Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『はたらきたい。』

2016-11-30 23:10:24 | 読書。
読書。
『はたらきたい。』 ほぼ日刊イトイ新聞
を読んだ。

糸井重里さん主宰の「ほぼ日刊イトイ新聞」から生まれた、
ほぼ日の就職論です。
ぼくもなかなかにふらふらした人間ですから、
労働のスタンス、働くって何か、お金ってなんだ、
そういうことがらについてある程度、
軽めではありますが頭の整理ができてから読もうと思っていた本です。

なぜならば、自分の頭で考えれば出てくるようなことまでを、
楽に本から受けとるとおもしろくないからです。
時間はかかるけれど、頭は萎えるし、
「自分で生きている」感が薄くなるし、
こういう人生にとって身近なことの経験や知識をよそから仕入れてしまうと、
自分の人生での、「自分が主人公なんだ」という気持ちが
ぺらっぺらになってしまうような気がしたんですよ、ぼくの場合は。

本書『はたらきたい。』は指南書ではありません。
働くにあたって、どういうスタンスで面接に臨みなさい、
みたいな具体的な指示うんぬんはありません。
ただひとつ、自分にとって大切なものは何か、を考えましょうと
語りかけられます。
さしでがましいようですが、そこだけは考えた方が良いんです、
というような感じでしょうか。

また、いろいろな角度からの多くのトピックがあります。
たとえば、ぼくは就職のための適性試験なんかでは、
ほぼなにも適性がなかったんだけれども、
そうやって適性から職を絞っていくやり方って、
やっぱり間違っていると今読んでいる本に書かれていることに共感しました。
機械的な歯車として無機質な存在として生きるわけじゃないから、
できれば自分の大切にしているものに即した仕事選びをし、
そういうものを大切にしている自分がいやだと思わない職場を選ぶ。
仕事を決めるときの根本のひとつの部分は、そういうことだなあと。
とはいえ、好きなことと得意なことがあって、
やっていけるのは、得意なことのほうだと、最近イトイさんは言っていて、
適性試験でほんとうに得意なことが分かるなら、
それはそれで役に立つのかな、とも思いました。
でも、要は、そういう適性試験を優先順位の一位にしないことなんじゃないのか。
自分が大切にしてきたことに繋がる仕事があるならば、
そこにはまるで適性がないとは考えにくいです。
大切にしてきた過程で、大切にするための体力がつき、
筋肉が鍛えられていると思うんですよ。

ぼくは、今年ちょっと働いてみた感じではありますが、
まず過重労働じゃなくて、
そこそこでもこれはやれそうな種類の仕事だと思えると、
あとは覚悟を決めて自律的にやることを心がければ、
意外と充実してはたらけます。

自律性は、ぼくは親の面倒見のなかでの、
調理などの家事をするようになったからこそ
培われたもののような気がしているんです。
28歳で一度ドロップアウトしたときは
武器も無いなかで戦い果てた感じだった。
あの頃は本もよく読んでいなかった。

世の中、いろいろな価値観や考えをもったひとと同僚になったりします。
悪いなあというひとも、未熟で傲慢だなあというひともいます。
そういう人たちとの関係で見失いそうなことがでてきたときには、
次の言葉を思い返すといいです。
人間はコマでもコストでもなく、価値、なんですよね。
コマやコストと考えるならば、
それを変えていきたいところだし、
変えていくのが大変ならば、そっぽむいて辞めちゃいましょう。
それが最善策だという場合は多いと思います。

そして、矢沢永吉さんとイトイさんの対談の章。
矢沢さんが就職論かよ!とお思いになる方もいらっしゃるかと思いますが、
不良のようでいて、まじめにちゃんと自分のやることを考えて
実行しているひとですから、筋が通っている。
「自分の人生を、ひとのせいにしちゃダメだよ。
国のせいだとか、まわりのせいだとかにしちゃダメ」。
そこだけは超えちゃダメ、あとは何やってもいいよ、
みたいな言葉はなんだか深いところにズンと響くものがあります。
つまり、自分の頭でよく考えて、自分のやることを見出して、
そしてやりましょう、ということなんですよね。
永ちゃんは、自律性のすばらしさと他律性のよくなさを
十分にわかっているひとだった。

