いながら読みました。

「一般意志」に着目し、
それを現代のビッグデータに重ね合わせて「一般意志2.0」として
論を広げていったこと。
そこにはオリジナリティがありました。
地に足をつけたまま背伸びをして、見えたものを記述するというわけではなく、
宙に浮いて見えた景色を語ってくれるような、飛躍とはいいたくないのですが、
メタからの実存的構築とでもいいたい、手触りと手ごたえを感じられる内容です。

そして、現在をよく見てらっしゃるなぁと思えましたねぇ。

新しい知識を得ることで、視界や意識が変わることってありますが、
本書はまさにそうです。
世界の見え方や展望を変えたいような方にはうってつけでしょう。


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『ダ・ヴィンチ 全作品・全解剖。』

2014-10-24 23:10:09 | 読書。
読書。
『ダ・ヴィンチ 全作品・全解剖。』 池上英洋 監修 ペン編集部 編
を読んだ。

いまから500年くらい前にイタリアで活躍した芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼の全作品の紹介、解説をするのが本書です。

どうですか、ダ・ヴィンチと聞いて、「モナ・リザ」と「最後の晩餐」以外に
思い浮かぶものってあるでしょうか。
僕には他に、解剖学や天文学の知識を持っていたことや、
ヘリコプターのような形態の乗り物を想像していた人
くらいしか思い浮かびません。
それでも、遅咲きながらも当時の第一級の才人であり、
こうやって正面から向き合うと、「モナ・リザ」の慈愛に満ちた微笑みというのも
わかってきて、すごい絵描きだったんだなぁという印象を持ちました。
驚いたことに、ダ・ヴィンチが遺した作品というのは、13作品しかないのです。
それも、ちゃんとしているようでいて未完成の部類に入るものも含めて。
さすがに、その13作品にはデッサンや習作は含まれていないですが、
彼のもう一つの遺作として、多くの手稿というものが、価値ある資料とされている。
また、彼が勉強家であるがゆえに、その作品に込められた意図などを深読みして、
「ダ・ヴィンチ・コード」などというエンタテイメント系の作品が
生み出されたりもしましたよね。

ちなみに、「モナ・リザ」は本書では「ラ・ジョコンダ」という名前になっています。
そっちのほうが世界的に一般的な呼称なのかな。

カラーページで、100ページくらいのものですが、
なるほどなるほど、と思って、子どもの頃に読んだ「○○大百科」みたいなのの
しっかりしたバージョンみたいに思って読める本です。
っていうか、今って、子どものための「○○大百科」的な本ってあるのかしら。

ダ・ヴィンチは遅筆だったようですし、
作品の数も多くないですし、
それで生きているうちから認められてスターみたいになっていたのだから、
その質の高さの卓越したところっていうのは、
もう群を抜いて、素人目でもはっきり分かるくらいなんでしょうね。
たしかに、本書でも、同時代人の絵なんかがでてきますけれど、
人物の顔にしても姿勢にしても堅くて、漫画の延長というかそんな風にみえるところってあります。
逆に、ダ・ヴィンチの書いた素描が、たとえば猫のとっくみあいだとか
あるんですが、そういうのは現代のうまい日本の漫画の作画力に通ずる柔らかさがあります。

時を越えた技術と作風なんだと思います。
技術もそうだし、表現しようっていう気持ちをどんどん突き詰めていったら、
何百年後までかかる洗練さってものを彼は手に入れていた、というような
ことのように思えました。そして、謙虚に「自分は無学だ」として独学していたようです。
享年67歳だそうで。その当時にしたら長生きだったろうと思います。
遅咲きだったから、長生きでよかったですね。


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『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』

2014-10-23 12:31:35 | 読書。
読書。
『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』 若宮健
を読んだ。

おもに、ギャンブル依存症の側からパチンコを批判する本です。
論理や情報に飛躍したようなところがないので、
適度な距離感を保ったまま落ち着いて読める本。
ただ、パチンコ依存症の人からのメールなどが載せられているのですが、
そういう具体的な体験談には、ぐっと気持ちが引き締まるような思いがします。