あとがきには、イトイさんが、遠くの灯のようであればいいと思った、
というようなことを述べています。
あそこに人がいるのがわかる、そういう気持ちさえあれば、
各々が自分の足で歩いていけるでしょう、ということ。
そして、その歩く行為が人生そのものであり、
自律性であり、そのひとが主人公であるということなんです。

良い本でしたよ。
中盤の章やみうらじゅんさんのところが箸休めのようになっていて、
堅苦しくもなく、でも、しっかりとした光を目にすることができます。

ぼくもまだまだふらふらした人間のままですが、
それでも、何かしら掴むものはあります。
拠り所としては頼りなかったりはするのですが、
立ち上がる時の手すりみたいな、
ちょっとした助けになってくれるような本だと思いました。
はたらくことについて、真正面から見据えてみようかな、
と思った方、是非、本書を手に取ってみてください。

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『乃木坂46物語』

2016-11-29 00:48:45 | 読書。
読書。
『乃木坂46物語』 篠本634
を読んだ。

いまや100万枚の出荷枚数を記録するまでになった
アイドルグループ乃木坂46の、
オーディションから13枚目シングルまで(2015年末まで)の歴史物語。

乃木坂46のこれまでを振り返った
ドキュメンタリー映画もありましたが、
あちらが主要メンバーを重点的にピックアップして描いたのにくらべ、
こちらはアンダーメンバーにも注目していて、
逆に後半などは選抜に関する記載が足りなく感じるほどです。
映画と本書を併せて楽しむと、
いっそう乃木坂46のこれまでについての知識が得られ、
そしてそういった彼女らの経験から出来あがった
乃木坂46の今を立体的にイメージすることができるようになりそうです。

そりゃないだろ!って
キレたくなるような運営からの要求や指示を、
混乱しながらも受けとめて正面からくぐりぬけた彼女たち。
強くなるんだね、ひとって。
みんながみんなできることではないし。
ぼくが彼女たちを好きになったそのセンサーは間違いないものだと
本書を読んであらためて確信しました。
乃木坂好きでメンバーみんなの名前と顔が一致するひとなら
とてもおもしろく読める。
この本でメンバーを覚えてもいい。

生駒ちゃん曰く、乃木坂にはなんとなく陰のあるコが多い、とのことで、
ああいう歌詞の「君の名は希望」にも共感しているコばかりみたいだし、
そこは女性らしい優しさをしっかりもっていることの表れでもあるんだけれど、
陰を持ちながら勇気を持つ、一歩踏み出す、
という表現に親和性のあるグループだと思う。

必死に頑張って、
混乱して悩んで落ちこんだりしながら立ち直って、
立派にパフォーマンスして、
そんな「やるなあ」って思う子たちが、
応援するように歌を歌ったりして励ましてくれる仕事をしているわけで、
そんな応援の表現を受け取ると、
頭が下がりそうになりながらだけど「おうよ!」って気にもなる。