厚生労働省が2010年に発表したのが、
「ギャンブル依存症は国内に400万人以上」ということだそうです。
そのうち、7,8割がパチンコ依存症だと見られているらしい。

僕もパチンコが好きだったからわかるのですが、
いくらでもつぎ込みたくなるんですよね。
それで当たりが引ける場面もあるし、
やってみなければわからないぞ、と思ってしまう。

いろいろと、パターンはあると思います。
初めてやってみたらけっこう儲けて、
さらにやって儲けることもある。
それで、じゃ、お金もあることだし、
長丁場の勝負をしてみたいと思いだしたりもするんです。
いつもなら2時間くらいでやめていたものを、
5万円とか6万円とかを予算にして、4時間だとかやって使ってしまう。
そうやって、当たっても当たらなくても、
長丁場のパチンコ遊戯というものに慣れてしまうと
よくはないですよ。
遊戯をしたい気持ちが中毒的に作用してしまう。

成功体験っていうものが、害をなすことってありますけれど、
少なからずギャンブルにもあります。
「あのときうまくいったのだから、またうまくいくことだってあり得る」
そうやって、失敗を重ねていって、胴元(ギャンブル主催者)だけが、
儲けて大笑いするということって本当によくあることだと思います。

また、本書にはサブリミナル効果についての言及もありました。
これはちょっと驚いたけど、そうか、と納得したくなるものです。
昔、80年代か70年代かのころに、映画館で映画のなかにコーラの映像を
チラッと0.04秒だとか、人が認識できないくらいの短い間流したら、
それが人の潜在意識に作用して、映画の後にコーラが
飛ぶように売れたっていう話がありました。
この、チラッと映像を見せる手法がサブリミナルで、
95年にオウム真理教が、どういう手段でやったかわからないですが、
テレビの映像に教祖の麻原彰晃の顔をサブリミナルで流したことがあるそうで、
それ以降、テレビではサブリミナルは禁止されているとのこと。
それが、パチンコではとある会社が特許をとっていて、
どうもパチンコ台に使っているようだということです。
その理由は、確率の3倍だとかハマっていても、
サブリミナルによって「777」「大当たり」だとかの文字などを見せることにより、
客は飽きずに大当たりを期待し続けて、楽しく遊戯を続けられるから、
ということだそうです。
でも、それって、僕なんかに言わせれば、そして多くの人がそう考えると思いますが、
客からより多くのお金をむしり取るためのイカサマめいた装置なんじゃないかなぁ。

そういうトピックもありつつ、
後半は、パチンコ擁護ライターやマスコミへの批判などで締めくくられています。

僕はけっこう、パチンコなんかで儲けてしまったタイプで、
ようはその時期、金運が良かったとでもいえばいいのか、
それとも、これから搾り取られる前にうまく止めれたのか
(やることがあって、読書だとか好きなことがあると止めれるようです)、
とにかくいろいろモノを買えたし、恩恵に授かってしまったので、
そういう成功体験から、100%パチンコなどを批判することはできないのですが、
一方で依存症の人がいて、その人のみならず、家族や友人なども巻き込んで
苦しめてしまうので、これは良くないなと思っています。
ギャンブルのリスクって本当に大きくて、やるならばそうとうに覚悟しておかないといけない。
できれば、やらずに済めばいいのですが、そうもいかない人っていますからねぇ、
難しいものです。
でも、けっして、パチンコを擁護は出来ないなぁ。
そういうもんです。

著者の方は、よくこういうことをこういう姿勢で書いてくれたなと思って、拍手を送りたいくらい。
本書ではたぶん、著者の前の著書で言いたいことはかなり言いきっていると思われて、
論説的な部分は少なかったんですけど、訴えてくるものはある本でした。


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『死神の精度』

2014-10-21 22:22:54 | 読書。
読書。
『死神の精度』 伊坂幸太郎
を読んだ。

映画化もされた伊坂作品のひとつです。
ターゲットとされた人間を7日間調査し、
生かすべきか、死を迎えてもらうべきかを決める死神が主人公。
「ってことは、暗そうだな」なんて思うかもしれないですが、
そこは伊坂作品です。
名句、諧謔、に満ちていて、ときに笑いをこらえるところも。
そして連作的短編という構造です。