最近では、橋本奈々未さんの卒業と引退が発表されて、
彼女がセンターをつとめる「サヨナラの意味」が発売されました。
この曲のサビの部分のダンスが好きでね、
1小節分、ななみん意外のメンバーが揺れてセンターのななみんは動かない、
その各メンバーの揺れに促されるかのようにななみんが次の小節で
他のメンバーとともに揺れるダンスを踊るのですけれども、
あそこがいいんです。
引退・卒業ということで、メンバーから離れるのだけれども、
そこを他のメンバーが、今までありがとう、
そして、まだななみんは乃木坂の大事な一員だよ、
みたいに、揺れるダンスを踊って、
その返答のように、ななみんが、受容してありがとうというように
他のメンバーの踊りに同調する。
まあ、妄想も混じっていますが、そういう印象を受けましたよね。
ななみん的には、ああいう静かなダンスは腰に負担が少なそうで、
最後に良かったじゃないかと、妙な老婆心まで芽生えました。
橋本さん、ぎっくり腰をやるひとだから。
曲も歌詞もよかった。MVも乃木坂は毎度だけれど、ハートにきますよね。
曲は、「制服のマネキン」や「君の名は希望」の杉山勝彦さんです。
秋元康氏曰く、天才、だそうで。
橋本さんは道産子の自慢の娘みたいなひとです。
お金に困りながら、立派にミッションコンプリートして、
それを乗り越えたことによる卒業だそうで、
ありがとうな!元気で!と言いたいです。


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近況2016年11月

2016-11-23 15:21:04 | days
この春より携わっていた仕事が11月3日で終わりました。
なかなか楽しく働けましたし、よい経験にもなり、充実した半年間でした。

観光地の接客業なのですが、
北海道の小さな田舎町に、
ほんとうに全国のいろいろなところからお客さんがやってきて、
その観光地の説明をちょっとして、
あとは雑談をする、お客さんの話を聞く、
という展開になることが多かった。
そういう触れ合い、みたいなのって、
悪くないなあと思いましたし、
なんだか触れ合いによって何かが癒されていく感じもしました。

また、けっこうな人見知りなのですけれども、
それが少し解消されたし、
自律的に自分から出ていってお客さんに話しかけることもしていたから、
仕事の満足感も多く得られたと思います。

来年も、同じ職場で働く予定です。

11月3日以降は自由時間!と言いたいところでしたが、
11月17日に博物館のガイドをやってくれないかという話があり、
その勉強と研修をして本番を迎えました。
30人くらいの高校生が相手だったのですが、
思ったよりもしゃべることがすぐに無くなるのと、
大声で話をすると、声がかすれてしまうのと、
大声を出すという行為に意識が持っていかれて、
話す内容が頭から飛び真っ白になりもしたのには、
あせりました。
でも、まあ、それなりに高校生も、
話をちゃんと聞く生徒が前によってきてすぐにくっついてきたし、
お別れのときには、担当の先生もニコニコしてくれていたので、
変な感じには思われなくて済んだかなあ、許容範囲内だったかなあと
推量しました。
今後も、またガイドをしてください、と
呼ばれることもありそうで、
そのときは、この時以上のガイドをしたいです。

さてさて、
そんな17日のガイドを終えて、
風邪をひきました。
緊張の糸が切れたせいかもしれない。
土日月火、すなわち昨日までの4日間寝たり起きたりで、
とくに月曜日の夜は、咳が止まらなくて徹夜してしまいました。
苦しかった。
それでも、今日になってほとんどよくなって、熱もほぼ下がり、
喉から出てくるのも、ねばっこい透明な痰なのか唾なのかから、
すごい色のついたまとまりのいい痰に変化してきました。
こうなると、ぶりかえさなければ、直ります。
もうちょっとですね。

今年は年内に二本の小説を書く予定でした。
一本は2~3月に書き、4月に校正や推敲を終えて応募。
それで、11月20日から新しいものの設定などを1週間かけて
考えようと予定していたところで風邪をひき、
もうね、執筆は12月でいいや、とキレ気味に決めました。
今回、どんなものを書き、どこに送るのかは、
これから決めます。
接続詞の使い方と、「~という」「~みたいな」
という言葉遣いに気をつけての文体構築をしていきます。
そして、想像力。
自由と現実感と。
縛りと奔放さとの相反するものをコントロールして
書いていきます。
まあ、あとは瞬発力だとか、ありますけども、
そこはぼくがここで書かないでも、
ふまえていればいいことなので。