面白かったですね。
いまだかつて伊坂作品に(といってもまだ数作品ですが)
期待を裏切られたことはありません。
どういう創作をしているのか、
その秘密すら知りたくなるほどです。

いつも言われていることではありますが、
エンタテイメント作品ながらも純文学的なところもあって、
そういうジャンルみたいな垣根を越えているという点で、
村上春樹さん以後としての意味合いをもった作家だ、
なんていうことになっていたりします。
本作品の解説でもそうあったし。

まぁ、ジャンルなんてものは、
無くていいんですよね、面白いならば。
ミステリならその文体だけにこだわる必要もないし、
純文学だからって謎要素の無いようなものにしなくたっていいわけで
(といっても、小説ってたいがい、謎にまつわるものになってます)。

本書の中では、とくに「恋愛で死神」の章が好きでした。
すらすら読めて、リターンもけっこうあるような良作でした。


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『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』

2014-10-20 00:03:24 | 読書。
読書。
『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』 溝口優司
を読んだ。

およそ700万年前に誕生した人類。
最初は猿人なのですが、そこから原人、旧人などと進化をしながら、
それらとは繋がっているのかはよくわかりませんが、
現生人類であるホモ・サピエンスにまで進化した。
それが、10数万年前だと言われています。
つまり、ぼくら、今の人類という種は、まだ10数万年しか歴史がないんです。
でも、大きく進化した脳のおかげで、ここまで発達した社会を作り上げた、
しばしば野蛮な行為に走るという特徴もありますが。

本書は、そんな700万年前から人類の進化をたどり、どうやって
アフリカから世界に広がっていって、最終的に今の日本人になったか
ということを駆け足気味に説明してくれるものでした。
身体の大きさが人種によって違うこと、皮膚の色もですね、
そういったことがどうしてなのかも明快に答えてくれています。

また、骨の形質などの形態から、いろいろな地方の古代人のルーツを探っていくのが
著者の分野らしいので、あまり遺伝子だとかDNAだとかでは、
とくに日本人のルーツの部分では検証していませんが、
それでも、ミトコンドリア・イヴの話など、現代的な人類学のトピックは出てきます。

意外だったのは、歯というものがそんなに民族の間で違うものなのかということでした。
シャベル型の歯というもの意味、欧米人は歯が小さいことの意味、
などなど、歯にまつわる有用な人類学的情報が書かれています。
どうなんだろう、こういう話は歯科医になる人は勉強するのだろうか。

学問と言うのは、真実を追求していくものだと思いますが、
細かく、深く、見ていくからこそのものだなぁという感想を持ちました。


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『知ろうとすること。』

2014-10-19 00:01:15 | 読書。
読書。
『知ろうとすること。』 早野龍五 糸井重里
を読んだ。

福島の原発事故と放射線について、
事故から3年半がった今だからこそ語れること。
ツイッターで事故後早くからデータを収集しツイートしていた早野先生と、
事実を科学的に見たいと思って彼をフォローし見守り、
その後、いろいろな行動を起こした糸井重里さんの対談本です。

つい一昨日、この本を読むにあたって合わせて読んだ方がなおいい、と
いうようなツイートを確か糸井さん本人がされていたのを目にしていたので、
『いちから知りたい放射線のほんとう』を読みました。
そこで、相当に、今ではこれだけはっきり分かっているという
放射線の知識を得ることができましたし、それまで読んでいた本の内容も
頭の中で整理されたかのようで、クリアになった気分すらしました。

そして、満を持して、この対談集を手に取った。
そこで見えてくるのは、糸井さんがあとがきで書かれていることにも繋がるのですが、
事故などの危機に対する「姿勢」なんですよね。
「姿勢」であり、どこを向いているかという「視線の向き」でもある。
そういうのが学べると思いますよ。
いわば、北極星を教えてもらうような本とも言えますね。
近代になって科学が発達するまで、航海してるときに目印にしたのは北極星です。
「北極星を見る」というのは、イコールこのような災害の場合での
「姿勢」を知ることであり、「視線の向き」を知ることでもある。
他の星を目標にしてさまよってしまうがごとく、
科学的事実に拠ろうとすることをしなければ、きっと、この災害の本当のことは
いつまでたってもわからずに、さまよい続けてしまうことになるでしょう。
さらにいえば、自分だけさまようのではなく、
さまよいながら人を傷つけたり迷わせたりもしてしまう。
そうはならないように、最小限どこを向いたらいいよ、と促すような本だと思います。

糸井さんと早野先生のツイートのやりとりで知りましたが、
この本のタイトルの『知ろうとすること。』には、
「素人がすること」というような意味も込められているようです。
素人がすることは、知ろうとすることで、それは「姿勢」を手にすることなのだと
僕はそうとらえました。

事故からの取り組みとその経過が比較的詳しくわかりますし、
わかることで、安心を得られたりもします。
単行本で出てもいいような本なのに、最初から文庫本で発行されて、
ワンコイン500円で買えてしまいます。
知ろうとする、その気持ちが少しでもある人は、ぜひに。


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『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す』

2014-10-18 14:35:37 | 読書。
読書。
『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す』 津田大介
を読んだ。

いろいろな質問に答える形式で進行していく、
情報社会での作法、そして、
これからの社会でどう生きていくべきか、についての本。
IT時代の人生指南的意味合いすら感じる本です。

津田さんってぼくの年よりも3つか4つ上でしかないのに、
その抱えている専門的な情報量の多さと、
いろいろな経験によって醸成された考え方によって、
快刀乱麻にさまざまな疑問に対して真正面から答えていきます。
やるなぁ、と。
ご自分では「怠け者だ」なんておっしゃっていますが、
きっと時間の使い方が上手いのがうかがえる。

おもにツイッターってツールはこういう視点から見て考えてみるといいよ、
っていう項が多かったかな。
そして、なるほどと思いながら、自分の感じていることや考えていることを補強したり
修正したりできるような内容でした。

それで、この本を読んでたら、
どうやらおいらはダメなアマチュアライターなようなんだけども…、
断定と推量の言葉の使い方のところの説明なんかでそう感じさせられた。
推量の多い文章、かもしれないだとか、だそうだ、とかそういう言葉遣いだと思います。
でも、なんていうか、僕は読者をたてる文章を書いてると思ってるわけです。
いつもそうじゃないけど。
意見を主張するよりか、材料を提示して読者の方々に判断をまかせる感じ。

世間には自分が主役っていう文章を書くのが本当っていう感覚があるように思いますし、
それは悪いことではないです、責任を持って書いている証でもあるから。
でも、読者に対してわき役を演じる書き方もあると思うんですよね。
また、断定を急くのも、ギャンブル的で違う感じがしたりする。

文章の、その言葉遣いやなんかやで「勝負!」っていうのは、
たまにそういう気持ちもあるけれど、僕はちょっと違うと思っていて。
心にあるものが、読者の心に伝わることが一番大事であって、
言葉ってその媒介じゃないかって思うんです。
こころからこころへ、言外のものが伝わる、それが一番じゃないかと、ね。

まあでも、文章を書く世界にしたって、厳しいものですな。

僕みたいな、社会のメインストリート(まともにレールから外れずに的な意味も込めての、メインってこと。)
から期せずしてはずれてしまって、それをもはや肯定して生きている僕なんかとしては、
津田さんの本を読んでいて彼って実はけっこうエリート志向なんだなと思えた。
あるいは、社会の主流から外れてはならないっていう意識を持っている。
見かけは金髪の人でもそんな気がしました。


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『いちから聞きたい放射線のほんとう』

2014-10-17 20:35:34 | 読書。
読書。
『いちから聞きたい放射線のほんとう』 菊池誠 小峰公子
を読んだ。

震災、そして福島第一原発事故からもう3年半が経ちましたが、
いまでも放射線についてまったくわからないだとか、
不安でしょうがなくて毛嫌いしているだとか、
そういう方々はいらっしゃると思うのです。

復興のようすもよくわかりませんし、
きっと遅れているのだろうと思っています。
そして、放射線の存在によって傷を負った、
多くの日本人のこころの復興もまだ完了していないのではないでしょうか。