今回の短編が早く仕上がれば、
来年のまた3月くらいまでにもう一作品書きたいですね。
そうなればいいなあ。

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『骨風』

2016-11-20 22:57:57 | 読書。
読書。
『骨風』 篠原勝之
を読んだ。

鉄のゲージツ家・クマさんこと、
篠原勝之さんの自伝的小説です。

17歳で、育った北海道は室蘭の家を出て上京し、
人生の苦みをたくさん味わってもきたクマさんの、
ふんどし一丁の自分をあらわしたようでもある、
連作短編の私小説でした。

重厚長大でも軽薄短小でもなく、
ぎゅっとエネルギーを秘めた、
質感のある物質を感じさせるようでもある。
そして、それこそ、鉄の芸術作品の、
赤錆に感じさせられる渋みみたいなものと、
人生の錆からでる苦味みたいなものとが、
ミックスされているような文章と内容だと
感じました。

全部で八篇なのだけれど、
最初のお話からしてじんわりとおもしろく、
最後のお話を読み終えると、
一冊の本として成仏するかのように、
この本の持つスピリットのようなものが立ちのぼる感覚に、
肌で、そして心の目で触れることになるでしょう。

逃げ続ける人生だったとしても、
その足取りは自分のものなのだとしっかり自覚して
前を向いているならば、
ひとに伝わるような「生」の質感というものは失われず、
書きだす文章にも根付くものなのかもしれない。
等身大の姿勢で書かれた、
そんな私小説だと思いました。
素晴らしかったです。

著者 : 篠原勝之
文藝春秋
発売日 : 2015-07-08
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『増補 日本の神様』

2016-11-18 15:31:37 | 読書。
読書。
『増補 日本の神様』 畑中章宏
を読んだ。

仏教に仏像があるように、
神道など日本古来の神様信仰にも神像があります。
その神像の紹介をしながら、
日本の神様をみていく、軽い読み物でした。

学校で習ったと思いますが、
神仏習合といって、
明治時代までの日本では、神様と仏様が一体化して
あがめられていたと言います。
日本にもともといた八百万(やおよろず)の神様を、
中国から伝来した仏教が、
その布教に利用するように取りこんだようです。
神社やお寺がいまのように比較的それぞれ分離して
存在しているのは、神仏分離が明治時代に行われたせいです。

ぼくが以前読んで知ったものとしては、
神社の中や神聖な場所では、
何も置かずに空間だけがあけられておいて、空っぽにされている。
それはなぜかといえば、
その場所に人の目には見えない神様が降臨するからでした。

本書ではそういった言及はなかったんですが、
代わりに、神様が宿る「依り代(よりしろ)」という考え方が出てくる。
木が一番多いようなのですが、石だとか滝だとか、
そういったものに、神様が乗り移る、というか、宿ると考える。
それで、神像もそこらで生えていた木の形質を利用して
ざっくりと彫られたものが多いようでした。

なかでも、円空という江戸時代の仏師が、
多作で、神像のような仏像のような、とにかく
ありがたくて民衆を助けるための像を12万体も彫った
という記述がおもしろかったです。
なんだか、信用できるなあと感じさせられます。

本書は、もしもどこかの博物館で
「神像展」というものが開催されたら
こういう感じなのではないだろうか、
という印象を受ける体裁の本になっています。
楽しんで、学んで、難しいことはやらない入門的な説明を受ける感じ。

八幡の神様は戦いの神様で、
稲荷の神様は商売の神様で、
天神は学問の神様で、
というように、そういった基本的な神道的知識も学べました。

2時間あればじっくりよめてしまう、
字の大きい本でした。
中学生くらいが(小学生でも)寝転んで楽しめると思います。
こういった知識のないオトナもおもしろく読めるでしょう。
ぼくはおもしろかったです。


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『「出会い」の不思議』

2016-11-14 01:16:36 | 読書。
読書。
『「出会い」の不思議』 河合隼雄
を読んだ。

ユング派心理学の日本での第一人者であった
河合隼雄氏によるエッセイ集。
人、本、言葉、家族、など「出会い」にまつわる
内容のものが多く集められています。

河合隼雄さんの著作には、
いくつか、若い頃から触れています。
そうやって、考え方を多少なりとも知っていても、
まだまだいろいろと新しい発見があり、
揺さぶられたりする。

____

理解力の浅い人は、よく怒る傾向がある。
ものごとが「理解できない」ときは、
人間は不安になり、不安を打ち消すために感情を爆発させる。
_______

というのもそう。
うちの親父がそうだなあと思いつつも、
それだけじゃないことが、
その後の「しつけ」「父性」に関するところでわかることになりました。

著者は、吉本ばななさんと話をしたときのことを引き合いに出します。
ばななさんのお父様は、ご存知のように思想家の吉本隆明さんなのですが、
その吉本隆明さんは、ばななさんに、
「寝る時には雨戸を閉めなさい」というしつけをしていた。
ばななさんは高校生くらいになったときに、
「朝陽が部屋に射して目覚めるほうが自然なのでは」と思い、
隆明さんに言うと、それで言いあいになったそうです。
著者はそこで、大笑いして膝を叩いたそうです。
大切なのはこれだと。
子どもを育てるうえでは、なんでも自由というのはよくなくて、
「我が家ではこれはダメ」というルールは必要なんだそうです。
そして、そのルールはちょっと変くらいがよくて、
なぜなら、子どもがその変さに気づく歳になって、
親に反発するタネになるからだそうです。
そうやって、議論や言いあいをして、親子関係が昇華していくと
著者は述べていました。
まあ、でも、そんなにすんなり昇華するものかなあと疑問符は付きます。
こころのしこりになって残ることって多いと思うんですよ。
それにそういうのがきっかけで、
家を出よう、一人暮らしをしようと思ったりもする。
著者はそういうのも含めて、長いスパンで見て、
それでいいんだと言っているようでもあります。

うちのおやじも、そういう変なルールに固執するところがあり、
そこを論理的な話し合いでどうにかしようとぼくは試みるのですが、
これがうまくいかないのですね。
どうやら、そこには父性というのものがあるがゆえに、
親父は頑固なんだろうなあというのが見えてきました。

また、まったく別の話になりますが、
アメリカ・インディアンの神話の話もおもしろかった。
ジョシュア族の神話に、創造主が二人でてくるのです。
一方は名前があり、他方は名前がない。
名前のある方は、努力をして、
どうにか動物や人間をこしらえようとするのですが、
失敗に終わる。
他方の創造主は、三日間ずっタバコを吸っていると
家が出現し、その中から美女がでてくる。
名前のない創造主は、その美女を結婚して、
16人の子供を授かったのだそうです。
16人はインディアンのすべての種族の祖になった。
つまり、創造というのは、ひたむきにガリガリやって
無茶して努力してできるものではなく、
タバコを吸うという行為に象徴される行為によってなされる
ということが言われている。
著者は、昨今の禁煙の風潮によって、
「タバコを吸う態度」までなくすると、
人間のたましいに悪いのではないでしょうか、と
やんわりと禁煙の風潮に疑問を突きつけます。

そうなんですよねえ。
一般的に、詰め込み教育であったり、
馬車馬のように、忙しく働くのが正しい、みたいな考えであったり、
そういうのに僕なんかはよく出くわしますが、
そういうのでいいひとは良いかもしれないけれども、
思索したいひともいるだろうし、
それこそクリエイトしたいひとはそういうのが害になりますよね。
というか、これからの時代って、
ばたばた忙しいのが傍流になるんじゃないだろうか。
いや、傍流にしていくべきなんじゃないのか。