本書は、放射線とは何かというところから出発して、
積極的に、みなが知りたいトピックについて、
平易でわかりやすい言葉によって回答してくれます。
対談形式で、日常の言葉にちょっと専門的な固有名詞が挟まるといった程度で、
原発事故を気にかけたり、日々ニュースを見てきたけれどよくわからないでいた
というような人たちにはうってつけの本になっているように読めました。
テンポよく、うまく要約された文章のように、キーポイントをおさえて
短いセンテンスで答えてくれるので、せっかちな人だって
ちゃんと読み終えて知識を得ることができそうです。

赤ちゃんは産めるのか、被ばくによって損傷した遺伝子は遺伝しないのか、
そういった不安に対して、
「赤ちゃんはちゃんと産めます!」
「遺伝はしません!」
ときっぱりと答えてくれたところなんかは、
本書の一番の称賛に値するところかもしれない。

放射線なんていうものを理解するには、
難しい専門的な本じゃないと無理かもしれないですし、
放射能関連の本を2,3冊読んだ僕でも、この分野には、ぼやぁっとしていたりします。
それでも、実生活に影響があるのだから、と切実な人は言うまでもなく、
なんとなく知っておいた方がいいんだろうけど、読書苦手だしという人でも、
きっと読んでいけると思いながら、読了しましたし、その後には、
幾分、放射能についてクリアな視点がもたらされたような気がしています。

そんなわけで、
放射能の不安を不安のままにしていたくない人、
疑心暗鬼になりたくない人にはとくにおすすめです。
というか、みんな読んだらいいなぁと思える本でした。


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『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

2014-10-16 21:54:49 | 読書。
読書。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹
を読んだ。

傑作でした。
『1Q84』や『女のいない男たち』をまだ読んでいないので、
最近の村上春樹作品がどのようなものかは知らなかったのです。
そんなわけで、中盤以降にガツンときました。面白かった。
その心を掴まれた中盤以降の、その前の部分も、
そこまでいくために築き上げていったものですし、
構築のされ方が興味深く、そしてまた面白く読めました。

ここからちょっとネタバレみたいになります。

人と人との繋がりは、傷や痛みなどによってこそのもので、
そういうのこそ真の調和なんじゃないかっていうところ、しびれた。
どすん、と深いところにまでもっていかれましたです。
これはクライマックスのシーンです。

また、僕が思うに、
今作の深いところのテーマになっているのが、
「無意識の意識化」なのではないか、と。
前記の人と人との繋がりの考察においても、
主人公たちの無意識の意識化によってでてきたものでもあって、
無意識の意識化っていうのが、本作品の根底にあるベース音みたいな感じかな、と思いました。
こういうところは、ユング派心理学の河合隼雄さんと交友のあった村上さんだからこその
深みなのではと思わせられるところです。

無意識の深いところでは、人間みなつながっている、
みたいなのがユング派心理学で言われることだと思いましたが、
そういった概念、イメージに近いものも、この作品の中にはでてきます。

しかし、性夢のシーンがうまいですよね。
いやいや、そこか!って思うかもしれないですが、
興奮させられる描写でしたよね。

ま、とにもかくにも、
素晴らしい、力のある作品でした。僕が言うこともないけれど。

どうなんでしょう、みんなこういう春樹さんの作品を読んで、
「自分だ!」みたいに思うから売れるのかなぁ。
また、無意識の意識化っていうものも、「ねじまき鳥」や「世界の終りと…」
あたりからも感じられると思うのだけれど、そこはブレないで
同じことを深度を深めたりしながらやっているように見受けられる。
それって、探求に値する深いテーマ、ということもあるのでしょうけれど、
そういう「色」を読者は求めていて、それにまだ飽きられていないから
続けているっていうことはないんでしょうかね。

少し前に放送された、NHKのスイッチっていう対談番組で、GLAYのTAKUROさんが、
そういうようなことをおっしゃっていたので、「!」と思ったんです。
TAKUROさんは、Jpopの同じようなコード進行だとかは、それをみんな求めているから
やり続けるみたいな感じの話だった。

閑話休題。

春樹さんは力が落ちないですね。
リスペクト。


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