いずれにせよ、ひとつの価値観を強要するようなのは
よくないということですね。

と、まあ、いろいろ考えさせられて、
考えの基盤も揺らぐところがあり、
そのために寝ざめの悪い日もあったくらいの読書になりました。
でも、それはそれで、どっちかといえば、
よい読書体験だったと思います。
こういうのって実はありがたいんですよね。
20歳くらいのころは、ぐらぐら揺れたくなかったですが、
いまは、たまにならこういう揺れを感じたいくらいです。


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『ハゴロモ』

2016-11-06 21:31:23 | 読書。
読書。
『ハゴロモ』 よしもとばなな
を読んだ。

東京で18歳から8年間愛人として暮らし、
その終焉とともに故郷へ帰ってきたひとりの女性が、
その川の多い土地でおくる生活を綴った小説。
柔らかで優しい、再生への息吹きが感じられます。

彼女がこれを書いたのが37,8歳のころと思われるのですが、
今これを読んだぼくがそれくらいの年齢であることもあるのか、
語られる考え方や思想めいたものにすごく共鳴するところがあった。
そこのところを考えている、感じている、
とぼくが内に宿しているものが表現されていた。

そして、その表現されていてぼくと共鳴する部分は、
きっとぼくも表現できる手合いのもので、
レイテストのぼくの小説にもちょっと重なるところはあったように思うし、
ぼくが書きたい方向性としても、すごく似ていた。
つまりこれは、ほんとうに縁があって読んだ小説でした。

他方で、オカルトタッチ、スピリチュアルタッチが強い部分があるのだけれど、
そこはぼくとは方向性を異にするところです。
いや、まあ、もしかするとわざと(あるいは自然の流れで)
そういったカラーを使うことがあるかもしれない。

あとがきから、
弱っているひとが読んで、すこしでも寄りそえたらいいな、
というような感じを著者自身が再読して思ったようなのですが、
ぼくはとくに弱ってはいませんが、
同じような読者を想定して書きたいなあと思うことがあるので、
そこらへんで引き込まれたのかなあ、と思いました。

しかし、まったくの想像で、
東京暮らししかしたことのない著者が
こういう地方の物語をかけてしまうのはすごいなあ。
地方に住む僕が、すんなり読めてしまうもの。

また、相手役の男が精神的にどっしりしていて、
何か宗教やってるの?と訊かれますが、
ぼくもこないだ仕事仲間に「精神が安定している」と評されて、
はじめてそんなことを言われたけれど、
そういうリンクもあり、
やっぱり読むべくして読んだ縁のある作品だった気がします。

おもしろかった。
好きな小説がまたひとつ増えた。
(でもまあ、たいてい、読んだら好きになるんだよね・・・)


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『詩なんか知らないけど』

2016-11-05 00:00:05 | 読書。
読書。
『詩なんか知らないけど』 糸井重里
を読んだ。

糸井重里さんの詩集です。

むずかしい言葉を使わず、
ふだん、ぼくらが使っている、
なにげないやわらかい言葉を
拾い上げ組み合わせてつくられた
詩たちでした。

「手垢にまみれた言葉」などと、
よく使われる言葉が形容されることがありますが、
たとえば、使いこまれた鍋や鉛筆などがあったとして、
そういうものたちから感じられる温かい感じや、
見ようによっては渋みなど、
そして、さらに見る角度を変えたり、
置く場所を変えたりすれば、
見栄えが変わり、
美しくなったり、
かわいらしくなったり、
可笑しくなったりもするもので、
それは言葉もいっしょだよ、
というふうに、
糸井さんが糸井さんらしく、
言葉を並べてくれている、
そういう感想が浮かぶ詩集でした。

そうやって出来た詩たちに、
ああ、いいなあと微笑んだり、
吹きだしたりしながら、
心地よい時間が過ぎていく読書になりました。

声に出して読んでも楽しそうな詩たちでした。


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『スター・トレック BEYOND』

2016-11-04 13:51:27 | 映画
映画『スター・トレック BEYOND』を見てきました。

スター・トレックのオリジナルストーリーのメンバー、
つまりカークやスポックたちの、
並行世界のタイムライン上での物語です。
この新シリーズの一作目に、
その後の世界に並行世界が生じるようなタイムトラベルが起こったため、
このようなエンタープライズ号の新しい世界が
生まれたことになっているようです。
そして、本作はオリジナルのスポック役を演じた、
故レナード・ニモイ氏に捧げられています。
(急逝した、本作までチェコフを演じた俳優にも捧げられている)

おもしろかったです。
監督がJ・J・エイブラムスから変わったんですが、
もたもたするところがなくて、
歯切れのいいSFアクション映画になっていて
ひさしぶりに「手に汗握る」映画を見たなあという感想です。
スター・ウォーズもそうですが、
意欲的ゆえにもたもたしてしまうような、
消化不良のようなつくりになることってあるとぼくはみていて、
それが、本作にはなかったかな、という。
シンプルにおもしろい。
往年のトレッキーも満足されたのではないかな?

最後はちょっと、涙を誘う感じのところもあり。
おおいに満足して楽しんできました。
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『量子コンピューターが本当にすごい』

2016-11-02 01:08:54 | 読書。
読書。
『量子コンピューターが本当にすごい』 竹内薫 丸山篤史:構成
を読んだ。

実現するのは100年後と目されていた量子コンピューターが、
数年前からNASAやGoogleで使われ始めたとのこと。
スーパーコンピューターが一千万年かかる問題を、
量子コンピューターはすぐに解くことができるというくらい、
この技術は凄まじいようです。

本書では、「計算とは何か」という
ごくごく基礎の部分から説明しはじめて、
「コンピューターとは何だろう」
「量子とは何だろう」というように、
量子コンピューターを理解するに向けて
知識を深めていくようになっています。
文系のひとでもついていける、
という形式ではありますが、
それはそれ、ある程度の数学や物理学の知識(記憶)と、
数学的なアタマを使って数式や説明を
自分のアタマで考えていく行程が要求されます。
ぼくはまあ、さらっと読んでしまって、
ちゃんと考えなかった部分、
そして、ついていけなかった部分もありました。
よって、検証はできませんでしたが、
書いてあることを信用して、
なんとなく、量子コンピューターについては
わかったようなつもりになっています。
(留保つきの知識ですね)

物理学や数学のいろいろな偉人の業績という
正統なエピソードもそうですが、
そういうひとたちのちょっとした余談的なエピソードも
面白かったりしました。
いろいろな天才がいるなあ、という。

たとえば、フォン・ノイマンという、
現代のコンピューターのあり方を作ったような学者は、
8ケタ同士の掛け算を暗算できた、という逸話には
へえ!と驚きました。

そういう読み物のところが面白いのですけれども、
先述のように、やはり数式などを考える部分は厄介ですし、
量子アニーリング技術の説明のところなども難しくて
ちゃんと理解できなかった。
そういう部分をしっかり理解する読書にならなくとも、
うっすらとでも掴めればいい、
さらっとでも量子コンピューターを知りたい、
という文系のひと、
つまりぼくみたいなひとには、
まだぎりぎりで読めるかなとは思いました。
難しいところがあることを承知で、
手に取ってほしい本です。

実用されている量子コンピューターは「D-WAVE」といいます。
ものすごい寒さの中でしか作動しないようで、
家庭機としては普及しないでしょうが、
最先端のコンピューターの世界を知りたいと思う方は
たくさんいらっしゃるはずです。
気になる電力はスーパーコンピューター「京」の1/1000程度だそうです。
いまに、スパコンって、ずいぶんと不効率なしろものだったなあと
言われる時代が来るでしょう。
といっても、スパコンを知るひとがどれだけいるかっていう話ですが。
(もちろん、ぼくも知らないです)

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